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第1章
第3話
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詰んだ。完全に詰んだ。
チートスキルで無双どころじゃない。
自己犠牲による味方の強化? それ以外のスキルは全て使えない?
おまけにスキル名が“アンダードッグパラドクス”って。
完全な噛ませ犬スキルじゃないか!
俺はいっそ大通りで叫び出してやろうかという衝動を覚えたが、なけなしの理性でなんとか堪えた。
ギリギリと奥歯を噛み締めながらも、腕を組む。
なんとかこのスキルを活かすやり方はないだろうか。
まず大前提としてこのスキルを使うにはパーティを組むことが必要とされる。だが俺はこの世界に来たばかりで知り合いもいなければ何も実績を残していない。おまけに元の世界のユニ○ロファッションで怪しさ三割増しだ。誰が見知らぬ怪しい初心者をパーティに入れたがるだろうか。
それに、仮にパーティが組めたとしても、その後はどうすればいいのだ。このスキルの「自己犠牲」がどの程度のものになるかは使ってみないことにはわからないが、「犠牲」というからには、運が悪ければその場で即死。運よく生き残ったとしても再起不能になる可能性だってある。その場合はパーティを追い出されて露頭に迷い、餓死するのを待つしかない。
天国に直行か、地獄の思いをするか。いずれにせよ答えは変わらない。
結論は出ている。
転生して一時間足らずで、俺の異世界生活は完全に詰んだ。
頭を抱える俺の元に、
「ハジメ、だったよな? よければ、俺たちのパーティに入らないかい?」
ひょうきんな戦士の青年の声が響き渡った。
イマコイツナンテイッタ?
パーティに入れるだって?
俺を?
「ちょっと、ヤマト! 本気!? その人をパーティに入れるなんて!」
「駆け出し探索者だぞ。しかもスキルがそれだけじゃ……」
取り巻きの女子二人からの猛反対っぷりに、俺はショックを受けるどころか、心の中で「それな!」と二人に賛同した。
どう考えても俺をパーティに入れるなんてまともじゃない。
自分で言ってて悲しくなってくるが、それが事実だ。
このイケメン陽キャ剣士は何を考えているのだろうか。
だが当のヤマトはあくまで冷静に「まずはおれの話を聞いてほしい」
と説明を始めた。
「まずおれは今まで探索者をしている中で、“アンダードッグパラドクス”なんていうスキルを聞いたことがない。だがスキル鑑定士が鑑定した以上、そのスキルの効果は本物だろう。だとすれば、これは噂に聞く“ユニークスキル”ではないだろうか?」
ユニークスキル!
その名前は俺もネットやアニメなどで聞いたことがある。
「ユニークスキルはこの世界でたった一人しか持つことができないものである上に、その効果は一癖も二癖もあるというが、非常に強力であるとも聞く。ハジメが本当にユニークスキルの持ち主なら、彼はおれたちの冒険を画期的に変える一助になり得るだろう」
「でもさ、この人のスキルが本当にユニークスキルだとしても、その効果が使えないんじゃ意味ないじゃない。だってスキルを使ったら……その人……ほら……死んじゃうんでしょ?」
マドカの指摘はもっともだ。俺だってたった一回限りの戦闘で死にたくはない。
だがヤマトは不敵に微笑むと、懐からお守りのようなものを取り出して俺たちに見せた。
「マドカとカエデは覚えているだろう? この前手に入れたばかりの遺物アーティファクト、“朝露の護り” 。これをハジメに持たせれば、体力が全開なら一度だけ死ぬことなくギリギリで耐えられる。そして仮に怪我を負ったとしても、マドカ、君の回復魔法スキルが有れば直してあげられる。だろ?」
「たしかに、そうかもしれないけど……」
チラ、とマドカが俺を見る。
そんなことをしてあげる価値がこの人にあるの? とでも言わんばかりだ。
正直、俺は何も言えなかった。ヤマトの言っていることが正しければ、スキルのリスクをある程度は抑えられそうだ。だが俺自身、噛ませ犬スキルの「味方の強化」にどれくらいの効果があるのかわからなかったからだ。
カエデと名乗った女性スカウトは、癖なのだろうか、右手でマントをいじりながら、目だけはしっかりヤマトとマドカを見て、ことの成り行きを見守っている。
「大丈夫、おれに考えがあるんだ。おれを信じろ」
「ヤマト……」
そうして二人は見つめ合い、パーティ加入の話し合いにしてはややセンチメンタルな時間が僅かばかり過ぎたが、やがてマドカがこくりと頷いた。
こうして、万事休すかと思われた俺の異世界生活はなんとか終わらずに済んだ。
だが俺は、肝心なことを聞いていないことに気づいた。
「それで、今さらで悪いんだけど、俺たちは何をするんだ? 魔王でも倒しに行くのか?」
「マオウ? なんだそれは。ハジメの国の言葉か? おれたちはダンジョンに行くのさ。そこでモンスターを倒して財宝を見つけて、最終的には──」
ヤマトは朗らかな笑顔で言った。
「ダンジョンのどこかに隠れている女神を見つけ出して、この手でぶち殺すんだ」
チートスキルで無双どころじゃない。
自己犠牲による味方の強化? それ以外のスキルは全て使えない?
