神喰らいの蛇レイ・スカーレット

海水

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 外は大雨でどんよりとしているが、楽しそうに部屋の中を駆け回る可愛い赤毛の女の子をレイが後ろから捕まえて、そのままベッドの上に座る。
 私の知っているレイよりも随分と若くて、髪が黒い。彼女は女の子とお揃いの三つ編みの髪型がとても微笑ましく羨ましい。私も、三つ編みのやり方は教えて貰ったけど、身体が弱くて寝たきりだったお母様とは、こんなに楽しそうに遊んだことはなかった。
 まだ彼女の右腕は義手ではなく、優しい綺麗な手だった。今のレイみたいにやつれていなく、女の子、そうマリーを愛おしそうに抱きしめていた。
 家の扉が叩かれ、きっとマリーのお父さんが帰って来たんだ。レイの腕の中からマリーは飛び出し、玄関の扉を開ける。
 外にはお父さんでは・・・・・・なく。いや、瘴気魔“龍頭獅子舞りゅうずのししまい”がマリーの目の前でお父さんを噛み潰していた。飛び散った血液がマリーの顔にかかり、ルーンソードを抜いたレイがマリーの手を掴んで左手で抱き寄せる。まさに今日、私にしたみたいだ。
 だが、レイの表情には焦燥感を滲ませ、彼女は龍頭獅子舞に剣を向けながら、の口の中の無残な夫の姿に叫び声をあげた。
 奴は壁を壊して無理矢理家の中に入り、マリーを抱きしめるレイを、龍頭の下から生えた脚で彼女らを蹴り飛ばした。レイは壁を突き破り、マリーは地面の泥濘に投げ出された。
 マリーは起き上がると、倒れた彼女の母に駆け寄ろうと走る。しかし、その後ろから竜頭獅子舞が大口を開けて迫っていた。
 もうやめて! 彼女らがなにをしたって言うの? 幸せなひと時を彼女たちに返してあげて!
 レイはマリーの後ろに迫る獅子舞に気付き、剣を投げ捨てて右手を伸ばす。
 しかし、龍頭獅子舞の口の中から無数の手が飛び出してマリーを掴み、無理矢理引き摺り込む。レイは伸ばした右手でマリーの手を間一髪掴むことに成功し、取り戻そうと引っ張る。
 だが、そんな彼女の必死な様子を嘲笑うように龍頭獅子舞は口を勢いよく閉じた。マリーが口の中に消えると同時に龍頭獅子舞の口の中から大量の血が飛び散り、レイは真っ赤な鮮血に塗れた。
 彼女は肘から上の部分まで噛みちぎられた右腕を虚な瞳で見つめ、その場で膝から崩れ落ちた。絶望に満ちたその表情のまま泥濘に倒れて、死んだように動かなかった。
 周りを見ると、彼女の住んでいた村は破壊し尽くされていて、村人たちの亡骸が散乱していた。
 竜頭獅子舞は嫌な音を立てて咀嚼すると、赤黒くどろどろしたものを、泥濘に倒れたレイに吐きかける。龍頭獅子舞はレイを嘲るように踊ると、地面の中に溶け込むように消えていった。
 もう、やめて。これは私への試練なの? 覚醒した私に、その力に耐えられるのか試しているの?
 レイは声にならない声をあげながら、赤黒いどろどろしたものを左手でかき集めるが、それは大雨でどんどん流されていってしまう。
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もかき集めようとするが、それは失敗し、レイは左手で頭を掻きむしって絶叫する。大雨の中、獣のようにレイは絶叫していた。



 気がつくと、私は涙で枕をぐしょぐしょに濡らしていた。そうだ、あの騒ぎからまた私は医務室に担ぎ込まれたのだ。
 身体を起こして静かな医務室を見渡すと、窓際に月光に照らされた人影が見えた。レイだ。
 彼女は行儀悪く棚の上に腰掛けて酒瓶に口をつけて景気良く喉に流し込んでから離し、口を拭った。

