中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

文字の大きさ
90 / 98
第3章(続き)

斬岩刀を持つ漢 3

しおりを挟む
馬車はウジル川を渡り、クルミ山を目指す。おそらく3時間程で着く距離である。

ターニャの一声で、馬車の手綱はゾンボルが握ることになった。少しでもゾンボルとの距離をとりたかったターニャの本音は、しかしゾンボルには悟られなかった。「自分が任された」という事実だけが、ゾンボルを有頂天にさせたのである。

「ターニャ殿の信頼の厚い某に、任せるでゴザル」

ゾンボルは上機嫌で馬車を進ませた。

「ホント、ウザくてスマン」

ターニャは眉間をつまみながら頭を下げる。

「どういうお知り合いなんですか?」

フランが不思議そうな顔でターニャに目を向けた。

「知り合いではない…と言いたいんだけどな」

ターニャは諦めたように苦笑いする。

「以前に、斬れ味の良い大剣を褒めたことがあるんだ。『岩でも斬れそうだな』てな」

「へー、スゴい剣なんですね」

おキクはチラリと、ゾンボルの背中の大剣に目を向けた。

「いや、実際に斬るとこ見た訳じゃねーよ。魔物を斬った斬り口が鋭かったんで、ちょっと大袈裟に褒めただけなんだ」

ターニャは犯した過ちを恥じるように、両手で顔を覆って深い息を吐く。

「そしたらさ…『やはり見る人が見ると分かってしまうでゴザルな』てな具合でな」

(ああ、なんか想像出来る…)

おキクの表情に、憐みの色が浮かんだ。

「それ以来、アイツは自分の大剣に『斬岩刀』と名付け、オレに付きまとうようになったんだ」

ターニャは力無く空を見上げると「あの日のオレを殴ってやりたいゼ」とボソッと呟いた。

   ~~~

「魔物を検知しました。灰色狼3体です」

おキクの膝の上で丸くなっていたミーコが、ムクリと顔を上げた。

「お出ましか!」

ターニャはキッと進行方向を睨む。

「停めろ、ゾンボル。魔物が来る」

「え、ど…何処からでゴザル?」

ゾンボルは慌てて馬車を停めた。

「前だ!灰色狼が3体だ」

「灰色狼…」

ゾンボルはどこかホッとしたような表情になる。

「ここは、B級の某に任せるでゴザル!」

ゾンボルは馬車から飛び降りると、背中の斬岩刀を抜いた。少し待つと、正面から近付いてくる灰色狼の姿が目視出来るようになる。

ゾンボルはドタドタと駆け出した。

お互いの間合いが一気に詰まると、先頭の灰色狼を一刀の元に両断する。噂の「斬岩刀」は流石の斬れ味であった。

ゾンボルはそのまま残りの2体に目を向けた。灰色狼は喉を鳴らしながらゾンボルを威嚇してくる。暫く睨み合いが続いた。

しかし次の瞬間、突然2体の灰色狼が影と化し、同時に消え去っていく。

「うおおおおーー!」

そのとき後方から、アイの雄叫びが木霊した。

「とうとう、とうとう灰色狼が一撃に!」

アイの振り上げた右手には、短銃が握られている。

「アイ、スゴいじゃない!」

おキクも一緒になって立ち上がると、パチパチと拍手を贈った。

「な、何が起こったでゴザルか?」

ゾンボルは呆気にとられて立ち尽くす。

(こりゃやっぱ反則だな)

ターニャは「ハハ…」と苦笑いを浮かべた。

この威力で連射が可能。そのうえ黒地竜戦で見せたような攻撃もする。コレで遠距離射程だと云うのだから、近付くのがバカらしくなる。

(登録武器は洋弓銃クロスボウらしいが、エリサさんはこのことに気付いているのか?)

ターニャの瞳に警戒の色が宿る。しかし当のアイは無邪気に喜んでいるだけだ。

「ま、コイツらがコイツらで良かったよ」

ターニャは思わず笑みを零す。

これ程得体の知れない相手なのに、全く恐怖を感じない自分自身を、ターニャは不思議と誇らしく思っていた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...