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ゲーマーの口癖ってなんだ?
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大門をガンガンと叩く音が聞こえた。
それは霊気兵たちが門を壊さんとする音に違いなかった。
もしも防壁や門がなければ村は襲われていただろう。
実際、ゲームの中ではそうなっていた。
村人全員で戦い、何とか霊気兵を退けるも数人の村人が死に、十数人の村人が怪我を負った。
それを見越して、防護柵の作成を提案したのだ。
もちろん、これは前哨戦に過ぎない。
シース村襲撃イベントの規模とは比べ物にならない。
穢れた魔物の数体が門を叩く中、魔物の頭部に矢が刺さった。
防壁の上から俺が矢を射たのだ。
「落ち着いて撃てば問題ない! 訓練を思い出せ!!」
俺の掛け声に、集まった村人たちが手を上げて応えた。
見張り塔にはこういう時のために、弓や剣を備えてある。
村人たちは弓を持ってきて、流れるように矢を番えた。
村人には剣術に加え、弓術も教えている。
その甲斐あってか、防壁上から射られる矢は次々に霊気兵たちへと吸い込まれていった。
結果、ものの数分ですべての魔物を討伐してしまう。
いや、はやっ!
ゲームでも遠距離攻撃は強かったけど、こんなに一瞬で倒せるんだな。
防壁のような遮蔽物を作っておくとやはり便利だ。
ロンが額の汗を拭いながら、上擦った声を漏らした。
「な、なんとか倒せたけど、一体何が起きてるんだ?」
いいぞ、ロン。そのモブっぽい反応。
カーマインを呼ぶ、ということを考えるといい流れだ。
脅威を感じる村人たち。手に負えない状況。冒険者ギルドへの依頼。そしてカーマインがシース村にやってくる。
この流れは必須だ。
カーマインはシース村近くに存在する商業都市メイリュカで依頼を受けることになるのだ。
いける、いけるぞ!
せっかくロンがお膳立てしてくれたなら、俺も後押ししないとな!
「大量の魔物が押し寄せてくるかもしれない……お、俺たちだけでどうにかなるのか!?」
俺はわなわな震えながら、頬をぴくぴく動かし、遠い目をして、情けない声を出した。
ふっ、我ながら良い演技だ。
こういう事態を想定して、毎夜練習してたからな!
自分で言うのもなんだが、俺はシース村で中心的な存在になりつつある。
特に戦闘面においては重要視されているはずだ。
そんな俺がここまで動揺すればきっとみんなにも伝播するはず。
そうしたらどうなる? 外部から助けを呼ぼうとなるだろう。
さあ、ついてこい!
誰か、俺に追従するんだ!
俺はわなわなと震えつつ、内心でワクワクしていた。
が。
「落ち着きなさいよ、リッド!」
エミリアさんの一喝。
え? 一喝?
エミリアさんは俺の腕をガッと掴み、引っ張った。
俺と向き合い、真剣な眼差しを向けてくる。
「あなたがしっかりしないとみんな不安になるじゃない! わたしを助けてくれた時を思い出しなさい! 勇気を出して助けてくれた、格好いいリッドを!」
「い、いや俺は」
エミリアさんは俺が何か言う前に、そっと抱きしめてきた。
体温が伝わってくると同時に、エミリアさんの包み込むような優しさを感じる。
「大丈夫。こんな時のために、みんな頑張って来たんじゃない。みんなで協力すれば、どんなことだって乗り越えられるわ。だからリッド。いつも通り、わたしたちを引っ張って」
明らかに周囲の村人たちの不安や恐怖が薄れていく。
ロゼだけは俺たちを見て、頬を膨らませていたが。
俺はみんなとはまったく違うことを考えていた。
いや、これどういう状況!?
なんなのこれ。なんでこんなことになってるんだ!?
俺はただ、冒険者ギルドに依頼しようって流れになってほしかっただけなのに。
なんで俺たちだけでどうにかしようって展開になってるんだ?
「そ、そうだ! 俺たちは厳しい訓練をやりぬいて強くなった! 霊気兵も余裕で倒せたんだ! 魔物なんて恐れるに足らない!」
「そうだそうだ! 俺たちは強い! そして俺たちにはリッドがついている! 崩れ森の主を何度も倒したリッドが!」
「うおおお! 魔物なんて全部ぶっ飛ばしてやるぜ!」
あ、やばい。この流れ、イヤな予感しかしない。
なんかみんなやる気になってるんだけど!?
「「「リッド! リッド! リッド!」」」
おいやめろ。なんでリッドコール始めてんだよ!
ダメだ。このままじゃまずい。
どうにかしてカーマインを呼ばないと。
俺は思考をぐるぐると巡らせる。
だが、想定外の状況に頭はまったく働かなかった。
五年に及ぶ下準備をしてきたのに、俺は想定外のハプニングに弱かった。
だってこんなことになると思わなかったんだよ!
襲撃を想定して村人を強くしたつもりが、自信を持ち過ぎて冒険者に依頼するという選択肢が消えてしまうなんて誰がわかるんだよ!
