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懊悩5
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マリウスは鼻声を出した。
「お願い、俺を拒絶しないで、エミーユ、俺、エミーユと一緒にいたい……。お願い……」
「マリウス……。私はあなたと一緒になれない」
「どうして! あなたは何度でも俺を捨てる。俺を捨てないで………!」
「私のものではないものを捨てられません」
「じゃあ、俺をエミーユのものにして」
「あなたは皇帝です」
「好きでなったわけじゃない。なりゆきだ」
「私にも大事なものがあるんです………」
「………、リベル……?」
マリウスのつぶやきにエミーユはピクリと反応する。
「あ、あなたには関係ないことです!」
エミーユのピシャリとした言いように、マリウスは悄然となる。
エミーユにとってリベルはマリウスとは比べようもないほどに大事な存在であることを思い知る。
「リ、リベルも一緒に行こう。今から迎えにやる」
「や、やめて! やめてください! お願いです、私たちを放っておいてください!」
その強い言い方にさすがにマリウスも大いに傷つけられた。
「エミーユ……」
マリウスから低い声が出た。
マリウスにどす黒い感情が渦巻いた。エミーユをこのまま馬に乗せて連れ去ってもいい。マリウスにはそれをたやすくできる。
(それをやっても止めるものはいない)
エミーユは一介の使用人だ。エレナ女王だって、マリウスが望めばエミーユを喜んで差し出すだろう。エルラントとグレンの力関係からして、拒否しようもない。
今やマリウスは大陸での絶大な権力者だ。
そう考えるマリウスの手が震えはじめる。
(けれどそれをやったら俺は本当にエミーユに嫌われる。俺は皇帝なのに、エミーユも手に入れられないのか)
「ねえ、どうすればいい? 俺はどうすればあなたと一緒にいられる?」
もう考えてもわからない。マリウスに出来るのはすべてをエミーユに明け渡すだけだ。
エミーユはしばらくののち答えた。
「マリウス……。あなたがただのマリウスだったら。あなたがただの甘えん坊の泣き虫マリウスだったら………」
「俺は今でも甘えん坊の泣き虫だ。あなたにはどこまでも甘えてしまう。あなたが俺を甘えん坊の泣き虫にしてしまうんだ」
「でも、皇帝です」
「そうだよ、皇帝だ。でもそんなのどうでもいい」
「どうでもよくはありません!」
「どうでもいい」
「よくありません!」
「えっ………、ひょっとして、皇帝なのが、だめなの……?」
「皇帝は遠すぎます………。あまりに遠すぎます……」
マリウスは呆気に取られた顔つきでエミーユを見ていた。そして、ひらめいた顔をした。
(よし、皇帝やめる!)
マリウスは帝位についているものの、すべてはエミーユのためで、皇帝になりたかったわけではない。
皇帝であることが二人の障害なら、そんなのすぐさま捨てられる。
「エ、エミ……、待ってて! すぐにやめてくるから、皇帝やめてくるから!」
「え?」
ポカンとするエミーユの前で、マリウスは全裸のまま部屋を飛び出した。
キャッ、と声を上げるメイドらの声が聞こえてきたかと思うと、「陛下、服!」と護衛隊長に怒られたマリウスがまた戻ってきて、ドタドタと寝室へ入って行ったかと思うと、また出てきた。
「俺の服、どこ………?」
出立予定だったために、替えの衣服はすでに荷物に詰めてあるが、脱いだ衣服があるはずだ。なのに見当たらない。
「ところどころ破けていたので、つくろっていました」
エミーユが縫物をしていたのはマリウスの衣服だったようだ。
昨晩、脱ぐときに勢いあまって破ってしまったのだ。
テーブルの衣服を、マリウスはつかみ取った。
「ありがとう!」
「針がまだ残っています」
エミーユの注意も聞かずに服を着始めたマリウスは声を上げた。
「待ってて、待っててね、エミーユ! あっ、イタタ」
「糸を切りますのでお待ちを」
「大丈夫、大丈夫!」
マリウスは、エミーユの目の前で、ブチッと針のついた糸を引きちぎった。再び衣服を着ようとする。
「まだ縫い終わっておりません」
「ちょっとくらい破れてても全然平気!」
「ちょっとどころでは……」
「待ってて、待っててね、エミーユ!」
マリウスは衣服を着込むとすごい勢いで出て行った。
