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チートで覚悟の準備をする!
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リザード領に上陸。
ヴェギータをリザード版の神像を取りに行かせてから、確保していた陸地に向かう。
不本意だが、あそこでゲートを開くしかあるまい。
それにしても… リザードの完璧な水運網に慣れてしまうと…
陸地を歩くのは結構しんどいな。
港から徒歩20分程の陸地だが…
…遠いな。
リザード式の船上生活こそが最も文明的かつ合理的であると改めて痛感する。
(職住一体の極致だからね。)
俺も大抵有名人なので、港で会った顔見知りと一緒に空き地に向かう。
勿論、スキル診断はこっそりやりたかったのだが…
この状況では、強引に付いてこられても文句が言えないのだ。
有名になり過ぎたし、色々やらかし過ぎた。
皆でゾロゾロ歩いていると、どんどんリザードの要人達が合流してくる。
ヴェギータの父である元帥閣下や、ドルヴァッグ製油会社のンーヴォンCEO(ヴァーヴァン主席の実弟であられる)も、こちらに向かっているらしい。
うーーーん。
迷惑だな。
キティの狂戦士(バーサーカー)は、他者から好かれるスキルと言い難い。
これを見られたくないし、キティが出現させるであろうゲートに言及されるのも煩わしいな。
俺達は空き地(使用権はちゃんと正規の手段で購入している)に辿り着き、ヴェギータの持ってきた神像を組み立てる。
リザードの神だけあって、爬虫類っぽいフォルムだ。
『なあ、ヴェギータ。
どうしてリザードは宗教を重んじないんだろう?』
「うーん、我々はそういう段階の未開文明ではないからなあ…
チートはどうして神を信じない?」
『実体験を元に語って恐縮なのだけれど…
信じてる奴に馬鹿しか居なかった。』
「それは説得力のある回答だね。」
そんな軽口を叩き合っているうちに、リザード神像が組み上がる。
「あー、懐かしいなあ。
僕が子供の頃、博物艦のイベントで見た事あるよ。」
『なあ、どうしてリザードは神像のスキル診断しないんだ?』
「え?
僕らには科学的な能力判定マニュアルがあるし…
こんな骨董を今更…」
そう、リザードの適性判断試験はかなり厳密である。
幼少の頃から幾度ものチェックを受け、職業適性が図られる。
向かない職業には就けない。
ほら、いるじゃない。
集団の輪を必ず乱す奴、カネを扱わせてはいけない奴、監視の無い場所に行くと豹変する奴。
そこら辺を政府が緻密に把握しているから、職業のミスマッチによる事故が起こりにくい。
「スキルって漠然とし過ぎてるよww
僕らが受けさせられる適性判断試験と違って科学的根拠も無いしねww
ちなみに僕は元帥の息子なのに軍人には向いて無いんだってさ。
未だに親に泣かれるよww」
なるほどな。
元帥閣下がコボルト相手に死闘を繰り広げている間に、有閑貴族生活を堪能していた君が言うのだからそうなのだろう。
============================
さて、野次馬が増える前にキティをスキル診断に掛けるか。
『キティ。
予定と変わってしまったが、スキル診断に付き合ってくれるよな?』
「いいよ。
約束だしね。」
このまま時間を掛ければ、野次馬が増え続ける…
速攻でゲートを開かざるを得ないか。
『ヴェギータ! 回路調整急いでくれ!
ギーガー! 陣幕でもっと装置を隠してくれ!』
クルーに頼んで、野営用陣幕で神像を隠す。
だがゴブリンの陣幕はサイズが小さいので隠すには寸が足らずとなってしまう。
「あー、チート。
これ多分隠せないわ。
どうする?
診断を延期して、ここに陸上小屋でも建てるかい?
急げば3日で施工できると思うけど。」
『いや。
もう強行させて。
エリザベスの奴がねー。
アイツが滅茶苦茶やるから、俺の行動がどんどん制限されるんだよ。』
「自分も滅茶苦茶やってる癖にww」
ヴェギータの言う通りw
だが、好き勝手枠は俺が独占したい。
あの女、本当に邪魔だな。
『キティ!
スキル診断を手早く済ませたい!
パネルが光ったら、中央に手をかざしてくれ!』
よし。
当初の予定とは大幅に変わったが、ようやく狂戦士を獲得出来るぞ。
形振り構わずキティを抱き込んだのは正解だった。
これでゲートを開ける筈だ。
「この水晶みたいな部分?
