17 / 170
ファイエット学園編
04.モブ令嬢と校舎裏の花壇
しおりを挟む
まぁ、こうなる気はしていた。シルヴィは隣に立つルノーを見て、ポカーンと固まったトリスタンに苦笑いを浮かべた。
今日の昼休み、昨日の出来事を詳しく教えてと詰め寄ってきたルノーに、シルヴィはどこから見て……校舎からか? と大いに戸惑った。しかし、秘密にするような事でもなかったため、教えたのだ。勿論、喧嘩云々の所は伏せて。
ルノーは納得したのかしていないのは「……そう」とだけ言って、暫し何かを考えていた。そして、言ったのだ。「僕も行くよ」、と。
ルノー曰く、二人で過ごす場所なのだから自分も何か協力する。ということらしい。トリスタンの存在はどこにいった? とシルヴィは思わなくもなかったが、触れるのはやめておいた。本能がやめておけと言ったので。
「えっと……。ごきげんよう、トリスタン様」
ひとまず挨拶だけはしておこうと、シルヴィは辞儀をする。トリスタンは「あぁ、その……」と返事はしたものの視線はルノーから逸らせないようだった。
「と、トリスタン・ルヴァンスと申します」
おずおずとトリスタンはルノーに自己紹介をする。ルノーはそんなトリスタンを上から下まで値踏みするように眺めた。
「シルヴィから聞いているよ。ルヴァンス侯爵家の長男だろ? 初めて見たな」
「申し訳ありません。社交界は、苦手なもので……」
「謝る必要はないよ。僕も社交界には興味がないからね」
公爵家の長男と侯爵家の長男が社交界に出ないのはどうなのだろうか。二人共に、家の後継者ではないとしても、だ。
シルヴィは落ち着かない心持ちで、二人の会話を見守る。二人の立場は似ているようで、似ていない。
何故なら、ルノーは後継者という肩書きに全くもって興味がない。そのため、文字通り社交界は“苦手”ではなく“興味がない”のだ。
シルヴィはトリスタンが侯爵家を継ぎたいと思っているのかどうかは知らないので、そこは何とも言えないのだが。
ルノーをよく知らない者にとって、ルノーは直系であり白金色の魔力もちであったが、病のせいで後継を養子に取られた公爵家長男。
トリスタンの噂は、ルヴァンス侯爵の甥で養子に迎えられた黒髪の魔力なしだが、直系の子どもが産まれなければ後継になれた侯爵家長男。
この貴族社会では、なかなかにヘビーな内容を抱えた二人なのだ。当人達がどう思っているのかは分からないが、シルヴィは変に緊張してきた。
「こ、こちらは、ルノー・シャン・フルーレスト公爵令息です」
「お会いできて光栄です、フルーレスト卿」
「ふぅん……。どうだろうね。僕に態々会いたがる人がいるとは思えないけど」
ゆったりと笑みを浮かべたルノーに、トリスタンは言葉を詰まらせる。
それを見たシルヴィは、何でそう意地の悪いことを言うのか。と溜息を吐いた。ルノーがそういった煩わしいことから解放されて喜んでいたことをシルヴィは知っているのだから。
「そういう言い方はどうかと思うの」
シルヴィにジト目を向けられて、ルノーはきょとんと目を瞬いた。責めるようなそれに、ルノーは「そうかな。じゃあ、やめておくよ」と軽く返す。シルヴィの前では。と後に付くのだが、ルノーはそれを音にはしなかった。
「それで? ルヴァンス卿は花壇の使用許可を取ってきたの?」
「はい、勿論です」
「本当ですか!? やった!」
トリスタンは約束通りに花壇の使用許可を教師から取ってきてくれたらしい。シルヴィの瞳に喜色が滲んで、ルノーは良かった筈なのに、どこか気に食わないような。何とも形容しがたい感情に支配された。
人間とは、複雑な生き物だ。ルノーはその感情を持て余しながら、シルヴィを見つめる。この感情を全てぶつけるにしては、シルヴィは余りにも頼りない。
シルヴィの視線が不意にルノーに向けられる。ルノーと目が合って、シルヴィは不思議そうに目を瞬いた。
「ルノーくん?」
「ん?」
首を傾げたルノーに釣られるように、シルヴィも首を傾げる。いつも通りにゆるりと目を細めたルノーに、シルヴィは「何でもないです」と首を左右に振った。
「あの、フルーレスト卿」
「なに?」
「ルヴァンスではなく、トリスタンと呼んで頂けませんか」
