悪役令嬢は呑んだくれ放浪の旅に出たい

はるみ

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5.日本酒入ります

おやつは三百円まで(もちろんおつまみも

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大きな声を張り上げ続けたことにより喉が潰れるという代償を払って良かった。

試験が終了するまで、王子′s に絡まれることなくA組メンバーと勉強に勤しむことが出来た。
そのおかげで試験の成績は無事「そこそこの成績」を取ることができた。A組メンバーもみな「そこそこの成績」とのこと。

「そこそこ」万歳!!

試験後のお妃教育が暫く週5に戻ったという代償があったが。。。


しかし前期の試験が終了し、あと数日で学期末休暇となった。


学期末の長期休暇か・・・・。
約1カ月程ある。

そこそこの成績を収めることができたので、赤点の教科などもちろんなく、生徒会や部活動などにも参加をしていないので、休み中、学園に行く用事は全く無い。

領地を持つ家の者達は大体、皆領地に帰るのが一般的だ。
しかし我がコアントロー家は領地が王都に近くすぐに帰れてしまう。よって基本王都に住んでおり、必要時に領地に帰るようにしている。
したがって、長期休暇だからといって領地に戻るようなことはない。
だからといって王宮に行くのは極力遠慮をしたい。。

さて、休暇中どう過ごそうかな。
前世だったら、海外旅行にずっと行っていたのだが。

行きたいな、海外旅行。。

この世界でいうと周辺国にバカンスっていう感じか。

行きたいな。


・・・・。

行っちゃおうかな。


・・・。
ダメだな。

例えちょっとした旅行でも国外に出ようとすれば、うちの家の者達を始め、王宮の者達にも追われる。
まるで脱獄犯を追うかのように・・・。

想像をするだけでも恐ろしい。。。


あと2年半。
早くこの堅苦しい環境(侯爵家とか、第一王子婚約者とか、王子′sとか)を全て捨てて『呑んだくれ放浪旅』に出たい。

そう私は、『呑んだくれ放浪旅』の野望実行日をこの学園の卒業パーティー前日頃と決めたのだった。
来年16歳になればこの国では飲酒が許可される年齢になるが、まだ学生の身。
もちろん飲酒は開始するが、何もかもを捨てて放浪の旅に出るのは卒業ギリギリまで待ってからでもよいのではないかとこの頃考えるようになった。
それは屋敷のみんなや、お母様、キール、そして学園のA組メンバー。みんなと過ごす時間をできるだけ長く取りたいという思いからだった。


机につっぷをして休暇中の過ごし方についてウダウダ考えていたら、隣のメガネ君が声をかけてきた。

「カシス嬢は休暇中はどのように過ごされる予定ですか?」

「うんー。ちょうど今そのことを考えていたんだよ。予定がなくてー。でも王宮には極力行きたくなくて・・・。」

私の返答に、メガネ君は「ふむ」とちょっと考え、私に提案をした。

「何処も行く予定が無いなら、我家の領地に遊びに来てみませんか?」

「メガネ君家の領地? 確かちょっと南の方だったっけ?」

「はい、うちの領地は海に面している為、マリンスポーツを楽しんだり、新鮮な魚介類が食べられます。観光地でもあるので結構色々と楽しめることがあるかと。」


最高ではないか!!

私の大好きなビーチリゾートってやつではないですか!!
前世でいう熱海や鳥羽のような感じの所ですか?!

「よろこんでっ!!」

私はメガネ君の手を握って即答した。

私とメガネ君が休暇中のバカンスの話で盛り上がっていたら、ピニャ様がやってきて話に乗ってきた。

「あら、素敵なお話。私もご一緒したいわ。」

メガネ君が笑顔でピニャ様に返す。

「是非お越しください。」


友達とビーチバカンス。
とっても楽しみだ。

しかし、あいつらのことを忘れてはいけない。
くれぐれも悪魔達(王子′s)に気付かれぬようにしないと。やつらは絶対に私の楽しいバカンスをぶち壊しにやってくる。

メガネ君とピニャ様には今回のバカンスに私が参加をすることは絶対に他言無用とお願いをした。
学園生活が約半年、私が王子‘s を避けているのはなんとなくA組のメンバーに伝わっていたので、すんなり承諾してもらえた。


家の者達と王宮の先生達にはメガネ君の領地に1週間ほどバカンスに行くことを伝えたが、くれぐれも王子′sにはそのことを教えないようにお願いをした。
「もし漏れたら、また停学騒動を起こしてやる!」と脅したら、みな絶対に漏らさないと誓ってくれた。

あの停学騒動は私もそうだが、周りの大人達も相当トラウマな事件となっているようだ。


前期最終日が終わり、帰宅後、明後日からのバカンスの準備で上機嫌に鞄に荷物を詰めていると、ドアがノックされキールが私の部屋にやって来た。

「姉さん、お疲れ様。明後日から旅行だっけ?」

「うん、とっても楽しみー!」

ウキウキでこたえる。

「そういえば、この世界で生活するようになって初めての旅行かもしれないね。楽しんできてね。」

この世界での初めての旅行・・・。
確かにそうだ!

「僕はあの悪魔達が姉さんの旅行に気付かぬようこの屋敷で頑張るよ。」


っキール!!
いつもいつも、本当にありがとう!!

キールはいつも悪魔達からの盾となり私を守ってくれている。


時には、私に触れようとしてくる王子達に熱い紅茶をぶっかけたり。
時には、せっかくの休日に私を屋敷の外へ連れ出そうとしてくる王子達に、大量の塩を投げつけ追い返したり。
時には、王子達の屋敷への侵入を防ぐ為、ボーガンを射って王子達を威嚇したり。


ほぼアウトに近い、いや完全にアウトな王族侮辱罪を物ともしない行為を自ら進んで私を守る為にやってきてくれて、本当に感謝をしてもしきてない。。

・・・今回私が旅行で楽しんでいる時も、キールは王子達と戦ってくれるのか。

なんかそう考えると大変申し訳ない気持ちになった。
私は2年半後になれば放浪の旅に出るので沢山旅をすることができるが、キールは侯爵家を継がなくてはいけない為、旅行などなかなか行けなくなるんだろうな。。。


「キール、明後日からの旅行、一緒に行かない?」

ぽつりと呟くように提案の言葉が出た。

「っえ?」

突然の私からの言葉にキールが驚く。

「うん、そうだよっ! 王子達のことは家の人達にお願いしてどうにかしてもらおう! 旅行は1人増えても大丈夫だよっ!! 一緒に行こうっ!!!」


驚いていたキールだが、少し考え、おずおずと聞き返してきた。

「いいの?」

「うんっ、私がキールと一緒に旅行に行きたいんだっ!!」

私のまっすぐな言葉を受け、キールは思いを絞り出すように言った。


「僕も・・・、僕も一緒に行きたい!」


翌日早速、メガネ君にキールも同行させて欲しいと伝え、快諾をもらった。


そして・・・・
ついに旅行に行く日となった。








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