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断章2
84 番外編 4
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「ここがシシーオ領か、王都並みにデカいな」
ショウはシシーオ家の宮殿の応接室の窓から領内の景色を眺めていた。
「シシーオ家はキーリン家に次ぐ名家ですからね。実質軍事力のみなら、こちらの方が上かもしれません」
「例の捕縛劇は、その強力な軍事力を持ってしての結果という訳か」
ショウがアリスの方に視線を向けた。
アリスも後からショウの横に並ぶと、領内を見渡した。柔らかな風が窓から吹き込み、アリスの銀色のボブヘアーを優しく揺らす。右耳にかかった髪をかきあげるアリスの仕草を見て、ショウは思わずドキリとした。
そんなショウの視線に気付くと、アリスは頬を赤らめて俯いた。
「そんなに見られたら、照れてしまいます」
「ああ、悪い」
ショウは無意識にアリスを見つめていたことを知らされ、直ぐさま視線を外した。
「見られたらイヤという意味ではないのですよ。これからココの当主と会うのに、あまり締まりのない顔ではいけませんので…」
「そうだな、気をつけるよ」
ショウは火照った顔を冷ますために、再び視線を窓の外に向けた。
「あの姫騎士がそんな表情をなさるとは、珍しいモノが見れたわい」
いつのまにか、ひとりの男性が部屋に立っていた。
日に焼けた褐色の肌に、焦茶色の頭髪はオールバックに固められている。両方のこめかみからアゴを経由して繋がる茶色のヒゲが、彼のワイルドさを一層醸し出していた。シシーオの軍服である銀ボタンの黒い詰襟を、第二ボタンまで外してラフに着こなす40代の男性である。
シシーオ家の当主「レイナード=シシーオ」その人であった。
~~~
ショウとアリスはレイナードの案内で、地下の収容施設に移動した。ここに、捕らえた「敵性勇者」がいるらしい。
しかし案内された牢獄は、もぬけの殻であった。
「こ、これはまさか、逃げられたのですか?」
アリスは焦って狼狽する。
「またか…」
レイナードがヤレヤレという風に頭を抱える。
「どういうことだ?」
ショウがレイナードに視線を向けた。
「そこに牢内の中心から繋がっている鎖の足枷が見えるだろ?おそらくヤツは、我々の目の前にいる」
レイナードが檻のすぐ下にある足枷を指差した。
「ええ?」
アリスが檻に手を掛け中を確認する。その瞬間、何かに手を撫でられ「ヒッ」と手を引っ込めた。咄嗟に手を確認すると、何やら透明な粘液のようなモノが付着していた。
ま、まさか…唾液?顔面蒼白になり、背中に凄まじい悪寒が走る。
「ふ…ふえーーん」
アリスがヘナヘナとへたり込み、弱々しく泣き始めた。盛大に気が動転しているようだ。
ショウがスマホのマップ機能を確認しながら腰の片手剣を抜いた。確かに目の前に、生命反応がひとつ表示されている。
「確かにいるな。ここか?」
ショウは檻越しに、剣を突き刺す姿勢に入る。完全に目が据わっていた。
ショウはシシーオ家の宮殿の応接室の窓から領内の景色を眺めていた。
「シシーオ家はキーリン家に次ぐ名家ですからね。実質軍事力のみなら、こちらの方が上かもしれません」
「例の捕縛劇は、その強力な軍事力を持ってしての結果という訳か」
ショウがアリスの方に視線を向けた。
アリスも後からショウの横に並ぶと、領内を見渡した。柔らかな風が窓から吹き込み、アリスの銀色のボブヘアーを優しく揺らす。右耳にかかった髪をかきあげるアリスの仕草を見て、ショウは思わずドキリとした。
そんなショウの視線に気付くと、アリスは頬を赤らめて俯いた。
「そんなに見られたら、照れてしまいます」
「ああ、悪い」
ショウは無意識にアリスを見つめていたことを知らされ、直ぐさま視線を外した。
「見られたらイヤという意味ではないのですよ。これからココの当主と会うのに、あまり締まりのない顔ではいけませんので…」
「そうだな、気をつけるよ」
ショウは火照った顔を冷ますために、再び視線を窓の外に向けた。
「あの姫騎士がそんな表情をなさるとは、珍しいモノが見れたわい」
いつのまにか、ひとりの男性が部屋に立っていた。
日に焼けた褐色の肌に、焦茶色の頭髪はオールバックに固められている。両方のこめかみからアゴを経由して繋がる茶色のヒゲが、彼のワイルドさを一層醸し出していた。シシーオの軍服である銀ボタンの黒い詰襟を、第二ボタンまで外してラフに着こなす40代の男性である。
シシーオ家の当主「レイナード=シシーオ」その人であった。
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ショウとアリスはレイナードの案内で、地下の収容施設に移動した。ここに、捕らえた「敵性勇者」がいるらしい。
しかし案内された牢獄は、もぬけの殻であった。
「こ、これはまさか、逃げられたのですか?」
アリスは焦って狼狽する。
「またか…」
レイナードがヤレヤレという風に頭を抱える。
「どういうことだ?」
ショウがレイナードに視線を向けた。
「そこに牢内の中心から繋がっている鎖の足枷が見えるだろ?おそらくヤツは、我々の目の前にいる」
レイナードが檻のすぐ下にある足枷を指差した。
「ええ?」
アリスが檻に手を掛け中を確認する。その瞬間、何かに手を撫でられ「ヒッ」と手を引っ込めた。咄嗟に手を確認すると、何やら透明な粘液のようなモノが付着していた。
ま、まさか…唾液?顔面蒼白になり、背中に凄まじい悪寒が走る。
「ふ…ふえーーん」
アリスがヘナヘナとへたり込み、弱々しく泣き始めた。盛大に気が動転しているようだ。
ショウがスマホのマップ機能を確認しながら腰の片手剣を抜いた。確かに目の前に、生命反応がひとつ表示されている。
「確かにいるな。ここか?」
ショウは檻越しに、剣を突き刺す姿勢に入る。完全に目が据わっていた。
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