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Ep2 ひたすら自分を殺す日々
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けたたましいベルの音だ。
俺は寝ぼけ眼で目覚まし時計のベルを止めた。
……また今日も一日が始まる。
Ep2 ひたすら自分を殺す日々
実際自分を偽って暮らすというのは疲れるものだ。
生憎俺の進学した高校に寮はなく(だから良いのだが)、近所のアパートに住んでいる。
しかしアパートに帰れば自分をさらけ出せると思ったら大間違いだ。
クラスメイトたちが何かのきっかけで俺の部屋に遊びに来るなんていう事態になる可能性もあるからだ。
そのときに隣人に声をかけられて……なんてことになったらどうする?
……そう考えるととてもじゃないが自宅で自分を出すのは危険だ。
考えすぎなんだろうか……。
だが!!!!!
その気の緩みがいけない。
俺は優しくておとなしい人間なんだ……そうなんだ……自分に言い聞かせろ……。
「檜山くんおはよう~」
「あ、お、おはよう」
下駄箱前でいきなり声をかけられて油断してしまった。
同じクラスの津村のどかだ。
彼女はクラスで一番の美少女。清楚で頭も良く、俺には所詮手の届かない存在だ。
ただ、俺は誰にでも優しくておとなしいキャラなので、彼女も警戒心無く接してくれる。
優しい人間はこういうとき得だ。
だが、損する場面もある。
「檜山~今日の提出課題見せて! ごめん!」
教室に入るやいなや、一人の男子に声をかけられた。
彼は高橋一哉と言って、調子の良いクラスメイトの一人だ。
「しょうがないなぁ。早く写してね」
俺は笑顔で宿題のノートを差し出した。
こういうことが頻繁に起こる。俺はいつも宿題やらを貸すことになるので、きちんと宿題をしたり勉強をしたりすることに抜かりはない。これは、俺にとって結構重要なことなのだ。
勉強をソツなくこなしてクラスの上位10番程度を維持することがポイントだ。
写した答えが間違ってたら意味ないからね……信頼を得られないとこうやって声もかけてもらえなくなる。
陰の努力は涙ぐましいと、俺自身も心の中で笑ってしまう。
勉強できなくても友達に恵まれる奴らが羨ましいもんだ……。
と、いうわけで。
俺の現在のクラスでの立ち位置は『気の優しいクラスの良心』ってところだ。
大概のお願いなら聞いてあげるし、笑顔とそれを裏切らない優しさが売り。
今の俺は、クラスのカーストでも結構上位にいるんじゃないだろうか?
俺の無害そうな笑顔や清潔な身なり、優しさとか成績とか……これだけ揃えば、クラスの調子の良い奴らからもからかわれたりイジられたりはさすがにない。
もしクラスで何か問題が起こったとして、そのとき俺が気の利いた発言すればもしかしたら、もっと上位のカーストに登れるかもしれない。
まぁ、しないけど。
なんでしないかって?
これ以上上にいる奴らは”本物”だから。金持ちだったりイケメンだったり人を笑わせるのが上手かったり……奴らと並んだら、俺のメッキは簡単に剥がれてしまう。
だから、決してそういう奴らと肩を並べてはいけないんだ。
そういう事態に陥って一瞬でも俺の曇った部分が見えたとき、おそらく俺は終わる。
今の環境が最高。これ以上の欲をかくと一気に転落真っ逆さま。
実際の俺からしたら信じられない状況。ものすごく居心地が良い空気。
俺の居場所があるんだ。
あの頃のとげとげしい視線に包まれた空気なんかよりは10000倍マシだ。
ただ……ここまで読んでくれた君ならわかるだろうけど、本当の自分を殺した毎日は、正直かなりキツい。
本当は、そんなことしなくていいのが一番いいんだ。
悲しくもある。
俺はそれだけ本来下等な人間だって。
俺の汚い本性をクラスのみんなに隠して、騙しているわけだから。
俺は寝ぼけ眼で目覚まし時計のベルを止めた。
……また今日も一日が始まる。
Ep2 ひたすら自分を殺す日々
実際自分を偽って暮らすというのは疲れるものだ。
生憎俺の進学した高校に寮はなく(だから良いのだが)、近所のアパートに住んでいる。
しかしアパートに帰れば自分をさらけ出せると思ったら大間違いだ。
クラスメイトたちが何かのきっかけで俺の部屋に遊びに来るなんていう事態になる可能性もあるからだ。
そのときに隣人に声をかけられて……なんてことになったらどうする?