「酒が必要な時だ、少なくとも今はな。リナリア、見ただろう。少なくとも私の夢を通して。」

 そう言ってレイはこちらに手招きをした。私はベッドから出て彼女に歩いて近寄る。

「お前の力は確かに女神の力と同等みたいだな。黄金神族どもが顔面蒼白で撤退したのは中々見ていて痛快だったぞ。」

 彼女は左手に持つ酒瓶を揺らして中の酒の弾む音を鳴らしながら意地悪そうに笑って見せる。

「でも、私には何もかもわからないことだらけで、それに・・・・・・! 貴女は憎悪から何も生まれないと言ったけど、貴女はどうなの! 私なんか!」

「それより先を喋ったら拳骨をくらわせるぞ、右手でな。お前は人の心配をできる立場か? そんな甘えたことは言えないはずだ。もし本当に今の己自身を鑑みず、私を助けたいとかふざけた事をほざくのなら、今すぐクリフォートの人々に土下座をして来い。私は大人だ、お前と違って自分の面倒は見れる。それこそあの夢は毎晩見るものだからな、もうとっくに慣れたものだし、私の原動力にもなっている。つまりお前の感情は大きなお世話って奴だ。」

「・・・・・・それがたとえ全能の女神に同情されてもですか?」

「ああ、両手の中指を立てて、女神を讃えた歌の歌詞を侮辱的な内容に変えて大声で歌ってやるね。」

 彼女はその後に「私は神狩りだからな。」と付け足した。
 本当に、知れば知るほどわからない人だ。その身の内に得体の知れない蛇を宿し、死から舞い戻り、大人としての責任ある考えを持つこともあれば、急に冒涜的な考えをすらすらと吐く。そしてあの姿、羽毛の蛇を纏った彼女は神秘的で神々しく、容易く女神の力を退けてしまった。
 レイは蛇を古き神とも呼んでいた。あれが本来ある力に近い姿なのだろうか。神の力を持つ神狩り、きっとレイがその気になれば、本当に神々を殺せるのだろう。この人には一生かかっても敵う気がしない。
 思わず胡座をかいてその場に座り込んでしまう。

「もう、わからないなあ。」

「何だ急に年相応になって。」

「何もかもわかんないのよ、自分自身に起きていることも、成り行きで共に旅をすることになった貴女のことも! 私を攫った黒幕を探すと言って、その最中で急に女神の力とか言われいるのが覚醒して、今や見た目も急に変わってしまって、もう何もかも嫌だー!」

 レイは酒瓶を右手に持ち替えると、左手の拳骨を私の頭頂部に振り下ろす。

「痛だっ。」

「医務室ででかい声を出すな。自分でそんなに不満があるなら、明日の円卓会議でお前の疑問やあれこれをぶち撒けろ。それと、エゼルフリダと狂血過客たちにはお前から謝っておけよ、あいつらこそ、かなりのとばっちりを受けたんだからな。」

「そもそも円卓会議ってなんなの。」

「ホワイトランドで最も重要な会議だ。黄金神族、眷属、各勢力のトップが集うものだ。秩序を裏から守る結社のメンバーもな。というか寝てろ、寝坊だけはするなよ。」

 そう言うとレイは棚の上から降りると、片手に酒瓶を持ったまま医務室の外へと姿を消した。
 仕方なく寝台へと戻り、横になる。起きた出来事があまりに多く、頭が痛くなる。

 ーー勝手に人の頭を覗き込みやがって、今すぐ食い殺してやりたいが女神の力のせいで容易く近付けなくなったな。

『懲りないのね、どうして私に構うの。』

 ーー珍しくレイが酔っているからな。あいつが酔っていると俺は干渉ができねえんだ。

 蛇はベッドの下から這いずって顔を覗かせる。

『要するに暇ってこと?』

 ーー妙な口調だな。ついに王女としての自覚がなくなったか?

『もう何もかもめちゃくちゃで、今はもう余裕が何もないのよ。』

 ーークックック、なら尚更だな。俺を拒絶する憂さ晴らしに少し面白いものを見せてやるよ。

 蛇はそう告げると、私の首に巻きつく。私はそのまま微睡の中に引き摺り込まれ、急に眩しい光を感じて目を開けると、不貞腐れた表情で地面に右頬をつけてうつ伏せで倒れている黒髪の少女がいた。

