中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

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第1章

初めての戦闘 2

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アイとおキクは市長官邸から飛び出した。しかし自分たちの目に飛び込んできた、あまりの光景に呆然とする。

2m程の大きな黒い鳥の魔物が2体、上空を旋回している。時折り口から火炎を吐き、地上の人々をなぎ倒していく。地上には灰色のオオカミのような魔物が多数走りまわり、次々と人々を襲っていた。

ついさっき自分たちが歩いてきた、賑やかだった大通りのいたる所から火の手があがっている。街道のアチコチには、たくさんの人々が倒れていた。

「皇帝鴉と灰色狼です。獰猛な獣と同様、血に飢えた存在です」

セーレーの情報に、ふたりは思わず息を飲む。

そのとき路地の曲がり角から、可愛らしいツインテール姿の小さな女の子が姿を現した。

「ママー、ママー!」

母親とはぐれてしまったのか、大泣きしながら歩いてくる。アイとおキクは反射的に、女の子のそばに駆け寄った。そして膝を付いてしゃがみ込むと、その少女と目線を合わせる。

「ママとはぐれたの?」

アイは女の子の頭を優しく撫でた。しかし女の子は更に「うわーん」と大泣きし、二人の顔を見ようともしない。

おキクも「よしよし」と優しく頭を撫でるが、少女が落ち着きを取り戻すことはなかった。

そのとき「グルルッ」と獣の喉の鳴る音が響いた。アイとおキクは咄嗟に顔を向ける。

路地の奥から多数の灰色狼が、低い前傾姿勢をとりながらジリジリと近付いてきた。禍々しい血のような紅い瞳でふたりをジッと見据えてくる。

アイとおキクは突然の恐怖に身がすくんだ。助けを呼ぼうにも声すら出ない。足がガクガクと大きく震え、立ち上がることさえ出来なかった。

獲物の様子を伺っていた灰色狼が、とうとう一斉に襲いかかってきた。アイとおキクは反射的に女の子を抱き寄せ、自分たちの体で女の子を庇った。

「そのまま伏せてろっ!」

そこにアサノが飛び込んできた。右手に片手剣、左手にはハンドウォーマータイプのグローブが装着されている。

アサノは目にも止まらぬ連続斬りで、灰色狼を斬り払っていく。斬られた魔物は影と化し、何かに吸い込まれるように消滅した。

「お前ら今のうちに、その子を連れて市長官邸に逃げ込め!」

アサノはアイたちに指示を出す。しかしふたりは生気のない瞳をアサノに向けるだけで、何の反応も示さなかった。

「ちっ!」

アサノは舌打ちすると、声を張り上げた。

「いるんだろ、サカシタ!女の子を頼む」

するとサカシタがスッと現れ、女の子を抱き上げ去って行く。

「セーレー、ふたりを帰還させろ!接続解除コネクトオフ!」

アサノの声が路地に響いた。

   ~~~

亜衣とお菊の突然の帰還信号に、佐藤は心配そうな表情で、ドームの前で待っていた。しかし、いつまで経ってもふたりは出てこない。

突発的な戦闘が発生したとの報告は受けている。そこで何かがあったのかもしれない。佐藤はさらに心配になりドームの中に入っていった。

中に入ると、ヘッドマウントディスプレイは外されていたが、亜衣とお菊は寝そべったままだった。

両手で顔を覆い、時々鼻のすする音が響く。ふたりは泣いているのだと、佐藤は確信した。

「何かあったのかい?」

佐藤は努めて明るく質問する。

少しの沈黙…

「何も…何も出来なかったー」

とうとう亜衣が「うわーん」と大声で泣き始めた。

お菊も必死に声を押し殺しているが、亜衣につられて泣きだしている。

どうやら散々な異世界デビューになってしまったようだ。佐藤は首を横に振って俯いた。少しずつ慣れていけば、楽しいこともたくさんあっただろうに…

(これは…ダメかもしれないな)

何の根拠も無かったが、佐藤は亜衣とお菊に不思議な期待を抱いていた。それなのに、イキナリこんな事になってしまって、心底残念でならない。

佐藤は悔しそうに歯ぎしりすると、両手の拳を握りしめた。

「佐藤さん、私…悔しい!」

そのとき亜衣が、嗚咽のなかで声を絞り出す。

佐藤は「ハッ」と驚いたように顔を上げた。

「私も…私も悔しい!」

お菊も同様に、嗚咽とともに声を絞り出す。

「私…絶対ゼッタイ、強くなるー」

「私も頑張って強くなるから、佐藤さん…どうか見捨てないでー」

亜衣とお菊は起きあがり、涙を流しながら佐藤に懇願する。

佐藤は咄嗟に駆け寄ると、両手を広げてふたり同時に抱き寄せた。

「バカだな。何で見捨てるなんて話になるんだよ」

佐藤も思わず、涙がポロリと零れ落ちた。
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