中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

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第1章

赤の姫君 2

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「スキルモードを開始します」

おキクの決意にミーコが応えた。

「セット」

続いて発した声に呼応して、おキクの足下に魔法陣が広がっていく。

おキクは大きく深呼吸をし、昨日の練習で自分なりに掴んだコツを復唱する。

(小さな水たまりを跳びこえるように…)

おキクは遠くにある荷馬車を見据えると、軽く前へと跳ねた。直後に凄まじい速度で射出される。

「アハッ!」

おキクは思わず笑った。この急加速がなんだか楽しくなってきた。

20m程浮遊して着地する。その勢いのまま地面を駆け、崩れかけた体勢を走りながら整える。そうしておキクは再び叫んだ。

「セット!」

途端におキクの身体が、急激に加速する。

助走がついていたからか、さっきよりも距離がグングンと延びていく。一気に荷馬車のすぐ近くまでたどり着いた。

着地と同時に再度スキルを使用し、今度は上方に飛び上がる。一瞬で20m程の上空に到達すると、おキクは下の様子を伺った。

荷馬車の馬は逃げたのか、既にいなかった。荷車にはホロが掛かっており中の様子は確認出来ない。出入り口には扉でも付いているのか、灰色狼が前足で何かを削り取ろうとしていた。

「バステト!」

おキクは空中で両手剣を呼び出した。そのまま重量を利用した落下の勢いに任せて、1体の灰色狼を両断する。

超音波振動の刃は、おキクに何の抵抗も感じさせることなく灰色狼を斬り裂いた。その直後、灰色狼は影と化し、何かに吸い込まれるように消滅する。

「コレ凄い!」

おキクはその斬れ味に感動するが、余韻に浸る暇は与えて貰えなかった。

残り4体の灰色狼が、一斉に前傾姿勢でおキクを睨みつけてくる。

「ヒッ!」

その禍々しい紅い瞳におキクは怯んだ。

その隙を逃さなかった1体の灰色狼が、おキクに襲いかかってきた。

ガン!!

そのとき、一発の銃声が辺りに轟く。

おキクに襲いかかる灰色狼を、1発の弾丸が空中で捉えた。続けて2発目3発目と撃ち込まれ、5発目で灰色狼は消滅していった。

「おキク!」

アイの鋭い声が響く。

「セット」

その隙におキクは素早く後方に跳んだ。

灰色狼との間合いがみるみる開き、アイの近くに着地する。間髪入れず、残りの灰色狼3体がおキクを追って駆けだした。

アイは先頭を走ってくる1体に狙いを定め、銃弾を撃ち込んでいく。しかし倒すには、やはり5発の弾丸を必要とした。

「私、攻撃力が全然足りない!」

アイが半分涙声で嘆いた。実際には両手剣が強すぎるだけなのだが、比較対象のない現状ではアイの嘆きも仕方がない。

「任せて!」

おキクは両手剣を横に構えると、先頭を走る灰色狼目掛けて我が身を撃ち出した。

直後に、凄まじい速度でお互いが交差する。駆け抜けた灰色狼は、真一文字に斬り裂かれ、影と化して消滅した。

おキクはそのまま、最後の1体の目の前に着地すると、今度は真上に飛び上がった。それに釣られるように、灰色狼の目線が真上に上がる。

アイはその隙を見逃さず、一気に5発の弾丸を撃ち込んだ。最後に残った灰色狼も、何の抵抗も出来ずに消滅していく。

「おキク、やったよ!」

アイが喜びを伝えようと空を見上げたとき、黒い影がおキクを貫いた。

「キャアッ」

「…え?」

空を見上げたまま訳も分からず立ち尽くすアイの真横に、落ちてきたおキクの体が叩きつけられる。

「かはっ!」

おキクの身体は反動で一度跳ね上がり、吐き出すように呻き声をあげた。

おキクはうずくまったまま立ち上がってこない。右の二の腕を押さえる左手の隙間から、赤い血がドクドクと流れ出していた。

「おキク!」

我に返ったアイは、おキクの上半身を抱き起こす。

「大…丈夫、平気。アバターって…案外、頑丈ね」

おキクは笑顔で応えたが、その表情はとても平気には見えなかった。

上空には黒い影が猛スピードで飛び回っている。風切鳥だ。最初にセーレーに情報を貰っていたのに失念していたのだ。

「ダメ!アイツ速すぎて、全然当たんない」

風切鳥に向けてアイは短銃を乱射する。しかし微塵も当たる気配がしなかった。

おキクの身体は落下の衝撃で思うように動かない。このままではいずれ、アイもやられてしまう。おキクは自分を支えるアイの左腕を振り解いた。

「逃げて、アイ!」

「ダメ!そんなの絶対ダメ!」

アイは必死に撃ち続ける。マグレでもいいから当たって!と心底願う。

しかしとうとう、風切鳥がふたり目掛けて急降下を開始した。アイはひたすら弾丸を撃ち続けるが、冷静さを欠いた攻撃が当たる筈もなかった。

無理を悟ったアイは、咄嗟におキクの身を庇う。

その瞬間、突如現れた巨大な影が、風切鳥の攻撃を弾き返した。

アイとおキクは訳も分からず呆然となる。

よく見ると、それはとても大きな盾であった。
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