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ダンの処刑3
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アミーユは後ろ手に拘束されて赤い絨毯にうずくまっていた。
アミーユが首魁と関係があるのは、それも深い関係にあるのは誰の目にも明らかだった。
もうアミーユに弁解の余地はない。アミーユを支持していた者も、反論することはできなかった。
ブラッドリーも戸惑いと驚きとをその顔に浮かべていた。
青髭宰相がアミーユの髪を掴み上げて喋っていた。
「首魁と組んだリージュの卑劣は誰の目にも明らか。だが、お前は民衆には人気がある。盗賊団もまた、人気があった。人気者同士が裏で組んでいたとなると民衆は拍手喝采するやもしれぬ。どうだ、生かしておいてほしいのなら、手はあるが」
アミーユの目はうつろで何も聞こえていないようだった。
青髭宰相がときおり、アミーユの頬をペチペチと叩くもアミーユの反応はない。
「生かしてほしいか!」
青髭宰相が怒鳴っても、まるでアミーユには聞こえていなかった。
アミーユは放心していた。
アミーユにはもう何も見えず何も聞こえていなかった。
真っ暗闇に一人たたずんでいた。
♰♰♰
ううぅっ――。
アミーユが唸ったときには、家臣は出て行った後だった。
唸ったアミーユを、王座のアデレートと青髭宰相が見下ろした。
アミーユは後ろ手に拘束されている。
アデレートは、ワイングラスをおいて、アミーユに近寄ってきた。
「正気を取り戻したようね。あなたはまだ使える。議会が王室に決議を押し付けようとしています。突っ返したのでは民衆は収まりません。しかし、あなたがわたくしの側、王政側に味方するというのならば、民衆もおさまります」
アデレートは最後まで言えなかった。
アミーユがアデレートに飛び上がった。胸に頭突きをくらわせた。
アミーユは意味をなさない叫びをあげる。
「おまっ! ぐぁっ! ぐぁっ!」
お前がダンを殺した! ダンを殺した! 俺のダンを!
すぐに、青髭宰相がアミーユの頭を蹴った。アミーユは横に倒れ込んだ。後ろ手に拘束されているアミーユは立ち上がれない。這ってアデレートに近寄る。
「おまえがっ! おまえがっ!」
アミーユに気圧されて、アデレートと青髭宰相は後ろずさった。這うアミーユの横腹を、青髭宰相が蹴った。
それでもアミーユはアデレートと青髭宰相に這って行く。
アデレートも青髭宰相も、ぞっとした顔でアミーユを眺め、入ってきた親衛隊に取り押さえさせてもまだ、アミーユを恐ろしげな顔で眺めていた。
次にアミーユが我に戻ったとき、椅子に座らされて後ろ手に拘束されていた。足も椅子の脚にくくりつけられている。どうやら小部屋のようだ。
アミーユは涙でその顔がぐちゃぐちゃになっていた。
ダンが死んだ、死んでしまった。
死なないと言った。
なのに死んだ。
もう俺も生きていたくない、
俺がダンを救えなかったのが悪い。いくらでも回避できる時点はあったはずなのに、何もしなかった。
俺は甘い、最後まで甘かった。
物語通りに筋は進んだ。
♰♰♰
どれほどの時間が経ったのか。
現れた兵士はアミーユの足をほどいた。新たに鎖のついた足かせを足首に巻かれる。
「出てください」
兵士にうながされるまま、足を引きずって歩く。
その兵士はアミーユをいたわって、ゆっくりと歩いているのがわかった。
渡り廊下を早春の風がそよぐ。
すでに辺りは夕陽に染まり、ブドウ棚の丘陵を赤々と照らしていた。
ヒバリの鳴き声が遠ざかっていく。
自分が今どこにいるのかよくわからなかった。
ここはどこだろう……?
