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第四章 1th地下ダンジョン
第25話 オリジナル・アリア
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アレグシオンの入港。
流石に俺達も厳戒態勢だ。これで3隻目か? アリアもまた3人目が来るのか?
なにごともなく入港するアレグシオンにおかしな所はない。
だが異様に綺麗だ。今までのような古臭さが無い。
それもそのはず、いま入港してくるアレグシオンはギルド仕様。Gで建造された神の建造物だ。
今までのアレグシオンはこの世界の技術で作られていた。だからこそ乗組員が魔物化してもそこに配備された銃火器が使えた。
「こんなことがあるのか?」
俺は隣にいるゼロスに尋ねる。
「俺にもわからねぇな。ユニオンの情報じゃ入港してくるのはギルドレディファースト。ギルドマスターはアリアだ」
「聖女レディじゃないんだな」
「正確には聖女レディ・アリシアだな。噂では行方不明らしいが、あれも俺達が見たのが、本物なのかなんなのか。まったく判断が出来ねぇな」
「流石にギルドマスターのアリアが魔物堕ちはねぇよな? そもそも名前だけで外見まで同じって事は・・・」
俺の言葉が途中で止まる。
あの黒髪ツインテールと赤のリボンは間違いない。外見はほぼ同じ。少し背が高いくらいか。俺達にとって3人目のアリアがアレグシオンから降りてくる。
そしてゼロスの前までくると挑戦的な目つきで睨みつけてくる。
「あんたらどういうつもり? 入港はさせても下船はさせないってどういう了見?」
アリアの言う通り、今は072の統治権を持っている俺達第072冒険者ギルドの権限で下船に待ったをかけている。
破っても罰則はない。ただの通知だ。だが判断材料が少しでも多く欲しい。
「悪いな。アレグシオンの入港は初めてじゃない。お前らは何も知らないのか?」
ゼロスが早くも出方を窺う。
「・・・あたしたちは初めてよ。ただ噂は聞いているわ。外に転がってる偽アレグシオンもね」
アリアが親指で外を指す。
なんだろうな。この仕草といい、言動といい、今までのアリアよりも大人びている。以前のアリアは生まれたてのような初々しさがあった。なんにでも興味を示す子供のような感覚があった。それがこのアリアには無い。
いや、現実逃避は止めよう。
確実に黒だ。体の中央に魔物の球体がある。
だがギルド産アレグシオンに魔物が乗れるのか? これは試してみる必要があるな。
「ゼロス。これはもう魔物であるかどうかのチェックだけでよくないか?」
俺は空砲ハンドガンと左排莢の斧ブルパップライフルを出す。
「もう話は良いのか?」
「ああ。話す必要はねぇ。パパっと試してパパっと終わらせようぜ。ゼロスも次の仕事があるだろ」
ゼロスは気付いたようだな。そう次の仕事だ。その準備が必要だ。
「それで? 何をさせようっていうの」
「簡単だぜ。ハンドガン召喚と空砲化の付与。あとはスリングを繋いで俺の銃を撃ってみてくれ」
アリアは頷くとハンドガンの空砲化を済ませる。そしてスリングを繋いでの左排莢の斧ブルパップライフルを少し戸惑いながらも左にスイッチして射撃する。
1人目のアリアはかなり危うかったが3人目のアリアは危なげがねぇな。間違いなく銃になれてる。
だが魔物球体があっても召喚魔法は使える。会話もできる。そしてギルドマスターだ。偽物や敵の使徒なんて可能性はほぼ皆無だろう。
となればこの魔物球体とはなんだ? 後付けなのか?
「なに? まだ何かあるの?」
俺の訝し気な態度にアリアが興味深そうに見てくる。
そうか。今のアリアも手足をサイボーグ化している。気付いているのか?