「レイ、馬鹿なのかお前は。」

 背後から男性の声がして私は身体を起こして背後を振り返る。そして偶然にも黒髪の少女、そうレイと呼ばれた少女も私と同時に身体を起こして振り返った。
 
「アントニウスの馬鹿! 訓練だろ、もう少し加減しろ!」

 この声は確かにレイだ。もしかすると二十年くらい前の彼女かもしれない。
 そして彼女のその先には、木剣を担いだ男性が立っていた。見たところ、ハーヴィよりもはるかに大柄だ。髪は短く整った髭が特徴的で、少しクリフォート王国の将軍に似ているかもしれない。
 辺りを見渡すと、クリフォート王国の兵士の訓練場でもよく見かけた設備が置かれていて、ここが訓練場だとよくわかる。つまり彼らは今ここで鍛錬をしている最中のようだ。

「正面から突っ込むな。攻撃できるビジョンが見えなければ、攻撃をするな。何度言えばわかるんだ。」

 レイは苛立ちを顕にした表情で木剣を両手持ちで構えると、ジリジリとアントニウスとの間合いを詰める。彼女の腕は、驚くほど細い。昔のレイであるのは確かだが、あの獣と正面から戦える彼女と同一人物とは思えない。ルーンソードを持ち上げられるかどうかも怪しい。
 アントニウスが剣を構えて一歩踏み込むとレイは素早く横に跳び、そこから彼の胴を目掛けて懐へ飛び込む。
 しかしレイの剣はアントニウスには届かず、彼はレイの剣を弾き飛ばしてさらに彼女の背後に回り込んだ。

「ぎいやああああああああああ!!!」

 耳をつんざくレイの叫び声が響き渡り、一瞬のことで何が起きたかわからなかったが、アントニウスがレイの両足を掴んで逆さに持ち上げており、レイは見たことないくらい顔を真っ赤にしていた。

「おいおい、お前はか弱い女なんだぞ。美人だろうがブスだろうが、ケツを目当てにする奴はいくらでもいる。お前に関しては一番最悪の美人な上でガキだ。世の変態どもにどんな目に遭わせられるかわからないぞ。」

「だからって下履きを脱がして逆さに持つな! たとえ私でも女の矜持くらいはあるぞ!」

「問題はそこじゃねえ、男のおもちゃ扱いされても起死回生の一手を打てる戦士になるんだ。」

 羞恥的な状況でアントニウスの説教を聞かされたレイは、不貞腐れた顔を浮かべてしばらくぶら下がっていた。」

「アントニウス。」

「なんだ? 」

「この件はエイレネに泣きついてやるから覚悟しておけよ。」

「おい、流石にそれはやめろ。冗談抜きに去勢されちまうだろ! 俺はお前なんかに欲情したりしねえし、そういうのは真っ当にその手のプロにいつも世話になってるから問題ねえだろ!」

「大アリだよ! というか白昼堂々と年頃の女に下世話話をするなど変態! お前が店に入り浸るせいで金が足りねえし、お前が逃げまわるから弟子の私に予算に関する苦情とかが諸々来てんだよ!」

 レイがそう叫んだ瞬間、アントニウスの股下から小さな影の蛇が飛び出して、アントニウスの股間に思い切り噛みついた。

「ぎいやああああああああああ!!!」

 アントニウスがレイと全く同じ叫び声を上げて倒れ、その場でのたうちまわる。彼から解放されたレイは、恥ずかしそうに下履きを上げる。
 ところで、私は一体何を見させられているのだろうか。これは間違いなくレイの過去なのだろう。彼女が見習いの神狩りとして稽古をつけてもらっていた頃の記憶なのかもしれない。これが一体なんの意味を持つのだろか。

 ーーあいつは、自分が幸せだった頃の記憶が嫌いなんだ。

 どこからともなく隣に蛇が現れた。さっきとは異なり、羽毛の翼が生えていて私よりもはるかに大きい。そしてその表情は何かを憂いている表情に見えた。

 ーー哀れな女さ。生まれて間もなく戦争で村を侵略され、俺が兵士どもを殺して助けてやってアイツだけが生き残り、それを聞きつけた神狩りによって拾われた。聖母教会の孤児院で育てられるが、アイツは蛇だという理由で忌み嫌われ、時折起こる喧嘩では相手のガキを常に半殺しにしてきた。救いもなく、常に懲罰部屋に隔離されていたレイは神格も聖母も憎んでいた。まあ、そこまで珍しくもない生い立ちさ。よくある話だ。

『それで、唯一なれたものが神狩りだったのね。』

 ーークックック、レイを拾ったアントニウスと奴とは姉弟子の関係のエイレネが様子を見にきて、やむを得ず連れて行っただけさ。酔狂なアイツは神を殺したくなってアントニウスに弟子入りをした、そこからは今でも思い出すのが・・・・・・忌々しい地獄の日々さ! エイレネと二人で嬉しそうに矯正、矯正、矯正、矯正、矯正! この世のどんなものよりもあの頃の奴らが最も邪悪な笑顔を浮かべてたわ!

 蛇はいまだに根に持っているのか、記憶の中のアントニウス目掛けて何度も尾を叩きつける。肝心のアントニウスは蛇に股間を噛まれて悶絶した表情のまま固まっているので非常に滑稽なことになっている。

 ーー奴らのおかげで、レイは怪物ではなく人になれた。それだけは確かだ。だがアイツは神狩りの滅びと共に両親代わりだったあの二人を失った。そして愚豚女、お前はレイが真の怪物になった瞬間を目撃した。

 マリーが瘴気魔に噛み潰されてレイが身体中に愛娘の血肉を浴びたあの瞬間、正直あんな事があって怪物にならない方がおかしい。

 ーーそしてレイはお前と出会って迷っている。ようやく世界を壊すことだけを考える怪物になれたのに、お前を見つけて、似てもいないお前で自分の娘の成長した姿を想像した。哀れなことこの上ないだろう? きっとお前が今レイを人間たらしめている最後の楔だ。アイツがお前を失った時、きっと目覚めるだろう。世界を喰らう力が。

『お前は何がしたい。本当は私に生きていてほしいの? それとも死んでレイが真の怪物になるのを待っているの? 私を殺したいなら、蛇なのだから蛇らしく卑しい唆しで仕組んでみたらどう?』

 ーーああ、やっぱりお前は気色が悪い。

 蛇は目を細めてそう言い放つと、勢いよく翼を広げた。それによって放たれた突風に私は吹き飛ばされ、地面上を転がって何かの淵から落下する。大した高さではなかったが、身体を強く打ち付けて腹から低い呻き声が漏れる。

「痛ったあい。」

 腰を抑えながら立つと、窓から日の光が差し込んでいて、干渉から医務室に戻ってきたと実感する。
 おそらく身体は寝ていたのに、全く休めた気がしない。身体を反らしながら振り返ると、レイが入り口に寄りかかっていた。

「寝坊だ。それと、私のパンツを見たことは記憶の中から消しとけ。」

 あの蛇、昨晩のやりとりは全部筒抜けじゃないか。レイは露骨に不機嫌な表情を浮かべながら私に身なりを整えろと言い放った。
 ひとまず洗面台に向かい、小さな鏡に映る自分の顔を見る。クリフォート王国での平和な日々の頃と比べ、隈が目立ち、少々頬が痩けた顔になった。
 桶に溜められた水を手で掬って顔にかける。冷たい水に思わず身震いするが、気怠さを感じる今にはちょうど清々しくも感じる。櫛なんて物は持っていなければ用意もされていないので、濡れた手で髪を梳く。
 背後から舌打ちが聞こえ、レイの期限が相当悪い事が伺える。急いで緑のポンチョを羽織り、レイの元へ駆けつける。
 レイは冷ややかな目で私を見ると、私に背を向けてどこかへと歩みを進める。しばらく通路を進み中庭に出ると、大修道院の大聖堂のある方ではなくまた別の大きな建物がある方へと彼女は向かっている。
 聖騎士が守護している金属製の両開き扉の前に来ると、レイは振り返って眉間に皺を寄せた表情のまま私を見る。

「見てしまったものはもう仕方ない。もう今後、偶発で私の内面を見ることがないように力を意地でも使いこなしてもらうぞ。」

「わ、わかりました。」

「さて、私も大人気ないのはこの辺にしておこう。この扉の先が円卓会議の会場だ。早朝にエストランディアの炎帝軍のフォボス将軍が到着した。私たち抜きで既に円卓会議は始まっている。この場では不戦が絶対の掟だ。お前は言いたいことが山ほどあるだろうが、私が今一番言いたいことはわかるな?」

 私は昨日、覚醒した力をレイによって抑え込まれたばかりだ。もし、私がまた炎帝と対峙したことで暴走を起こしてしまえばそれはきっとホワイトランドの全ての勢力に仇なす存在と認識される事だろう。
 レイは私の不安そうな顔を見て、何か考えに耽っている様子だ。もしかすると、蛇に干渉しているのかもしれない。
 妙な間が流れて、守護の聖騎士たちも少々困惑した様子だ。