「……?」
トリスタンが困ったように眉尻を下げる。理由を求めるようなルノーの瞳に、トリスタンは自嘲するような笑みを浮かべて頬を掻いた。
「いつまで経ってもルヴァンスは慣れません」
「ふぅん?」
トリスタンはルヴァンス侯爵の姉の息子。つまり、元の苗字はルヴァンスではないのだろう。そして、出来ればあまり侯爵家の人間だとバレたくないのかもしれない。
ルノーはトリスタンの噂を知らなかった。つい昨日までは、の話だが。ルノーにとっては必要のない情報だったからだ。しかし、シルヴィが関わりを持ってしまった。
トリスタン・ルヴァンス。彼のことをシルヴィから聞いたとルノーは言ったが、聞く前から調べてはいた。シルヴィの口から、悪い噂話の類いが出てこないだろうことは予想していたからだ。
ルノーが欲しかった情報は、寧ろその悪い噂話の方だ。色々と調べた結果、社交界で噂されているトリスタンの事情は、ほぼほぼ事実だと判明した。
怪しい点があるとするならば、トリスタンの両親の死について。そこだけが、誰も詳しく知らなかったのだ。皇太子であるフレデリクでさえも。
トリスタン自身については、可もなく不可もなく。話を聞く限りでは、普通な印象をルノーは受けた。だから、今日ここにシルヴィが来ることを許したのだ。
「構わないよ。じゃあ、トリスタン卿と呼ぼうかな」
「……感謝します」
さも楽しいと言いたげに笑うルノーに、トリスタンはぞわぞわと寒気のようなものを感じて顔が引きつりそうになるのを耐えた。
「瑠璃色」
「え?」
「珍しい色をしてるね」
ルノーの指摘に、トリスタンが体を強張らせる。しかしそれは一瞬で、直ぐに誤魔化すように人好きのする笑みを浮かべた。
「ははっ、そうですか? フルーレスト卿の瞳の方が珍しいですよ。深い紺い、ろ……?」
自分の発言に驚いたような顔をして、トリスタンは戸惑いを顔に滲ませた。それに、ルノーは口元の笑みを深める。
「そう?」
こてり。態とらしく首を傾げたルノーに、トリスタンの纏う空気が変わった。これは、きっと、恐怖。
「ルノーくん!」
一番最初に耐えられなくなったのは、勿論シルヴィだった。しかし、特に言う言葉を決めていなかった。アワアワと意味もなく両手を宙にさ迷わせるシルヴィに、ルノーの纏う雰囲気も一瞬で変わる。
「シルヴィ」
「うん!?」
優しい声音だった。顔に浮かぶ笑みも柔らかくなったものだから、トリスタンは付いていけずに呆気に取られて固まる。
「君の言った通り、ここは“素敵”だ」
「え!? あ、あぁ、え?」
「でも、ベンチが欲しいな」
「そう、だね?」
急に変わった話題に、流石のシルヴィも付いていけずにハテナマークが飛び交う。
どうやら、ルノーの中でトリスタンとの話は終わったらしい。興味の矛先がトリスタンから校舎裏のことに変わったようだ。
「僕が聞いてくるよ」
「なにを?」
「学園は私物を設置するのを許可しないだろうからね。使っていないベンチがあればそれで良いけど……。なければ、そうだな。うん。僕に任せてくれて構わないよ」
「本当に?」
ルノーの言葉はとても心強いはずであるが、心配になるシルヴィは間違っていないだろう。どうするつもりなのかは、聞かない方が身のためだろうか。うーん……。シルヴィは思案するようにルノーを見つめる。
ルノーの深い紺色の瞳に、優越感のようなものが滲んだ。それには気づかずにシルヴィは、尚も真剣に考え込む。
「でも、ベンチは欲しいだろ?」
「……欲しい」
「うん。僕が用意するよ。花は詳しくないからね。これくらいしか出来そうにない」
確かに、ルノーに花壇の作業は向いていない。昔、フルーレスト公爵夫人自慢の植物園で、庭師の手伝いをしたことがあった。
ただ、花壇に花の苗を植えるだけ。だと言うのに、ルノーは何をどうしたらそうなる? という仕上がりになっていた。シルヴィが庭師と一緒に花は救出したのだが。
ルノーの協力したいという気持ちをシルヴィは受け取ることにした。どうか、使っていないベンチが存在しますように。そんなことを祈ってしまったのは許して欲しい。
「分かった。ありがとう、ルノーくん。お願いします」