俺は右腕を猟犬芋虫の多連装ホーミングレーザーに変える。そしてその視線を魔物球体に向ける。猟犬芋虫の目が獲物を見つけたと報告してくる。
つまりは魔物球体をロックオン状態だ。
「そう。あんたはもう気付いてたんだ。お察しの通りよ。あたしの中には爆弾がある。それで? あたしを殺すの? そう簡単にはいかないけどね」
アリアはサイボーグ体の召喚体勢に入っている。
・・・アリアは知っている。そして見えている。
俺は右腕のサイボーグ化を解除する。
これは、アリアは、敵じゃない。
それが分かっただけで喜びがこみ上げてくる。
「なに? あんたなんなの?」
「俺はシコル・ギウス。前のお前にサイボーグ化を教えてもらったんだ。機械に呑まれて体を食わせる。機械と自分の境目を忘れるな。そして胴体は弄るな。お前もそうなのか? アリア」
「そう。本当にあたしだったのね。レディは半信半疑だったけどやっぱりあたしは他にいるみたいね。それでシコル。あんたはどうしたいの?」
「俺は、俺はアリアを死なせた。その魔物球体をもった使徒も殺した。だから、それに対処できる方法を探していた。それがこれだ」
俺はENで出来たヘカトンケイルを出す。
「ハッキリ言って未知数だぜ。これでそれが取り出せるのか。それとも暴れ出すか。ENレーザーで攻撃した時は暴れ出していた。アリア。お前の考えを聞かせてくれ」
俺が出せるのはこれだけだ。
「シコル・ギウス。惑星ファンタジーナンバーワンギルドの最大の功労者。そんなあんたがあたしにそこまで拘る理由はなに?」
「お前を助けたい。俺がサイボーグを習得したのもお前を知りたかったからだぜ」
俺は即答した。そこに嘘はない。
「呆れた。あんた本当にあのシコル・ギウス? 新進気鋭のナンバーワンギルドがランカー落ちのあたし達に恵んでくださるの?」
俺の中でピキッと何かが音を立てた。
「ごちゃごちゃうるせぇな。助けたいって言ってんだろ。聞こえねぇのかよ。お前も死にに来たとか言い出さねぇよな? 面倒ごとはこれが終わってからやれ。魔物堕ちか摘出か。どっちだ」
ホントに可愛くねぇ三人目だな。
「・・・出来るの?」
「わからねぇ。最悪実験台だ」
「あんたねぇ。もう少しオブラートに包みなさいよ」
「それやったらいらねぇってお前が言ったんだろアリア」
「恩着せがましくするんじゃないでしょうね」
「恩返しだっての。それに成功したらその魔物球体の対処が出来るってこったろ」
「ハァ。あたしの偽物にも感謝しないとね。だったらやりなさいよシコル・ギウス。この状態で放置していい理由はないわ」
俺はゼロスに合図するとアリアの四肢を物理ヘカトンアームで固定する。
そしてENヘカトンアームをアリアの胸元に。
今回もトントン拍子だ。対処は問題ないだろう。被害は最小限。
だが、被害者が出るかどうか。
・・・俺の判断はまた早すぎているんじゃないか?
「シコル。あんた失敗したら化けて出るわよ」
アリアの軽口に俺の力が抜ける。
「化けてもまた会えるならそれもいいかもな」
「あんたねぇ。そんなにあたしの事が好きなの?」
「ああ。告白はしねぇけどな。それじゃあ行くぜ」
ENヘカトンアームがアリアの胸に吸い込まれていく。完全透過じゃない。染み込んでいく感じだ。体の隙間を縫う様だ。そして指先が魔物球体に触れる。それを両手で包み込み。前へと引き出す。
抵抗はない。俺の胸に抱くようにアリアの体からそれが出てくる。
蠢く黒い球体。それは視覚からの情報だ。だがヘカトンのセンサーでは糸を引くように、ネットの中央を持ち上げたような形だ。伸ばし過ぎれば千切れる。それは攻撃と判断されるだろう。
俺は慎重に伸ばしながら魔物球体をアリアの体から離す事に成功する。糸は繋がっているが干渉は切れた。俺はそれを確認すると両手を合わせて魔物球体を圧し潰す。
グチャッと音ではない音が聞こえる。アリアから完全に離れた状態なら繋がった糸が反応することもない。
魔物球体から切り離された糸が自然と垂れ下がり消えていく。
脅威は去った。
だがアリアの様子がおかしい。サイボーグ化を解いて生身の手足に戻っている。
危うく倒れそうになった体をヘカトンではなく俺の体で受け止める。その体は尋常じゃないくらいに震えている。
「アリア!!! 機械と自分の境目を思い出せ!!! お前はアリアだ!!!」
アリアの目がぼんやりと俺の方を向く。
「お前の体はここに在る! 手も足もついてるぞ! お前の体だ!」
アリアの手を握ると痛いぐらいに握ってくる。
いいぞ。この感じは俺にも憶えがあるぜ。俺がサイボーグに呑まれかけた時の反応だ。
「シ、コル・・・。ゴメ、手が、ゴメ」
「気にすんな。生身だから痛ェけど我慢する。問題ないぜ」
「ばか、ばかシコル」
「ヒデェな。だけどよ。アリアが今更サイボーグに呑まれるのか?」
「ちが、ばか。あれ、球体が、肩代わりしてた。だから、使えなかった」
「何が使えねぇんだ?」
「境目。恐怖がわからないから、境目が見えないのよ。それが今見えて来た。恐怖が帰ってきたわね。これならまたサイボーグ化が使えそう」
「いや、使えてたじゃねぇか?」
「バカシコル。違うわよ。あんたも使えるならわかるでしょ。恐怖がないと乗っ取られるわよ。危ないって感覚がなくなるからね」
「ああ。確かに。あの巨大アームを出した時は食われるかと思ったな」
「あんた、アレを使ったの? あれは逆に安全よ。精神に干渉するからストッパーが組み込まれている。その分慣れてないと後遺症行きでしょうけどね」
「マジかよ」
「恐怖の後払いだもの。あれで近接して怖がらない方が無理でしょ。あんたは相性良さそうだけど。怖いもの知らずでしょうしね」
軽口を叩いているとアリアの手もほぐれてくる。
「なんか、久々に調子がいいわね。今ならアレが使えるかも」
そういうとアリアは立ち上がりサイボーグ化の体勢を取る。
スッとアリアの体が浮き上がると、それを中心に外骨格のような体が出現する。
これは手足どころか胴体まで食い込んでいるが大丈夫なのか?