「よし、抑止ぐらいは私らの力でできそうだから試してみるか。もしうっかり発動して被害が出てしまえば、眷属複数と黄金神族二人と戦うことになるからな。ほら、右手だしな。」

 レイに言われるまま右手をレイに差し出すと、彼女は左手で私の腕を強く掴んだ。

「いっ!」

「動くな、下手すると怪我するぞ。」

 レイの左腕から黒く小さく黒い蛇が飛び出して私の腕に巻き付いた。それはレイが私の腕を強く掴む力と同等の力で締め付けてきて、思わず苦痛の声を上げてしまう。
 
「ほら、できた。勝手なことをし続けるあいつには罰も兼ねて分裂してもらったんだ。私としては迂闊に乱用するのは嫌だが、その腕に刻印としてカムイを憑依させておいた。そいつが憑いている間はある程度は他の力を抑制できるらしい。元々は悪霊が憑いたりするのを退ける力だったりしたそうだ。」

 私の右腕には黒い蛇の刻印が刻まれていた。さっきの実態のある姿と違い、刺青のようになっている。レイは蛇を古き神と呼んでいた。はたして、本当の正体はなんなのだろうか。何か複雑に坩堝のように絡み合った何かに思えてならないのだ。

「あ、ありがとうございます。」

「よし、大遅刻だが入るぞ。」

 レイはポケットから印章らしき物を出して聖騎士たちに見せる。彼らはそれを確認すると鉄扉に手をかけて開く。中は大広間となっており、中央には巨大な円卓が置かれている。大広間の奥には大きさがそれぞれ異なる玉座が置かれており、人並みの大きさの玉座にはおどろの聖女エゼルフリダが、そして彼女の倍以上の大きさの玉座には炎帝イグマルスが鎮座していた。
 昨日は一時の感情であのような暴挙を行なってしまったが、祖国で護身術として多少の剣を教わったからなんとなくだが感じる。炎帝には絶対に勝てない。たとえレイでも無理だ。ホワイトランド最強とも謳われる炎帝軍を率いる炎の神であり、戦の神でもある大いなる黄金神族には絶対に挑んではいけない。直感的だが、そう感じるのだ。
 円卓の席にはハーヴィ殿とグンナル殿、そしてエグバード卿が既に席に着いている。その他にも狂血過客きょうけつかかくの夜叉と羅刹、それともう一人、見知らぬ面頬を装着した者が左腕を三角巾で吊った状態で座っていた。
 そして彼らとは大きく間隔を空けて黒髪の短い癖毛の男性が一人、古代の戦士が着ているロリカのような鎧を身に纏い、特徴的な赤い服を中に着ている。あの男はきっと炎帝軍、いや炎帝の眷属なのだろう。
 そして丁度その人物が立ち上がり、レイに厳しい視線を向ける。

「レイ・スカーレット、ようやく結社の人間らしく円卓会議に来たな。真面目に来ただけ感心する、この大遅刻ぐらいは大目に見てやろう。」

「よお、外道な侵攻をして来たばかりのフォボス将軍じゃないか。申し出を問答無用で蹴って正解だったよ。ところで粗暴で目に余る片割れのデイモスの姿が見えないようだが、私に殺されるのを恐れてエストランディアにでも引き篭もっているのか?」
 
 レイはわざと剣をちらつかせるように、腰に下げているルーンソードの柄をわざとらしく揺らす。
 不戦のこの場で、ついさっき警戒していた彼女が本気でやっているとは思わないが、この部屋の空気に緊張が走る。

「デイモスなら昨日死んだ。我が主が介錯をしたのを、お前も目撃しただろう。」

「なんだと、あの成れ果ての獣がデイモスと言うのか。流石に無理があるだろう。それに、もしアイツが本当にメテル・アヌンナキの手先だとして、それに気づかなかったお前らはとんでもない間抜けだということになるな。」