シルヴィの言葉に、ルノーは心底満足そうに「うん」と返したのだった。
今日の昼休み、昨日の出来事を詳しく教えてと詰め寄ってきたルノーに、シルヴィはどこから見て……校舎からか? と大いに戸惑った。しかし、秘密にするような事でもなかったため、教えたのだ。勿論、喧嘩云々の所は伏せて。
ルノーは納得したのかしていないのは「……そう」とだけ言って、暫し何かを考えていた。そして、言ったのだ。「僕も行くよ」、と。
ルノー曰く、二人で過ごす場所なのだから自分も何か協力する。ということらしい。トリスタンの存在はどこにいった? とシルヴィは思わなくもなかったが、触れるのはやめておいた。本能がやめておけと言ったので。
「えっと……。ごきげんよう、トリスタン様」
ひとまず挨拶だけはしておこうと、シルヴィは辞儀をする。トリスタンは「あぁ、その……」と返事はしたものの視線はルノーから逸らせないようだった。
「と、トリスタン・ルヴァンスと申します」
おずおずとトリスタンはルノーに自己紹介をする。ルノーはそんなトリスタンを上から下まで値踏みするように眺めた。
「シルヴィから聞いているよ。ルヴァンス侯爵家の長男だろ? 初めて見たな」
「申し訳ありません。社交界は、苦手なもので……」
「謝る必要はないよ。僕も社交界には興味がないからね」
公爵家の長男と侯爵家の長男が社交界に出ないのはどうなのだろうか。二人共に、家の後継者ではないとしても、だ。
シルヴィは落ち着かない心持ちで、二人の会話を見守る。二人の立場は似ているようで、似ていない。
何故なら、ルノーは後継者という肩書きに全くもって興味がない。そのため、文字通り社交界は“苦手”ではなく“興味がない”のだ。
シルヴィはトリスタンが侯爵家を継ぎたいと思っているのかどうかは知らないので、そこは何とも言えないのだが。
ルノーをよく知らない者にとって、ルノーは直系であり白金色の魔力もちであったが、病のせいで後継を養子に取られた公爵家長男。
トリスタンの噂は、ルヴァンス侯爵の甥で養子に迎えられた黒髪の魔力なしだが、直系の子どもが産まれなければ後継になれた侯爵家長男。
この貴族社会では、なかなかにヘビーな内容を抱えた二人なのだ。当人達がどう思っているのかは分からないが、シルヴィは変に緊張してきた。
「こ、こちらは、ルノー・シャン・フルーレスト公爵令息です」
「お会いできて光栄です、フルーレスト卿」
「ふぅん……。どうだろうね。僕に態々会いたがる人がいるとは思えないけど」
ゆったりと笑みを浮かべたルノーに、トリスタンは言葉を詰まらせる。
それを見たシルヴィは、何でそう意地の悪いことを言うのか。と溜息を吐いた。ルノーがそういった煩わしいことから解放されて喜んでいたことをシルヴィは知っているのだから。
「そういう言い方はどうかと思うの」
シルヴィにジト目を向けられて、ルノーはきょとんと目を瞬いた。責めるようなそれに、ルノーは「そうかな。じゃあ、やめておくよ」と軽く返す。シルヴィの前では。と後に付くのだが、ルノーはそれを音にはしなかった。
「それで? ルヴァンス卿は花壇の使用許可を取ってきたの?」
「はい、勿論です」
「本当ですか!? やった!」
トリスタンは約束通りに花壇の使用許可を教師から取ってきてくれたらしい。シルヴィの瞳に喜色が滲んで、ルノーは良かった筈なのに、どこか気に食わないような。何とも形容しがたい感情に支配された。
人間とは、複雑な生き物だ。ルノーはその感情を持て余しながら、シルヴィを見つめる。この感情を全てぶつけるにしては、シルヴィは余りにも頼りない。
シルヴィの視線が不意にルノーに向けられる。ルノーと目が合って、シルヴィは不思議そうに目を瞬いた。
「ルノーくん?」
「ん?」
首を傾げたルノーに釣られるように、シルヴィも首を傾げる。いつも通りにゆるりと目を細めたルノーに、シルヴィは「何でもないです」と首を左右に振った。
「あの、フルーレスト卿」
「なに?」
「ルヴァンスではなく、トリスタンと呼んで頂けませんか」
「……?」
トリスタンが困ったように眉尻を下げる。理由を求めるようなルノーの瞳に、トリスタンは自嘲するような笑みを浮かべて頬を掻いた。