俺の心配は他所に2~3m級のロボットが現れる。見た目の話で厳密にはサイボーグなんだろう。天使の翼のように見える何かの武器と両手にブレードか。バーナー式の干渉しない武器だろうな。下半身は足だがほぼバーニアで申し訳程度に着陸脚がついている。
するとその胸部が開いてアリアの顔が覗く。
「驚いた? これが機械天使アレグシオン。オリジナルアレグシオンの船首についていたとされる名前の元になった機体よ」
「おいおい。こんなヤバいの出して死ぬ気じゃねぇだろうな」
「当ったり前よ。今のあたしならこの先に行けるわ! ありがとうシコル。ちょっと遊んでくるわ!」
おいおい入港、下船の話はどうなった?
▽
ネタバレTips
アリアの説明。
1人目 アリアの模倣体「達」+偽物の聖女レディ+偽物のアレグシオン。
2人目 アリアの模倣体完成版+本物の聖女レディ+本物のアレグシオン。
3人目 本物のアリア+ギルド産のGで建造されたアレグシオン。
今いるアリアが本物で前に出てきたのはその模倣体。
アレグシオンとはこの世界の技術で作られた非G産の芸術品。
流石に俺達も厳戒態勢だ。これで3隻目か? アリアもまた3人目が来るのか?
なにごともなく入港するアレグシオンにおかしな所はない。
だが異様に綺麗だ。今までのような古臭さが無い。
それもそのはず、いま入港してくるアレグシオンはギルド仕様。Gで建造された神の建造物だ。
今までのアレグシオンはこの世界の技術で作られていた。だからこそ乗組員が魔物化してもそこに配備された銃火器が使えた。
「こんなことがあるのか?」
俺は隣にいるゼロスに尋ねる。
「俺にもわからねぇな。ユニオンの情報じゃ入港してくるのはギルドレディファースト。ギルドマスターはアリアだ」
「聖女レディじゃないんだな」
「正確には聖女レディ・アリシアだな。噂では行方不明らしいが、あれも俺達が見たのが、本物なのかなんなのか。まったく判断が出来ねぇな」
「流石にギルドマスターのアリアが魔物堕ちはねぇよな? そもそも名前だけで外見まで同じって事は・・・」
俺の言葉が途中で止まる。
あの黒髪ツインテールと赤のリボンは間違いない。外見はほぼ同じ。少し背が高いくらいか。俺達にとって3人目のアリアがアレグシオンから降りてくる。
そしてゼロスの前までくると挑戦的な目つきで睨みつけてくる。
「あんたらどういうつもり? 入港はさせても下船はさせないってどういう了見?」
アリアの言う通り、今は072の統治権を持っている俺達第072冒険者ギルドの権限で下船に待ったをかけている。
破っても罰則はない。ただの通知だ。だが判断材料が少しでも多く欲しい。
「悪いな。アレグシオンの入港は初めてじゃない。お前らは何も知らないのか?」
ゼロスが早くも出方を窺う。
「・・・あたしたちは初めてよ。ただ噂は聞いているわ。外に転がってる偽アレグシオンもね」
アリアが親指で外を指す。
なんだろうな。この仕草といい、言動といい、今までのアリアよりも大人びている。以前のアリアは生まれたてのような初々しさがあった。なんにでも興味を示す子供のような感覚があった。それがこのアリアには無い。
いや、現実逃避は止めよう。
確実に黒だ。体の中央に魔物の球体がある。
だがギルド産アレグシオンに魔物が乗れるのか? これは試してみる必要があるな。
「ゼロス。これはもう魔物であるかどうかのチェックだけでよくないか?」
俺は空砲ハンドガンと左排莢の斧ブルパップライフルを出す。
「もう話は良いのか?」
「ああ。話す必要はねぇ。パパっと試してパパっと終わらせようぜ。ゼロスも次の仕事があるだろ」
ゼロスは気付いたようだな。そう次の仕事だ。その準備が必要だ。
「それで? 何をさせようっていうの」
「簡単だぜ。ハンドガン召喚と空砲化の付与。あとはスリングを繋いで俺の銃を撃ってみてくれ」
アリアは頷くとハンドガンの空砲化を済ませる。そしてスリングを繋いでの左排莢の斧ブルパップライフルを少し戸惑いながらも左にスイッチして射撃する。
1人目のアリアはかなり危うかったが3人目のアリアは危なげがねぇな。間違いなく銃になれてる。
だが魔物球体があっても召喚魔法は使える。会話もできる。そしてギルドマスターだ。偽物や敵の使徒なんて可能性はほぼ皆無だろう。
となればこの魔物球体とはなんだ? 後付けなのか?
