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番外編
イバキ市奪還作戦 13
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「でけーな」
アサノは眼前にそびえる、岩石の巨兵を見上げながら呟いた。
「アサノとサカシタでは火力が不足しています。補佐にまわることを推奨します」
セーレーの無慈悲なアドバイスが、ふたりの耳を的確に射抜く。アサノは「ハァ」と溜め息をついた。
「セーレーはいつも、薄々勘付いてることをキチンと明確にしてくれるね」
サカシタは「アハハ」と渋い顔で笑った。
「だが…本当のことだ」
アサノは「ちっ!」と舌打ちをすると、巨兵の頭上からコチラを見下ろすハベードを睨みつける。
「しかも会話出来る程の知能の持ち主となると、幻影の効果も期待出来ない」
「大丈夫、任せて」
そのときサンドラが、胸の前で魔法杖を両手でグッと握りしめた。
「そうですよ!」
続いてシーナがグイッと身を乗り出す。
「アサノさんはいつも、最前線で頑張ってくれてるんですから、こういう時は休んでてください!」
「オマエら…」
「ここは自分たちが引き受けます。魔力練成時の周囲の警戒は、いつも通りにお願いします」
ラントがピシッと敬礼すると、その後「フッ」と微笑んだ。
「あ…ああ」
アサノは、少したじろぎながら頷く。
「仲間に恵まれたよな、俺たち」
サカシタはアサノの背中をポンと叩くと、仲間を見回して微笑んだ。
~~~
「おう、ソアラ!」
ソアラのパーティが駆けてくるのに気付いて、ターニャが腕を振って応えた。
「ターニャさん、これからどうするおつもり?」
「どーもこーも、こんなデカブツ、ホリンに任すしか方法がねーだろっ!」
「…そうですわね」
「え…ボク?」
突然名指しされたホリンが少し嫌そうな顔になる。
「アレ、疲れるんだよね…」
「そんなことを言ってる場合じゃありませんわ!」
ソアラの怒気に気圧され、ホリンがビクッと身を竦ませた。
「ワリーな、ホリン。頼りにしてるぜ」
ターニャがホリンの肩を叩いてウインクする。
ホリンは2人の女性の顔を交互に見ると「ハァ」と深い溜め息をついた。
「分かった…やる。その代わり、後のことはちゃんと責任持ってよ」
~~~
岩石の巨兵は、ただ歩くだけである。
ただそれだけの事で、兵士や冒険者との力の差は歴然であった。
試しに設置したソアラの地雷罠も、少しの範囲を吹き飛ばす程度で、それも直ぐに修復されてしまう。
アサノは生き残っている兵士や冒険者の魔法士を、後退しながら集めて3組に分けた。それから可能な限り間断なく、岩石の巨兵に向けて魔法を唱えるように指示を出した。
「火炎弾」
「氷柱針!」
兵士や冒険者から魔法が発せられ、複数の火炎弾や氷針が岩石の巨兵に降り注ぐ。
「人間ごときが粋がるな」
岩石の巨兵の頭上にいるハベードが、魔法士たちの方へ杖を向けた。それに伴い、撃ちつける魔法を物ともせず、魔法士隊へと巨兵が向きを変えた。
「ラント!」
アサノの声が鋭く響く。
「巨人の鉄槌!」
その瞬間、魔法士たちとハベードの巨兵との間に、巨大な魔法陣が描き出された。そこからみるみる岩石が盛り上がり、5mを超す巨人の上半身が姿を現す。
「小癪な」
ハベードが現れた巨人に杖を向けた。
次の瞬間、お互いの繰り出した右拳が真正面からぶつかり合い、ゴガァーーンと轟音が響き渡る。同時に衝撃波が円環状に広がった。
身長差があるため、打ち下ろし気味のハベードの巨兵の方に軍配が上がる。ラントの魔法は粉々に砕け散ると、綺麗さっぱり雲散した。
しかしその時、ハベードの巨兵の右腕にピシピシと亀裂が入り、バラバラと崩れ落ちていく。
「やるではないか!」
ハベードが心底愉快そうに嗤った。
巨兵の頭部にコツンと杖を打ちつけると、巨兵の右肩に魔法陣が浮かび上がる。すると吸い寄せられるように岩石が集まり、再び右腕を形成し始めた。
「神々の雷槍」
突然、3mを超える雷槍が、ハベードの背後から強襲する。
「ぐっ…」
雷槍の直撃は防護壁で防ぎきったものの、雷撃の一部がハベードに到達しバリバリとその身を焼いた。
巨兵の修復に意識が逸れていたため、ハベードの魔法壁の強度が若干弱まっていたのだ。
ハベードは振り返り、睨み付けるように後方を確認する。しかし何処にも、それらしき相手が見当たらなかった。
「隠密系の魔法か…」
ハベードがボソッと呟く。
シーナの「蜃気楼の城」が充分に効果を発揮していた。
「虫ケラがっ、許さんぞーー!」
ハベードはワナワナと身体を震わせると、感情のままに怒鳴り声をあげた。
