バッファロー銀伝説

なつめたもる

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二十二手目

連鎖の始まり

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▲5七飛車とたもるの飛車が王手をかける。

△5六歩と肩を組むように攻撃を防ぐ吉田。

再び▲5九飛車と元々王将のいた場所に飛車を退避させるたもる。


(あ、、、これは、きっと俺の方が悪いな。自分の玉を守らなければ。)

その瞬間瞬間の短期的な考えが、
吉田の悪手となってしまう。

吉田、△3二金。

この手は、将棋の対局でよく見かける手である。

形を意識すると、このような、
よく見られる手を指してしまうことがある。

しかしある局面において、その「形の意識」が、悪形になる場合がある。


たもるの父親がたもるに一度も負けたことが無かった理由の一つは、致命的なミスの手を指さなかったことだ。

将棋は、スタートからゴールまで全て見ることのできる阿弥陀籤のようなもので、どこが当たりかハズレかまで全て分かっている。

だが、その阿弥陀籤は、無限に分岐をし続けるため、正しいゴールに行くためのスタート地点を見つけられるか否かは、重課題だ。


だが将棋の阿弥陀籤は、一般に知られている阿弥陀籤と違い、途中で、違う道から同じ道に繋がることや、正しいゴールの一歩手前でいきなりゲームオーバーのゴールにも線が繋がている。

それが将棋の醍醐味である。

たもる父は、そのゲームオーバーのゴールに突然行くことが無いのだ。

それはただの見せかけの形ではない、本当の強さとなるのだ。


たもるは、父の正確な読みに負け続けたおかげで、何が正しいか、間違っているかを、自然と掴むことができるようになっていた。


よって、たもる、吉田の△3二金に違和感を覚える。


何かの違和感を感じた時、たもるは右手に拳をつくり、自分の顎をポンポンポンと叩く。

顎を揺らし、脳を活発にしているのだろうか、それは分からないが、たもるの思考が、研ぎ澄まされようとしている。


(何か、何かある!見つけるんだ!)

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