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【転移47日目】 所持金2680億7520万ウェン 「こんな世界に征服する価値は無い。 」
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朝。
当然、この天井も見慣れない。
不安感が無いのはキーン邸の客間と分かっているからだろうか。
シンプルで個性を押し殺した内装だが、布や壁板の質が異常に良い。
羨ましくなるような住み心地である。
ああ、そうか
彼は不動産屋だったな。
王都出発前の打ち合わせ通り、昨夜からドナルド・キーンの邸宅にグランツ家と共に滞在することになった。
キーン邸において市民権の付与を待ちつつ、不動産巡りを行う。
そんな目論見だったのだが…
「ゴメンね。
コリンズさんが市民権を貰えない事まで想定しておくべきでした。」
『いえいえ。
連邦ルートは当初から想定してませんでしたし。
キーンさんの所為ではないですよ。』
そう、交戦罪容疑でキーンが逮捕され出国停止処分になることも、勝手に連邦の閣僚名簿に名を記されてしまった俺が市民権申請資格を喪失するのも…
何もかも想定外なのである。
「でもコリンズさん、少し楽しんでるでしょw」
『はい、不謹慎ではありますがw』
「貴方と居れば退屈せずにすみます。
私の勘ですが…
これからもっと起伏のある旅路になりますよw?」
『ふふふ。
俺は平穏に暮らしたいのですけどね。』
「残念。
今から、次の冒険の作戦会議をします。
おはよう、グランツ君!
ちゃんと眠れた?
息子さんぐずってない?」
「おはようございます、御二方。
子供というのは現金なもので
自由都市の豪華な街並みを見た途端に機嫌が良くなりました。
この繁栄ぶりでも郊外の別荘なんでしょう?
首都のソドムタウンはどこまで巨大なのか想像もつきません。」
『カインさん、おはようございます。』
「おお、上半身がちゃんと起こせるようになったじゃないですか。」
『これも殆ど力業ですよ?
エリクサーが全然効いてない気がします。
これ不良品ではないですよね?』
「いや、腹を刺された護衛に飲ませたら普通にその場で回復してましたし。
斬り落とされた指が翌々日には生えていたという報告も聞きました。
私はこのエリクサーこそ万能の霊薬だと認識しているのですが…」
『え!? 斬られた指が生えた!?
本当に?』
「ええ、それは確実です。
回復途中の様子も見せて貰いましたし。
コリンズさん。
あのエリクサーはとんでもない代物ですよ。
人類史における最高の奇跡です。」
『その奇跡の恩恵をあまり感じないのですが…
傷痕も消えませんし。』
「言われてみればそうすよね。
他の連中は結構綺麗に傷跡も消えていたんですけど。
今のコリンズさん。
歴戦の勇者みたいな顔してますよw」
「あ、それ私も思ってましたw
頬の大傷、首元の大傷、そして眉間の大傷。
名誉の勲章が3つ!
コリンズさんが指名手配されたら、すぐに捕まっちゃいそうですww」
『眉間は便所で転んだだけですよww』
しばらく3人で笑い転げた。
ああ、俺はやっと辿り着けたんだな。
==========================
「はい!
ただいまから!
今からコリンズさんが何をして生きて行くか会議を行いまーす。
司会はワタシ、ドナルドが進行させて頂きまーす。」
『どうもー、コリンズでーす。』
「キーン君、私の人生設計も考えてーーw」
とりあえず、右も左もわからない新生活。
ある程度の目標は立てておかなければならない。
「コリンズさん、金融業はしないの?」
『他ならぬお2人ですから、内情を打ち明けますね。
《例の奇跡》によって授けられる金額が膨れすぎて…
金利を幾らに設定した所で、ビジネスとしては成り立たなくなってしまってるんです。』
「私、ニコニコ金融時代は月利15パーセントでした。
金融協会の規則とは言え、正直暴利だと思うんですよね。
で、現状のコリンズさんは20%・30%を取ってもペイ出来ないんですよね?
あー、違うな。
月利3割を飲まざるを得ない相手に貸す事自体がリスクなのか…」
『はい。
おカネって貸すと恨まれるので。
特に返済の時は憎まれるって教わりました。』
「でもコリンズさん。
私やダグラスのこと、憎んでいなかったでしょう?」
『まあ、私は…
元手さえあれば、それ以上に増やせる事を自覚しておりましたから。』
「うん。
ダグラスからもかなり早い段階で相談されてました。
コリンズさんには事業融資枠で対応するべき、だって。」
『あ、そうだったんですね。』
「彼に課していたミッションなんですが。
《有望な事業者や起業志望者を見分けて社長の私に繋ぐこと。》
でした。
最終的に、自由都市のような近代的な融資銀行を目指していたのですが…」
「へえ、グランツ君はそこまで考えてたんだ?
でも王国じゃ難しいんじゃない?
確か、証券市場も作ったり潰したりを繰り返してたでしょ?」
2人に聞くところによると。
建国以来王国は市場重視派と反市場派が常にせめぎ合い、封建体制下の常として概ね経済人側が弾圧されてきたそうだ。
なので、王国には未だ証券市場も国債市場も存在しない。
(それっぽいものは一応あるらしい。)
「ねえ、キーン君。
コリンズさんに全上場企業を買収して貰う作戦はどうだろう?」
「権力持ってない人がそれしようとしたら、普通に潰されるよ?」
『あ、やっぱりそうなんですね?』
「そりゃあ、権力って富を奪ったり守ったりする為の装置だから。
権力なしに富だけを持ってるコリンズさんの現状って一番危険なんですよ。
極端な話。
王国の王室費よりも、コリンズさんの手持ち資金の方が多いと思いますし。」
『いや、流石にそれはないでしょう?