「いつまで経ってもルヴァンスは慣れません」
「ふぅん?」
トリスタンはルヴァンス侯爵の姉の息子。つまり、元の苗字はルヴァンスではないのだろう。そして、出来ればあまり侯爵家の人間だとバレたくないのかもしれない。
ルノーはトリスタンの噂を知らなかった。つい昨日までは、の話だが。ルノーにとっては必要のない情報だったからだ。しかし、シルヴィが関わりを持ってしまった。
トリスタン・ルヴァンス。彼のことをシルヴィから聞いたとルノーは言ったが、聞く前から調べてはいた。シルヴィの口から、悪い噂話の類いが出てこないだろうことは予想していたからだ。
ルノーが欲しかった情報は、寧ろその悪い噂話の方だ。色々と調べた結果、社交界で噂されているトリスタンの事情は、ほぼほぼ事実だと判明した。
怪しい点があるとするならば、トリスタンの両親の死について。そこだけが、誰も詳しく知らなかったのだ。皇太子であるフレデリクでさえも。
トリスタン自身については、可もなく不可もなく。話を聞く限りでは、普通な印象をルノーは受けた。だから、今日ここにシルヴィが来ることを許したのだ。
「構わないよ。じゃあ、トリスタン卿と呼ぼうかな」
「……感謝します」
さも楽しいと言いたげに笑うルノーに、トリスタンはぞわぞわと寒気のようなものを感じて顔が引きつりそうになるのを耐えた。
「瑠璃色」
「え?」
「珍しい色をしてるね」
ルノーの指摘に、トリスタンが体を強張らせる。しかしそれは一瞬で、直ぐに誤魔化すように人好きのする笑みを浮かべた。
「ははっ、そうですか? フルーレスト卿の瞳の方が珍しいですよ。深い紺い、ろ……?」
自分の発言に驚いたような顔をして、トリスタンは戸惑いを顔に滲ませた。それに、ルノーは口元の笑みを深める。
「そう?」
こてり。態とらしく首を傾げたルノーに、トリスタンの纏う空気が変わった。これは、きっと、恐怖。
「ルノーくん!」
一番最初に耐えられなくなったのは、勿論シルヴィだった。しかし、特に言う言葉を決めていなかった。アワアワと意味もなく両手を宙にさ迷わせるシルヴィに、ルノーの纏う雰囲気も一瞬で変わる。
「シルヴィ」
「うん!?」
優しい声音だった。顔に浮かぶ笑みも柔らかくなったものだから、トリスタンは付いていけずに呆気に取られて固まる。
「君の言った通り、ここは“素敵”だ」
「え!? あ、あぁ、え?」
「でも、ベンチが欲しいな」
「そう、だね?」
急に変わった話題に、流石のシルヴィも付いていけずにハテナマークが飛び交う。
どうやら、ルノーの中でトリスタンとの話は終わったらしい。興味の矛先がトリスタンから校舎裏のことに変わったようだ。
「僕が聞いてくるよ」
「なにを?」
「学園は私物を設置するのを許可しないだろうからね。使っていないベンチがあればそれで良いけど……。なければ、そうだな。うん。僕に任せてくれて構わないよ」
「本当に?」
ルノーの言葉はとても心強いはずであるが、心配になるシルヴィは間違っていないだろう。どうするつもりなのかは、聞かない方が身のためだろうか。うーん……。シルヴィは思案するようにルノーを見つめる。
ルノーの深い紺色の瞳に、優越感のようなものが滲んだ。それには気づかずにシルヴィは、尚も真剣に考え込む。
「でも、ベンチは欲しいだろ?」
「……欲しい」
「うん。僕が用意するよ。花は詳しくないからね。これくらいしか出来そうにない」
確かに、ルノーに花壇の作業は向いていない。昔、フルーレスト公爵夫人自慢の植物園で、庭師の手伝いをしたことがあった。
ただ、花壇に花の苗を植えるだけ。だと言うのに、ルノーは何をどうしたらそうなる? という仕上がりになっていた。シルヴィが庭師と一緒に花は救出したのだが。
ルノーの協力したいという気持ちをシルヴィは受け取ることにした。どうか、使っていないベンチが存在しますように。そんなことを祈ってしまったのは許して欲しい。
「分かった。ありがとう、ルノーくん。お願いします」
シルヴィの言葉に、ルノーは心底満足そうに「うん」と返したのだった。
154
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる