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チートでヤクザと交渉する
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翌朝。
思ったよりも早く目が覚めたのでゴミ処理場に向かってみる。
考えてみれば当然だが入り口のゲートが閉まっていたので、スラムを散歩してみる。
こちらの鶏も地球と性質が似ているのか、朝にコケコケ鳴き始めていた。
何故太陽が無いのに朝が来るのだろう?
月の岩盤は程よく薄くて太陽光が透けるのだろうか?
いや、あまりに薄すぎると地球側から観測されてしまうからな…
何か異星の技術が使われているのだろうか?
そんな事を考えながら、俺はブラブラと鶏の鳴き声の多い方に歩いていき、養鶏場の密集地帯を発見する。
その奥からは強烈な皮革の臭いが漂っており、如何にも赤スライムが好きそうな環境だった。
あ、そうだ。
窯元も城外にあるんだったか…
この近くかな?
そんな事を考えながらフラフラと宿に戻ると、ゲイリー夫妻が軒下で七輪っぽい器具を使って朝食を食べている場面と遭遇した。
目が合ってしまったので挨拶すると、目が合ってしまったからなのだろう、夫妻が朝食に招待してくれる。
朝食はホーンラビットのハーブオイル漬けと葛茶、そして今乱獲されてるガーリックスパイダーのハラワタ焼き(と言ってもハラワタしか可食部がないのだが)である。
散歩で腹が減っていたので、遠慮せずに貪る。
俺が肉を頬張っているとゲイリー夫人が、お父様(複数の養鶏場を企業舎弟に経営させているヤクザ)を紹介出来る事になった、と教えてくれる。
午前にはここに遊びに来るらしいので、ゲイリー親方の勧めで、この家で待たせて貰うことにする。
親方はゲートだけ開けに行った。
「主人が驚いていました。」
『すみません…
勝手な事ばかりしてしまって…』
「こんな地区に興味を持つ方はおられませんでしたから。」
『あ、不快に思われたならお詫びします。』
「いえ、どう反応していいのかわからないだけです。
この地区は… 狭く噂が回るのが早いので…
スライムの話も皆の話題になっております。
父の使いの者も口にしておりました。」
『すみません。
目立ち過ぎましたか…』
「個人的には素晴らしい施しを受けたと感謝しているのですが…
この地区は城壁の中ほど人間が賢く出来ておりません。
用心しておいて下さい。
父には私からも頼んでおりますが…」
うん、その原理も知ってる。
街の民度が下がれば下がるほど、目立っている人間への当たりがキツくなるのも、よく知っている。
だって地球でもそうだったから。
そうこうしているうちに、初老の男がノックと同時に入室してくる。
一目で「若い頃ヤクザでした!」と判別可能な風貌である。
少なくとも絶対に堅気の人生を歩んでこなかった事は理解出来る。
「お父さん、チートさんよ。」
『初めまして。 伊勢海地人と申します!』
俺は椅子から立ち上がって頭を下げる。
地雷を踏みたくないのでスキルも発動しておく。
「どうも。
娘夫婦が世話になっとるようだね。
ヘレンの父、ヘルマンです。
養鶏場の見学… を希望してるんだったね?」
【コイツが噂のチート・イセカイか…
そんなに賢そうには見えないが…
しかし学者としても商人としても実績はあるようだからな。】
『はい、差し支えなければなのですが。』
「ああ、ワシは構わんよ。
じゃあ、少し歩くけどワシの鶏舎まで一緒に来るかね?」
【柵門の消毒液…
アレの設置のために奔走したのがこの男だと聞いたが…
次は《鶏の感染症を防ぎたい》と吹聴しているそうな。
恐らく何らかの対策は持って来ているのだろうが…
目的は何だ?
ビジネス? ヤクザ人脈作り?