仮にも一国の王様と比較するなんて。』
「公表されている王室費は年間65億ウェンですよ?
機密費を合算したとしても100億には届かないんじゃないですかね?
昔の王国は何千億の王室費が潤沢にあって、それでガンガン政治工作を行ってたらしいですけど。」
あー、そんなものか。
確かに城も薄汚れてだろうな。
65億ウェンかぁ。
勿論大金ではあるのだが。
その金額であの広大な国土を統治する為の王族業務を遂行するのは現実的ではないだろう。
そうか、俺の配当は貧困国の王室費程度は既に越えていたか…
「コリンズさん。
貴方は嫌がるかも知れませんけど。
権力くらいしか買うもの残ってませんよ?」
『権力って買えるんですか?』
「店先の商品と買い方が違うだけで、普通に買えますよ。」
『いや、想像もつかないです。』
「もう貴方買ったじゃないですか?」
『?』
「連邦の内戦。
あれで傭兵を雇ってミュラー側についたでしょ?
財政顧問の肩書、あれ彼らなりの恩賞のつもりですよ。
まあ、迷惑でしょうけど。」
うん、ぶっちゃけ迷惑。
おかげで市民権を取得出来なくなった。
「コリンズさん、私ねえ。
貴方に自由都市の議員を狙って貰いたかったのですよ。
不動産業を営んでいる関係で、ビジネスパートナーの選挙を何回か手伝った経験もあるんです。
お役に立てると内心楽しみにしておりました。」
『俺は余所者ですし。』
「いやいや、帝国人や首長国人も普通に当選してますよ?
今の議長もお爺様の代で合衆国から移民して来られた方ですし。」
『結構オープンなんですね?』
「ええ。
自由都市の市民にとって重要な事は
自由主義市場を如何に守り、開明的な友好国と如何に協調するか、ですから。」
なるほど。
民族国家として建国されたと聞いていたが、今はアメリカの様な市場防衛機構になっているのか。
『じゃあ、連邦の手先の俺なんて一番嫌われてしまいますねww』
またもや3人で笑い転げる。
そうなのだ。
自由都市の暗黙なる国是として、《連邦の野蛮人達を侵入させない》というものがある。
わかる。
賛成。
俺もこの美しい街並みに、あんな蛮族を入れてはならないと思う。
いや、地球人なんてもっと入れるべきではないんだけどさ。
==========================
で、俺達の選択肢は大きく分けて2つ。
このまま郊外で隠棲するか、首都ソドムタウンに居を構えるか、である。
常道であれば、女達はこの閑静な別荘地で住ませておくべきであるし、俺もそういう新生活を漠然とイメージしていた。
だが、連邦大使館の修繕を依頼されている。
こんな身勝手な提案を呑んでやる義理など1ミリも無いのだが…
赴任予定だったアウグスブルグ卿を殺したのは俺達だしな。
(ヒルダがかなりエグイ騙し討ちをした。)
まあ、俺なりの首供養だ。
行かざるを得ない。
「不謹慎ですがww
どんどん楽しくなってきましたww
魑魅魍魎巣食うソドムで何が起こるのかww」
「キーン君は本当に愉快主義者だなぁw
おかげで私にも伝染してしまったよww」
『キーンさん。
首都に着いたら清掃業者って発注できますか?
費用は全額負担します。
綺麗に掃き清めて、実用可能な状態にして…
誰か物分かりのよい人物を大使として派遣するように要請しましょう。』
「早馬だとここから1日で打診出来ます。
かなり高いですが、首都では伝書鷹サービスもありますよ。
2時間もあれば連邦領に書簡を投下出来ます。
政治的命中率が低いのが難点ですがww」
『じゃあ馬で。
もう大使の人選を始めて貰いましょう。
到着する頃には清掃を済ませて…
これでこの件はクリア。
その後、我々の今後を考えましょう。』
「「異議なし!!」」
キーンが懇意にしている清掃業者があるらしいので、彼に任せることにする。
頼み込まれたので代金も彼に任せる。
『キーンさん、どうしてそこまでして下さるんですか?