だってゲーム内じゃ、戦うこともほとんどせずに逃げていただけだったし。
あの弱弱しい村人たちがここまで変わるとは思わなかったのだ。
襲撃に備えて、村人を鍛えておくか! くらいの感じでやり始めたのに、まさかこんなことになるとは。
ど、どど、ど、どうしよう。
俺は動揺した。人生でここまで動揺したことはないだろう。
カーマインがいなければ災厄の魔物は倒せない。
カーマインが主人公たるゆえんはそこにある。
王の器。災厄を挫く者。穢れを払う存在。選択者。
それがカーマインなのだ。
カオスソードでは、あらゆる事柄に関して具体的に語られることはあまりない。
シナリオは考察が必要で、かなり曖昧な部分が多い。
だがカーマインがいなければ世界を救うことはできないのはまぎれもない事実だ。
つまり、このままだと詰む。
バッドエンド一直線である。
どうする。マジでどうすんの。
「なあ、崩れ森に行って魔物を掃討した方がいいんじゃないか? 崩れ森の次の主も現れているだろうし、主を倒せば魔物たちも動きを止めるかもしれない」
なんてこと言うの、このロンは!
確かにゲームのカオスソードでは森の主を倒すとそこのステージの魔物は弱体化したし、動きが非能動的になっていた。
そしてこの世界でもそれは同じで、崩れ森の主を倒してしばらくは魔物は大人しくなっていた。
だからロンの言っていることは正しい。
だけど今はその正しさはいらない!
そんなことを言ったら。
「確かに、だったら戦える者を集めて、崩れ森に乗り込むぞ!」
誰かが言うと、誰かが呼応した。
「うおお! やるぞ! 俺たちで魔物たちを倒すんだ!」
奮起している。してしまっている。
どうしてだよおおおおおおおお!!
なんでやる気出してんだよ、ここは後ろ向きになって、逃げて逃げて、カーマイン呼べよおおおおお!
俺は気づいた。
やりすぎてしまったんだ。
すべてが裏目に出てしまったのだ。
万全の準備をしているつもりが、破綻への道を突き進んでいたのだ。
なんてこったい、オーマイガ!
俺は俯き、顔を手で覆った。
「大丈夫。リッドは一人じゃないから。あたしたちがいるんだから。一緒に頑張りましょう」
エミリアさんがなぜか優しく頭を撫でてくれた。
何か勘違いされている気がする。
どうやらもう崩れ森に行くことは決定らしい。
もしかしてだけど、これって……。
詰んだ?
それは霊気兵たちが門を壊さんとする音に違いなかった。
もしも防壁や門がなければ村は襲われていただろう。
実際、ゲームの中ではそうなっていた。
村人全員で戦い、何とか霊気兵を退けるも数人の村人が死に、十数人の村人が怪我を負った。
それを見越して、防護柵の作成を提案したのだ。
もちろん、これは前哨戦に過ぎない。
シース村襲撃イベントの規模とは比べ物にならない。
穢れた魔物の数体が門を叩く中、魔物の頭部に矢が刺さった。
防壁の上から俺が矢を射たのだ。
「落ち着いて撃てば問題ない! 訓練を思い出せ!!」
俺の掛け声に、集まった村人たちが手を上げて応えた。
見張り塔にはこういう時のために、弓や剣を備えてある。
村人たちは弓を持ってきて、流れるように矢を番えた。
村人には剣術に加え、弓術も教えている。
その甲斐あってか、防壁上から射られる矢は次々に霊気兵たちへと吸い込まれていった。
結果、ものの数分ですべての魔物を討伐してしまう。
いや、はやっ!
ゲームでも遠距離攻撃は強かったけど、こんなに一瞬で倒せるんだな。
防壁のような遮蔽物を作っておくとやはり便利だ。
ロンが額の汗を拭いながら、上擦った声を漏らした。
「な、なんとか倒せたけど、一体何が起きてるんだ?」
いいぞ、ロン。そのモブっぽい反応。
カーマインを呼ぶ、ということを考えるといい流れだ。
脅威を感じる村人たち。手に負えない状況。冒険者ギルドへの依頼。そしてカーマインがシース村にやってくる。
この流れは必須だ。
カーマインはシース村近くに存在する商業都市メイリュカで依頼を受けることになるのだ。
いける、いけるぞ!
せっかくロンがお膳立てしてくれたなら、俺も後押ししないとな!
「大量の魔物が押し寄せてくるかもしれない……お、俺たちだけでどうにかなるのか!?」
俺はわなわな震えながら、頬をぴくぴく動かし、遠い目をして、情けない声を出した。
ふっ、我ながら良い演技だ。
こういう事態を想定して、毎夜練習してたからな!
自分で言うのもなんだが、俺はシース村で中心的な存在になりつつある。
特に戦闘面においては重要視されているはずだ。
そんな俺がここまで動揺すればきっとみんなにも伝播するはず。
そうしたらどうなる? 外部から助けを呼ぼうとなるだろう。
さあ、ついてこい!
