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碧の癒し

序1

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  帰り道は、好きだったんだ。

  二人で帰る時間は楽しい――筈なのに。

 その日は少しも楽しくなかった。高橋彬の隣で黙りこくったままの親友。

 その不機嫌さまでもが、空気を伝ってこちらへと流れ込んできているようだった。

「あの……さ」

 窺うように時任俊介の顔を覗き込む。「どうしたんだよ?」という言葉を吐き出すより早く、チラリと彬に向けられた視線は、すぐさま逸らされてしまった。

 次に続く言葉を見つけられずに、仕方なく頭をかいて黙々と足を進める。

 あまりにも長く感じられた沈黙の後、唐突に俊介が口を開いた。

「どーすんだよ?」

 ぶすりとした、不機嫌さを隠さぬ口調。

「へ?」

 なんの事だか解らず訊き返した彬に、フンと鼻を鳴らし、拗ねたように言葉を吐き出した。

「昼休みの、女子ッ」

 吐き捨てるように言われた台詞に「ああ」と軽く答えようとして、目を剥いた。

「な、なんでッ! お前が知ってんだよッ?」

「俺が…って言うか、クラスのみんなが知ってる」

 呆れたような声で言う俊介に、思わず頭を抱え、動揺する。

「なんでー?」
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