プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
40 / 264
5年生 冬休み

ユーリって

しおりを挟む
「大ちゃん、作文なんだけど、後で見てくれない? 不自然な事とかあったらマズイし」

 冬休みの宿題だ。
 400字詰め原稿用紙に3枚以上。

「ああ、そう言えば、昨日の事を書くって言ってたなー」

 昨日の事と言っても〝怪人とヒーローが戦った〟とかは、もちろん書けない。
 大ちゃんと買い物に行った事を、それらしく書いたのだが、ほぼ創作だ。辻褄つじつまが合うように、念のため、大ちゃんにも見てもらっておこう。

「まあ、大丈夫だと思うけど。大晦日の事、書いたしなー、俺」

「大晦日の事って、まさか事故の?!」

「ちがうぜー。さすがにアレは、書いちゃマズイだろうし。ほら、ユーリと偶然会って、ウサギ当番、付き合わされただろ?」

「ええ?! そんな事あったっけ……? そういえばユーリ、正月にコンビニで言ってたような……」

「んー? 今の言い回しだと、正月より前の事は、たっちゃんには〝15年前の記憶〟なんだな?」

 さすが大ちゃん。正月以前の記憶に、26歳までの記憶が挟まっていることを、一瞬で見破った。

「うん。実はあんまり覚えてないんだよ。僕にとっては今の状況って〝懐かしの思い出〟なんだ」

「えへへー。そういえばたっちゃん、ユーリちゃんとコンビニで出会ったって言ってたよね。ミカンをあげたんだっけ」



「あー、あいつ、ミカン好きだよな」

 僕は、ナイショ話をするべく、わざわざ目の前に居る栗っちを思い浮かべて、右手に力を込めた。

『栗っち! ユーリが、僕のことを好きかもしれないっていう話、大ちゃんには、しないで!』

『あ、そうだよね。大ちゃん、ユーリちゃんの事、好きだから』

『……なんだ、やっぱり気付いてたのか。心配して損した』

『えへへ。ついでに、たっちゃんが僕に〝口止めしなきゃ〟って考えた事も、分かってるよ』

 〝精神感応〟だ。栗っちにしてみれば、相手の思考も会話の一部なんだろう。

『栗っちにはかなわないなー! じゃ、そういう事で』

 良かった。ユーリは、大ちゃんと仲良くなってほしい。大ちゃんは僕よりスゴい奴なんだ。
 ……えっと、何の話だったっけ。あ、ミカンか。

「そうなんだよ、あいつ、袋いっぱい持って帰ったぞ」

 ふと、少し首をかしげる大ちゃん。

「……今、ちょっと不自然な〝間〟があった気がするんだが。俺ぬきで、なんか話したか?」

 ヤバッ! 感付かれた?!

