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三十手目
人にあらず
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4月6日、未の刻。
たもるの会社の1階総務課で、突然太い大声が響き渡った。
「なんで、言ったこともやれねぇんだよ!」
幸い来客中ではなかったが、怒りのベクトルがたもるにとって問題であった。
三林が吉田に対し声を荒げたのである。
「仕事にならねぇんだよ、ちゃんとやってくれねぇとさ!」吉田に言葉を浴びせる三林。
「私、昨日も同じ仕事を係長から依頼されて、終えてお渡したじゃないですか。あなたの決済も貰いました。何故また同じことをやる必要があるんですか?」
「はぁ?どうでもいいからやってくれないかな?困るんだよ。」
「決済押しましたよね?これ、係長の決済ですよね?」吉田が昨日終えた書類の決済部分を三林に突きつけた。
「あのね、昨日の決済の話なんかしてないからさ、今日の決済はまだなんだからさ、やってくれないと困るんだよ!」三林が赤く染まっている。
「無理です、理由はあります。」
吉田が毅然とした態度で臨む。
「…言ってみろよ。」
「この状況だったら、もう一度同じ仕事をしたとしても、また明日同じ仕事をやらなければならないですから。変更すべき箇所があるなら、それをお伝え頂かなければ、仕事はやれません。」
「それは自分で考えないといけないんだよ!」
「いいえ、課長の決済が降りなかったんですよね?その理由があるはずです。私が課長に聞いてもいいんですか?でもそれは係長に失礼にあたります。あなたの決済を頂いたんですから。」
「よく分かんねえけど、とっととやり直せよ、若いんだからさ。ブラインドタッチできるんだろ?」
三林のその言葉に、沈黙する吉田。
沈黙が13秒続いた。その後、目をつぶっていた吉田が目を見開き静かに言った。
「わかりました。退職させていただきます。」
「なんだとても残念だね、とても優秀な人材なのに、そうだな、うちなんかじゃ勿体無いな、そうかそうか、分かった、退職願書いてくれな、残念だ残念だ。」
三林が若干ニヤケながら、そう言った。
二人の周りには人だかりが出来ている。その中にたもるの姿もあった。何も言えずにたもるはその光景を見ているだけだった。
たもるの会社の1階総務課で、突然太い大声が響き渡った。
「なんで、言ったこともやれねぇんだよ!」
幸い来客中ではなかったが、怒りのベクトルがたもるにとって問題であった。
三林が吉田に対し声を荒げたのである。
「仕事にならねぇんだよ、ちゃんとやってくれねぇとさ!」吉田に言葉を浴びせる三林。
「私、昨日も同じ仕事を係長から依頼されて、終えてお渡したじゃないですか。あなたの決済も貰いました。何故また同じことをやる必要があるんですか?」
「はぁ?どうでもいいからやってくれないかな?困るんだよ。」
「決済押しましたよね?これ、係長の決済ですよね?」吉田が昨日終えた書類の決済部分を三林に突きつけた。
「あのね、昨日の決済の話なんかしてないからさ、今日の決済はまだなんだからさ、やってくれないと困るんだよ!」三林が赤く染まっている。
「無理です、理由はあります。」
吉田が毅然とした態度で臨む。
「…言ってみろよ。」
「この状況だったら、もう一度同じ仕事をしたとしても、また明日同じ仕事をやらなければならないですから。変更すべき箇所があるなら、それをお伝え頂かなければ、仕事はやれません。」
「それは自分で考えないといけないんだよ!」
「いいえ、課長の決済が降りなかったんですよね?その理由があるはずです。私が課長に聞いてもいいんですか?でもそれは係長に失礼にあたります。あなたの決済を頂いたんですから。」
「よく分かんねえけど、とっととやり直せよ、若いんだからさ。ブラインドタッチできるんだろ?」
三林のその言葉に、沈黙する吉田。
沈黙が13秒続いた。その後、目をつぶっていた吉田が目を見開き静かに言った。
「わかりました。退職させていただきます。」
「なんだとても残念だね、とても優秀な人材なのに、そうだな、うちなんかじゃ勿体無いな、そうかそうか、分かった、退職願書いてくれな、残念だ残念だ。」
三林が若干ニヤケながら、そう言った。
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