これってリザードの装置でしょ?
私にも効果あるの?」
「キティさん。
理論上、スキルは各種族ほぼ共通です。」
「ふーん。
じゃあ、別にこれでいいよ。」
キティは特に何の感慨もなさそうな表情で、診断に入った。
結構強めの発光現象が起こる。
『ヴェギータ!
これってレアスキルなの!?』
「いや、これは通常の反応だねえ。
子供の頃、社会見学で触らせて貰ったけど
丁度こんな雰囲気だったよ?」
『そ、そうか。
ゴメン、少しパニックになった。』
俺が大声を出したので野次馬が勝手に敷地に入ってきて覗き込み始めた。
追い散らそうかと思ったが、高位の者が多いので中々厳しい態度も取りにくい。
ゴブリンの族長クラスやリザードの局長クラスに対しては、本当に俺ではどうにもならないのだ。
《スキル診断の結果が出ました!》
リザード語の大音量電子音が響く。
…クッソ。
音デカすぎだろ。
デリカシー無いのかよ!
キティの持ってる狂戦士(バーサーカー)が広く知られてしまうのは、外交上好ましくないな。
人間種が野蛮種族のように思われてしまうじゃないか。
《殺害》
リザード語の読み上げが開始される。
最初に表示されたスキルは《殺害》。
《攻撃対象への殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
マジかー。
最初からヘビーなの来たな。
ああ、ギャラリーもどよめいてるよー。
オイオイ、人間種が野蛮種族みたいに思われちゃうでしょーが。
そりゃあ、キティの犯罪歴を知ってる俺は、どんなにヤバいスキルを持ってても驚かないけどさ。
《射殺》
続いて読み上げられる。
《遠距離攻撃の殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
ん?
ん?
俺もギャラリーも一瞬意味が解らず硬直する。
ん?
ん?
んーー?
《斬殺》
…え?
《近接攻撃の殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
え?
《撲殺》
…。
《徒手攻撃の殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
…周囲が静まりきっているが、ギャラリーが減った訳ではない。
もう誰も声を発しない。
《虐殺》
…。
《複数対象への攻撃の殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
…。
《決殺》
…野次馬の幾名かが後ろ足で姿を消す。
《負傷状態の対象を100%の確率で殺害する。》
…。
《殺戮》
…。
《スタミナが持続する限り全てのスキルを発動し続ける事が可能。》
『ヴェギータ!
音量下げれないのか!!!
これ印象悪すぎぃ!!』
「無理だ!!
音量に関する操作機能が存在しない!!」
《不死》
…。
《状況異常無効・スタミナ切れが起こらない。》
『ここのスピーカーに土を詰めよう!!
ギーガーは反対側に土を詰めてくれ!!』
「チート、音量下がらないよ!!!」
それからも剣呑なスキルが出るわ出るわ。
野次馬が無表情で硬直してしまっている。
小一時間、キティのヤバいスキルが読み上げられている間、俺達は野次馬に退去を求めるも、殆どの者は応じてくれなかった。
皆、手早くメモを取っている。
ああ、ヤバい状況だ。
もうリザード領に居れなくなるかも知れない。
いや、何がヤバいって狂戦士(バーサーカー)ぽいニュアンスのスキルが読み上げられなかった事だ。
『キ、キティは狂戦士(バーサーカー)ではないのか?』
「?
私、狂ってないけど?」
『正気なのか?』
「見ればわかるじゃない。」
『お、おう。』
…失敗した。
狂戦士はキティではなくゲレルだったのか!?
そりゃあそうか。
もしもキティが狂戦士(バーサーカー)なら、ベスおばの奴が譲ってくれる訳がない。
今からゲレルを借りれないか?
いや、貸してくれる訳がないから、ベスおばの目を盗んで説得するしかないか…
赤い糸の気配はかなり遠い。
善隣都市を経由して、そのまま大河を遡上した気配がある。
「チート、大丈夫か?
