中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

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第2章

星の郷 8

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「セーレー、アイツの様子教えて」

アイが小声で黒帝狼の様子を尋ねた。

「動いていません。こちらの様子を伺っているようです」

(やっぱり!)

セーレーの返答で確信に変わる。しかし、ここはゲームではなく現実世界である。銃口で相手を探っていれば、唐突に動きだすかもしれない。

アイは何も持っていない左手を前に突き出した。

「セーレー、私の目になって!」

「了解しました」

そのままゆっくりと左手を動かしていく。黒帝狼が動いていないなら、おおよその位置は分かる。

「そこです!」

フープのピアスがピクリと震えた。その瞬間、アイは右手の短銃を左手の位置に添え、一気に引金トリガーを引いた。大きな反動が全身を襲う。

セーレー推奨の木のバレットの攻撃力が、黒帝狼を一撃で倒せるかは、残念ながら賭けであった。もし攻撃力が足りなければ、もしくは攻撃が外れれば敗北は必至である。

それでもアイには、撃つ以外の選択肢はなかった。

長い長い1分間が過ぎた。

全員の視力が徐々に回復する。

黒帝狼の姿は、そこに佇んだまま健在であった。

「……え!?」

アイは驚愕した。同時に疑問にも襲われる。

(なんで…襲ってこないの?)

その疑問に答えるように、黒帝狼は膝を折りその場に崩れ落ちた。よく見ると後ろ脚の1本から尾にかけてが、綺麗に消滅している。

「黒帝狼は、アイの攻撃に反応し回避行動をとりましたが、躱しきれませんでした」

セーレーがその時の状況を解説した。

「おキク、トドメ!」

「わ、分かった」

アイに言われるがまま、おキクはスキルで川を飛び越えると、真上から黒帝狼を斬り裂いた。

黒帝狼は巨大な影と化すと、何かに吸い込まれるように渦を巻いて消滅していく。

「…スゴイ」

後方で何も出来ずに、狼狽えていたフランたち3人は、この勝利に只々感心していた。

   ~~~

川沿いを遺跡に向けて進んでいると、前方に白い石造りの神殿跡が目視出来た。しかし喜ぶ間もなくセーレーの警告が入る。

「上空に5体の石撃鴉。気付かれました。森の中に避難してください」

「え…何カラスって?」

アイを含めて全員が空を見上げた。5体の魔物が上空からグングンと近付いてくる。

フランは咄嗟に盾を構えた。

「ディアさんとフォーラさんは後ろに隠れて」

「は、はい」

ふたりはフランの指示に急いで従う。

アイは上空に向けて短銃を乱射するが、距離があるためなかなか当たらない。

5体の石撃鴉はある程度まで接近すると、口から野球ボール程の石飛礫を1発ずつ撃ち出した。

「きゃあ!」

石飛礫はズズンという鈍い衝撃音とともに、地面に着弾する。誰ともなしに悲鳴があがった。

2発はフランの盾で弾いたが、幸い誰にも直撃はなかった。しかし当のフランは、衝撃で腕がジンジンと痺れている。

石飛礫の威力は重力の助けもあり、地面に深くめり込んでいた。全員の顔が、恐怖でゾッとする。当たったときの想像など、怖くてしたくもない。

石撃鴉は石弾を撃ち終えると、再び上空に舞い戻っていった。

その隙に、森の中へと一目散に避難する。

「あんなの、どうやって倒すのよ!まるで空爆じゃないっ!」

おキクがヒステリックに吠えた。

「また、炎のバレットで…」

「炎の弾速では、近付いてこない相手には余裕で躱されてしまいます」

アイの提案を、セーレーが厳しい声で一蹴した。

「ここは水のバレットを推奨します。攻撃力は低いですが、一度に広範囲を攻撃出来ます。倒せずとも撃ち落とすことは可能な筈です」

「水…って」

アイは恐る恐る、川の方に視線を向ける。

「また…あそこに出るの?」

「そうなります」

セーレーは他人事のようにサラリと言い切った。

「アイ、私が必ず守るから心配しないで」

そのときフランが、アイの両手をギュッと握りしめて真っ直ぐに見つめてきた。アイはフランのその顔を見て覚悟を決める。

「よし!フラン、任せたよ!」

「任された!」

二人は笑顔で見つめ合うと、揃って同時に頷いた。
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