貴方には関係のない騒動じゃないですか?』
「この騒動にコミットしておきたいんですw
乗るしかないじゃないですか、このビッグウェーブに!!」
そりゃあそうか。
この人ってそこそこ大手の不動産会社を経営してる癖に王国までセールスに来るくらいだからな。
冒険心がハンパないのだろう。
「コリンズさん! 私も! 私も!」
…カインに至っては本職の冒険者だからな。
こういう厄介事は逆に面白く感じるのかも知れん。
『わかりました。
この冒険はお2人にも是非付き合って頂きます。』
もう一蓮托生だしな。
==========================
【コリンズパーティー結成】
リン・コリンズ (療養中)
カイン・R・グランツ (元冒険者)
ドナルド・キーン (在宅起訴中)
==========================
ヒルダとコレットが強硬に同行を要求してきたので、止む無く呑む。
キーンが用意してくれた車椅子があれば、1人でもなんとでもなりそうな気もするのだが…
まあ、この異世界にはバリアフリーの概念とか無さそうだしな。
コリンズ家が動くことになったので、グランツ家が巻き込まれる。
首都に憧れを持っていた奥様はまだいいのだが、息子のケイン君は心底辛そうな表情だ。
ゴメンな、君のパパがウロチョロしてるのって俺の所為らしいんだ。
「コリンズ社長…
僕はいつ落ち着けるのでしょう?」
『ケイン君ごめん。
俺も頑張って住める家を探すから。
君のお父さんにもよく言っておくから。』
…ゴメン。
ちょっと嘘。
君のお父さんは俺の代理としてあちこちを駆け回る予定。
本人も首長国や連邦への転勤を前提に話を組み立てているフシがある。
==========================
高速馬車で首都への移動中。
エリクサーを入れる瓶が尽きて来たので、みんなに飲んで処分して貰う。
稀少薬品だと知られれば拒絶される可能性があったので、そこは伏せる。
『御者さん、こんな身体でご迷惑をお掛けします。
あのぉ、今ですね。
新製品の栄養ドリンクのモニタリング中なんですよ。
良かったら一本どうです?
喉も乾いたでしょう?』
「ああ、どうも!
わざわざそんなアッシみたいなもんにまで。
いやあ、お恥ずかしながら喉の渇きをずっと我慢してたんですよ。
んじゃあ、遠慮なくゴクゴク」
御者達に飲ませて実験したところ極めて好評だ。
老眼や腰痛が治ったらしい。
多少のリップサービスもあるのかも知れないが、彼らの表情を見ている限りかなり効力を実感してくれているようだ。
やはり即効性もあるらしい。
そりゃあ100億ウェンもして腰痛一つ治せないならボッタクリだよな。
念の為、俺も一本飲み干してみる。
『…。』
「リン、如何ですか?
どこかに変化はありましたか?」
『いや、ちょっと分からない。』
例によって、足には力が入らない、左手の握力も戻らない。
瓶すら掴む事が出来ないのだ。
辛うじて… 腱鞘炎がややマシに… なってるのだろうか?
ゴメン、わからない。
まあ、喉が潤ったからいいけどさ。
俺は回復効果を少しでも浸透させようとして仮眠を取る。
冒険者の夫を支えていたヒルダに「ポーションの薬効は服用後安静にした方が強まる」と教わっているからである。
まあポーションもエリクサーも似たようなものだろう。
《520億ウェンの配当が支払われました。》
アナウンスで目を覚ますも、容体に変化なし。
誰か地球人にも効くエリクサーを発明してくれないかな。
==========================
【所持金】
2259億9600万ウェン
↓
2779億9600万ウェン
※520億ウェンの配当を受け取り。
【常備薬】
エリクサー 426ℓ
↓
エリクサー 402ℓ
↓
エリクサー 401ℓ
↓
エリクサー 399ℓ
↓
エリクサー 491ℓ
※モニタリングキャンペーンで24ℓ配付
※自身で1本服用
※動物実験(馬)に2ℓを極秘使用
※配当92ℓ受領
==========================
ヤバいな。
スキルの《下9桁切上》の所為で、ミスリル貨以外が手に入らなくなってしまった…
あ、これ地味にヤバいかも。
何とか大白金貨に崩しておかなきゃ。
小銭が無いと生活が成立しないからね。
「今日は馬の脚が持つねえ。
それともさっきの栄養ドリンクでアッシの手並みがあがったのかな?」
『…ははは。
御者さんの腕が元々凄いんですよ。』
…みんな、ゴメン。
通常、さっきの別荘地から首都ソドムタウンのキーン家本邸は馬車であれば8時間強掛かる。
(早馬なら2時間、乗り手が余程の名手でも1時間30分は掛かる)
出発が午前11時だったので日暮れの到着を想定していたのだが…
馬のスタミナが全然切れなかった所為か、配当後まもなくキーン家本邸に到着してしまった。
かなりの中心街である。
どうやらキーンはかなりのボンボンのようだ。
(そうでなければ、この年齢で不動産会社のオーナーなんかになれないよな。)
それぞれの家族をキーン家に放り込んでから、3人で連邦大使館を見物に行ってみる。
途中、キーンが清掃会社の本店ビルにズカズカ入り込んで、無精ヒゲのオジサンを連れて来る。
「幼馴染のポールです。
コイツの親父さんがこの会社の創業社長なんです。」
「どうもー、出来の悪い息子でーすww」
聞けばポール氏は家業を嫌って若い頃からフラフラ遊び回っていたらしい。
最近、堪忍袋の緒が切れたお父様に鉄拳制裁を受け、泣く泣く家業の手伝いに本腰を入れ始めたとのこと。
肩書は専務だが、自社の事業内容をそこまで把握出来ていない。
どうやら背後にいるベーカー課長なる人物が、社内でも信頼されているらしい。
「うわー、きったねートコだなー。
あ、俺ジュース買って来ますね」
言うなりポール氏は、どこかに消えて行った。
この専務の仕事は現場で職人にジュースを奢ることらしい。
(職人たちにはかなり評判がいい。)
結局、査定は全てベーカー課長が行い。
その場で作業員の手配や近隣への挨拶を済ませてしまった。
清掃業の事はわからないのだが、きっと優秀な人材なのだろう。
「キーン社長。
1点、問題があります。」
「はい?