顔色悪いぞ?」
『心配ありがとう。
ちょっと予定が狂ってしまってね。』
「結局、あの子は狂戦士(バーサーカー)を保有していなかったんだね?」
『ああ、アテが外れた。
俺の中ではほぼ鉄板だったんだけど。
…どうやら、もう1人の候補が当たりだったらしい。』
俺はキティに礼を述べて、休憩をさせた。
彼女が近くの岩に無造作に腰を掛けると、群衆が悲鳴を挙げて慌てた様子で距離を置いた。
グランバルド領内で散々見て来た光景なので、俺は今更驚かない。
それにしても参ったな。
キティこそが狂戦士(バーサーカー)であると思っていたのだがな。
集めたデータや帝国内の評判から鑑みても、この女以外にあり得ないのだが…
うーん、やはりゲレルも連れてくるべきだったか。
悪あがきとばかりクュ中尉にもスキル診断をお願いするが、事前申告通りのスキルしか保有していなかった。
《剣術》《遠矢》《水泳》《跳躍》《指揮》《疾駆》《長駆》《偵察》《離脱》
これらのスキルはコボルトなら誰でも持っている、と中尉は淡々と述べる。
ちなみに人間種で《剣術》を保有していれば、士官学校で教官(剣術師範枠)になれたり、道場を開いてその道で食って行けたりするので、種族差を改めて痛感させられる。
朝から晩まで嬉々として行軍訓練をしているコボルトこそ狂戦士(バーサーカー)以外の何物でも無い気もするのだが、中尉に言わせると「自分達は極めて正気。」とのことである。
コボルト的価値観からすると、貴重なリソースを趣味や娯楽や睡眠に当てることの方が遥かにキチガイ染みているらしい。
ちなみにコボルトは行軍しながら歩調の合間に睡眠を取る。
何を言っているか理解出来ないと思うが、多くのコボルトと親交を持った俺でさえ未だに理解は出来ていないので安心して欲しい。
コボルトは紛れもなく狂気の種族だが、種族の常識に忠良なクュ中尉は正常と云う事だろうか?
だとしたら、彼らに狂戦士(バーサーカー)を期待する事は不可能だな。
…クッソ、キチガイ共め。
俺の手を煩わせやがって。
「チート大変だ!」
『ん?
今度は何?』
「ギャラリーからクレームが上がっている。
彼らは君がスキル診断を公開すると思い込んでいたようだ。」
『は?
お、俺は関係ないだろ!?』
「いや、それが局長連中も騒ぎ始めていて…
ちょっと収まりそうにない。」
それは無理だ。
俺のスキルは【心を読む】こと。
診断されてしまったら、恐らく《読心》とかそういう表示が出てしまうだろう。
これが知られたら、袋叩きくらいでは済まないぞ。
『一旦、船に戻ろう!
神像を梱包し直してくれ!!』
「駄目だ!
裏手も群衆に囲まれてる!」
キティのスキル診断音がデカ過ぎて、そちらに気を取られていた。
確かに周囲から「イセカイ卿にも診断をさせろ」「地球人のスキルも見せろ!」との野次が聞こえてくる。
「イセカイ卿!
我々は貴方がスキルを公開すると聞いて陸まで上がって来たのだがね。」
ミスった。
まさかこんなに野次馬が溢れるなんて…
「チート。
もう診断を公開した方が良くないか?
このままじゃギャラリーが増える一方だぞ。」
っ!!
暇人共が!!
どうする。
もうスキル診断してしまおうか。
そうでもしなくちゃ、ここから出して貰えそうもない。
群衆の眼がマジだ。
スキルで群衆の【心を読んで】みたが、みんな結構俺に対して怒ってるしな。
うーん。
これ、暴動が起こるんじゃないか…
診断機に触れるしかないな
いや、先に謝罪のワンクッションを置こう。
『わかった!
みんな、わかったよ!
スキル診断を公開する!』
群衆が「「「おおおお!!!」」」と沸く。
『その前に!
その前に謝罪をさせて欲しい!
俺のスキル!
これがちょっと…
強力というか…
ややチート気味なんだ!
地球からやって来た俺が、何も知らないこの土地でやって来れたのは
全部スキルのおかげなんだ!!
だが信じて欲しい!!
俺はこのスキルを悪用していない!
この世界に尽くす為だけに使ってきた!!!
それを踏まえた上で俺のスキル診断を見守ってくれないだろうか!!』
「前置きはいい!
結局、イセカイ卿のスキルとは何なのだ!!」
叫んだのはリザード財務省のヴーノ出納局長である。
彼はエリート特有のタイパへの五月蠅さで有名な男だ。
『…みんなー!!
怒らずに聞いて欲しい!!!
俺のスキルはっ!!
俺のスキルはっ!!
じ、実は!
お、俺は【心を読む】ことが出来るんだーーーー!!!!!!!』
…言ってしまった。
急いでいたとは言え、馬鹿正直に告白するべきではなかったと思う。
一瞬で場が静まり、皆が顔を合わせて情報を咀嚼しようとする。
そして、今までの俺の言動と【心を読む】というスキルが各々の中で整合した瞬間。
一斉に群衆たちが憤りと驚きのあまり何かを叫ぼうとした。
その時!!
「ちょっと待ったぁーーーーーーーー!!!!!!!!」
恐ろしい怒号が背後から響き渡った。
あまりの大音声に群衆が申し合わせたように身体を硬直させる。
===================
出現したのは、憤怒の表情を貼り付けたオークの群れ。
数は数十?
オークは個々が巨体(身長5メートルくらいある)なので、視覚的な威圧感が凄い。
「我が名はオーク四天王筆頭ッ!
バルガ・バル・ルバルガスッ!
みなさーーーん!!
知らしめたい真実がありますッ!!
小生はッ!!
小生はッ!!
命を賭けてそれを伝えるべくッ!!
ここにやって参りましたァ!!!!」
巨躯を誇るオークの中でも、一際長身の彼がそう叫ぶ。
群衆が何事かとバルバル氏を仰ぐ。
オイオイオイ。
…ラノベとかで散々見て来た《四天王ポジション》だよ。
何か… 最後の最後で濃いキャラが登場したな…
俺、もうこの世界からは出発するし、帰って来る予定もさらさらないんだけど…
終盤に俺好みのキャラ出すのやめてくれないかな?
『あ、伊勢海地人です。
どうも。
…あの、何の御用ですか?』
勝手に敷地に入って来たバルバル氏は俺に正対すると仁王立ちの姿勢で静かに呼吸をしてから
クワッ!と刮目した。
「あなたを陰謀罪と経歴詐称罪で訴えます!」
さあ、オークとのラストバトルだ。
俺には何のメリットも無いけどな。
ヴェギータをリザード版の神像を取りに行かせてから、確保していた陸地に向かう。
不本意だが、あそこでゲートを開くしかあるまい。
それにしても… リザードの完璧な水運網に慣れてしまうと…
陸地を歩くのは結構しんどいな。
港から徒歩20分程の陸地だが…
…遠いな。
リザード式の船上生活こそが最も文明的かつ合理的であると改めて痛感する。
(職住一体の極致だからね。)
俺も大抵有名人なので、港で会った顔見知りと一緒に空き地に向かう。
勿論、スキル診断はこっそりやりたかったのだが…
この状況では、強引に付いてこられても文句が言えないのだ。
有名になり過ぎたし、色々やらかし過ぎた。
皆でゾロゾロ歩いていると、どんどんリザードの要人達が合流してくる。
ヴェギータの父である元帥閣下や、ドルヴァッグ製油会社のンーヴォンCEO(ヴァーヴァン主席の実弟であられる)も、こちらに向かっているらしい。
うーーーん。
迷惑だな。
キティの狂戦士(バーサーカー)は、他者から好かれるスキルと言い難い。
これを見られたくないし、キティが出現させるであろうゲートに言及されるのも煩わしいな。
俺達は空き地(使用権はちゃんと正規の手段で購入している)に辿り着き、ヴェギータの持ってきた神像を組み立てる。
リザードの神だけあって、爬虫類っぽいフォルムだ。
『なあ、ヴェギータ。
どうしてリザードは宗教を重んじないんだろう?』
「うーん、我々はそういう段階の未開文明ではないからなあ…
チートはどうして神を信じない?」
『実体験を元に語って恐縮なのだけれど…
信じてる奴に馬鹿しか居なかった。』
「それは説得力のある回答だね。」
そんな軽口を叩き合っているうちに、リザード神像が組み上がる。
「あー、懐かしいなあ。
僕が子供の頃、博物艦のイベントで見た事あるよ。」
『なあ、どうしてリザードは神像のスキル診断しないんだ?』
「え?
僕らには科学的な能力判定マニュアルがあるし…
こんな骨董を今更…」
そう、リザードの適性判断試験はかなり厳密である。
幼少の頃から幾度ものチェックを受け、職業適性が図られる。
向かない職業には就けない。
ほら、いるじゃない。
集団の輪を必ず乱す奴、カネを扱わせてはいけない奴、監視の無い場所に行くと豹変する奴。
そこら辺を政府が緻密に把握しているから、職業のミスマッチによる事故が起こりにくい。
「スキルって漠然とし過ぎてるよww
僕らが受けさせられる適性判断試験と違って科学的根拠も無いしねww
ちなみに僕は元帥の息子なのに軍人には向いて無いんだってさ。
未だに親に泣かれるよww」
なるほどな。
元帥閣下がコボルト相手に死闘を繰り広げている間に、有閑貴族生活を堪能していた君が言うのだからそうなのだろう。
============================
さて、野次馬が増える前にキティをスキル診断に掛けるか。
『キティ。
予定と変わってしまったが、スキル診断に付き合ってくれるよな?』
「いいよ。
約束だしね。」
このまま時間を掛ければ、野次馬が増え続ける…
速攻でゲートを開かざるを得ないか。
『ヴェギータ! 回路調整急いでくれ!
ギーガー! 陣幕でもっと装置を隠してくれ!』
クルーに頼んで、野営用陣幕で神像を隠す。
だがゴブリンの陣幕はサイズが小さいので隠すには寸が足らずとなってしまう。
「あー、チート。
これ多分隠せないわ。
どうする?
診断を延期して、ここに陸上小屋でも建てるかい?
急げば3日で施工できると思うけど。」
『いや。
もう強行させて。
エリザベスの奴がねー。
アイツが滅茶苦茶やるから、俺の行動がどんどん制限されるんだよ。』
「自分も滅茶苦茶やってる癖にww」
ヴェギータの言う通りw
だが、好き勝手枠は俺が独占したい。
あの女、本当に邪魔だな。
『キティ!
スキル診断を手早く済ませたい!
パネルが光ったら、中央に手をかざしてくれ!』
よし。
当初の予定とは大幅に変わったが、ようやく狂戦士を獲得出来るぞ。
形振り構わずキティを抱き込んだのは正解だった。
これでゲートを開ける筈だ。
「この水晶みたいな部分?
これってリザードの装置でしょ?
私にも効果あるの?」
「キティさん。
理論上、スキルは各種族ほぼ共通です。」
「ふーん。
じゃあ、別にこれでいいよ。」
キティは特に何の感慨もなさそうな表情で、診断に入った。
結構強めの発光現象が起こる。
『ヴェギータ!
これってレアスキルなの!?』
「いや、これは通常の反応だねえ。
子供の頃、社会見学で触らせて貰ったけど
丁度こんな雰囲気だったよ?」
『そ、そうか。
ゴメン、少しパニックになった。』
俺が大声を出したので野次馬が勝手に敷地に入ってきて覗き込み始めた。
追い散らそうかと思ったが、高位の者が多いので中々厳しい態度も取りにくい。
ゴブリンの族長クラスやリザードの局長クラスに対しては、本当に俺ではどうにもならないのだ。
《スキル診断の結果が出ました!》
リザード語の大音量電子音が響く。
…クッソ。
音デカすぎだろ。
デリカシー無いのかよ!
キティの持ってる狂戦士(バーサーカー)が広く知られてしまうのは、外交上好ましくないな。
人間種が野蛮種族のように思われてしまうじゃないか。
《殺害》
リザード語の読み上げが開始される。
最初に表示されたスキルは《殺害》。
《攻撃対象への殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
マジかー。
最初からヘビーなの来たな。
ああ、ギャラリーもどよめいてるよー。
オイオイ、人間種が野蛮種族みたいに思われちゃうでしょーが。
そりゃあ、キティの犯罪歴を知ってる俺は、どんなにヤバいスキルを持ってても驚かないけどさ。
《射殺》
続いて読み上げられる。
《遠距離攻撃の殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
ん?
ん?
俺もギャラリーも一瞬意味が解らず硬直する。
ん?
ん?
んーー?
《斬殺》
…え?
《近接攻撃の殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
え?
《撲殺》
…。
《徒手攻撃の殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
…周囲が静まりきっているが、ギャラリーが減った訳ではない。
もう誰も声を発しない。
《虐殺》
…。
《複数対象への攻撃の殺害確率に+50%補正。 他スキルと重複可能》
…。
《決殺》
…野次馬の幾名かが後ろ足で姿を消す。
《負傷状態の対象を100%の確率で殺害する。》
…。
《殺戮》
…。
《スタミナが持続する限り全てのスキルを発動し続ける事が可能。》
『ヴェギータ!
音量下げれないのか!!!
これ印象悪すぎぃ!!』
「無理だ!!
音量に関する操作機能が存在しない!!」
《不死》
…。
《状況異常無効・スタミナ切れが起こらない。》
『ここのスピーカーに土を詰めよう!!
ギーガーは反対側に土を詰めてくれ!!』
「チート、音量下がらないよ!!!」
それからも剣呑なスキルが出るわ出るわ。
野次馬が無表情で硬直してしまっている。
小一時間、キティのヤバいスキルが読み上げられている間、俺達は野次馬に退去を求めるも、殆どの者は応じてくれなかった。
皆、手早くメモを取っている。
ああ、ヤバい状況だ。
もうリザード領に居れなくなるかも知れない。
いや、何がヤバいって狂戦士(バーサーカー)ぽいニュアンスのスキルが読み上げられなかった事だ。
『キ、キティは狂戦士(バーサーカー)ではないのか?』
「?
私、狂ってないけど?」
『正気なのか?』
「見ればわかるじゃない。」
『お、おう。』
…失敗した。
狂戦士はキティではなくゲレルだったのか!?
そりゃあそうか。
もしもキティが狂戦士(バーサーカー)なら、ベスおばの奴が譲ってくれる訳がない。
今からゲレルを借りれないか?
いや、貸してくれる訳がないから、ベスおばの目を盗んで説得するしかないか…
赤い糸の気配はかなり遠い。
善隣都市を経由して、そのまま大河を遡上した気配がある。
「チート、大丈夫か?
顔色悪いぞ?」
『心配ありがとう。
ちょっと予定が狂ってしまってね。』
「結局、あの子は狂戦士(バーサーカー)を保有していなかったんだね?」
『ああ、アテが外れた。
俺の中ではほぼ鉄板だったんだけど。
…どうやら、もう1人の候補が当たりだったらしい。』
俺はキティに礼を述べて、休憩をさせた。
彼女が近くの岩に無造作に腰を掛けると、群衆が悲鳴を挙げて慌てた様子で距離を置いた。
グランバルド領内で散々見て来た光景なので、俺は今更驚かない。
それにしても参ったな。
キティこそが狂戦士(バーサーカー)であると思っていたのだがな。
集めたデータや帝国内の評判から鑑みても、この女以外にあり得ないのだが…
うーん、やはりゲレルも連れてくるべきだったか。
悪あがきとばかりクュ中尉にもスキル診断をお願いするが、事前申告通りのスキルしか保有していなかった。
《剣術》《遠矢》《水泳》《跳躍》《指揮》《疾駆》《長駆》《偵察》《離脱》
これらのスキルはコボルトなら誰でも持っている、と中尉は淡々と述べる。
ちなみに人間種で《剣術》を保有していれば、士官学校で教官(剣術師範枠)になれたり、道場を開いてその道で食って行けたりするので、種族差を改めて痛感させられる。
朝から晩まで嬉々として行軍訓練をしているコボルトこそ狂戦士(バーサーカー)以外の何物でも無い気もするのだが、中尉に言わせると「自分達は極めて正気。」とのことである。
コボルト的価値観からすると、貴重なリソースを趣味や娯楽や睡眠に当てることの方が遥かにキチガイ染みているらしい。
ちなみにコボルトは行軍しながら歩調の合間に睡眠を取る。
何を言っているか理解出来ないと思うが、多くのコボルトと親交を持った俺でさえ未だに理解は出来ていないので安心して欲しい。
コボルトは紛れもなく狂気の種族だが、種族の常識に忠良なクュ中尉は正常と云う事だろうか?
だとしたら、彼らに狂戦士(バーサーカー)を期待する事は不可能だな。
…クッソ、キチガイ共め。
俺の手を煩わせやがって。
「チート大変だ!」
『ん?
今度は何?』
「ギャラリーからクレームが上がっている。
彼らは君がスキル診断を公開すると思い込んでいたようだ。」
『は?
お、俺は関係ないだろ!?』
「いや、それが局長連中も騒ぎ始めていて…
ちょっと収まりそうにない。」
それは無理だ。
俺のスキルは【心を読む】こと。
診断されてしまったら、恐らく《読心》とかそういう表示が出てしまうだろう。
これが知られたら、袋叩きくらいでは済まないぞ。
『一旦、船に戻ろう!
神像を梱包し直してくれ!!』
「駄目だ!
裏手も群衆に囲まれてる!」
キティのスキル診断音がデカ過ぎて、そちらに気を取られていた。
確かに周囲から「イセカイ卿にも診断をさせろ」「地球人のスキルも見せろ!」との野次が聞こえてくる。
「イセカイ卿!
我々は貴方がスキルを公開すると聞いて陸まで上がって来たのだがね。」
ミスった。
まさかこんなに野次馬が溢れるなんて…
「チート。
もう診断を公開した方が良くないか?
このままじゃギャラリーが増える一方だぞ。」
っ!!
暇人共が!!
どうする。
もうスキル診断してしまおうか。
そうでもしなくちゃ、ここから出して貰えそうもない。
群衆の眼がマジだ。
スキルで群衆の【心を読んで】みたが、みんな結構俺に対して怒ってるしな。
うーん。
これ、暴動が起こるんじゃないか…
診断機に触れるしかないな
いや、先に謝罪のワンクッションを置こう。
『わかった!
みんな、わかったよ!
スキル診断を公開する!』
群衆が「「「おおおお!!!」」」と沸く。
『その前に!
その前に謝罪をさせて欲しい!
俺のスキル!
これがちょっと…
強力というか…
ややチート気味なんだ!
地球からやって来た俺が、何も知らないこの土地でやって来れたのは
全部スキルのおかげなんだ!!
だが信じて欲しい!!
俺はこのスキルを悪用していない!
この世界に尽くす為だけに使ってきた!!!
それを踏まえた上で俺のスキル診断を見守ってくれないだろうか!!』
「前置きはいい!
結局、イセカイ卿のスキルとは何なのだ!!」
叫んだのはリザード財務省のヴーノ出納局長である。
彼はエリート特有のタイパへの五月蠅さで有名な男だ。
『…みんなー!!
怒らずに聞いて欲しい!!!
俺のスキルはっ!!
俺のスキルはっ!!
じ、実は!
お、俺は【心を読む】ことが出来るんだーーーー!!!!!!!』
…言ってしまった。
急いでいたとは言え、馬鹿正直に告白するべきではなかったと思う。
一瞬で場が静まり、皆が顔を合わせて情報を咀嚼しようとする。
そして、今までの俺の言動と【心を読む】というスキルが各々の中で整合した瞬間。
一斉に群衆たちが憤りと驚きのあまり何かを叫ぼうとした。
その時!!
「ちょっと待ったぁーーーーーーーー!!!!!!!!」
恐ろしい怒号が背後から響き渡った。
あまりの大音声に群衆が申し合わせたように身体を硬直させる。
===================
出現したのは、憤怒の表情を貼り付けたオークの群れ。
数は数十?
オークは個々が巨体(身長5メートルくらいある)なので、視覚的な威圧感が凄い。
「我が名はオーク四天王筆頭ッ!
バルガ・バル・ルバルガスッ!
みなさーーーん!!
知らしめたい真実がありますッ!!
小生はッ!!
小生はッ!!
命を賭けてそれを伝えるべくッ!!
ここにやって参りましたァ!!!!」
巨躯を誇るオークの中でも、一際長身の彼がそう叫ぶ。
群衆が何事かとバルバル氏を仰ぐ。
オイオイオイ。
…ラノベとかで散々見て来た《四天王ポジション》だよ。
何か… 最後の最後で濃いキャラが登場したな…
俺、もうこの世界からは出発するし、帰って来る予定もさらさらないんだけど…
終盤に俺好みのキャラ出すのやめてくれないかな?
『あ、伊勢海地人です。
どうも。
…あの、何の御用ですか?』
勝手に敷地に入って来たバルバル氏は俺に正対すると仁王立ちの姿勢で静かに呼吸をしてから
クワッ!と刮目した。
「あなたを陰謀罪と経歴詐称罪で訴えます!」
さあ、オークとのラストバトルだ。
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