玉座の檻

萌於カク

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ダンの処刑2

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「証拠は、その背信の証拠はあるのですか?」

 アデレートは、待ってましたと言わんばかりに口を開いた。

「今から証拠をお見せしましょう。盗賊団の首魁を捕らえています」

 アミーユはピクリと反応した。アデレートを見た。アデレートはアミーユを見返している。

 まさか。ダンが捕らえられるはずがない。あれだけ慎重で嗅覚に優れている男だ。捕まるはずがない。
 そう信じるも、胸が騒ぎ出す。

「首魁は夜毎、この逆賊のもとに出入りしていました。昨晩、そこを抑えたのです」

 昨晩? 俺が幸妃たちと過ごしている間に、ダンは俺を訪れ、そして捕まったのか。まさか、あのダンが、そんなドジを踏んだのか、ありえない。

「リージュは、こともあろうか、官舎で大犯罪人と同衾していたのです。アミーユ・ル・リージュの第二性は、Ω。Ωの性で、悪党をたぶらかし、自分の手先として使ってきたのです」

 官舎…………?
 ならば違う。
 ダンは捕まっていない。
 アミーユはほっと胸を撫でおろした。

 そんなアミーユを家臣らは、まさか、と言った顔で眺めている。

 アミーユがΩだとは俄かに信じがたい。しかし、言われてみれば、そうかもしれない、と、狼狽をし始める。

 アミーユは袖口で鼻をぬぐった。痛めつけられたお陰で朗々たる声は出ないが、それでも告げる。

「せ、摂政閣下、では、その首魁を連れてきてください。私はダニエル陛下の忠実なしもべ。私がその首魁を処刑しましょう」

 アミーユの弁に、アデレートの言うことが嘘だと知らされ、その場の空気はまたひっくり返った。アミーユに同情的になる。

 アデレートは、しかし、余裕の笑みを浮かべていた。
 アミーユはぞっとしたものを感じる。

「もう処刑台に乗せています」

 えっ………。
 虚を突かれたアミーユの目の前で、『王の間』の南側の入り口が一斉に開く。
 目の前には、バルコニーが開けていた。『王の間』から続くバルコニーは、王宮前広場を見下ろすものだ。

 アデレートは王座を立ち上がり、優雅にスカートのすそを翻して、バルコニーに向かう。家臣らはその後を追う。その後ろから青ざめた顔で片足を引きずりながら、バルコニーに向かうアミーユの姿があった。

 バルコニーの先に、公開処刑台が見えてくる。

 一人の男が処刑台に引っ張り上げられた。その男は大柄だ。

 違う。ダンじゃない。俺よりも二周りは大きそうな男だが違う。
 男には黒ヒゲが生えているし、片目をアイパッチで覆っている。何より男は黒髪だ。

 男は何か薬を飲まされているのか、ふらついている。処刑台に乗せられると、上向きに寝かせられた。大の字になり、両手首、両足を、枷で固定される。

 アデレートは、黒い旗を手に持っている。それをアミーユは視界の端に捕らえた。処刑人への合図の旗だろう。

 黒ヒゲに独眼……………?
 黒ヒゲに、どく、がん…………。

 目を凝らせば髪は黒いターバンだった。

 ヒァァァァァ――――!

 アミーユから細く息が漏れた。
 あれは、あれはダンだ! 首魁の扮装をしているダンだ!

 ァァァァァァ!

 アミーユはアデレートに突進した。片足で蹴って、アデレートのスカートに飛びついた。
 言葉にならない叫び声をあげて、尻もちをついているアデレートから黒い旗を奪う。
 すぐに後ろから背中を引っ張られる。

 黒い旗を抱え込んで丸くなれば、蹴りを入れられる。それでも、黒い旗を渡すまいと抱え込む。

 青髭宰相が黒い上着を脱いで、処刑人に向かって振るのが見えた。

「ヤアァァァァァァッ」

 アミーユは黒旗を放り出して、バルコニーの石床を手すりまで這う。青髭宰相が、そんなアミーユを、処刑台の見える位置まで引っ張り上げた。

「見ろ、あれがお前のαの最期だ」

 処刑台から丸いものがごろりと転がり落ちた。黒ターバンの首。

「ああっ、いやあっ、ダンッ、ダンーーーーッ」

 アミーユは悲痛な叫び声をあげる。その場の者は呆然とアミーユを見ていた。

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