悪役令嬢は呑んだくれ放浪の旅に出たい

はるみ

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2.レモンハイくださぃ

ノンアルの作り方

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今日も私は図書室に入り浸っていた。
読書の小休憩にメアリーに作ってもらったレモンハイもどきをぐびぐびと飲み干す。

ん?
これはレモンハイもどきです。アルコールは入っておりません。ノンアルです。


私だって本当はノンアルなどでは無く、アルコールが飲みたいんだっ!!でも周りが許してはくれないのだ。


この間こっそり、地下倉庫のワインセラーでワインの味見をしようとしたら、倉庫管理人に見つかり、セバスチャンとメアリーにめちゃくちゃ怒られた。
その後、地下倉庫は厳重に鍵が取り付けられ立ち入り禁止となった。

後日、ならばと厨房においてある料理酒を頂戴しようとしたら、料理長に見つかり、セバスチャンとメアリーに今度は魂が抜けるまで怒られた。
その後、厨房の酒類は毎日の残量をきっちり管理されるようになった。


このままアルコールを摂取しなければ狂い死にしてしまう。

そんな時オラクルのように、前世で妊娠中だった呑み友達の話をふと思い出した。


「妊娠中は酒が呑めないじゃなぃ。だからアルコールもどきで凌いでるの。例えば炭酸水。アルコールじゃ無いけどアルコールを飲んでいる気分を味わえる。そして、お酢。お酢を薄めて飲むと、なんとアルコールの味がするように感じられるのよ。マジでそう思い込んで飲めば、そう感じられるの!」


当時は、自分には無関係な話だと思い「ふーん」と流していた。
しかし今思えば、もぅ、ラジウムを発見したキュリー夫人、交流の仕組みを発見したニコラ・テスラ級の大発見ですよ!


以降アルコールへの渇きをごまかす為、炭酸水にレモン汁を加えワインビネガーを少量垂らしたものを、『レモンハイもどき』と称し、常飲するようになった。



レモンハイもどきのおかわりを貰おうと図書室を出た時、お父様が突然帰宅され、お母様と私、そして屋敷の全ての使用人達をホールに集めた。


お母様が舌打ちをしながら悪態をつく。

「突然帰ってくるんじゃなぃわよっ。この家はあんたがいないことが平常で回ってるんだから。」

お母様の毎度の態度に我慢をしつつ、お父様は皆に話しだした。

「今日から我がコアントロー家の次期当主として我らの家族となる、キール・ロワイヤル 改め キール・コアントローだ。さあ、挨拶を。」

次期当主? あぁー、
なんか来るとか来ないとか言っていたような・・・。


お父様の背後からすっと現れた少年は、お父様の言葉に促され、しっかりとした口調で自己紹介をした。

「ロワイヤル伯爵家から来たキールと申します。9歳です。今後末長くよろしくお願いいたします。」

薄い栗色のふわふわの癖毛に、栗色のくるっとした瞳。
まるで子リスを彷彿させるように可愛らしい美少年がそこに居た。

キールはまずはお母様への個別の挨拶を終え、その後そっとカシスの手を取り、その手の甲に唇を落とし花の様な笑顔でカシスに挨拶を行った。

「今後、カシスお姉様と呼ばせていただくことをお許しください。」







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