 予想だにしなかった事実だ。昨日、大修道院を襲った獣は炎帝軍の眷属の成れの果てだったというのだ。
 炎帝軍のデイモス将軍、見せしめに人を残忍に殺すことを嬉々として行う最悪の人物として語り継がれている。二百年前の炎帝軍による大陸遠征では、ゴーシャという国の王族が国民の前でデイモスにより蹂躙され、生きたまま焼き殺されたという。その人物がレイの言うメテル・アヌンナキなる存在に縋っていたと思うと意外だが、異形と化してなおも残忍さは健在だというのは恐ろしいものだ。
 レイが炎帝たちを煽るようなことを続けて言うため、グンナル殿とエグバード卿は頭を抱え、炎帝は玉座の肘掛けの装飾を握り潰した。

「我が主よ、ここは不戦の掟の場です。ここは平静を、貴方様は偉大なる女神フィニカスの息子なのですから。この女は元来、不遜な人間です。消すのは容易いですが、ある程度利用価値のある人間でもあります。」

 フォボスが冷静に炎帝を諌めると、炎帝は溜め息を吐きながら姿勢良く座り直す。私の祖国を滅ぼした憎き存在だが、只人では決して出すことのできない威厳があった。

「それにレイ・スカーレット、外道な侵攻と呼んだことは改めていただこう。クリフォート王国は確かな犠牲だ、だがそのおかげで世界はまだ続いているのだよ。」

 なんですって。口を開けば王国を火の海にしたことが世界のため? そんなふざけた話がまかり通るわけがない! あの日だって朝に孤児院の子供達と会ったばかりだった。侍女たちと共通の読書本の談義で盛り上がっていた、遠方に山火事の黒煙が見えるまでは、瘴気魔の襲撃もない平和な王国だったんだ!

「ふざけないで! 私が誰かわかるかしら、フォボス将軍! 私はリナリア・セレナ・ゴデッソン、貴方たち炎帝軍が不当に焼き尽くしたクリフォート王国の王女よ!」

「もちろんだ、話に聞いている。だが君の父は我々が幾度も行なった警告と要請には一切応じなかった。その結果、どのみちの滅びの運命にも気づいていなかった。非常に傲慢な男だったよ、心弱きが故に国宝を醜王に差し出そうとしていた。未来のためだ、娘のためだと言っておきながら世界の崩壊に加担しようとしていたのだから。」

 フォボスの語る話を聞くたび、目の奥が熱くなって目眩に似た感覚だが、フォボスの存在だけがはっきりと見える。こいつの言っていることは出鱈目だ。一矢報いて王国の無念を晴らさないと••••••。
 不意に視界の真ん中に人影が入り、その人物は躊躇なく円卓の上に土足で上がって燭台や多少並べられた食器を蹴り飛ばして行く。そしてフォボスの体に大きく黒い蛇が巻き付くと、彼女は右手でフォボスの胸ぐらを掴んで持ち上げた。

 ーーああ••••••レイの奴、完全にブチ切れているな。

 不意に蛇が話かけてきて驚くが、次の瞬間、聞いたことのない彼女の怒号が飛んだ。

「今すぐ、今すぐリナリアに謝罪しろ。貴様らに何の大義があったのかは知らねえが、典型的な傲慢な神のせいで無辜の民が虐殺されたことは事実だ。私は結社以前に神狩りだ、貴様がこの場で私に斬られない正当性を示してみろ。」

「手を離せ、レイ・スカーレット。お前が我を殺すことは造作もないだろうが、その一方でホワイトランド全土と、全ての黄金神族を敵に回すことになるぞ。」

「それがどうした、世界はとっくに神狩りを敵視している。何を今更怯える必要があるんだ。」

 様子を見かねた炎帝が床に突き刺した槍に手を伸ばそうとする。レイはそれを察知してなのか、フォボスを炎帝の方へ向けて盾にした。そしてそのまま彼女はフォボスの胸ぐらから顎に掴む場所を変える。

「このまま右手で顎を握り潰してやってもいいんだぞ。二度とお高くとまったその口が開けなくなれば、不快度はずっと下がるだろう。」

 ーークックック、いいぞやってしまえ。フォボスは元々気に食わない奴だった。愚豚女よく見ておけ、あれがあいつの神殺しの性だ。

 嫌な音がなり、フォボスは呻き声を上げる。思わず目を背けたくなる光景だが、同時に見届けたいとも感じる。私もなんて卑しくて残酷なのだろう。
 しかし、内心期待していた光景は見ることが叶わなかった。ハーヴィがレイの元へ駆け寄り、彼女を背後から取り押さえた。それと同時に横から黒い茨が飛び出して彼女の右腕の義手の間接部分に入り込むと、かちゃりと音を立て、レイの右腕がフォボスの顎から手を離してだらりと垂れ下がった。フォボスは顎を押さえて大きく息を吸う。