「なに? まだ何かあるの?」
俺の訝し気な態度にアリアが興味深そうに見てくる。
そうか。今のアリアも手足をサイボーグ化している。気付いているのか?
俺は右腕を猟犬芋虫の多連装ホーミングレーザーに変える。そしてその視線を魔物球体に向ける。猟犬芋虫の目が獲物を見つけたと報告してくる。
つまりは魔物球体をロックオン状態だ。
「そう。あんたはもう気付いてたんだ。お察しの通りよ。あたしの中には爆弾がある。それで? あたしを殺すの? そう簡単にはいかないけどね」
アリアはサイボーグ体の召喚体勢に入っている。
・・・アリアは知っている。そして見えている。
俺は右腕のサイボーグ化を解除する。
これは、アリアは、敵じゃない。
それが分かっただけで喜びがこみ上げてくる。
「なに? あんたなんなの?」
「俺はシコル・ギウス。前のお前にサイボーグ化を教えてもらったんだ。機械に呑まれて体を食わせる。機械と自分の境目を忘れるな。そして胴体は弄るな。お前もそうなのか? アリア」
「そう。本当にあたしだったのね。レディは半信半疑だったけどやっぱりあたしは他にいるみたいね。それでシコル。あんたはどうしたいの?」
「俺は、俺はアリアを死なせた。その魔物球体をもった使徒も殺した。だから、それに対処できる方法を探していた。それがこれだ」
俺はENで出来たヘカトンケイルを出す。
「ハッキリ言って未知数だぜ。これでそれが取り出せるのか。それとも暴れ出すか。ENレーザーで攻撃した時は暴れ出していた。アリア。お前の考えを聞かせてくれ」
俺が出せるのはこれだけだ。
「シコル・ギウス。惑星ファンタジーナンバーワンギルドの最大の功労者。そんなあんたがあたしにそこまで拘る理由はなに?」
「お前を助けたい。俺がサイボーグを習得したのもお前を知りたかったからだぜ」
俺は即答した。そこに嘘はない。
「呆れた。あんた本当にあのシコル・ギウス? 新進気鋭のナンバーワンギルドがランカー落ちのあたし達に恵んでくださるの?」
俺の中でピキッと何かが音を立てた。
「ごちゃごちゃうるせぇな。助けたいって言ってんだろ。聞こえねぇのかよ。お前も死にに来たとか言い出さねぇよな? 面倒ごとはこれが終わってからやれ。魔物堕ちか摘出か。どっちだ」
ホントに可愛くねぇ三人目だな。
「・・・出来るの?」
「わからねぇ。最悪実験台だ」
「あんたねぇ。もう少しオブラートに包みなさいよ」
「それやったらいらねぇってお前が言ったんだろアリア」
「恩着せがましくするんじゃないでしょうね」
「恩返しだっての。それに成功したらその魔物球体の対処が出来るってこったろ」
「ハァ。あたしの偽物にも感謝しないとね。だったらやりなさいよシコル・ギウス。この状態で放置していい理由はないわ」
俺はゼロスに合図するとアリアの四肢を物理ヘカトンアームで固定する。
そしてENヘカトンアームをアリアの胸元に。
今回もトントン拍子だ。対処は問題ないだろう。被害は最小限。
だが、被害者が出るかどうか。
・・・俺の判断はまた早すぎているんじゃないか?