職工ギルド長交代に絡んだ話なのか?】
ヘルマン組長と雑談をしながら30分ほど歩く。
【心を読んで】いて幾つかの情報が飛び込んで来たので、脳内を整理する。
-----------------------------------------------------------
・冒険者とヤクザは同クラスタながら立場的に対立する存在
・冒険者には賞金稼ぎとしての側面もあり、ヤクザをしょっちゅう捕殺している。
・ドレークギルド長は元々は名の通ったヤクザ
・業界を裏切ったドレークはヤクザに憎まれている
・前線都市の人口は公称5万だが、更に1万人前後が城壁の周辺に棲み着いている。
・女は売春婦にするよりも低賃金工員(風車小屋など)にした方が売買しやすい。
・前線都市はヤクザ的に旨味が少ないが、官憲が殆どいないので潜伏向き。
・スラムでは疫病関係なく餓死者が恒常的に発生している。
・疫病流行時にスラムで死者が多いのは、レイオフによる失業による栄養失調が主な原因
-----------------------------------------------------------
へえ。
やっぱりドレークギルド長は裏社会出身なんだな。
(本人の【心を読んで】知ってたけど、改めて聞かされると、ね。)
なーにが「若い頃はちょっとだけヤンチャしてた。」だよ。
『養鶏場、結構大きいですね。』
「そう?
この辺は小規模鶏舎だけど。
運河都市には大型鶏舎ビルが何棟も建ってるよ。」
【ヤクザ的には零細鶏舎を複数保有して
作業員から搾取するのが一番コスパいいんだけどね。】
『はええ。
ビルですかぁ…』
グランバルドって結構文明進んでるよな。
やっぱり部分的には地球よりも先進的なんじゃないかな。
何故か我が事の様に誇らしい気分になる。
「チート君。
中に入るかい?」
【卵でも御馳走してお茶を濁したいところだけど
どうせややこしい話になるんだろうな。】
『ヘルマンさん。
鶏の餌って普段どこに並べてますか?』
「餌?
いや、普通にトレーに貯めてるけど…」
【だよな?
ワシも実務に携わっている訳じゃないからよく知らんけど。】
案の定、半分野ざらしの餌用トレーが鶏舎の隣に並んでる。
『ヘルマンさん。
結論から申し上げますと、このトレーが疫病の原因なんです。』
「え、そうなんだ?」
【マジで?】
『新ダンジョンが発見されると、戦利品やブーツの泥と共に未知のウイルスが街の入り口まで持ち込まれます。
今回のダンジョンの方角ですと、柵門の辺りですね。
このウイルスに感染した野鳥やネズミが鶏舎の鶏に移すんです。
これが鶏が流行病に罹患して全滅する理由です。』
「へ、へぇ~。」
【あれ? コイツ学者?】
丁度、地球ではコ□ナ流行ってるからな。
俺達は感染症にかなり詳しくなった。
(父に至っては無駄に論文とか読み漁っていた。)
流石に数か月も経ったんだからもう収束してるだろうが。
「そういう知識って学校で習うの?」
【ワシ… この業界長いけど… そういう話初耳だぞ?
いや都会の業者はみんな知ってるんだろうか?】
流石にコ□ナの話をしても仕方ないか…
『あ、いえ。
私が尊敬する歴史上の武将がそのような兵法書を書き残しているんです。』
「え! 誰!?」
【ワシ、武将トーク大好き!】
『ロブスキー将軍です。
籠城した時の経験を書き残されておりまして。』
「おお! 仁将ロブスキー!
夏冬戦国の頃の人物じゃなーいww
キミ、若いのに渋い趣味しとるねー。」
【おお!
こういう話出来る奴ってスラムには居ないからなぁ
へえ、この子いい趣味しとるじゃなーい。】
『最近、その籠城書を入手しまして。
ずっと読み漁ってたんですよ。』
「うお! マジ!?
そんな本が存在するの?」
【うひょおおおwwww】
『皇帝時代に入ってから御子孫の方が出版されたものですが。
あ、良ければ見ますか?
北区の自宅に保管しているのですが、今度お近くまで来られた時にでも。』
「え!? うひょっ。
あ、それじゃあ! 是非今度拝見させてよ!」
【おおお!
それって結構貴重なんじゃないのか?
皇帝時代の刊行って何千年前の話なんだよ…
いや、マジで見てみたい。】
結局、鶏舎の話はうやむやになってヘルマン組長と歴史トークに花を咲かせてしまう。
二人で城壁を触りながら、夏冬戦国時代の攻城兵器に思いを寄せ、組長秘蔵の仕込み槍コレクションを見せて貰い、籠城用兵糧談義に花が咲く。
『あ!
ヘルマンさん思い出しました!
