高橋課長と佐藤君

まみか

文字の大きさ
上 下
2 / 11

高橋課長 2 部下の策略

しおりを挟む



なにやってるんだ。
道すがら何度も自分を問いただす。
仕事中に部下と、しかも逢引のような誘いに乗ってのこのこと。
自分でもありえない行動に困惑する。
でも、それも、資料室の一番奥で俺を待っていた佐藤に、にこやかに抱きしめられて吹き飛んだ。
急に思い出した快楽に、期待がかかる。
すぐに重なってきた唇と、侵入してきた舌に翻弄されて。
どちらともなく下半身を弄って。
佐藤の動きを追って、腰が無意識に動く。
我ながら淫らだとは思うが止められない。
指の動きを真似すれば、佐藤の熱い吐息が耳にかかる。
その度体温が上昇し、脳が沸騰する。
仕事中だということも半分ぐらい忘れていた。
追い詰められて、限界近くなってやっと思い出す。
「おい、あんまり遅いと…」
「不信がられちゃいますね」
佐藤は全然気にしてないみたいに言う。
二人分の荒い息遣いが資料室に響いて、誰か入ってきたら…。
そういえば、佐藤の奴、資料室に行くって言って出てきてるじゃないか。
こいつを探しに誰か来たら…。
「課長、集中して」
「だが、お前」
「いいから」
夕べみたいに口付けをしながら、扱き合う。
おいおい、十代じゃないないんだぞ。
昨日の今日で何をそんなに興奮してるんだ、俺は。
それなのにやめられない。
俺は淡白な方だったのに。
佐藤に狂わされた気がする。
抜き合いなんて、自慰の延長でしかない。
溺れるほどの快楽でもないのに。
俺を見つめて、口元を緩める佐藤から目が離せない。
同じ男だと嫌が応にも感じさせる骨ばった顔からも、肉厚な唇からも。
もしかしたら。
同じ男だということが俺を興奮させるのか。
背徳心は当然のようについてくる。
それに快楽が絡んで、増長され、中毒症状でも起こしているのかもしれない。

それからの俺たちは合間を見つけては、キスをしたりお互いを弄り合ったりするようになってしまった。
場所は資料室、トイレ、会議室。
それが日常。
困ったことに。
まるで付き合ってるみたいじゃないか。
だが、俺たちの間にそれ以外ない。
そもそもなぜ佐藤が俺をオカズに抜いてたにかさえ、未だわかっていない。
聞いたことはある。
たしかに、ある。
でも返事をよく覚えていない。
したかったから。
ちょうど催したから。
そんなことをあの作り笑いのような顔で言われたと思うが。
佐藤との抜き合いを続ければ続けるほど、余計に作り笑いに見えてくるあの笑顔は、俺の中で危険信号を出している。
あの笑顔から溢れてくる言葉に真意はない。
何か、隠しているんじゃないか?
佐藤は。

俺たちがそういうことになって、二週目の金曜。
やっぱり人目を避けて、トイレの個室に二人で籠って弄り合ったあと、佐藤に言われた。
「今夜、俺んち、きませんか?」
行ったところでやることは決まってる。
そこで断っていたら、なにか違っていたのかもしれない。
今になればそう思うが、その時の俺は、佐藤と与えあう快感にすっかり溺れていて、頷いてしまった。
久しく相手を作っていないからだな、きっと。
仕事を言い訳にして、特定の相手を作ることの不自由さやめんどくささなんかから、積極的に出会うこともせずに、もうどれくらいだっけ?
快楽という存在さえ忘れかけていたのかも
それを無理やり佐藤に思い出させられた。
晩飯を一緒に食べに行って、そのまま佐藤の部屋に行って、風呂に入って。
ベッドに入って、やっぱり口付けしながら弄り合う。
なんだかなあ。

そんな関係を続けて、はや二か月。
関係に変化が現れる。
週末佐藤の部屋に誘われる。
お互いの性器を弄り合うだけだったのに、ふと佐藤の手が後ろに回った。
入口を撫でられて思わず、びくり、とした。
「ちょっと、触るだけですから」
佐藤はそう俺を宥めた。
俺だって、わかってる。
男同士でどうやるのか。
ただ、俺たちは違う、そう思いたかった。
事実、そういうやり取りは皆無だし。
ただ佐藤が何か隠してる、企んでいるような気はしていたが。
「前立腺、て奴があるらしいんですよね」
そういいながら、俺の吐き出したものでたっぷりと濡れた指を差し込んできた。
「ひっ」
異物感に身を震わせると、佐藤が申し訳なそうに見てる。
「すいません、もうちょっとだけ我慢してて」
中を探る指が気持ち悪い。
それまで高揚していたものが萎えていく。
「だ、めだ、さとぅ」
「すいません、もうちょっと」
情けない声で佐藤が繰り返す。
佐藤の首にしがみついて、なぜか俺は我慢することにした。
内臓を指で触られるという嫌悪、体内で別のものが動いているという不気味さ、諸々不快なものしか俺は感じることができないのに、なんでまた我慢することにしたんだか。
「すいません、課長、我慢して」
繰り返す佐藤の情けない声。
初めて聞いた。
いつも自信たっぷりで。
俺を弄ぶかのように振る舞い、あの作り笑いを浮かべているのに。
仕事の時だって、ハキハキとした返事。
出来ないとは決して言わない。
時々見せる自信家な一面。
今の佐藤には余裕の欠片もない。
恐らくは俺は不快に青くなっているだろうが、指を入れているだけの佐藤も青くなってる。
眉を寄せ、額の汗は興奮からくるものではないようだ。
そして。
「う、わっ」
急に佐藤の指が電極のようなものに触れて、ビリッとした快感が走った。
思わず佐藤をみると、ほっとした顔をしている。
「見つけた」
それからそこを中心に指先を動かす。
「う、く、んっ」
同時に前も弄られて。
「さ、と、だめ、だ、も」
「うん。いいですよ、イっても」
俺だけなんて、嫌だ。
そう思い、伸ばした手で佐藤を刺激するも、自分の快感に夢中になって、気がつけば俺だけイかされていた。
それが、今までで一番、気持ちよくて。
息を喘がせる俺の背を、イけなかったくせに佐藤はぽんぽんと宥めるように叩いていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

可愛がって下さい。

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:386

三田先輩の克哉くんデータ

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:198

仮面肉便姫

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:241

【羞恥】性感マッサージの練習台さん

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:241pt お気に入り:73

脅迫者は優しいご主人様

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:220

鬼畜ドS彼氏♂とツンデレ淫乱彼氏♂

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:50

堂崎くんの由利さんデータ

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:210

硝子の魚(glass catfish syndrome)

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:302

処理中です...