中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

文字の大きさ
23 / 98
第1章

赤の姫君 3

しおりを挟む
「ご無事ですか?」

自分の身長より大きな盾を構えた少女が振り返る。

ゆるふわな桃色の髪はお尻にまで届いており、毛先を赤いリボンで束ねている。大きな瞳は綺麗な赤色で、先の尖った可愛い耳が桃色の髪の隙間から飛び出ていた。

ノースリーブの革鎧に革のショートパンツ、それから革のショートブーツを身に着けており、クラスの女子の平均身長より少し小さい亜衣よりも、もうひとつ小さな少女であった。

「…誰?」

突然の助っ人に、アイは少しだけ警戒する。

「先程は危ないところを助けていただき、ありがとうございました。私はフランと申します」

フランがふんわりと微笑んだ。

「助けた…?」

「はい。私、荷馬車の中にいてましたので」

「あなただったのね…荷馬車の入り口を守っていたのは」

おキクは苦痛に顔を歪めながら、先程の光景を思い出す。

「ちょ…ちょっと見せてください!」

そのときフランがおキクの負傷に気付き、慌てたように駆け寄った。

「苦手ですが、少し癒しの魔法キュアが使えます。良ければ治療させてください」

「キュア!?」

アイの瞳が期待に輝く。サカシタの言ってた、癒しの魔法だ。

「お願い、おキクを助けて!」

「勿論です、任せてください!」

フランが自分の右手をおキクの傷の上にかざし、目を閉じて「キュア」と唱える。するとフランの右手から小さな魔法陣が広がり、おキクの傷口が優しい光に包まれた。

だんだんとおキクの表情が和らいでいく。それを見て、アイは「ホッ」と一安心した。

「ああ、ごめんなさい!」

しかし突然フランが両手を地面に付き、嘆くようにうな垂れる。

「私、エルフの血が流れてるのに、とても魔法が下手なんです」

フランは心底申し訳なさそうに、何度も何度も頭を下げた。

「今も何とか止血は出来ましたが、傷口の方は全然治らなくて…本当にごめんなさい」

「あ、いや……」

アイは頬を掻いて、返答に困る。

原因はおそらく、自分たちが『アバター』だからだと思うのだが、それをどう説明すればいいのか分からなかった。

   ~~~

「アイ、弾速が必要な相手なら、風のバレットを推奨します」

いきなりセーレーの声が、アイの耳元で響く。

「…風?」

「5秒後、右方向。3、2、1」

「え?え?」

アイは意味も分からずに、言われるがまま右手を右方向に差し向けた。

「今!」

「バーストバレット!」

その瞬間「ゴォッ」と突風が吹き抜けた。風に正対するように魔法陣が描き出され、正四面体が浮かび上がる。

アイは透かさず正四面体を掴み取り、SDカードに変換させた。

「でも、あんな速いヤツにどうやって当てたら…」

SDカードを握る拳を見つめながら、アイは悔しそうに顔を伏せる。

「アイ」

おキクはアイの握った拳にそっと触れた。

「アイなら出来るよ。私には分かる」

「おキク?」

「防御は任せてください。必ずおふたりを守ってみせます」

フランもアイの拳に自分の手を添える。

アイはおキクとフランの顔を交互に見た。ふたりの力強い眼差しには、不安の色は一切ない。

これで応えなきゃ女が廃る。アイは瞳を閉じると、一度大きく深呼吸をした。

それからパッと目を見開くと、アイは風のバレットをグリップエンドに差し込んだ。途端に短銃が、まばゆい光に包まれる。

「任せて!この一撃で決めるから!」

アイは短銃を空に向かって構えると、両手でしっかり握り締めた。そうして風切鳥の素早い動きを、銃口で懸命に追いかけ始める。

時折り風切鳥はアイを目掛けて襲いかかるが、フランが全てを弾き返す。魔物の動きに集中していたアイは、身じろぎひとつしなかった。

フランがアイを信じたように、アイもフランを信じたのだ。今会ったばかりとは思えない、完璧な信頼関係である。

そんな中、アイのなかに何やら不思議な違和感が生まれた。いや…正確には既視感か。

(この動き、私知ってる?)

そばにいない筈の伊緒の声が、横から聞こえてくるような…そんな気がした。

アイは伊緒の言葉をなぞるように、口の中で復唱する。

(ここでこう動いたら、コッチに行く)
「ここでこう動いたら、コッチに行く」

とうとうアイの銃口の狙い先が、風切鳥の動きを先行し始めた。

(こう動いたあと、縦に旋回したら)
「こう動いたあと、縦に旋回したら」

アイは自信満々で、声を大いに張り上げた。

(チャンスだ!)
「チャンスだ!」

透かさずアイが、引金トリガーを引く。

銃口から直径3cm程のエネルギー光線が真っ直ぐ放射され、瞬時に空の彼方に消え去った。

遅れて風切鳥から影が一気に噴き出し、何かに吸い込まれるように消滅していく。

しばらくの沈黙…

続いて3人同時に顔を見合わせた。

「や…やったー!」

それから3人一緒に抱き合うと、声を揃えて大きな歓声をあげた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...