角を落としたホーンラビットって用意出来ませんか?』
「ホンラビなんて幾らでも堀に落ちてるよ。」
【この若者は話が合って可愛いのお。
まるで孫のように見えて来たわ。】
『堀、ああ木柵の外側に掘られている溝ですね!』
「あれ、落とし穴も兼ねとるのよ。
毎朝ホンラビが掛かっとるんだ。
元気の良い奴だと堀を越えて柵に刺さってる奴すらおるからね。」
【堀と柵が無かったら、今頃みんな刺殺されとるからな。】
『角を落として色を塗ったホーンラビットを鶏舎の周りやゴミ処理場のストックヤードで放し飼いにしてネズミを狩らせるんです。
ロブスキー将軍はそうやって籠城中の疫病発生を防いだそうです。』
「おおお!
流石名将だ!
そういう地味なトコでも手を抜かなかったから、唯一悪王の侵略を防げたんだろうなあ。」
【おお!
今日は思わず歴史トーク出来て嬉しい!
しかもワシの好きなロブスキー!!
早速、鶏舎にも反映させるぞ!
これでワシもちょっぴり名将気分!!】
ちなみに色を塗るのは、殺鼠用家畜である事を視認し易いようにだ。
名将ロブスキーは真っ赤に塗った角無しホーンラビットを駆使して、入念にネズミ退治を行った。
その功あってか、彼は生涯通算で10年以上の籠城戦を戦いながらも一度も疫病の被害を受けなかった。
(当時の時代背景を考えれば驚異的なパフォーマンスである。)
ヘルマン組の若い衆(見た感じラルフ君くらいの年代だ)が大量のホーンラビットを捕まえて来てくれたので、処理場の露天空きヤードを借りて角を落とす。
死んで間もない個体が4匹居たので、ついでに解体する。
「チート君、いい手際しとるねえ。」
【猟師かな?】
『一応、解体屋の小僧ですからw』
「それにしてもいい手際だよ。
うおっ!?
美品!?」
【うおっ!
コイツいきなり美品魔石出しおった!】
『いえ、これはキズ物ですね。
ほら、尖ってる方の先っぽ。
白い線が入ってるじゃないですか?
この状態だと、3日もしないうちに駄目になってポーションとかの素材に使えなくなっちゃうんですよ。』
「へ、へえ。
ワシも若い頃、自分で解体やってみたけど
全部砕けちゃったけどねえ。」
【ほーん。
この子見直したわ。
歴史詳しいし、解体も出来るし
顔の割に有能じゃない!】
『ヘルマンさん。
こっちが美品です。』
「おおおお!
え? 美品ってそんなにあっさり出るものなの?」
【結構いい小遣いになるって聞いたぞ。】
『どうぞ。
最低でも一年は保存効きますんで、こっちの皮に包んで直射日光を避けて保存して下さい。』
「いや!
悪いよ!
キミの出した美品だし!」
【え?
何でくれるの?】
『ヘルマンさん達の獲物じゃないですか。
今日の案内料代わりには安すぎますが、受け取って下さい。
あ、肉はどうします?
食べますか?
わかりました。
じゃあバラしておきますね。
塩があったら塩漬けにしますけど。』
「おう、塩壺持ってこい。
チート君、漬物も出来るの?」
【コイツ万能やな。】
『あ、いえ。
工房に乾燥屋出身者が居りまして
最近は肉の加工が主業務になりつつあるんです。』
「ほえー。」
【やっぱり男は手に職持ってナンボだな。】
俺がホーンラビットの処理をしていると、すぐにさっきの若い組員が戻って来る。
粗雑だが丈夫そうな壺を両脇に抱えていた。
『早いですね!?』
「裏の焼き場で肉を焼く時にさぁ。
壺も焼かせてるんだよ。」
【だからすぐに壊れる
なんちゃって壺しか出来ないんだがな。】
『そんな焼肉の延長みたいに壺って作れるものなのですか?』
「ほら。
最近、窯元が全部潰れただろ?