「えっとね、ブルーさん……あ〝地球の意志〟さんの声、ユーリちゃんにも、聞こえてたかもしれないって。だよね、ブルーさん」

『カズヤ、神対応だな』

『ナイス栗っち!』

『エヘヘー!』

「マジかよ……! ユーリにも聞こえるのか! なんで俺には聞こえないんだろうなー……」

『いけない。ダイサクは、少し気にしたかもしれないな』

『そう来るか~!』

『やっちゃった? 僕やっちゃった?!』

「そういえば、ユーリの怪力は、ちょっと人間離れしてるからな。もしかしたら、アイツも〝特別な存在〟なのかもなー!」

「でもでも! 大ちゃんも、かしこいし、凄い特性もあるし、きっと近い内にブルーさんの声も聞こえるようになるよ!」

「そうそう。むしろ今現在、ブルーを認識できないのが不思議な位に、人間離れしてるよ」

「んー、褒められてるのかどうか、怪しい感じだけど、二人ともありがとなー」

 ふー。
 なんとか誤魔化ごまかせたかな。

「で、話を戻すけど、僕は地球の破壊を防ぐために、世界中を飛び回る事になるんだ」

「えー! この町で、何か起こるとかじゃないのか。大変だな、そりゃ!」

「そういえばテレビのヒーローって、日本だけで戦ってるね。襲われるの、東京ばっかりだし」

『カズヤ、戦う時は、採石場か、最近では海岸などが多いようだ』

 なんでお前がそんな事知ってるんだよ、ブルー。

「でね、もうすぐオランダに行くんだけど、鳥取までは、自腹で行かなきゃいけないんだ」

「うはは、何だよ、それ! おもしれぇなあ!!」

 ウケた。確かに突拍子もない話だよな。

「んー、じゃあ、この前の旧札が、その旅費だな? 新札にしないと使いにくい。だろ?」

 旧札、見られていたのか。そういえば、駐輪場でお金を出したときは、無防備だった。

「実は、埋蔵金を掘り起こしたんだけど、旧札だったんだ。頑張って、なんとか10万円ほど用意したんだけど」

「そっか、旧札で買い物して、お釣りを集めていたんだな。言ってくれれば、ベルトの部品を買わせてあげたのになー!」

 ワハハと笑う大ちゃん。そうか。最初からそうすれば良かった。

「あとは、ユーロに換えるのが大変そうでねー」

「ユーロならあるぜ。交換しようか」

「ホントに?! なんであるの? あ、そうか、ドイツ!」

「どれくらい交換する? 結構持ってるけど、オレあんま最近、ドイツについて行かないから、日本円のほうが良いんだよな」

「じゃ、300ほどで。お金は地下室にあるから、後で持ってくるよ」

「作文も忘れずになー! ああ、早くその地下室に行きたいぜ!」

「絶対、入れるようになるから! その時は、大ちゃんの部屋も作るからね!」

「うお! マジか! 期待してるぜー!」

 時計は、ちょうど7時を指している。そろそろ一旦帰らないと、母さんが起き出してしまうな。

「じゃ、一旦解散して、また集合する?」

「そうだ、俺、今日がウサギの当番なんだ。ちょっと行ってこなきゃ」

「大ちゃん、僕も行くよ。昨日の今日だし、何かあったら危ないからね」

 まあ、大ちゃんの事だから、ベルトはもう直ってるんだろうけど。

「おー。たっちゃんありがとう! 実際、ちょっと不安だったんだよ。ベルトは直したんだけど、弱点を改善し切れてないし、たぶん昨日ぐらい使ったら、またオーバーヒートするからなー」

 さすが! やっぱり、もう直してる!

「僕も行く! 僕も! 大ちゃんを護衛して、友情パワーで、ウサギにエサをやろう!!」

 エサやり自体に、そのパワーは要らないんじゃないか。
 エサを食べたウサギが、ムッキムキになりそうだ。

「とりあえず、8時に迎えに来るよ」

「じゃあじゃあ、大ちゃんち前、集合ね!」

「おー、よろしく頼むぜー!」





 >>>





 午前8時ちょうどだ。
 大ちゃんの家の前で、300ユーロを受け取り、僕が新札を渡そうとすると、

「あ、いやいや、旧札でいいんだぜ。どうせまた、パーツ買いに行く時に使うんだから」

 と言ってくれたので、ちょっと多めに旧札を手渡す。

「おいおい! これじゃ、多すぎるよ」

「いや、いいんだ。手間賃と思って。それに元々、掘り出したお金だしね」

「いいのかー! 有り難いぜ。最近、部品代がスッゲーかさんでさー! これはありがたく、世界の平和のために使うぜー」

 本当にそうなのだから、これはさすがにも当たるまい。

「あと、作文を……」

 大ちゃんは、僕が差し出した原稿用紙を、パラパラと見た。

「おっけー。大丈夫だ。問題なし!」

「もう良いの?! やっぱりスゴい!」

「いやいや、不老不死には敵わんぜー」

 とかやっている内に、栗っちも来てくれた。

「お待たせー! ごめんね」

「いやいや、悪いなー、付き合わせちゃって」

 僕と栗っちと大ちゃん、3人で学校に向かう。

「うわうわうわ。3人で学校行くの、久し振りだなぁ!」

「そっかー、たっちゃんは、15年後から来たんだもんね」

「俺や栗っちは、たっちゃんと学校に行くのなんか、数日振りぐらいなのにな」

「んー、色々と懐かしい事だらけでね。涙腺るいせんゆるみっぱなしだよ」

「たっちゃんは、もともと涙もろいよなー」

「そうだっけ? まあ、そんな気もするな」

「そうそう、僕もだけどね! えへへ」





 >>>






 つい先日、一度来ていたので甘く見ていたが、学校に着くと、懐かしい風景がまたしても目頭を熱くする。そうか、あの時は真っ暗だったんだ。不意を突かれた。

「ほらー、たっちゃん、また泣いてる」

 大ちゃんに茶化ちゃかされた。でもまあ、泣くよな。

「たっちゃん、わかるよ。良かったね、懐かしいよね」

 一緒に泣き出す栗っち。これもある意味〝精神感応〟なのかな。
 校門をくぐり、うさぎの小屋へ向かう。校庭では低学年の男の子と、その父親が凧揚げをしている。ザ・お正月だな。
 さて、エサエサ……と。

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

処理中です...