おまけにスキル名が“アンダードッグパラドクス”って。
完全な噛ませ犬スキルじゃないか!
俺はいっそ大通りで叫び出してやろうかという衝動を覚えたが、なけなしの理性でなんとか堪えた。
ギリギリと奥歯を噛み締めながらも、腕を組む。
なんとかこのスキルを活かすやり方はないだろうか。
まず大前提としてこのスキルを使うにはパーティを組むことが必要とされる。だが俺はこの世界に来たばかりで知り合いもいなければ何も実績を残していない。おまけに元の世界のユニ○ロファッションで怪しさ三割増しだ。誰が見知らぬ怪しい初心者をパーティに入れたがるだろうか。
それに、仮にパーティが組めたとしても、その後はどうすればいいのだ。このスキルの「自己犠牲」がどの程度のものになるかは使ってみないことにはわからないが、「犠牲」というからには、運が悪ければその場で即死。運よく生き残ったとしても再起不能になる可能性だってある。その場合はパーティを追い出されて露頭に迷い、餓死するのを待つしかない。
天国に直行か、地獄の思いをするか。いずれにせよ答えは変わらない。
結論は出ている。
転生して一時間足らずで、俺の異世界生活は完全に詰んだ。
頭を抱える俺の元に、
「ハジメ、だったよな? よければ、俺たちのパーティに入らないかい?」
ひょうきんな戦士の青年の声が響き渡った。
イマコイツナンテイッタ?
パーティに入れるだって?
俺を?
「ちょっと、ヤマト! 本気!? その人をパーティに入れるなんて!」
「駆け出し探索者だぞ。しかもスキルがそれだけじゃ……」
取り巻きの女子二人からの猛反対っぷりに、俺はショックを受けるどころか、心の中で「それな!」と二人に賛同した。
どう考えても俺をパーティに入れるなんてまともじゃない。
自分で言ってて悲しくなってくるが、それが事実だ。
このイケメン陽キャ剣士は何を考えているのだろうか。
だが当のヤマトはあくまで冷静に「まずはおれの話を聞いてほしい」
と説明を始めた。
「まずおれは今まで探索者をしている中で、“アンダードッグパラドクス”なんていうスキルを聞いたことがない。だがスキル鑑定士が鑑定した以上、そのスキルの効果は本物だろう。だとすれば、これは噂に聞く“ユニークスキル”ではないだろうか?」
ユニークスキル!
その名前は俺もネットやアニメなどで聞いたことがある。
「ユニークスキルはこの世界でたった一人しか持つことができないものである上に、その効果は一癖も二癖もあるというが、非常に強力であるとも聞く。ハジメが本当にユニークスキルの持ち主なら、彼はおれたちの冒険を画期的に変える一助になり得るだろう」
「でもさ、この人のスキルが本当にユニークスキルだとしても、その効果が使えないんじゃ意味ないじゃない。だってスキルを使ったら……その人……ほら……死んじゃうんでしょ?」
マドカの指摘はもっともだ。俺だってたった一回限りの戦闘で死にたくはない。
だがヤマトは不敵に微笑むと、懐からお守りのようなものを取り出して俺たちに見せた。
「マドカとカエデは覚えているだろう? この前手に入れたばかりの遺物アーティファクト、“朝露の護り” 。これをハジメに持たせれば、体力が全開なら一度だけ死ぬことなくギリギリで耐えられる。そして仮に怪我を負ったとしても、マドカ、君の回復魔法スキルが有れば直してあげられる。だろ?」
「たしかに、そうかもしれないけど……」
チラ、とマドカが俺を見る。
そんなことをしてあげる価値がこの人にあるの? とでも言わんばかりだ。
正直、俺は何も言えなかった。ヤマトの言っていることが正しければ、スキルのリスクをある程度は抑えられそうだ。だが俺自身、噛ませ犬スキルの「味方の強化」にどれくらいの効果があるのかわからなかったからだ。
カエデと名乗った女性スカウトは、癖なのだろうか、右手でマントをいじりながら、目だけはしっかりヤマトとマドカを見て、ことの成り行きを見守っている。
「大丈夫、おれに考えがあるんだ。おれを信じろ」
「ヤマト……」
そうして二人は見つめ合い、パーティ加入の話し合いにしてはややセンチメンタルな時間が僅かばかり過ぎたが、やがてマドカがこくりと頷いた。
こうして、万事休すかと思われた俺の異世界生活はなんとか終わらずに済んだ。
だが俺は、肝心なことを聞いていないことに気づいた。
「それで、今さらで悪いんだけど、俺たちは何をするんだ? 魔王でも倒しに行くのか?」
「マオウ? なんだそれは。ハジメの国の言葉か? おれたちはダンジョンに行くのさ。そこでモンスターを倒して財宝を見つけて、最終的には──」
ヤマトは朗らかな笑顔で言った。
「ダンジョンのどこかに隠れている女神を見つけ出して、この手でぶち殺すんだ」
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