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第2章
星の郷 9
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太陽がかなり沈み、辺りが薄暗くなってきた。
「アイ、急いでください。魔物の方が夜目が効くので、暗くなるとこちらが不利です」
「簡単に言うな」
アイは忌々しそうに、ピアスを指でピンと弾いた。
「フラン、お願い!」
「任せて!」
ふたりは視線で合図を交わすと、同時に頷く。
その直後、アイは一気に川辺に飛び出した。その姿を捉えた石撃鴉は編隊を組み直し、アイを目掛けて急降下を始める。
この時アイは空を見上げなかった。フランに任せたからには自分のやるべきことに集中する。その期待に応えるかのように、フランの大盾はアイの真横にピッタリとついて来ていた。
(……?)
奇妙な違和感に、アイは後ろに振り返る。
すると森の端に立つフランの、こちらに向けている右の手のひらに、円形の魔法陣が浮かび上がっていた。
フランはアイと目が合うと、ペロッと舌を出し「テヘッ」と笑う。
「あ、ズルイ!」
しかしそのとき、アイの抗議をかき消すように、石の飛礫が「ガガッ」と降り注いだ。
「きゃあ!」
アイはその場にしゃがみ込む。
物凄い衝撃音とともに、深々と地面が抉れる。アイへの直撃コースにあった2発の石飛礫は、フランの盾がしっかりと弾き返した。
「う…裏切り者ーーっ!」
アイは泣き叫びながら再び走り出すと、川の浅瀬にパシャパシャと踏み込む。それから水面に左手を当てて声を張り上げた。
「バーストバレット!」
声と同時に、左手の下から魔法陣が広がる。そのあとアイは、魔法陣から出現した正四面体を掴み取ると、直ぐさま短銃に装填した。
時を同じくして、アイを狙って別角度から降下してきた石撃鴉が、石の飛礫を撃ち出した。しかしフランの大盾は、しっかりと3発の石弾を弾き飛ばす。外れた残りの石弾は、アイの左右の水面を貫き、轟音とともに凄まじい水飛沫が噴き上がった。
アイは舞い上がった水飛沫を全身に浴びながら、短銃を空に向けて両手で構える。
5体の石撃鴉は上空で旋回し、再度編隊を組み直すと、アイを目掛けて再び急降下を始めた。それから石飛礫を撃ち出すために、石撃鴉が大口を開けた瞬間…アイは一気に引金を引いた。
その瞬間、針のような無数のレーザーが、ワイドシャワーのように空一面に放射された。
5体の石撃鴉は無数のレーザーに貫かれ、体勢を崩して墜落する。しかし川の中で身を起こすと、両翼を大きく開いて再び飛び立とうとした。
「おキク!」
アイが石撃鴉を見据えながら、振り向きもしないで声を張り上げる。
同時にアイの期待に応えるように、おキクが森から飛び出してきた。一瞬で2体を刺し貫く。
アイも近くの相手に弾丸を撃ち込むが、撃破に3発必要とした。
その隙に、おキクが更にもう2体も撃破する。
それを見届けた全員が、「ワッ」と歓声をあげながらアイの元に集まった。アイの周りを取り囲んで、強敵の撃破を喜び合う。
だけどそのときアイだけは…何だか素直に喜べなかった。
~~~
既に陽は沈み、辺りは暗くなっていた。
アイたちが白い石造りの遺跡に辿り着くと、ミーコに先導されてリンとナトリが姿を現す。
「ナートーリーっ!」
その姿を見つけると、ディアが豪炎の炎に包まれ影と化し、目だけが真っ赤に輝いた。
「ちょ、ちょっとタンマ!もうちょっと…」
ナトリが両手を突き出し抵抗する。
その時…小さな光の粒が、二人の間をすぅーっと通り過ぎた。
「あっ!!」
その途端、ナトリが一瞬で破顔する。そして両手を広げてクルリと一回転した。つられて皆んなも周りの景色に目を向ける。
するとそのとき、ちらほらと光の粒が現れ始めたかと思うと、一気に無数の光が舞い上がった。
「こ、これは…」
驚きで、ディアの声が大きく震える。
「間違いない、星子虫だ!こんな所にいたのか」
無数の星子虫は、ゆっくりと明滅を繰り返しながら遺跡いっぱいに飛び廻る。アイですらはしゃぐのを忘れて、この幻想的な光景に見惚れていた。
「どーだ、リン。スゲーだろ?」
ナトリがリンに笑いかける。
「うん、スゲー!」
リンは星に包まれた遺跡の中を、両手を広げて走り回った。
「ナトリ」
ディアがゆっくりと、ナトリに近付いていく。
「あ、母ちゃん。どうだ?」
「ああ、良いものを見せて貰ったよ」
ディアは優しく微笑んだ。
「だがな…ソレはソレ、コレはコレだ!」
次の瞬間、ディアの怒りの鉄拳が、ナトリの脳天を真上から強襲した。
「いってーーーーっ!」
星子虫に負けないくらいの大きな星が、悲鳴とともにナトリの目玉から飛び出していた。
「アイ、急いでください。魔物の方が夜目が効くので、暗くなるとこちらが不利です」
「簡単に言うな」
アイは忌々しそうに、ピアスを指でピンと弾いた。
「フラン、お願い!」
「任せて!」
ふたりは視線で合図を交わすと、同時に頷く。
その直後、アイは一気に川辺に飛び出した。その姿を捉えた石撃鴉は編隊を組み直し、アイを目掛けて急降下を始める。
この時アイは空を見上げなかった。フランに任せたからには自分のやるべきことに集中する。その期待に応えるかのように、フランの大盾はアイの真横にピッタリとついて来ていた。
(……?)
