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蒼い約束

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 その瞬間まで、まったく気付かなかった。気付いた時には、車はもう間近へと迫っていた。


 スローモーション。


 驚く運転手の顔が、向き直った正面に見える。彼もまた、今の今まで彬の姿が見えていなかったに違いない。

 慌ててブレーキを踏んでいるだろうその姿は、不思議とゆっくりな映像として彬の瞳に飛び込んできた。


 キキャキャキャキッ、キキッ!


 まるで悲鳴のようなブレーキの音が、辺り一帯に響きわたる。

「彬ッ!」

 ブレーキ音に紛れて、鋭い声が耳に届いた。

 ――この声!

 振り返った彬は、そこに予想通りの『親友』の姿を見止め、思わず顔をほころばせていた。

 チェッ。もう迎えに来やがった。俺の方から、行ってやろうと思ってたのによ。

 笑って、彬は親友へと手を差し伸べた。

「……俊介」

 想いを込めて呟いた彬に、必死の形相の俊介が駆け寄って来る。

「あきらァ!」

 彬の差し出した手を強い力で引き寄せた俊介は、もう一方の手で彬の頭を抱え込み、地面を蹴った。

 ――こいつ、こんなに背ぇ高かったっけか?

 緊張感なくのんびりと悠長な事を考えた彬は、「まあ、いっか」と瞼を閉じた。



 ドンッ!



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