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白い影

序3

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 彬を恨めしげに見た俊介が、チェッと舌打ちして弁当箱へと中身を戻す。

「汚ねー」

 うんざりと呟いた俊介は、彬の弁当に目を向けた。

「ウィンナー一個でいいから、くれ」

 箸で抓んで差し出すと、俊介はパクリとそれに食いついた。

 それを見ていたクラスメイトの何人かが、哀れな俊介におかずを分け与えている。


 意識したのは、きっとその時。


 本人は知ってか知らずか、他の生徒からのは、一旦掌に乗せてから口に入れている。

 ――俊介あいつは。知らないんだろうけど。

 そんな些細な事が、俺には忘れられない記憶になるんだ。




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