54 / 98
第2章
2日目終了 1
しおりを挟む
タルノ市の宿で一泊した翌朝、アイたちはディアの家に泊まっていたフォーラの元を訪ねた。
「すみません。私たち、今日の夕方までにカタン市に帰らないといけないんです」
今日は4日目である。
おキクは申し訳なさそうに告げた。
「あら、では帰りましょうか」
フォーラは笑って頷いた。
「え、良いんですか?なんでしたら私たちだけで帰りますけど?」
「元々今日帰るつもりでしたから、何の問題もありませんよ」
フォーラは口元に手を添えて「フフ」と笑う。
「すみません。我儘を言ったみたいで」
おキクは申し訳なさそうに頭を下げた。
「おキクさんたちには、本当にお世話になりっぱなしで大変感謝しています。こんな事で気に病まないでください」
「リン、また来いよ」
話を聞いていたナトリが、リンに声をかけた。
「うん、また来る」
「そしたらまたスゲー所に案内してやるからな」
「ホント?やったー!」
ナトリのその言葉に、リンが大喜びで万歳する。
その様子を見ていたディアが、やれやれと天を仰いで溜め息をついた。
~~~
午後に入り、アイたちはカタン市に到着した。
フォーラとリンに別れを告げると、アイたちは冒険者の詰所に向かう。
「あ、皆さーん」
詰所に入るとエリサが手を振って挨拶してきた。
「エリサさん!」
3人はエリサのそばに駆け寄ると、お辞儀をしながら挨拶を返す。
「また魔物、討伐してきたよ!」
アイが「エヘヘ」と頬を赤らめた。
「スゴいですね」
エリサが優しい笑顔で笑って返す。
「確認をお願いします」
フランが代表で、エリサに登録証を差し出した。
「はい、かしこまりました」
エリサは軽くお辞儀をすると、フランの登録証を両手で受け取る。それから端末の差込口に登録証を挿入しようとしたところで、一瞬動きが止まった。
(まさか…ないない!)
エリサは首を横に振りながら自嘲する。
たった2、3日でそう何度も驚かされては、長年詰所で働いてきた自身のプライドに関わる。エリサは一度大きく深呼吸をすると、登録証を挿入した。
PT討伐数
「灰色狼」 7体
「黒帝狼」 1体
「石撃鴉」 5体
「こ、黒帝狼!?」
エリサは思わず、大きな声が出た。
優先討伐に指定される危険度特A級の魔物である。
見つけ次第迅速な討伐が必要になるのだが、とても慎重な性格をしており、発見すること自体が困難なのだ。何処かにひっそりと身を隠し、魔物を呼び出し続ける厄介な存在であった。
「フランさんたちは、昨日は何処にいましたか?」
エリサは直ぐさま仕事モードに突入する。
「…タルノ市です。それからアマタノ森にも行きました」
「あんな所に!」
エリサは関連事項を検索する。確かに灰色狼による被害報告が、タルノ市、ネヤガー市周辺で頻発していた。更に灰色狼による襲撃予報も、この地域に偏っている。
コイツが原因であったのは間違いない。
黒帝狼の存在が確認されれば、軍隊が派遣されるケースが普通である。更には黒帝狼の特殊技対策として、高レベルの防護魔法の使い手の随伴が必須条件となっている。
それでも…人員の被害は覚悟しなければならないのが現状なのだ。本来なら、初心者パーティの冒険者3人でどうにかなる案件ではない。
「こんな魔物に…よく勝てましたね」
エリサの口から、呆れたような声が出た。
「あ、違いますよ!狼の魔物と鴉の魔物は、さすがに別々です!」
おキクが慌てて付け足した。
「確かに今思うと、同時だったら絶対に勝てなかった気がする…」
アイも神妙な顔で頷く。
(そういうレベルの話ではないのよ!)