そこで勤めてた奴らの面倒みてやってるんだよ。
代わりに雑用とかやらせてる。」
【この街もマジでオワコンだよな。
どんどん産業が潰れて行く。】
『ヘルマンさん。
物は相談なのですが。』
そこからは話が早かった。
日が暮れる前に失業した陶工を紹介して貰う。
そして窯元を始めとした諸産業を復活させる計画を打ち明ける。
『紹介料は伊勢海地人が個人的に支払うが、恒常的には支払えない』
とミカジメ料を払いたくない意思を婉曲に伝える。
ヘルマン組長も本職なので
「ミカジメ料の代替として何か恒常的な利権を貰えないか」
と食い下がって来る。
そこからは二人で肉をつつきながら、淡々と交渉。
敢えてスキルは絞り、意図的に心を読まない様に話を進める。
組長が既に肚を割っているからだ。
『鶏舎で使用する陶器があれば安価に作るという案は如何か?』
「不要。 トレー改善以外に費用を掛ける予定はない。」
『他の業種で陶器を使用する機会はないか?』
「ない。 傘下の食堂で使用しているが木製食器で間に合っている。」
『陶工が軌道に載れば街全体が潤い、回り回ってヘルマン組長の利益になるのではないか?』
「一理あるも、自分にそこまでの寿命は残されてない。」
『名誉は? 職工ギルドから顕彰、社会的地位の向上に直結するのではないか?』
ここで初めてヘルマンの反論が止まる。
「娘夫婦を城内に住ませてやりたいとは常々思っている。」
俺達の交渉はそこで完了した。
ヘルマン組長は陶工を集め、窯元を復活させる為に動く。
俺はゲイリー夫妻の居住権獲得(親が指定暴力団組長なのでちゃんとした物件には正式な賃貸契約が出来ない)の為に工作する。
具体的にはゲイリーに下級市民権を獲得させれば目標達成。
後は、お互いに取引を完遂させる事に集中する。
「チート君、ホンラビ早速ネズミを咥えとったなw」
『アイツら角が無くなると弱気になって、小さな獲物しか獲らなくなるんですよ。』
「はははw ヤクザもそうだよww」
『はははw』
「鶏舎を経営している人間はみんな内輪だから、ワシからトレー改善お願い(命令)しとくわ。」
『ヘルマンさんが北区に来られたら古文書を披露させて下さいよ。』
「ワシ、ドレークから目の敵にされとるからww
あの辺行ったらマジで殺されるww」
『すみませんw
じゃあ、持って来させて下さい。
ゲイリーさんの家でみんなで読みましょう。』
「文化財をゴミ屋に持ってくるなよww
それ絶対何かの法律に違反してるぞww」
その日はゲイリー親方の家で遅めの晩飯を御馳走になって帰って寝た。
思ったよりも早く目が覚めたのでゴミ処理場に向かってみる。
考えてみれば当然だが入り口のゲートが閉まっていたので、スラムを散歩してみる。
こちらの鶏も地球と性質が似ているのか、朝にコケコケ鳴き始めていた。
何故太陽が無いのに朝が来るのだろう?
月の岩盤は程よく薄くて太陽光が透けるのだろうか?
いや、あまりに薄すぎると地球側から観測されてしまうからな…
何か異星の技術が使われているのだろうか?
そんな事を考えながら、俺はブラブラと鶏の鳴き声の多い方に歩いていき、養鶏場の密集地帯を発見する。
その奥からは強烈な皮革の臭いが漂っており、如何にも赤スライムが好きそうな環境だった。
あ、そうだ。
窯元も城外にあるんだったか…
この近くかな?
そんな事を考えながらフラフラと宿に戻ると、ゲイリー夫妻が軒下で七輪っぽい器具を使って朝食を食べている場面と遭遇した。
目が合ってしまったので挨拶すると、目が合ってしまったからなのだろう、夫妻が朝食に招待してくれる。
朝食はホーンラビットのハーブオイル漬けと葛茶、そして今乱獲されてるガーリックスパイダーのハラワタ焼き(と言ってもハラワタしか可食部がないのだが)である。
散歩で腹が減っていたので、遠慮せずに貪る。
俺が肉を頬張っているとゲイリー夫人が、お父様(複数の養鶏場を企業舎弟に経営させているヤクザ)を紹介出来る事になった、と教えてくれる。
午前にはここに遊びに来るらしいので、ゲイリー親方の勧めで、この家で待たせて貰うことにする。
親方はゲートだけ開けに行った。
「主人が驚いていました。」
『すみません…
勝手な事ばかりしてしまって…』
「こんな地区に興味を持つ方はおられませんでしたから。」
『あ、不快に思われたならお詫びします。』
「いえ、どう反応していいのかわからないだけです。
この地区は… 狭く噂が回るのが早いので…
スライムの話も皆の話題になっております。
父の使いの者も口にしておりました。」
『すみません。
目立ち過ぎましたか…』
「個人的には素晴らしい施しを受けたと感謝しているのですが…
この地区は城壁の中ほど人間が賢く出来ておりません。
用心しておいて下さい。
父には私からも頼んでおりますが…」
うん、その原理も知ってる。
街の民度が下がれば下がるほど、目立っている人間への当たりがキツくなるのも、よく知っている。
だって地球でもそうだったから。
そうこうしているうちに、初老の男がノックと同時に入室してくる。
一目で「若い頃ヤクザでした!」と判別可能な風貌である。
少なくとも絶対に堅気の人生を歩んでこなかった事は理解出来る。
「お父さん、チートさんよ。」
『初めまして。 伊勢海地人と申します!』
俺は椅子から立ち上がって頭を下げる。
地雷を踏みたくないのでスキルも発動しておく。
「どうも。
娘夫婦が世話になっとるようだね。
ヘレンの父、ヘルマンです。
養鶏場の見学… を希望してるんだったね?」
【コイツが噂のチート・イセカイか…
そんなに賢そうには見えないが…
しかし学者としても商人としても実績はあるようだからな。】
『はい、差し支えなければなのですが。』
「ああ、ワシは構わんよ。
じゃあ、少し歩くけどワシの鶏舎まで一緒に来るかね?」
【柵門の消毒液…
アレの設置のために奔走したのがこの男だと聞いたが…
次は《鶏の感染症を防ぎたい》と吹聴しているそうな。
恐らく何らかの対策は持って来ているのだろうが…
目的は何だ?
ビジネス? ヤクザ人脈作り?
職工ギルド長交代に絡んだ話なのか?】
ヘルマン組長と雑談をしながら30分ほど歩く。
【心を読んで】いて幾つかの情報が飛び込んで来たので、脳内を整理する。
-----------------------------------------------------------
・冒険者とヤクザは同クラスタながら立場的に対立する存在
・冒険者には賞金稼ぎとしての側面もあり、ヤクザをしょっちゅう捕殺している。
・ドレークギルド長は元々は名の通ったヤクザ
・業界を裏切ったドレークはヤクザに憎まれている
・前線都市の人口は公称5万だが、更に1万人前後が城壁の周辺に棲み着いている。
・女は売春婦にするよりも低賃金工員(風車小屋など)にした方が売買しやすい。
・前線都市はヤクザ的に旨味が少ないが、官憲が殆どいないので潜伏向き。
・スラムでは疫病関係なく餓死者が恒常的に発生している。
・疫病流行時にスラムで死者が多いのは、レイオフによる失業による栄養失調が主な原因
-----------------------------------------------------------
へえ。
やっぱりドレークギルド長は裏社会出身なんだな。
(本人の【心を読んで】知ってたけど、改めて聞かされると、ね。)
なーにが「若い頃はちょっとだけヤンチャしてた。」だよ。
『養鶏場、結構大きいですね。』
「そう?
この辺は小規模鶏舎だけど。
運河都市には大型鶏舎ビルが何棟も建ってるよ。」
【ヤクザ的には零細鶏舎を複数保有して
作業員から搾取するのが一番コスパいいんだけどね。】
『はええ。
ビルですかぁ…』
グランバルドって結構文明進んでるよな。
やっぱり部分的には地球よりも先進的なんじゃないかな。
何故か我が事の様に誇らしい気分になる。
「チート君。
中に入るかい?」
【卵でも御馳走してお茶を濁したいところだけど
どうせややこしい話になるんだろうな。】
『ヘルマンさん。
鶏の餌って普段どこに並べてますか?』
「餌?
いや、普通にトレーに貯めてるけど…」
【だよな?
ワシも実務に携わっている訳じゃないからよく知らんけど。】
案の定、半分野ざらしの餌用トレーが鶏舎の隣に並んでる。
『ヘルマンさん。
結論から申し上げますと、このトレーが疫病の原因なんです。』
「え、そうなんだ?」
【マジで?】
『新ダンジョンが発見されると、戦利品やブーツの泥と共に未知のウイルスが街の入り口まで持ち込まれます。
今回のダンジョンの方角ですと、柵門の辺りですね。
このウイルスに感染した野鳥やネズミが鶏舎の鶏に移すんです。
これが鶏が流行病に罹患して全滅する理由です。』
「へ、へぇ~。」
【あれ? コイツ学者?】
丁度、地球ではコ□ナ流行ってるからな。
俺達は感染症にかなり詳しくなった。
(父に至っては無駄に論文とか読み漁っていた。)
流石に数か月も経ったんだからもう収束してるだろうが。
「そういう知識って学校で習うの?」
【ワシ… この業界長いけど… そういう話初耳だぞ?
いや都会の業者はみんな知ってるんだろうか?】
流石にコ□ナの話をしても仕方ないか…
『あ、いえ。
私が尊敬する歴史上の武将がそのような兵法書を書き残しているんです。』
「え! 誰!?」
【ワシ、武将トーク大好き!】
『ロブスキー将軍です。
籠城した時の経験を書き残されておりまして。』
「おお! 仁将ロブスキー!
夏冬戦国の頃の人物じゃなーいww
キミ、若いのに渋い趣味しとるねー。」
【おお!
こういう話出来る奴ってスラムには居ないからなぁ
へえ、この子いい趣味しとるじゃなーい。】
『最近、その籠城書を入手しまして。
ずっと読み漁ってたんですよ。』
「うお! マジ!?
そんな本が存在するの?」
【うひょおおおwwww】
『皇帝時代に入ってから御子孫の方が出版されたものですが。
あ、良ければ見ますか?
北区の自宅に保管しているのですが、今度お近くまで来られた時にでも。』
「え!? うひょっ。
あ、それじゃあ! 是非今度拝見させてよ!」
【おおお!
それって結構貴重なんじゃないのか?
皇帝時代の刊行って何千年前の話なんだよ…
いや、マジで見てみたい。】
結局、鶏舎の話はうやむやになってヘルマン組長と歴史トークに花を咲かせてしまう。
二人で城壁を触りながら、夏冬戦国時代の攻城兵器に思いを寄せ、組長秘蔵の仕込み槍コレクションを見せて貰い、籠城用兵糧談義に花が咲く。
『あ!
ヘルマンさん思い出しました!
角を落としたホーンラビットって用意出来ませんか?』
「ホンラビなんて幾らでも堀に落ちてるよ。」
【この若者は話が合って可愛いのお。
まるで孫のように見えて来たわ。】
『堀、ああ木柵の外側に掘られている溝ですね!』
「あれ、落とし穴も兼ねとるのよ。
毎朝ホンラビが掛かっとるんだ。
元気の良い奴だと堀を越えて柵に刺さってる奴すらおるからね。」
【堀と柵が無かったら、今頃みんな刺殺されとるからな。】
『角を落として色を塗ったホーンラビットを鶏舎の周りやゴミ処理場のストックヤードで放し飼いにしてネズミを狩らせるんです。
ロブスキー将軍はそうやって籠城中の疫病発生を防いだそうです。』
「おおお!
流石名将だ!
そういう地味なトコでも手を抜かなかったから、唯一悪王の侵略を防げたんだろうなあ。」
【おお!
今日は思わず歴史トーク出来て嬉しい!
しかもワシの好きなロブスキー!!
早速、鶏舎にも反映させるぞ!
これでワシもちょっぴり名将気分!!】
ちなみに色を塗るのは、殺鼠用家畜である事を視認し易いようにだ。
名将ロブスキーは真っ赤に塗った角無しホーンラビットを駆使して、入念にネズミ退治を行った。
その功あってか、彼は生涯通算で10年以上の籠城戦を戦いながらも一度も疫病の被害を受けなかった。
(当時の時代背景を考えれば驚異的なパフォーマンスである。)
ヘルマン組の若い衆(見た感じラルフ君くらいの年代だ)が大量のホーンラビットを捕まえて来てくれたので、処理場の露天空きヤードを借りて角を落とす。
死んで間もない個体が4匹居たので、ついでに解体する。
「チート君、いい手際しとるねえ。」
【猟師かな?】
『一応、解体屋の小僧ですからw』
「それにしてもいい手際だよ。
うおっ!?
美品!?」
【うおっ!
コイツいきなり美品魔石出しおった!】
『いえ、これはキズ物ですね。
ほら、尖ってる方の先っぽ。
白い線が入ってるじゃないですか?
この状態だと、3日もしないうちに駄目になってポーションとかの素材に使えなくなっちゃうんですよ。』
「へ、へえ。
ワシも若い頃、自分で解体やってみたけど
全部砕けちゃったけどねえ。」
【ほーん。
この子見直したわ。
歴史詳しいし、解体も出来るし
顔の割に有能じゃない!】
『ヘルマンさん。
こっちが美品です。』
「おおおお!
え? 美品ってそんなにあっさり出るものなの?」
【結構いい小遣いになるって聞いたぞ。】
『どうぞ。
最低でも一年は保存効きますんで、こっちの皮に包んで直射日光を避けて保存して下さい。』
「いや!
悪いよ!
キミの出した美品だし!」
【え?
何でくれるの?】
『ヘルマンさん達の獲物じゃないですか。
今日の案内料代わりには安すぎますが、受け取って下さい。
あ、肉はどうします?
食べますか?
わかりました。
じゃあバラしておきますね。
塩があったら塩漬けにしますけど。』
「おう、塩壺持ってこい。
チート君、漬物も出来るの?」
【コイツ万能やな。】
『あ、いえ。
工房に乾燥屋出身者が居りまして
最近は肉の加工が主業務になりつつあるんです。』
「ほえー。」
【やっぱり男は手に職持ってナンボだな。】
俺がホーンラビットの処理をしていると、すぐにさっきの若い組員が戻って来る。
粗雑だが丈夫そうな壺を両脇に抱えていた。
『早いですね!?』
「裏の焼き場で肉を焼く時にさぁ。
壺も焼かせてるんだよ。」
【だからすぐに壊れる
なんちゃって壺しか出来ないんだがな。】
『そんな焼肉の延長みたいに壺って作れるものなのですか?』
「ほら。
最近、窯元が全部潰れただろ?
そこで勤めてた奴らの面倒みてやってるんだよ。
代わりに雑用とかやらせてる。」
【この街もマジでオワコンだよな。
どんどん産業が潰れて行く。】
『ヘルマンさん。
物は相談なのですが。』
そこからは話が早かった。
日が暮れる前に失業した陶工を紹介して貰う。
そして窯元を始めとした諸産業を復活させる計画を打ち明ける。
『紹介料は伊勢海地人が個人的に支払うが、恒常的には支払えない』
とミカジメ料を払いたくない意思を婉曲に伝える。
ヘルマン組長も本職なので
「ミカジメ料の代替として何か恒常的な利権を貰えないか」
と食い下がって来る。
そこからは二人で肉をつつきながら、淡々と交渉。
敢えてスキルは絞り、意図的に心を読まない様に話を進める。
組長が既に肚を割っているからだ。
『鶏舎で使用する陶器があれば安価に作るという案は如何か?』
「不要。 トレー改善以外に費用を掛ける予定はない。」
『他の業種で陶器を使用する機会はないか?』
「ない。 傘下の食堂で使用しているが木製食器で間に合っている。」
『陶工が軌道に載れば街全体が潤い、回り回ってヘルマン組長の利益になるのではないか?』
「一理あるも、自分にそこまでの寿命は残されてない。」
『名誉は? 職工ギルドから顕彰、社会的地位の向上に直結するのではないか?』
ここで初めてヘルマンの反論が止まる。
「娘夫婦を城内に住ませてやりたいとは常々思っている。」
俺達の交渉はそこで完了した。
ヘルマン組長は陶工を集め、窯元を復活させる為に動く。
俺はゲイリー夫妻の居住権獲得(親が指定暴力団組長なのでちゃんとした物件には正式な賃貸契約が出来ない)の為に工作する。
具体的にはゲイリーに下級市民権を獲得させれば目標達成。
後は、お互いに取引を完遂させる事に集中する。
「チート君、ホンラビ早速ネズミを咥えとったなw」
『アイツら角が無くなると弱気になって、小さな獲物しか獲らなくなるんですよ。』
「はははw ヤクザもそうだよww」
『はははw』
「鶏舎を経営している人間はみんな内輪だから、ワシからトレー改善お願い(命令)しとくわ。」
『ヘルマンさんが北区に来られたら古文書を披露させて下さいよ。』
「ワシ、ドレークから目の敵にされとるからww
あの辺行ったらマジで殺されるww」
『すみませんw
じゃあ、持って来させて下さい。
ゲイリーさんの家でみんなで読みましょう。』
「文化財をゴミ屋に持ってくるなよww
それ絶対何かの法律に違反してるぞww」
その日はゲイリー親方の家で遅めの晩飯を御馳走になって帰って寝た。
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枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
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【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
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☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
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