何か不都合な点でも?」
「ここ…
宗教施設なのではないでしょうか?」
「???
え? 嘘?
住所表記ここで合ってるよね?
登記上も連邦さん所有になってると思いますけど…
課長の地図ではどうですか?」
「いえ、連邦所有で間違いないのですが…
造りが…
一般建造物ではありません。
これ…
外装は住宅風になってますけど。
前時代の合同祭事場ではないでしょうか?
あ!
これ外側にパネル貼ってるだけですよ!」
「え? え?
合同祭事場?
確かに変わった造りですが。」
「建国時にはあったんですよ。
ほら、我が国の建国には諸民族が関与しているではないですか?
恐らく、ここは自家で廟を持つ事が出来なかった労働者階級の…
共有の廟の跡地なのかも知れません。」
「あ、いや課長。
何故、そんな建物を連邦が購入したのでしょうか?」
「うーーん。
連邦さんは昔から慢性的な財政難ですからねえ。
他のマトモな物件が買えなかったのでは?
それで買ったはいいものの、使えなくて放置していたのではないでしょうか?
あくまで推測ですが。
あ、ちなみに12年間分の固定資産税が未納のようですね。」
「課長?
ここ使えないんですか?」
「いやー。
水道も引かれてませんしね。
見た所、天井に断熱材も入っておりませんし。
あー、これ絶対に
再建築不可物件ですよ?」
「え?
あ!?
…改装出来ない。」
「はい。
更地にするにも文化庁の許可が必要になると思います。
当然、増築許可も下りないでしょう。」
「いやいやいや、困りますよ課長。
何とかならんのですか?」
「あ、いや。
もはや法運用の話になってしまいますので…
私如きには…」
「じゃあ、この物件使い道ないじゃないですか。
水道ないなら大使館利用出来ませんよ?
もう連邦に派遣を打診しちゃったのに!」
「え!?
こんな所、大使館利用なんて無理に決まってるじゃないですか!
大体、水道も無いのにどうやって生活するんですか!」
あの野蛮人共なら何とかしてしまいそうだが、そんな連中を入国させる訳にはいかない。
「ちょっと待ってくださいよ課長!
じゃ、じゃあ一体この建物は何に使えというんですか!?」
「あ、いや。
それこそ宗教施設にでもするしか無いんじゃないですか?
我々の仕事は清掃なので。
あの、キーン社長の方で登記変更を…」
「いえ…
多分、文化庁に申請しても却下されるかと。
コリンズさん、どうしますか?」
『…では一旦ここを清掃して頂いて。
キーンさん、ここら辺に空き物件持ってませんか?
とりあえず大使を住ませる場所を急いで探さないと!』
「ですね。
連邦人は騒ぎ屋ですから、刃傷沙汰に成りかねない。
課長、それでは新しい物件を用意するまで、そちらの清掃をお願い致します!」
「承知しました。
ここらは人通りも少ないので夜勤労働者にやらせます。」
「お願いします。
近くの物件押さえますので。」
キーンは業者用地図を片手に辺りを見渡す。
「コリンズさん、これ隣も空き物件ですね。
取り扱ってる業者が知り合いなので、ちょっと値段聞いて来ます。
一応、近い方がいいですよね?」
『ですね。
後から連邦の大使がイチャモン付けてくるかも知れませんし。』
==========================
【所持金】
2779億9600万ウェン
↓
2779億8520万ウェン
↓
2776億7520万ウェン
※連邦政府の固定資産税1080万ウェン(90万ウェン×12年分)代納
※ボルグ不動産に大使館用地・住宅購入費用として3億1000万ウェン支払
==========================
「コリンズさん。
そこまでする事はないですよ。
赴任して来る大使がどんな人間かもわかっていないのに。」
『まあアウグスブルグ卿への香典ということで。』
「うーん。
まあ、物件だけ渡して、それを区切りにした方が
後腐れないかもですね。」
『ええ、後からゴチャゴチャ言われるのが嫌なので。
もう、これで義理は果たしたかな、と。』
「まあ、後は大使の仕事ですね。」
『ですです。』
帰り際にポール氏がジュースを差し入れて来た。
しばらく彼と談笑していたのだが、書類仕事の割り振りが始まると、どこかに居なくなっていた。
さて、キーンの家に戻って不動産カタログを見せて貰うか。
この大使館からなるべく離れた物件がいいよね。
(あ、バリアフリーは必須でお願いします。)
==========================
【所持金】
2776億7520万ウェン
↓
2762億7520万ウェン
↓
2680億7520万ウェン
※カイン・R・グランツに預り金14億ウェンを返済
※ドナルド・キーンに預り金82億ウェンを返済
==========================
「えー。
もう日利貰えないの?
楽しみにしてたのに。」
「私の唯一の生き甲斐がぁーw」
『あの…
纏まったカネで渡させて貰えませんか?』
「まとまったカネ?」
『あ、いや。
額が膨れすぎたので
1000億とか、そのうち1兆ウェンとか。』
「あー、コリンズさんはわかってないですねえ。
数千万ウェンのギリギリ現実的な金額なだから旨味があるんですよ。
1兆とか額が大きすぎて使い道が限定されちゃうじゃないですかww」
『げ、限定といいますと?』
「…世界征服とかね。」
参ったな。
地球なら頼まれれば貰ってやってもいいんだが…
こんな世界に征服する価値は無い。
当然、この天井も見慣れない。
不安感が無いのはキーン邸の客間と分かっているからだろうか。
シンプルで個性を押し殺した内装だが、布や壁板の質が異常に良い。
羨ましくなるような住み心地である。
ああ、そうか
彼は不動産屋だったな。
王都出発前の打ち合わせ通り、昨夜からドナルド・キーンの邸宅にグランツ家と共に滞在することになった。
キーン邸において市民権の付与を待ちつつ、不動産巡りを行う。
そんな目論見だったのだが…
「ゴメンね。
コリンズさんが市民権を貰えない事まで想定しておくべきでした。」
『いえいえ。
連邦ルートは当初から想定してませんでしたし。
キーンさんの所為ではないですよ。』
そう、交戦罪容疑でキーンが逮捕され出国停止処分になることも、勝手に連邦の閣僚名簿に名を記されてしまった俺が市民権申請資格を喪失するのも…
何もかも想定外なのである。
「でもコリンズさん、少し楽しんでるでしょw」
『はい、不謹慎ではありますがw』
「貴方と居れば退屈せずにすみます。
私の勘ですが…
これからもっと起伏のある旅路になりますよw?」
『ふふふ。
俺は平穏に暮らしたいのですけどね。』
「残念。
今から、次の冒険の作戦会議をします。
おはよう、グランツ君!
ちゃんと眠れた?
息子さんぐずってない?」
「おはようございます、御二方。
子供というのは現金なもので
自由都市の豪華な街並みを見た途端に機嫌が良くなりました。
この繁栄ぶりでも郊外の別荘なんでしょう?
首都のソドムタウンはどこまで巨大なのか想像もつきません。」
『カインさん、おはようございます。』
「おお、上半身がちゃんと起こせるようになったじゃないですか。」
『これも殆ど力業ですよ?
エリクサーが全然効いてない気がします。
これ不良品ではないですよね?』
「いや、腹を刺された護衛に飲ませたら普通にその場で回復してましたし。
斬り落とされた指が翌々日には生えていたという報告も聞きました。
私はこのエリクサーこそ万能の霊薬だと認識しているのですが…」
『え!? 斬られた指が生えた!?
本当に?』
「ええ、それは確実です。
回復途中の様子も見せて貰いましたし。
コリンズさん。
あのエリクサーはとんでもない代物ですよ。
人類史における最高の奇跡です。」
『その奇跡の恩恵をあまり感じないのですが…
傷痕も消えませんし。』
「言われてみればそうすよね。
他の連中は結構綺麗に傷跡も消えていたんですけど。
今のコリンズさん。
歴戦の勇者みたいな顔してますよw」
「あ、それ私も思ってましたw
頬の大傷、首元の大傷、そして眉間の大傷。
名誉の勲章が3つ!
コリンズさんが指名手配されたら、すぐに捕まっちゃいそうですww」
『眉間は便所で転んだだけですよww』
しばらく3人で笑い転げた。
ああ、俺はやっと辿り着けたんだな。
==========================
「はい!
ただいまから!
今からコリンズさんが何をして生きて行くか会議を行いまーす。
司会はワタシ、ドナルドが進行させて頂きまーす。」
『どうもー、コリンズでーす。』
「キーン君、私の人生設計も考えてーーw」
とりあえず、右も左もわからない新生活。
ある程度の目標は立てておかなければならない。
「コリンズさん、金融業はしないの?」
『他ならぬお2人ですから、内情を打ち明けますね。
《例の奇跡》によって授けられる金額が膨れすぎて…
金利を幾らに設定した所で、ビジネスとしては成り立たなくなってしまってるんです。』
「私、ニコニコ金融時代は月利15パーセントでした。
金融協会の規則とは言え、正直暴利だと思うんですよね。
で、現状のコリンズさんは20%・30%を取ってもペイ出来ないんですよね?
あー、違うな。
月利3割を飲まざるを得ない相手に貸す事自体がリスクなのか…」
『はい。
おカネって貸すと恨まれるので。
特に返済の時は憎まれるって教わりました。』
「でもコリンズさん。
私やダグラスのこと、憎んでいなかったでしょう?」
『まあ、私は…
元手さえあれば、それ以上に増やせる事を自覚しておりましたから。』
「うん。
ダグラスからもかなり早い段階で相談されてました。
コリンズさんには事業融資枠で対応するべき、だって。」
『あ、そうだったんですね。』
「彼に課していたミッションなんですが。
《有望な事業者や起業志望者を見分けて社長の私に繋ぐこと。》
でした。
最終的に、自由都市のような近代的な融資銀行を目指していたのですが…」
「へえ、グランツ君はそこまで考えてたんだ?
でも王国じゃ難しいんじゃない?
確か、証券市場も作ったり潰したりを繰り返してたでしょ?」
2人に聞くところによると。
建国以来王国は市場重視派と反市場派が常にせめぎ合い、封建体制下の常として概ね経済人側が弾圧されてきたそうだ。
なので、王国には未だ証券市場も国債市場も存在しない。
(それっぽいものは一応あるらしい。)
「ねえ、キーン君。
コリンズさんに全上場企業を買収して貰う作戦はどうだろう?」
「権力持ってない人がそれしようとしたら、普通に潰されるよ?」
『あ、やっぱりそうなんですね?』
「そりゃあ、権力って富を奪ったり守ったりする為の装置だから。
権力なしに富だけを持ってるコリンズさんの現状って一番危険なんですよ。
極端な話。
王国の王室費よりも、コリンズさんの手持ち資金の方が多いと思いますし。」
『いや、流石にそれはないでしょう?