奇妙な違和感に、アイは後ろに振り返る。
すると森の端に立つフランの、こちらに向けている右の手のひらに、円形の魔法陣が浮かび上がっていた。
フランはアイと目が合うと、ペロッと舌を出し「テヘッ」と笑う。
「あ、ズルイ!」
しかしそのとき、アイの抗議をかき消すように、石の飛礫が「ガガッ」と降り注いだ。
「きゃあ!」
アイはその場にしゃがみ込む。
物凄い衝撃音とともに、深々と地面が抉れる。アイへの直撃コースにあった2発の石飛礫は、フランの盾がしっかりと弾き返した。
「う…裏切り者ーーっ!」
アイは泣き叫びながら再び走り出すと、川の浅瀬にパシャパシャと踏み込む。それから水面に左手を当てて声を張り上げた。
「バーストバレット!」
声と同時に、左手の下から魔法陣が広がる。そのあとアイは、魔法陣から出現した正四面体を掴み取ると、直ぐさま短銃に装填した。
時を同じくして、アイを狙って別角度から降下してきた石撃鴉が、石の飛礫を撃ち出した。しかしフランの大盾は、しっかりと3発の石弾を弾き飛ばす。外れた残りの石弾は、アイの左右の水面を貫き、轟音とともに凄まじい水飛沫が噴き上がった。
アイは舞い上がった水飛沫を全身に浴びながら、短銃を空に向けて両手で構える。
5体の石撃鴉は上空で旋回し、再度編隊を組み直すと、アイを目掛けて再び急降下を始めた。それから石飛礫を撃ち出すために、石撃鴉が大口を開けた瞬間…アイは一気に引金を引いた。
その瞬間、針のような無数のレーザーが、ワイドシャワーのように空一面に放射された。
5体の石撃鴉は無数のレーザーに貫かれ、体勢を崩して墜落する。しかし川の中で身を起こすと、両翼を大きく開いて再び飛び立とうとした。
「おキク!」
アイが石撃鴉を見据えながら、振り向きもしないで声を張り上げる。
同時にアイの期待に応えるように、おキクが森から飛び出してきた。一瞬で2体を刺し貫く。
アイも近くの相手に弾丸を撃ち込むが、撃破に3発必要とした。
その隙に、おキクが更にもう2体も撃破する。
それを見届けた全員が、「ワッ」と歓声をあげながらアイの元に集まった。アイの周りを取り囲んで、強敵の撃破を喜び合う。
だけどそのときアイだけは…何だか素直に喜べなかった。
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既に陽は沈み、辺りは暗くなっていた。
アイたちが白い石造りの遺跡に辿り着くと、ミーコに先導されてリンとナトリが姿を現す。
「ナートーリーっ!」
その姿を見つけると、ディアが豪炎の炎に包まれ影と化し、目だけが真っ赤に輝いた。
「ちょ、ちょっとタンマ!もうちょっと…」
ナトリが両手を突き出し抵抗する。
その時…小さな光の粒が、二人の間をすぅーっと通り過ぎた。
「あっ!!」
その途端、ナトリが一瞬で破顔する。そして両手を広げてクルリと一回転した。つられて皆んなも周りの景色に目を向ける。
するとそのとき、ちらほらと光の粒が現れ始めたかと思うと、一気に無数の光が舞い上がった。
「こ、これは…」
驚きで、ディアの声が大きく震える。
「間違いない、星子虫だ!こんな所にいたのか」
無数の星子虫は、ゆっくりと明滅を繰り返しながら遺跡いっぱいに飛び廻る。アイですらはしゃぐのを忘れて、この幻想的な光景に見惚れていた。
「どーだ、リン。スゲーだろ?」
ナトリがリンに笑いかける。
「うん、スゲー!」
リンは星に包まれた遺跡の中を、両手を広げて走り回った。
「ナトリ」
ディアがゆっくりと、ナトリに近付いていく。
「あ、母ちゃん。どうだ?」
「ああ、良いものを見せて貰ったよ」
ディアは優しく微笑んだ。
「だがな…ソレはソレ、コレはコレだ!」
次の瞬間、ディアの怒りの鉄拳が、ナトリの脳天を真上から強襲した。
「いってーーーーっ!」
星子虫に負けないくらいの大きな星が、悲鳴とともにナトリの目玉から飛び出していた。
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