出て行ったかと思うと再び戻ってきて、エミーユを抱きしめてはキスをして、また抱きしめてはキスをして、騒々しく出て行った。
「お願い、俺を拒絶しないで、エミーユ、俺、エミーユと一緒にいたい……。お願い……」
「マリウス……。私はあなたと一緒になれない」
「どうして! あなたは何度でも俺を捨てる。俺を捨てないで………!」
「私のものではないものを捨てられません」
「じゃあ、俺をエミーユのものにして」
「あなたは皇帝です」
「好きでなったわけじゃない。なりゆきだ」
「私にも大事なものがあるんです………」
「………、リベル……?」
マリウスのつぶやきにエミーユはピクリと反応する。
「あ、あなたには関係ないことです!」
エミーユのピシャリとした言いように、マリウスは悄然となる。
エミーユにとってリベルはマリウスとは比べようもないほどに大事な存在であることを思い知る。
「リ、リベルも一緒に行こう。今から迎えにやる」
「や、やめて! やめてください! お願いです、私たちを放っておいてください!」
その強い言い方にさすがにマリウスも大いに傷つけられた。
「エミーユ……」
マリウスから低い声が出た。
マリウスにどす黒い感情が渦巻いた。エミーユをこのまま馬に乗せて連れ去ってもいい。マリウスにはそれをたやすくできる。
(それをやっても止めるものはいない)
エミーユは一介の使用人だ。エレナ女王だって、マリウスが望めばエミーユを喜んで差し出すだろう。エルラントとグレンの力関係からして、拒否しようもない。
今やマリウスは大陸での絶大な権力者だ。
そう考えるマリウスの手が震えはじめる。
(けれどそれをやったら俺は本当にエミーユに嫌われる。俺は皇帝なのに、エミーユも手に入れられないのか)
「ねえ、どうすればいい? 俺はどうすればあなたと一緒にいられる?」
もう考えてもわからない。マリウスに出来るのはすべてをエミーユに明け渡すだけだ。
エミーユはしばらくののち答えた。
「マリウス……。あなたがただのマリウスだったら。あなたがただの甘えん坊の泣き虫マリウスだったら………」
「俺は今でも甘えん坊の泣き虫だ。あなたにはどこまでも甘えてしまう。あなたが俺を甘えん坊の泣き虫にしてしまうんだ」
「でも、皇帝です」
「そうだよ、皇帝だ。でもそんなのどうでもいい」
「どうでもよくはありません!」
「どうでもいい」
「よくありません!」
「えっ………、ひょっとして、皇帝なのが、だめなの……?」
「皇帝は遠すぎます………。あまりに遠すぎます……」
マリウスは呆気に取られた顔つきでエミーユを見ていた。そして、ひらめいた顔をした。
(よし、皇帝やめる!)
マリウスは帝位についているものの、すべてはエミーユのためで、皇帝になりたかったわけではない。
皇帝であることが二人の障害なら、そんなのすぐさま捨てられる。
「エ、エミ……、待ってて! すぐにやめてくるから、皇帝やめてくるから!」
「え?」
ポカンとするエミーユの前で、マリウスは全裸のまま部屋を飛び出した。
キャッ、と声を上げるメイドらの声が聞こえてきたかと思うと、「陛下、服!」と護衛隊長に怒られたマリウスがまた戻ってきて、ドタドタと寝室へ入って行ったかと思うと、また出てきた。
「俺の服、どこ………?」
出立予定だったために、替えの衣服はすでに荷物に詰めてあるが、脱いだ衣服があるはずだ。なのに見当たらない。
「ところどころ破けていたので、つくろっていました」
エミーユが縫物をしていたのはマリウスの衣服だったようだ。
昨晩、脱ぐときに勢いあまって破ってしまったのだ。
テーブルの衣服を、マリウスはつかみ取った。
「ありがとう!」
「針がまだ残っています」
エミーユの注意も聞かずに服を着始めたマリウスは声を上げた。
「待ってて、待っててね、エミーユ! あっ、イタタ」
「糸を切りますのでお待ちを」
「大丈夫、大丈夫!」
マリウスは、エミーユの目の前で、ブチッと針のついた糸を引きちぎった。再び衣服を着ようとする。
「まだ縫い終わっておりません」
「ちょっとくらい破れてても全然平気!」
「ちょっとどころでは……」
「待ってて、待っててね、エミーユ!」
マリウスは衣服を着込むとすごい勢いで出て行った。
出て行ったかと思うと再び戻ってきて、エミーユを抱きしめてはキスをして、また抱きしめてはキスをして、騒々しく出て行った。
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