仮にも一国の王様と比較するなんて。』
「公表されている王室費は年間65億ウェンですよ?
機密費を合算したとしても100億には届かないんじゃないですかね?
昔の王国は何千億の王室費が潤沢にあって、それでガンガン政治工作を行ってたらしいですけど。」
あー、そんなものか。
確かに城も薄汚れてだろうな。
65億ウェンかぁ。
勿論大金ではあるのだが。
その金額であの広大な国土を統治する為の王族業務を遂行するのは現実的ではないだろう。
そうか、俺の配当は貧困国の王室費程度は既に越えていたか…
「コリンズさん。
貴方は嫌がるかも知れませんけど。
権力くらいしか買うもの残ってませんよ?」
『権力って買えるんですか?』
「店先の商品と買い方が違うだけで、普通に買えますよ。」
『いや、想像もつかないです。』
「もう貴方買ったじゃないですか?」
『?』
「連邦の内戦。
あれで傭兵を雇ってミュラー側についたでしょ?
財政顧問の肩書、あれ彼らなりの恩賞のつもりですよ。
まあ、迷惑でしょうけど。」
うん、ぶっちゃけ迷惑。
おかげで市民権を取得出来なくなった。
「コリンズさん、私ねえ。
貴方に自由都市の議員を狙って貰いたかったのですよ。
不動産業を営んでいる関係で、ビジネスパートナーの選挙を何回か手伝った経験もあるんです。
お役に立てると内心楽しみにしておりました。」
『俺は余所者ですし。』
「いやいや、帝国人や首長国人も普通に当選してますよ?
今の議長もお爺様の代で合衆国から移民して来られた方ですし。」
『結構オープンなんですね?』
「ええ。
自由都市の市民にとって重要な事は
自由主義市場を如何に守り、開明的な友好国と如何に協調するか、ですから。」
なるほど。
民族国家として建国されたと聞いていたが、今はアメリカの様な市場防衛機構になっているのか。
『じゃあ、連邦の手先の俺なんて一番嫌われてしまいますねww』
またもや3人で笑い転げる。
そうなのだ。
自由都市の暗黙なる国是として、《連邦の野蛮人達を侵入させない》というものがある。
わかる。
賛成。
俺もこの美しい街並みに、あんな蛮族を入れてはならないと思う。
いや、地球人なんてもっと入れるべきではないんだけどさ。
==========================
で、俺達の選択肢は大きく分けて2つ。
このまま郊外で隠棲するか、首都ソドムタウンに居を構えるか、である。
常道であれば、女達はこの閑静な別荘地で住ませておくべきであるし、俺もそういう新生活を漠然とイメージしていた。
だが、連邦大使館の修繕を依頼されている。
こんな身勝手な提案を呑んでやる義理など1ミリも無いのだが…
赴任予定だったアウグスブルグ卿を殺したのは俺達だしな。
(ヒルダがかなりエグイ騙し討ちをした。)
まあ、俺なりの首供養だ。
行かざるを得ない。
「不謹慎ですがww
どんどん楽しくなってきましたww
魑魅魍魎巣食うソドムで何が起こるのかww」
「キーン君は本当に愉快主義者だなぁw
おかげで私にも伝染してしまったよww」
『キーンさん。
首都に着いたら清掃業者って発注できますか?
費用は全額負担します。
綺麗に掃き清めて、実用可能な状態にして…
誰か物分かりのよい人物を大使として派遣するように要請しましょう。』
「早馬だとここから1日で打診出来ます。
かなり高いですが、首都では伝書鷹サービスもありますよ。
2時間もあれば連邦領に書簡を投下出来ます。
政治的命中率が低いのが難点ですがww」
『じゃあ馬で。
もう大使の人選を始めて貰いましょう。
到着する頃には清掃を済ませて…
これでこの件はクリア。
その後、我々の今後を考えましょう。』
「「異議なし!!」」
キーンが懇意にしている清掃業者があるらしいので、彼に任せることにする。
頼み込まれたので代金も彼に任せる。
『キーンさん、どうしてそこまでして下さるんですか?