「レイ・スカーレット、そこまでよ。此度の円卓会議の裁定者はこのエゼルフリダが務めている。これ以上の暴挙は決して許されないわ。」

 エゼルフリダは右腕から黒い茨を出していた。あれが彼女の太古の叡智の遺物の力なのか。彼女の様子を見た炎帝は槍から手を離す。
 レイはハーヴィを振り払うと右腕の肘関節に左手の指を挿し込み、カチカチと音を鳴らして右腕を再び動くようにする。手首と指の動きがぎこちなかったが、すぐに滑らかに本物の手と遜色なく動くようになった。
 そして彼女は無言でハーヴィに連れられてグンナルたちのいる席につく。屈強な二人のノーデンの男に挟まれて不満そうに座っている様子はかなり滑稽だ。

「リナリア姫、どうぞこちらに。」

 エグバード卿が物腰柔らかな態度で私を席へ案内し、私は彼の隣に座ることとなった。結果的に円卓の席は人間が座る席、狂血過客が座る席、フォボスが一人で座る席に分かれた。円卓が大きい分、それぞれの感覚が開いていて微妙な雰囲気になる。私のために怒ってくれたレイを悪くは言いたくはないが、彼女がこの沈黙した状況を生み出したのは事実だ。
 
「今一度、再確認しましょう。円卓会議は不戦の場です。如何なる謂れがあろうとも、暴力は決して許容されない。秩序について議論するのが目的のこの場で、血が流れるようなことがあればそれを起こした張本人、そしてそれに対して報復した者にも厳正な罰が下ります。」

 エゼルフリダはレイと寸前まで構えていた炎帝をそれぞれ見る。

「たった今の諍いは此度の会議の戒めとします。裁定者の温情にて厳重な警告に留まったことを努努失念することないように。」

 彼女が言い終えると同時に大広間の扉が開き、修道女が入ってきた。彼女は赤毛で緑の瞳を持っている。奇しくも今の私の姿と全く同じだ。

「棘の聖女様! ただいま祈りを終えて戻りました!」

「ご苦労だったソングバード。少々、事が起きたばかりだが、結社の一員として再度参加してくれたまえ。」

 エゼルフリダがそう告げると、ソングバードという名の修道女は一礼して私の席へと歩を進める。

「リナリア姫、ソングバード殿は聖母教会の結社の人間だ。」

 エグバード卿が耳元で彼女が何者なのか教えてくれたが、その表情はどこか複雑そうだ。
 クルベラ殿が私の隣まで来ると、その場で跪いて頭を下げる。

「え、えっと。」

「お、おおおお! 貴女様にお会いすることができて、このソングバードは感激の至りにございます! リナリア・セレナ・ゴデッソン殿下ぁ! とるに足らぬ些事な存在でございますが、以後お見知り起きを! このクルベラという卑しい阿婆擦れも、殿下の••••••殿下の••••••目障りとならぬよう全身全霊で尽力いたします!」

 す、すごく言葉を返し難い。途中から震えながらの涙声になっていて頭を下げていて顔は確認できないが、きっと涙と鼻水で凄いことになっているはずだ。これはまた癖のある人物が現れてしまった。

「ソングバード、座れ。」

 エゼルフリダが吐き捨てるようにそう言い放つと、ソングバード殿は頭を下げたまま素早く私の隣に着席する。
 相変わらず彼女は頭を下げたまま震えている。何か得体の知れない珍獣に遭遇した感覚になり、レイに助けを求めるように彼女を一瞥するが、肝心のレイはハーヴィと共に明らかに嫌そうな表情でこちらを見ていた。

 ーーこれは、俺でも手に負えんな。

 蛇は彼女の下に入り込み、顔を覗く。明らかに嫌悪感を示す声をあげて姿を消した。

「フォボス、炎帝軍によるクリフォート王国侵攻の意義を説明しなさい。この場に侵攻された当事者がいる以上、此度の円卓会議ではその説明を義務とします。」

 エゼルフリダは淡々と会議の進行を行う。彼女のおかげで最も聞きたかったことが聞けそうだ。
 ほぼ反対側に一人で座るフォボスは神妙な顔つきで立ち上がり、炎帝イグマルスの元へと向かった。彼が何かを炎帝に相談すると、イグマルスは玉座から立ち上がりフォボスと共に円卓の側に立った。それからフォボスは口を開き、ホワイトランドの歴史より語り始めたのだ。







