異世界ムフフ滞在記 ~ポンコツでゲイの僕が異世界転移したら、魔法の才能に目覚めた上にイケオジ騎士と相思相愛に!?~

古木クー太

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2章

2-13 それぞれの明日へ

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 あの悪夢のような出来事から一週間が経った。エルドリアの町はまるで嵐が過ぎ去ったかのように穏やかな日常を取り戻していた。今はこうして、騎士団詰所のバルコニーから収穫を終えた月光麦の畑をぼんやりと眺めている。

 僕が夢魔インキュバスの幻術に倒れた後、ダグラスさんが聖騎士の力に目覚め夢魔を退けてくれたのだそうだ。後から彼自身が少し照れくさそうに教えてくれた話では、彼の家系は代々、王家に仕える特別な力を有した聖騎士を輩出してきた血筋らしい。彼自身はその力がなかなか顕現けんげんせず長年くすぶっていたのだが、あの時、ついに覚醒したのだという。あんなに格好良くて、強くて、その上、聖騎士だなんて。完璧すぎでは?

 カイン君は無事に正気を取り戻した。団長から下された“騎士の資格喪失”の処分は覆らなかったけれど、彼は自らの意志で、従士として騎士団に残ることを決めた。記憶は少し混濁しているようだけど、自身の過ちについては理解しているとのこと。彼は今、誰よりも熱心に訓練に打ち込み、騎士団詰所の修復作業を黙々と手伝っている。言葉ではなく、行動で表そうとしている彼の背中は、以前よりもずっと大きく見えた。

 アンナさんも、彼のことを公言したりはせず、時折、少し離れた場所から心配そうに彼の姿を見守っている。

 町の被害が最小限で済んだのは、騎士団や町の自警団、そして偶然居合わせた者たちの奮闘のおかげだったと聞いた。中でもあの元上司、ゴウズさんが大活躍だったらしい。なんでも、その圧倒的なパワーで敵の結界魔法を蹴り壊したり、素手で敵をなぎ倒したりしたそうだ。見た目だけの筋肉じゃなかったんだな。

 セドリックさんとレオニダス先生が残された魔力の残滓をたどって夢魔の行方を追おうとしたけれど、残念ながら、その手がかりは途中で完全に消えてしまっていたらしい。夢魔は今も、どこかの闇に潜んでいる。この一件を受け、騎士団の方針として、今後はエルドリアの町の守りをより一層強化していくことになった。


 僕がそんなことを思い返していると、背後から静かな足音がして、隣にダグラスさんが立った。二人で並んで、夕日に染まるエルドリアの風景を眺める。言葉はなくとも心地よい沈黙が僕たちの間を流れた。

 やがて、彼がぽつりと口を開いた。

「……俺も、なぜあの時、力が目覚めたのか、はっきりとは分からん」

 僕は黙って彼の言葉の続きを待った。

「ただ……」

 彼は、僕の方を真っ直ぐに見つめた。その真剣な青い瞳に、僕は心臓を鷲掴みにされたかのような衝撃を受けた。

「お前を守護まもりたい……。あの時、頭にあったのは、それだけだった」

 それは、騎士として民を守るという義務感から来る言葉ではないように、僕には思えた。僕、キューイチローという、ただ一人の人間に対する、彼の魂からの叫びのように聞こえたのだ。

「……ダグラス、さん……」

 夕日が僕たち二人をオレンジ色に染めていく。

 僕たちは言葉もなく、ただ互いを見つめ合っていた。
 時間の感覚がどこか遠くへ行ってしまったかのようだった。


 エルドリアの空の下で、僕たちの時間は、ただ静かに、そしてどこまでも優しく流れていく。まるで、この瞬間が永遠に続くかのように、僕たちはいつまでも、そうしていた。
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