アサノは眼前にそびえる、岩石の巨兵を見上げながら呟いた。
「アサノとサカシタでは火力が不足しています。補佐にまわることを推奨します」
セーレーの無慈悲なアドバイスが、ふたりの耳を的確に射抜く。アサノは「ハァ」と溜め息をついた。
「セーレーはいつも、薄々勘付いてることをキチンと明確にしてくれるね」
サカシタは「アハハ」と渋い顔で笑った。
「だが…本当のことだ」
アサノは「ちっ!」と舌打ちをすると、巨兵の頭上からコチラを見下ろすハベードを睨みつける。
「しかも会話出来る程の知能の持ち主となると、幻影の効果も期待出来ない」
「大丈夫、任せて」
そのときサンドラが、胸の前で魔法杖を両手でグッと握りしめた。
「そうですよ!」
続いてシーナがグイッと身を乗り出す。
「アサノさんはいつも、最前線で頑張ってくれてるんですから、こういう時は休んでてください!」
「オマエら…」
「ここは自分たちが引き受けます。魔力練成時の周囲の警戒は、いつも通りにお願いします」
ラントがピシッと敬礼すると、その後「フッ」と微笑んだ。
「あ…ああ」
アサノは、少したじろぎながら頷く。
「仲間に恵まれたよな、俺たち」
サカシタはアサノの背中をポンと叩くと、仲間を見回して微笑んだ。
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「おう、ソアラ!」
ソアラのパーティが駆けてくるのに気付いて、ターニャが腕を振って応えた。
「ターニャさん、これからどうするおつもり?」
「どーもこーも、こんなデカブツ、ホリンに任すしか方法がねーだろっ!」
「…そうですわね」
「え…ボク?」
突然名指しされたホリンが少し嫌そうな顔になる。
「アレ、疲れるんだよね…」
「そんなことを言ってる場合じゃありませんわ!」
ソアラの怒気に気圧され、ホリンがビクッと身を竦ませた。
「ワリーな、ホリン。頼りにしてるぜ」
ターニャがホリンの肩を叩いてウインクする。
ホリンは2人の女性の顔を交互に見ると「ハァ」と深い溜め息をついた。
「分かった…やる。その代わり、後のことはちゃんと責任持ってよ」
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岩石の巨兵は、ただ歩くだけである。
ただそれだけの事で、兵士や冒険者との力の差は歴然であった。
試しに設置したソアラの地雷罠も、少しの範囲を吹き飛ばす程度で、それも直ぐに修復されてしまう。
アサノは生き残っている兵士や冒険者の魔法士を、後退しながら集めて3組に分けた。それから可能な限り間断なく、岩石の巨兵に向けて魔法を唱えるように指示を出した。
「火炎弾」
「氷柱針!」
兵士や冒険者から魔法が発せられ、複数の火炎弾や氷針が岩石の巨兵に降り注ぐ。
「人間ごときが粋がるな」
岩石の巨兵の頭上にいるハベードが、魔法士たちの方へ杖を向けた。それに伴い、撃ちつける魔法を物ともせず、魔法士隊へと巨兵が向きを変えた。
「ラント!」
アサノの声が鋭く響く。
「巨人の鉄槌!」
その瞬間、魔法士たちとハベードの巨兵との間に、巨大な魔法陣が描き出された。そこからみるみる岩石が盛り上がり、5mを超す巨人の上半身が姿を現す。
「小癪な」
ハベードが現れた巨人に杖を向けた。
次の瞬間、お互いの繰り出した右拳が真正面からぶつかり合い、ゴガァーーンと轟音が響き渡る。同時に衝撃波が円環状に広がった。
身長差があるため、打ち下ろし気味のハベードの巨兵の方に軍配が上がる。ラントの魔法は粉々に砕け散ると、綺麗さっぱり雲散した。
しかしその時、ハベードの巨兵の右腕にピシピシと亀裂が入り、バラバラと崩れ落ちていく。
「やるではないか!」
ハベードが心底愉快そうに嗤った。
巨兵の頭部にコツンと杖を打ちつけると、巨兵の右肩に魔法陣が浮かび上がる。すると吸い寄せられるように岩石が集まり、再び右腕を形成し始めた。
「神々の雷槍」
突然、3mを超える雷槍が、ハベードの背後から強襲する。
「ぐっ…」
雷槍の直撃は防護壁で防ぎきったものの、雷撃の一部がハベードに到達しバリバリとその身を焼いた。
巨兵の修復に意識が逸れていたため、ハベードの魔法壁の強度が若干弱まっていたのだ。
ハベードは振り返り、睨み付けるように後方を確認する。しかし何処にも、それらしき相手が見当たらなかった。
「隠密系の魔法か…」
ハベードがボソッと呟く。
シーナの「蜃気楼の城」が充分に効果を発揮していた。
「虫ケラがっ、許さんぞーー!」
ハベードはワナワナと身体を震わせると、感情のままに怒鳴り声をあげた。
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