中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

文字の大きさ
61 / 98
第3章

ヨーケバ城跡の悪魔 2

しおりを挟む
アイたちがいつもどおりに冒険者の詰所の玄関をくぐると、エリサがひとりの女性冒険者と会話をしている姿が目に入った。

そこでアイたちは、受付カウンターのそばで大人しく待つことにする。

「頼むよ、エリサさん。心当たりがあったら教えてくれ」

女性冒険者が拝むように「お願い!」と顔の前で手のひらを合わせた。

ボサボサした白い髪のショートヘアに、大きくクリッとした青い瞳。開いた口からのぞく一本の八重歯が印象的である。健康的な褐色の肌にフランと似たようなノースリーブの革鎧と白の半パンを着け、両手には拳を保護する黒い手甲をはめている。アイくらいの身長の、20歳前後の女性であった。

「そう言われましても……ソアラさんはここにはあまり、お顔をお出しにはなりませんので」

エリサが困ったような表情になる。

そのときフランが、会話に出てきたソアラの名に軽い反応を示した。

「おはようございます、エリサさん。何かありましたか?」

挨拶をしながら、フランが一歩進み出る。

「あ、皆さん。おはようございます」

こちらに気付いたエリサが笑顔で挨拶を返した。

「それと…?」

「あ、この方は、S級冒険者『迅雷シィンレイ』のターニャさんです」

フランの視線に気付いたエリサが、女性冒険者を紹介する。

「ターニャだ、よろしくな!」

ターニャが口を大きく開けて「ニカッ」と笑った。白い八重歯が可愛くのぞく。

「え…S級!?」

アイが口をアングリ開けて驚いた。見た目からではとても想像が出来ない。

「あ、今、強そうに見えないとか思ったな」

「いえいえ、そんな!」

おキクが慌てたように、胸の前で両手を振った。

「んで、お前たちは誰だ?」

「この方たちは、C級冒険者のアイさん、おキクさん、フランさんです」

萎縮してしまっているアイたちに代わって、エリサが即座に答える。

「C級…ねぇ」

ターニャは値踏みするように、アイたちをゆっくりと見回した。

「と…ところで、今何の話をされてたんですか?」

フランがこの緊張から解放されるために、なんとか声を絞り出す。

「あー、それがだな」

それを受けて、ターニャは目を閉じて腕を組んだ。

「どっかのバカが黒帝狼を討伐したって噂があってな、それがどうも本当らしいんだ」

「アハハ…凄いですね」

間髪入れずに、エリサが乾いた声で笑う。

「しかもオレが調べた範囲では、どうもS級やA級の冒険者じゃないようなんだ」

ターニャはカッと目を見開くと、左の手のひらに右の拳をパンと打ちつけた。

「S級として、このまま黙って終わらす訳にはいかない!」

   ~~~

時間は少し遡り…

ここはネヤガー市の冒険者の詰所である。

最前線ということもあり、冒険者の数がカタン市の比ではない。ここの詰所はカタン市のような宿泊施設はないが、体育館並みの広さがある。フードコートと言うよりも、食博のような規模であった。

「ソアラじゃねーか、ちょうどよかった」

そのときターニャは、ソアラを見かけると腕を振って大声で呼びかけた。

「あらターニャさん。一体どうしましたの?」

「オレと一緒に、大物狩りに行こーぜ!」

「何を急に…」

そこまで言って、目を細めてターニャを見つめる。

「あの噂…ですね?」

ソアラが察したように「ははーん」と笑った。

「ターニャさんは随分と、負けず嫌いですこと」

「ウルサイ!お前に言われたくないっ!」

ターニャがおツユを飛ばしながら、力一杯に声を張り上げる。

「でも無理ですわ。私には…というより、ここにいる冒険者には…ですけど」

「う…」

「ターニャさんも知ってのとおり、近々軍の大きな作戦がありそうだと情報がありますわ。皆それに参加する為にここにいるのです。おそらく誰も…ターニャさんの誘いには乗らないでしょうね」

そのときソアラが、腰を曲げてターニャの耳元に顔を寄せる。

「どうせカタン市にも寄るのでしょう?もしかしたら、掘り出し物の冒険者に出会えるかもしれませんよ?」

それだけ言うと、ソアラはスッと離れて立ち去っていく。

「どういう意味だ?」

「さあ?」

ソアラは顔だけ振り返ると、愉快そうに微笑んだ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...