貴方には関係のない騒動じゃないですか?』
「この騒動にコミットしておきたいんですw
乗るしかないじゃないですか、このビッグウェーブに!!」
そりゃあそうか。
この人ってそこそこ大手の不動産会社を経営してる癖に王国までセールスに来るくらいだからな。
冒険心がハンパないのだろう。
「コリンズさん! 私も! 私も!」
…カインに至っては本職の冒険者だからな。
こういう厄介事は逆に面白く感じるのかも知れん。
『わかりました。
この冒険はお2人にも是非付き合って頂きます。』
もう一蓮托生だしな。
==========================
【コリンズパーティー結成】
リン・コリンズ (療養中)
カイン・R・グランツ (元冒険者)
ドナルド・キーン (在宅起訴中)
==========================
ヒルダとコレットが強硬に同行を要求してきたので、止む無く呑む。
キーンが用意してくれた車椅子があれば、1人でもなんとでもなりそうな気もするのだが…
まあ、この異世界にはバリアフリーの概念とか無さそうだしな。
コリンズ家が動くことになったので、グランツ家が巻き込まれる。
首都に憧れを持っていた奥様はまだいいのだが、息子のケイン君は心底辛そうな表情だ。
ゴメンな、君のパパがウロチョロしてるのって俺の所為らしいんだ。
「コリンズ社長…
僕はいつ落ち着けるのでしょう?」
『ケイン君ごめん。
俺も頑張って住める家を探すから。
君のお父さんにもよく言っておくから。』
…ゴメン。
ちょっと嘘。
君のお父さんは俺の代理としてあちこちを駆け回る予定。
本人も首長国や連邦への転勤を前提に話を組み立てているフシがある。
==========================
高速馬車で首都への移動中。
エリクサーを入れる瓶が尽きて来たので、みんなに飲んで処分して貰う。
稀少薬品だと知られれば拒絶される可能性があったので、そこは伏せる。
『御者さん、こんな身体でご迷惑をお掛けします。
あのぉ、今ですね。
新製品の栄養ドリンクのモニタリング中なんですよ。
良かったら一本どうです?
喉も乾いたでしょう?』
「ああ、どうも!
わざわざそんなアッシみたいなもんにまで。
いやあ、お恥ずかしながら喉の渇きをずっと我慢してたんですよ。
んじゃあ、遠慮なくゴクゴク」
御者達に飲ませて実験したところ極めて好評だ。
老眼や腰痛が治ったらしい。
多少のリップサービスもあるのかも知れないが、彼らの表情を見ている限りかなり効力を実感してくれているようだ。
やはり即効性もあるらしい。
そりゃあ100億ウェンもして腰痛一つ治せないならボッタクリだよな。
念の為、俺も一本飲み干してみる。
『…。』
「リン、如何ですか?
どこかに変化はありましたか?」
『いや、ちょっと分からない。』
例によって、足には力が入らない、左手の握力も戻らない。
瓶すら掴む事が出来ないのだ。
辛うじて… 腱鞘炎がややマシに… なってるのだろうか?
ゴメン、わからない。
まあ、喉が潤ったからいいけどさ。
俺は回復効果を少しでも浸透させようとして仮眠を取る。
冒険者の夫を支えていたヒルダに「ポーションの薬効は服用後安静にした方が強まる」と教わっているからである。
まあポーションもエリクサーも似たようなものだろう。
《520億ウェンの配当が支払われました。》
アナウンスで目を覚ますも、容体に変化なし。
誰か地球人にも効くエリクサーを発明してくれないかな。
==========================
【所持金】
2259億9600万ウェン
↓
2779億9600万ウェン
※520億ウェンの配当を受け取り。
【常備薬】
エリクサー 426ℓ
↓
エリクサー 402ℓ
↓
エリクサー 401ℓ
↓
エリクサー 399ℓ
↓
エリクサー 491ℓ
※モニタリングキャンペーンで24ℓ配付
※自身で1本服用
※動物実験(馬)に2ℓを極秘使用
※配当92ℓ受領
==========================
ヤバいな。
スキルの《下9桁切上》の所為で、ミスリル貨以外が手に入らなくなってしまった…
あ、これ地味にヤバいかも。
何とか大白金貨に崩しておかなきゃ。
小銭が無いと生活が成立しないからね。
「今日は馬の脚が持つねえ。
それともさっきの栄養ドリンクでアッシの手並みがあがったのかな?」
『…ははは。
御者さんの腕が元々凄いんですよ。』
…みんな、ゴメン。
通常、さっきの別荘地から首都ソドムタウンのキーン家本邸は馬車であれば8時間強掛かる。
(早馬なら2時間、乗り手が余程の名手でも1時間30分は掛かる)
出発が午前11時だったので日暮れの到着を想定していたのだが…
馬のスタミナが全然切れなかった所為か、配当後まもなくキーン家本邸に到着してしまった。
かなりの中心街である。
どうやらキーンはかなりのボンボンのようだ。
(そうでなければ、この年齢で不動産会社のオーナーなんかになれないよな。)
それぞれの家族をキーン家に放り込んでから、3人で連邦大使館を見物に行ってみる。
途中、キーンが清掃会社の本店ビルにズカズカ入り込んで、無精ヒゲのオジサンを連れて来る。
「幼馴染のポールです。
コイツの親父さんがこの会社の創業社長なんです。」
「どうもー、出来の悪い息子でーすww」
聞けばポール氏は家業を嫌って若い頃からフラフラ遊び回っていたらしい。
最近、堪忍袋の緒が切れたお父様に鉄拳制裁を受け、泣く泣く家業の手伝いに本腰を入れ始めたとのこと。
肩書は専務だが、自社の事業内容をそこまで把握出来ていない。
どうやら背後にいるベーカー課長なる人物が、社内でも信頼されているらしい。
「うわー、きったねートコだなー。
あ、俺ジュース買って来ますね」
言うなりポール氏は、どこかに消えて行った。
この専務の仕事は現場で職人にジュースを奢ることらしい。
(職人たちにはかなり評判がいい。)
結局、査定は全てベーカー課長が行い。
その場で作業員の手配や近隣への挨拶を済ませてしまった。
清掃業の事はわからないのだが、きっと優秀な人材なのだろう。
「キーン社長。
1点、問題があります。」
「はい?