ああ気持ちいい風だ。
ただ、春の息吹に包まれて、それを心地よいと思うアミーユがいる。
春だ、春がきたんだ。ああ寒い冬は終わった。
不意に声を聞く。
―――お前は王になれ。
ダン……………
ああ、ダン。
春が来てるぞ。
アミーユが崩れ落ちる。それを兵士が支える。支えられて歩く。
ああ、ダン。
もう季節なんか要らないのに。
―――俺は貴族をやっつける。悪い貴族をやっつけるんだ。
「アハハ…………」
アミーユから笑い声が漏れ出た。
なんてこった。これはおかしい。
やっつけられたのはダンだった。
笑い声は大きくなる。
「アハハハハハハ! アハハハハハハ! アハハハハハ!」
ダンは馬鹿だ。大馬鹿だ。
目をキラキラさせて馬鹿な夢を語っていた。
「アハハハハハ! アハハハハハ!」
目をキラキラさせたダンは少年のようだった。ああ、可愛かった、そのときのダンは本当に可愛かった。
笑い続けるアミーユに、ときおり兵士が気の毒そうな目を向けてきた。
ダンは馬鹿だ。大馬鹿だ。
「アアアア、アアアァァァァァ」
笑い声は最後に嗚咽になった。嗚咽を垂れ流し続ける。
兵士にアミーユは訊いた。嗚咽の隙間から声を絞る。
「わ、私は今から処刑されるのか?」
兵士は言葉を詰まらせた。
「そ、うか、処刑されるのだな」
兵士はやはり黙ったままだった。アミーユは声を振り絞る。
「ア、アデレート閣下に会わせてくれ。私は王政側につく、と。ダニエル国王を支持すると」
アミーユが首魁と関係があるのは、それも深い関係にあるのは誰の目にも明らかだった。
もうアミーユに弁解の余地はない。アミーユを支持していた者も、反論することはできなかった。
ブラッドリーも戸惑いと驚きとをその顔に浮かべていた。
青髭宰相がアミーユの髪を掴み上げて喋っていた。
「首魁と組んだリージュの卑劣は誰の目にも明らか。だが、お前は民衆には人気がある。盗賊団もまた、人気があった。人気者同士が裏で組んでいたとなると民衆は拍手喝采するやもしれぬ。どうだ、生かしておいてほしいのなら、手はあるが」
アミーユの目はうつろで何も聞こえていないようだった。
青髭宰相がときおり、アミーユの頬をペチペチと叩くもアミーユの反応はない。
「生かしてほしいか!」
青髭宰相が怒鳴っても、まるでアミーユには聞こえていなかった。
アミーユは放心していた。
アミーユにはもう何も見えず何も聞こえていなかった。
真っ暗闇に一人たたずんでいた。
♰♰♰
ううぅっ――。
アミーユが唸ったときには、家臣は出て行った後だった。
唸ったアミーユを、王座のアデレートと青髭宰相が見下ろした。
アミーユは後ろ手に拘束されている。
アデレートは、ワイングラスをおいて、アミーユに近寄ってきた。
「正気を取り戻したようね。あなたはまだ使える。議会が王室に決議を押し付けようとしています。突っ返したのでは民衆は収まりません。しかし、あなたがわたくしの側、王政側に味方するというのならば、民衆もおさまります」
アデレートは最後まで言えなかった。
アミーユがアデレートに飛び上がった。胸に頭突きをくらわせた。
アミーユは意味をなさない叫びをあげる。
「おまっ! ぐぁっ! ぐぁっ!」
お前がダンを殺した! ダンを殺した! 俺のダンを!
すぐに、青髭宰相がアミーユの頭を蹴った。アミーユは横に倒れ込んだ。後ろ手に拘束されているアミーユは立ち上がれない。這ってアデレートに近寄る。
「おまえがっ! おまえがっ!」
アミーユに気圧されて、アデレートと青髭宰相は後ろずさった。這うアミーユの横腹を、青髭宰相が蹴った。
それでもアミーユはアデレートと青髭宰相に這って行く。
アデレートも青髭宰相も、ぞっとした顔でアミーユを眺め、入ってきた親衛隊に取り押さえさせてもまだ、アミーユを恐ろしげな顔で眺めていた。
次にアミーユが我に戻ったとき、椅子に座らされて後ろ手に拘束されていた。足も椅子の脚にくくりつけられている。どうやら小部屋のようだ。
アミーユは涙でその顔がぐちゃぐちゃになっていた。
ダンが死んだ、死んでしまった。
死なないと言った。
なのに死んだ。
もう俺も生きていたくない、
俺がダンを救えなかったのが悪い。いくらでも回避できる時点はあったはずなのに、何もしなかった。
俺は甘い、最後まで甘かった。
物語通りに筋は進んだ。
♰♰♰
どれほどの時間が経ったのか。
現れた兵士はアミーユの足をほどいた。新たに鎖のついた足かせを足首に巻かれる。
「出てください」
兵士にうながされるまま、足を引きずって歩く。
その兵士はアミーユをいたわって、ゆっくりと歩いているのがわかった。
渡り廊下を早春の風がそよぐ。
すでに辺りは夕陽に染まり、ブドウ棚の丘陵を赤々と照らしていた。
ヒバリの鳴き声が遠ざかっていく。
自分が今どこにいるのかよくわからなかった。
ここはどこだろう……?
ああ気持ちいい風だ。
ただ、春の息吹に包まれて、それを心地よいと思うアミーユがいる。
春だ、春がきたんだ。ああ寒い冬は終わった。
不意に声を聞く。
―――お前は王になれ。
ダン……………
ああ、ダン。
春が来てるぞ。
アミーユが崩れ落ちる。それを兵士が支える。支えられて歩く。
ああ、ダン。
もう季節なんか要らないのに。
―――俺は貴族をやっつける。悪い貴族をやっつけるんだ。
「アハハ…………」
アミーユから笑い声が漏れ出た。
なんてこった。これはおかしい。
やっつけられたのはダンだった。
笑い声は大きくなる。
「アハハハハハハ! アハハハハハハ! アハハハハハ!」
ダンは馬鹿だ。大馬鹿だ。
目をキラキラさせて馬鹿な夢を語っていた。
「アハハハハハ! アハハハハハ!」
目をキラキラさせたダンは少年のようだった。ああ、可愛かった、そのときのダンは本当に可愛かった。
笑い続けるアミーユに、ときおり兵士が気の毒そうな目を向けてきた。
ダンは馬鹿だ。大馬鹿だ。
「アアアア、アアアァァァァァ」
笑い声は最後に嗚咽になった。嗚咽を垂れ流し続ける。
兵士にアミーユは訊いた。嗚咽の隙間から声を絞る。
「わ、私は今から処刑されるのか?」
兵士は言葉を詰まらせた。
「そ、うか、処刑されるのだな」
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