……そう考えるととてもじゃないが自宅で自分を出すのは危険だ。
考えすぎなんだろうか……。
だが!!!!!
その気の緩みがいけない。
俺は優しくておとなしい人間なんだ……そうなんだ……自分に言い聞かせろ……。
「檜山くんおはよう~」
「あ、お、おはよう」
下駄箱前でいきなり声をかけられて油断してしまった。
同じクラスの津村のどかだ。
彼女はクラスで一番の美少女。清楚で頭も良く、俺には所詮手の届かない存在だ。
ただ、俺は誰にでも優しくておとなしいキャラなので、彼女も警戒心無く接してくれる。
優しい人間はこういうとき得だ。
だが、損する場面もある。
「檜山~今日の提出課題見せて! ごめん!」
教室に入るやいなや、一人の男子に声をかけられた。
彼は高橋一哉と言って、調子の良いクラスメイトの一人だ。
「しょうがないなぁ。早く写してね」
俺は笑顔で宿題のノートを差し出した。
こういうことが頻繁に起こる。俺はいつも宿題やらを貸すことになるので、きちんと宿題をしたり勉強をしたりすることに抜かりはない。これは、俺にとって結構重要なことなのだ。
勉強をソツなくこなしてクラスの上位10番程度を維持することがポイントだ。
写した答えが間違ってたら意味ないからね……信頼を得られないとこうやって声もかけてもらえなくなる。
陰の努力は涙ぐましいと、俺自身も心の中で笑ってしまう。
勉強できなくても友達に恵まれる奴らが羨ましいもんだ……。
と、いうわけで。
俺の現在のクラスでの立ち位置は『気の優しいクラスの良心』ってところだ。
大概のお願いなら聞いてあげるし、笑顔とそれを裏切らない優しさが売り。
今の俺は、クラスのカーストでも結構上位にいるんじゃないだろうか?
俺の無害そうな笑顔や清潔な身なり、優しさとか成績とか……これだけ揃えば、クラスの調子の良い奴らからもからかわれたりイジられたりはさすがにない。
もしクラスで何か問題が起こったとして、そのとき俺が気の利いた発言すればもしかしたら、もっと上位のカーストに登れるかもしれない。
まぁ、しないけど。
なんでしないかって?
これ以上上にいる奴らは”本物”だから。金持ちだったりイケメンだったり人を笑わせるのが上手かったり……奴らと並んだら、俺のメッキは簡単に剥がれてしまう。
だから、決してそういう奴らと肩を並べてはいけないんだ。
そういう事態に陥って一瞬でも俺の曇った部分が見えたとき、おそらく俺は終わる。
今の環境が最高。これ以上の欲をかくと一気に転落真っ逆さま。
実際の俺からしたら信じられない状況。ものすごく居心地が良い空気。
俺の居場所があるんだ。
あの頃のとげとげしい視線に包まれた空気なんかよりは10000倍マシだ。
ただ……ここまで読んでくれた君ならわかるだろうけど、本当の自分を殺した毎日は、正直かなりキツい。
本当は、そんなことしなくていいのが一番いいんだ。
悲しくもある。
俺はそれだけ本来下等な人間だって。
俺の汚い本性をクラスのみんなに隠して、騙しているわけだから。
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