「シコル。あんた失敗したら化けて出るわよ」
アリアの軽口に俺の力が抜ける。
「化けてもまた会えるならそれもいいかもな」
「あんたねぇ。そんなにあたしの事が好きなの?」
「ああ。告白はしねぇけどな。それじゃあ行くぜ」
ENヘカトンアームがアリアの胸に吸い込まれていく。完全透過じゃない。染み込んでいく感じだ。体の隙間を縫う様だ。そして指先が魔物球体に触れる。それを両手で包み込み。前へと引き出す。
抵抗はない。俺の胸に抱くようにアリアの体からそれが出てくる。
蠢く黒い球体。それは視覚からの情報だ。だがヘカトンのセンサーでは糸を引くように、ネットの中央を持ち上げたような形だ。伸ばし過ぎれば千切れる。それは攻撃と判断されるだろう。
俺は慎重に伸ばしながら魔物球体をアリアの体から離す事に成功する。糸は繋がっているが干渉は切れた。俺はそれを確認すると両手を合わせて魔物球体を圧し潰す。
グチャッと音ではない音が聞こえる。アリアから完全に離れた状態なら繋がった糸が反応することもない。
魔物球体から切り離された糸が自然と垂れ下がり消えていく。
脅威は去った。
だがアリアの様子がおかしい。サイボーグ化を解いて生身の手足に戻っている。
危うく倒れそうになった体をヘカトンではなく俺の体で受け止める。その体は尋常じゃないくらいに震えている。
「アリア!!! 機械と自分の境目を思い出せ!!! お前はアリアだ!!!」
アリアの目がぼんやりと俺の方を向く。
「お前の体はここに在る! 手も足もついてるぞ! お前の体だ!」
アリアの手を握ると痛いぐらいに握ってくる。
いいぞ。この感じは俺にも憶えがあるぜ。俺がサイボーグに呑まれかけた時の反応だ。
「シ、コル・・・。ゴメ、手が、ゴメ」
「気にすんな。生身だから痛ェけど我慢する。問題ないぜ」
「ばか、ばかシコル」
「ヒデェな。だけどよ。アリアが今更サイボーグに呑まれるのか?」
「ちが、ばか。あれ、球体が、肩代わりしてた。だから、使えなかった」
「何が使えねぇんだ?」
「境目。恐怖がわからないから、境目が見えないのよ。それが今見えて来た。恐怖が帰ってきたわね。これならまたサイボーグ化が使えそう」
「いや、使えてたじゃねぇか?」
「バカシコル。違うわよ。あんたも使えるならわかるでしょ。恐怖がないと乗っ取られるわよ。危ないって感覚がなくなるからね」
「ああ。確かに。あの巨大アームを出した時は食われるかと思ったな」
「あんた、アレを使ったの? あれは逆に安全よ。精神に干渉するからストッパーが組み込まれている。その分慣れてないと後遺症行きでしょうけどね」
「マジかよ」
「恐怖の後払いだもの。あれで近接して怖がらない方が無理でしょ。あんたは相性良さそうだけど。怖いもの知らずでしょうしね」
軽口を叩いているとアリアの手もほぐれてくる。
「なんか、久々に調子がいいわね。今ならアレが使えるかも」
そういうとアリアは立ち上がりサイボーグ化の体勢を取る。
スッとアリアの体が浮き上がると、それを中心に外骨格のような体が出現する。
これは手足どころか胴体まで食い込んでいるが大丈夫なのか?
俺の心配は他所に2~3m級のロボットが現れる。見た目の話で厳密にはサイボーグなんだろう。天使の翼のように見える何かの武器と両手にブレードか。バーナー式の干渉しない武器だろうな。下半身は足だがほぼバーニアで申し訳程度に着陸脚がついている。
するとその胸部が開いてアリアの顔が覗く。
「驚いた? これが機械天使アレグシオン。オリジナルアレグシオンの船首についていたとされる名前の元になった機体よ」
「おいおい。こんなヤバいの出して死ぬ気じゃねぇだろうな」
「当ったり前よ。今のあたしならこの先に行けるわ! ありがとうシコル。ちょっと遊んでくるわ!」
おいおい入港、下船の話はどうなった?
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ネタバレTips
アリアの説明。
1人目 アリアの模倣体「達」+偽物の聖女レディ+偽物のアレグシオン。
2人目 アリアの模倣体完成版+本物の聖女レディ+本物のアレグシオン。
3人目 本物のアリア+ギルド産のGで建造されたアレグシオン。
今いるアリアが本物で前に出てきたのはその模倣体。
アレグシオンとはこの世界の技術で作られた非G産の芸術品。
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