 大修道院のバルコニーからは、周辺の厳しい山々の雄大な地形を一望することができ、その裾野に沈みゆく夕陽は言葉を失うほど美しかった。
 
「リナリア、お前はどうしたい? 復讐するという選択もあれば、クリフォート王国の生き残った国民のために白鯨避けのオイルを奪って帰るという選択もある。少なくとも、奴らの言う運命に従う必要はない。お前が黄金神族の間で魔王を倒すために必要な存在と預言され、その復活の阻止をしてほしいなんて馬鹿げている。」

 レイはそう言いながらバルコニーの柵に寄りかかる。彼女の監視の名目でついて来たハーヴィとグンナル、エグバード卿も人としてレイの意見には賛同している様子だ。
 炎帝軍は外なる神のメテル・アヌンナキなる存在と黄金神族、醜王ラカーンが結託した情報を事前に握っており、それらがクリフォート王国の国宝を狙っていることも知っていた。そして外なる神と醜王は魔王復活を目論んでいる。
 それを阻止するためにお父様にエストランディアでの保管を何度も打診していたようだが、お父様は全てを拒否したため武力行使で強奪し、現在はエストランディアで厳重に保管されているという。
 はっきり言って納得できるわけがない。確かにクリフォートの騎士たちよりも炎帝軍の方がはるかに強いかも知れないし、魔王の伝承など気になる点も多いが、私は絶対に炎帝軍は信用しない。
 だが、これは果たして私の本当の感情なのだろうか。炎帝軍への憎悪と同時に運命と使命を感じている自分も存在する。女神の力が目覚め、不意に私の容姿も変わった。もしかすると、王家に伝わる伝承の戦いに今まさに直面しているのかも知れない。
 クリフォート王国の国宝、それは紛れもなく太古の叡智の遺物である。その名は大地創造の神話より名付けられた”万物の杖”である。だが、建国の前後においても過去千年でその杖が起動したことは一度もない。女神フィニカスがかつては所持していたとも言われていたが、それすらも曖昧であった。

「もう一つ道はございます!」

 思い詰めていると、不意に横から大声で叫ばれた。この場の誰もが、その声の主を見て顰めっ面を浮かべた。私としても、今一番話をするのが怖い相手だ。誰よりも何をするのか得体が知れない。

「ソングバード••••••。」

 レイは彼女の名をつぶやくと、なぜか修道女の装いを捨て、革鎧に身を包んで剣を背負った聖母教会の結社の人間、ソングバードが堂々と現れた。

「レイ・スカーレット、腑抜けの神狩りよ! お前のその剣は弱者虐めの為の剣か? エストランディアに討ち入り、奪われた国宝を奪い返してしまえば良かろう! 私は義理にも道理にも合ってないことが一番嫌いです! さあ、リナリア様! さあ、我らにご命令を! そこの阿呆のノーデン人と腑抜けた神狩りは結社の掟を読まぬので知らないでしょうが、我々結社は設立された五百年前から殿下の下僕なのですよ!」

 ソングバードは声を張り上げながら私の目の前に跪いた。彼女は奇襲でクリフォート王国を滅ぼした炎帝軍を、今度は私たちが奇襲で奪われた物を取り戻すと言うのだ。その提案はまさしく破天荒で、その行動が意味するのはきっと戦争だろう。

 ーークックック、面白い実話がある。昔、人の生贄を過剰に所望していた小さい山ぐらいの大きさの神がいた。実際は遺物で怪物になった元人間でその体躯のあまり無敵を誇っていたが、ある日に正面の力比べである男に負けて首を斬り落とされた。そいつはただの人間だ。インチキもない。ただ、いざという時の馬鹿力を発揮しただけだった。ちなみに神のぶら下げていた男の虚勢は今は子宝の象徴として崇められている。ひまだったら続きを聞くといい。

『何の為にもならなくて、同時に気分も害する話をどうも。』

 今なら床を叩き斬ったレイの気持ちがよくわかるかもしれない。





第六話「ODD NUN」完
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