何か不都合な点でも?」
「ここ…
宗教施設なのではないでしょうか?」
「???
え? 嘘?
住所表記ここで合ってるよね?
登記上も連邦さん所有になってると思いますけど…
課長の地図ではどうですか?」
「いえ、連邦所有で間違いないのですが…
造りが…
一般建造物ではありません。
これ…
外装は住宅風になってますけど。
前時代の合同祭事場ではないでしょうか?
あ!
これ外側にパネル貼ってるだけですよ!」
「え? え?
合同祭事場?
確かに変わった造りですが。」
「建国時にはあったんですよ。
ほら、我が国の建国には諸民族が関与しているではないですか?
恐らく、ここは自家で廟を持つ事が出来なかった労働者階級の…
共有の廟の跡地なのかも知れません。」
「あ、いや課長。
何故、そんな建物を連邦が購入したのでしょうか?」
「うーーん。
連邦さんは昔から慢性的な財政難ですからねえ。
他のマトモな物件が買えなかったのでは?
それで買ったはいいものの、使えなくて放置していたのではないでしょうか?
あくまで推測ですが。
あ、ちなみに12年間分の固定資産税が未納のようですね。」
「課長?
ここ使えないんですか?」
「いやー。
水道も引かれてませんしね。
見た所、天井に断熱材も入っておりませんし。
あー、これ絶対に
再建築不可物件ですよ?」
「え?
あ!?
…改装出来ない。」
「はい。
更地にするにも文化庁の許可が必要になると思います。
当然、増築許可も下りないでしょう。」
「いやいやいや、困りますよ課長。
何とかならんのですか?」
「あ、いや。
もはや法運用の話になってしまいますので…
私如きには…」
「じゃあ、この物件使い道ないじゃないですか。
水道ないなら大使館利用出来ませんよ?
もう連邦に派遣を打診しちゃったのに!」
「え!?
こんな所、大使館利用なんて無理に決まってるじゃないですか!
大体、水道も無いのにどうやって生活するんですか!」
あの野蛮人共なら何とかしてしまいそうだが、そんな連中を入国させる訳にはいかない。
「ちょっと待ってくださいよ課長!
じゃ、じゃあ一体この建物は何に使えというんですか!?」
「あ、いや。
それこそ宗教施設にでもするしか無いんじゃないですか?
我々の仕事は清掃なので。
あの、キーン社長の方で登記変更を…」
「いえ…
多分、文化庁に申請しても却下されるかと。
コリンズさん、どうしますか?」
『…では一旦ここを清掃して頂いて。
キーンさん、ここら辺に空き物件持ってませんか?
とりあえず大使を住ませる場所を急いで探さないと!』
「ですね。
連邦人は騒ぎ屋ですから、刃傷沙汰に成りかねない。
課長、それでは新しい物件を用意するまで、そちらの清掃をお願い致します!」
「承知しました。
ここらは人通りも少ないので夜勤労働者にやらせます。」
「お願いします。
近くの物件押さえますので。」
キーンは業者用地図を片手に辺りを見渡す。
「コリンズさん、これ隣も空き物件ですね。
取り扱ってる業者が知り合いなので、ちょっと値段聞いて来ます。
一応、近い方がいいですよね?」
『ですね。
後から連邦の大使がイチャモン付けてくるかも知れませんし。』
==========================
【所持金】
2779億9600万ウェン
↓
2779億8520万ウェン
↓
2776億7520万ウェン
※連邦政府の固定資産税1080万ウェン(90万ウェン×12年分)代納
※ボルグ不動産に大使館用地・住宅購入費用として3億1000万ウェン支払
==========================
「コリンズさん。
そこまでする事はないですよ。
赴任して来る大使がどんな人間かもわかっていないのに。」
『まあアウグスブルグ卿への香典ということで。』
「うーん。
まあ、物件だけ渡して、それを区切りにした方が
後腐れないかもですね。」
『ええ、後からゴチャゴチャ言われるのが嫌なので。
もう、これで義理は果たしたかな、と。』
「まあ、後は大使の仕事ですね。」
『ですです。』
帰り際にポール氏がジュースを差し入れて来た。
しばらく彼と談笑していたのだが、書類仕事の割り振りが始まると、どこかに居なくなっていた。
さて、キーンの家に戻って不動産カタログを見せて貰うか。
この大使館からなるべく離れた物件がいいよね。
(あ、バリアフリーは必須でお願いします。)
==========================
【所持金】
2776億7520万ウェン
↓
2762億7520万ウェン
↓
2680億7520万ウェン
※カイン・R・グランツに預り金14億ウェンを返済
※ドナルド・キーンに預り金82億ウェンを返済
==========================
「えー。
もう日利貰えないの?
楽しみにしてたのに。」
「私の唯一の生き甲斐がぁーw」
『あの…
纏まったカネで渡させて貰えませんか?』
「まとまったカネ?」
『あ、いや。
額が膨れすぎたので
1000億とか、そのうち1兆ウェンとか。』
「あー、コリンズさんはわかってないですねえ。
数千万ウェンのギリギリ現実的な金額なだから旨味があるんですよ。
1兆とか額が大きすぎて使い道が限定されちゃうじゃないですかww」
『げ、限定といいますと?』
「…世界征服とかね。」
参ったな。
地球なら頼まれれば貰ってやってもいいんだが…
こんな世界に征服する価値は無い。
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タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
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