エリサは喉まで出かかったその言葉を、なんとか寸前で飲み込んだ。それからスンと無表情で、別の言葉を口にする。
「へー、それは大変でしたねー」
そのとき響いた乾いた声は、しかしアイたちには気付かれなかった。
「すみません。私たち、今日の夕方までにカタン市に帰らないといけないんです」
今日は4日目である。
おキクは申し訳なさそうに告げた。
「あら、では帰りましょうか」
フォーラは笑って頷いた。
「え、良いんですか?なんでしたら私たちだけで帰りますけど?」
「元々今日帰るつもりでしたから、何の問題もありませんよ」
フォーラは口元に手を添えて「フフ」と笑う。
「すみません。我儘を言ったみたいで」
おキクは申し訳なさそうに頭を下げた。
「おキクさんたちには、本当にお世話になりっぱなしで大変感謝しています。こんな事で気に病まないでください」
「リン、また来いよ」
話を聞いていたナトリが、リンに声をかけた。
「うん、また来る」
「そしたらまたスゲー所に案内してやるからな」
「ホント?やったー!」
ナトリのその言葉に、リンが大喜びで万歳する。
その様子を見ていたディアが、やれやれと天を仰いで溜め息をついた。
~~~
午後に入り、アイたちはカタン市に到着した。
フォーラとリンに別れを告げると、アイたちは冒険者の詰所に向かう。
「あ、皆さーん」
詰所に入るとエリサが手を振って挨拶してきた。
「エリサさん!」
3人はエリサのそばに駆け寄ると、お辞儀をしながら挨拶を返す。
「また魔物、討伐してきたよ!」
アイが「エヘヘ」と頬を赤らめた。
「スゴいですね」
エリサが優しい笑顔で笑って返す。
「確認をお願いします」
フランが代表で、エリサに登録証を差し出した。
「はい、かしこまりました」
エリサは軽くお辞儀をすると、フランの登録証を両手で受け取る。それから端末の差込口に登録証を挿入しようとしたところで、一瞬動きが止まった。
(まさか…ないない!)
エリサは首を横に振りながら自嘲する。
たった2、3日でそう何度も驚かされては、長年詰所で働いてきた自身のプライドに関わる。エリサは一度大きく深呼吸をすると、登録証を挿入した。
PT討伐数
「灰色狼」 7体
「黒帝狼」 1体
「石撃鴉」 5体
「こ、黒帝狼!?」
エリサは思わず、大きな声が出た。
優先討伐に指定される危険度特A級の魔物である。
見つけ次第迅速な討伐が必要になるのだが、とても慎重な性格をしており、発見すること自体が困難なのだ。何処かにひっそりと身を隠し、魔物を呼び出し続ける厄介な存在であった。
「フランさんたちは、昨日は何処にいましたか?」
エリサは直ぐさま仕事モードに突入する。
「…タルノ市です。それからアマタノ森にも行きました」
「あんな所に!」
エリサは関連事項を検索する。確かに灰色狼による被害報告が、タルノ市、ネヤガー市周辺で頻発していた。更に灰色狼による襲撃予報も、この地域に偏っている。
コイツが原因であったのは間違いない。
黒帝狼の存在が確認されれば、軍隊が派遣されるケースが普通である。更には黒帝狼の特殊技対策として、高レベルの防護魔法の使い手の随伴が必須条件となっている。
それでも…人員の被害は覚悟しなければならないのが現状なのだ。本来なら、初心者パーティの冒険者3人でどうにかなる案件ではない。
「こんな魔物に…よく勝てましたね」
エリサの口から、呆れたような声が出た。
「あ、違いますよ!狼の魔物と鴉の魔物は、さすがに別々です!」
おキクが慌てて付け足した。
「確かに今思うと、同時だったら絶対に勝てなかった気がする…」
アイも神妙な顔で頷く。
(そういうレベルの話ではないのよ!)
エリサは喉まで出かかったその言葉を、なんとか寸前で飲み込んだ。それからスンと無表情で、別の言葉を口にする。
「へー、それは大変でしたねー」
そのとき響いた乾いた声は、しかしアイたちには気付かれなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる