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チートで優先順位を決める。

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レザノフ卿から聞いた、市長の権限は以下の通り。


・布告権 (都市内の掲示板にまつわる一切の権利)
・配給権 (公用物資を自由に分配できる)
・大規模事業の許認可権
・農地売買の許認可権
・討伐推奨モンスターの指定権
・交付金/補助金の分配権
・中央政府への請願権
・緊急警察権
・交戦時の徴兵/処罰権


『ふーん。
詳細は分かりませんが、結構権限大きくないですか?』


「大きいですよ。
普通なら伯爵クラス以上に与えられる権限ですからね。
この前線都市に関しては、市民議会。
つまりはモリソン・バンガロス・ロドリゴの3氏が調整しておりました。
若い頃は刃傷沙汰に発展するレベルで皆さん好き勝手やられてたみたいですが…
喜寿を越えたあたりから急におとなしくなったらしいですね。」


『私は…
市長として何をすればいいんですか?』


「チートさんは…
やりたいこと決まっている人ですよね?」


『私は… 俺は…』



標準座標≪√47WS≫に一泡吹かせてやりたいな。
そういう困難で大きな目標があるから、異世界生活に張りが出ている。



「…念を押しておきますが。
リザードへの接触は禁忌ですよ。
勝手に交戦を試みて処刑された前例もあります。」


『…リザードとの偶発戦闘は避ける方向で持って行きます。』


「賢明な心掛けです。」


『偶発戦闘を避ける為の工夫をしたいので手伝って頂くことは…』


「NO」


『色々と御指導頂くことは…』


「私の権限と倫理の許す範囲でなら。」


『感謝します。』


「ではチート市長、最初の仕事をお願いします。」


『最初の仕事?』


「討伐推奨モンスターを指定して下さい。
毎月一種ずつ指定する規則ですので。
ちなみに今月の推奨モンスターはポイズントードです。
農業地帯に侵入されると被害が大きい事が理由です。」


『ああ、言われてみれば今月は多かったですね。
討伐推奨されてたから、急に増えたんですね。』


「ええ、冒険者ギルドで通常設定されている討伐賞金に加えて、推奨賞金が加算されるシステムですので。
実際、討伐推奨されたモンスターはかなり減ります。
結構重要な仕事ですよ。」


『ちょっと冒険者ギルドに相談して来ます。

ん?
ちょっと待って下さい。
ウチは解体屋ですから、その気になれば幾らでも…
私が討伐推奨を出してしまうのは拙いんじゃないですか?』


「ええ。
そうなんです。
幾らでも自分のビジネスに利益誘導出来てしまうんです。
なので自治権付与以降は汚職が酷く、都市財政が悪化してしまった訳です。
その証拠に空き家…  多いでしょ?」


なるほど、ね。
ただでさえリザード族にいつ襲われてもおかしくない状況。
それに加えて汚職が多く、行政サービスが劣悪だった、と。
そりゃあみんな逃げる訳だ。
金持ちと才人は次々に抜け、貧乏人と無能だけが残った。


「チート市長。
…期待してますよ。」


【心では】兎も角、レザノフ卿は口ではそう言って見送ってくれた。
サポートという名の監視は厳重に行ってくれるようなので、そちらを頼りにするつもりだ。



その後俺は冒険者ギルドに戻り、ドレークに事情を説明し協力を要請する。


「急展開だね。
まあ予想してたけどさ。
先に手の内を晒すね。
ベアー系を指定してくれると我々としては非常に助かる。
我が義息ヨーゼフは熊狩り達人としても有名でね。」


『私も手の内を晒しますと、ワイルドオックスの入荷が増えると助かります。
精肉工房との連携がかなり上手く行き始めているので。』


「どうするチート君?」


『一番狩猟して皆が助かる魔物って何ですか?』


「今なら長牙猪かな。
街道があちこち掘り返されて困っているんだ。」


『では、次の討伐推奨モンスターは長牙猪ということで。』


「承知した。
適切な判断だと思う。

…それにしてもチート君。  いやチート市長。
この状況、最初から狙ってた?」


『グランバルド…
というか、世の中から無駄な争い事を無くしたいとは思ってました。
まあ、第一目標は女の子からモテることだったんですけど。』


「モテたの?」


『ブスなBBAをレイプしようとしてボコられました。』


「それは悲惨な青春だなあw」


『同情ついでに色々手伝って下さいよ。
多分、便宜はそこまで図らないと思いますけど。』


「世間から見れば、我々とバランギル工房は一枚岩だからね。
迂闊に便宜図らない方がいいと思うよ。」


ドレークは使途不明金の穴埋めで忙しいので、汚職をする余裕がない。
それどころか孫の前途の為にも、身綺麗になりたくて仕方が無いので、利権からは敢えて距離を取りたいようである。
ただ、俺に対しては概ね好意的でヨーゼフパーティーをこれまで以上に協力的に動かしてくれるようだ。

冒険者ギルドの食堂で小太りオジサンを見かけたので、経緯を説明して手伝いを依頼する。
報酬として50万ウェンを先払いすると、「肩書も欲しい」と強請られたので《秘書室長》という肩書をでっち上げてプレゼントした。
想像以上に小太りオジサンは喜び、走って嫁に報告しに行った。


それから工房に戻り、師匠達に謝罪する。


「チートは生き急いでるなー。」


『申し訳ありません。』


「謝る事はないよ。
俺さぁ。
チートが来てからどんどん人生が面白くなってきてなってるんだ。
俺なんかには何も出来ないけど…
せめて認めることで応援させてくれよ。」


この人の弟子で良かった。
思わず涙ぐんでしまう。


「で?
次は何を企んでいるんだ?」


『リザードとの緊張状態を緩和したいのです。
正直に言えば、コミュニケーションを取りたいです。』


「!?
…そんなこと出来るの?」


『…実は自信あります。』



そう。
自信はある。
確証は無いが、俺は彼らの【心】も読める。
この原始的なスライムと対話出来るのだから、あれだけ高度な社会を築いているリザード族とは必ず意思疎通出来る。
要は、標準座標≪√47WS≫の存在さえ伝える事が出来ればそれで構わない。
それが第一目的。


「チート、おかえり~。
おなかすいた~」


リビングからメリッサの間の抜けた声が聞こえる。
コイツ、居座るつもりなのか?
…いや、本当に行き場なさそうだしな。


「チート、ごはんー。
ごはん買って~」


第二の目的は、こういう使えない人間でも生き延びれる社会を作ることだ。


「ちょっと伊勢海君。
アナタの部屋の非常食が無くなってるわよ!?
ワタクシ、ちょっとしか食べてないのに!」


第三目的は、このBBAの排除で決まりだな。
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