誰か、俺に追従するんだ!
俺はわなわなと震えつつ、内心でワクワクしていた。
が。
「落ち着きなさいよ、リッド!」
エミリアさんの一喝。
え? 一喝?
エミリアさんは俺の腕をガッと掴み、引っ張った。
俺と向き合い、真剣な眼差しを向けてくる。
「あなたがしっかりしないとみんな不安になるじゃない! わたしを助けてくれた時を思い出しなさい! 勇気を出して助けてくれた、格好いいリッドを!」
「い、いや俺は」
エミリアさんは俺が何か言う前に、そっと抱きしめてきた。
体温が伝わってくると同時に、エミリアさんの包み込むような優しさを感じる。
「大丈夫。こんな時のために、みんな頑張って来たんじゃない。みんなで協力すれば、どんなことだって乗り越えられるわ。だからリッド。いつも通り、わたしたちを引っ張って」
明らかに周囲の村人たちの不安や恐怖が薄れていく。
ロゼだけは俺たちを見て、頬を膨らませていたが。
俺はみんなとはまったく違うことを考えていた。
いや、これどういう状況!?
なんなのこれ。なんでこんなことになってるんだ!?
俺はただ、冒険者ギルドに依頼しようって流れになってほしかっただけなのに。
なんで俺たちだけでどうにかしようって展開になってるんだ?
「そ、そうだ! 俺たちは厳しい訓練をやりぬいて強くなった! 霊気兵も余裕で倒せたんだ! 魔物なんて恐れるに足らない!」
「そうだそうだ! 俺たちは強い! そして俺たちにはリッドがついている! 崩れ森の主を何度も倒したリッドが!」
「うおおお! 魔物なんて全部ぶっ飛ばしてやるぜ!」
あ、やばい。この流れ、イヤな予感しかしない。
なんかみんなやる気になってるんだけど!?
「「「リッド! リッド! リッド!」」」
おいやめろ。なんでリッドコール始めてんだよ!
ダメだ。このままじゃまずい。
どうにかしてカーマインを呼ばないと。
俺は思考をぐるぐると巡らせる。
だが、想定外の状況に頭はまったく働かなかった。
五年に及ぶ下準備をしてきたのに、俺は想定外のハプニングに弱かった。
だってこんなことになると思わなかったんだよ!
襲撃を想定して村人を強くしたつもりが、自信を持ち過ぎて冒険者に依頼するという選択肢が消えてしまうなんて誰がわかるんだよ!
だってゲーム内じゃ、戦うこともほとんどせずに逃げていただけだったし。
あの弱弱しい村人たちがここまで変わるとは思わなかったのだ。
襲撃に備えて、村人を鍛えておくか! くらいの感じでやり始めたのに、まさかこんなことになるとは。
ど、どど、ど、どうしよう。
俺は動揺した。人生でここまで動揺したことはないだろう。
カーマインがいなければ災厄の魔物は倒せない。
カーマインが主人公たるゆえんはそこにある。
王の器。災厄を挫く者。穢れを払う存在。選択者。
それがカーマインなのだ。
カオスソードでは、あらゆる事柄に関して具体的に語られることはあまりない。
シナリオは考察が必要で、かなり曖昧な部分が多い。
だがカーマインがいなければ世界を救うことはできないのはまぎれもない事実だ。
つまり、このままだと詰む。
バッドエンド一直線である。
どうする。マジでどうすんの。
「なあ、崩れ森に行って魔物を掃討した方がいいんじゃないか? 崩れ森の次の主も現れているだろうし、主を倒せば魔物たちも動きを止めるかもしれない」
なんてこと言うの、このロンは!
確かにゲームのカオスソードでは森の主を倒すとそこのステージの魔物は弱体化したし、動きが非能動的になっていた。
そしてこの世界でもそれは同じで、崩れ森の主を倒してしばらくは魔物は大人しくなっていた。
だからロンの言っていることは正しい。
だけど今はその正しさはいらない!
そんなことを言ったら。
「確かに、だったら戦える者を集めて、崩れ森に乗り込むぞ!」
誰かが言うと、誰かが呼応した。
「うおお! やるぞ! 俺たちで魔物たちを倒すんだ!」
奮起している。してしまっている。
どうしてだよおおおおおおおお!!
なんでやる気出してんだよ、ここは後ろ向きになって、逃げて逃げて、カーマイン呼べよおおおおお!
俺は気づいた。
やりすぎてしまったんだ。
すべてが裏目に出てしまったのだ。
万全の準備をしているつもりが、破綻への道を突き進んでいたのだ。
なんてこったい、オーマイガ!
俺は俯き、顔を手で覆った。
「大丈夫。リッドは一人じゃないから。あたしたちがいるんだから。一緒に頑張りましょう」
エミリアさんがなぜか優しく頭を撫でてくれた。
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どうやらもう崩れ森に行くことは決定らしい。
もしかしてだけど、これって……。
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