プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
48 / 264
5年生 冬休み明け

始業式

しおりを挟む
 新学期が始まった。
 懐かしのランドセル姿だ。
 久しぶりにみんなに会える! ワクワクするなあ!

『タツヤ、ゴキゲンだな』

「ああ、楽しみだ!」

 今日は〝宿題〟と〝連絡帳〟しか入っていないので、ランドセルが超軽い。
 ……というか大人の力なので、いっぱいに詰め込んでも軽いのだが。

「えへへ。たっちゃん、うれしそうだよね!」

「ん~、気持ちは分かんなくも無いけどな?」 

 もちろん、大ちゃんと栗っちも一緒だ。

「あれ? 大ちゃん、その重そうな袋は何?」

「あー〝ベルト〟と〝動力源〟だぜー?」

 そっか。大ちゃんは〝ダーク・ソサイエティ〟という、悪の秘密結社に狙われている。
 もし学校で襲われたら、変身できないとマズいからな。
 
「これも、早く〝転送〟できるようにしなきゃなー!」

 ダイサーク・キャノンのように、なにもない所から急に物が現れるのは〝転送システム〟というのを使っているらしい。
 ヘルメットやスーツ等、構造が単純な物は、比較的簡単に転送出来るようになるが、ベルト本体などは、複雑なので設定が大変なんだとか。

「えへへ。〝秘密結社〟なんだから、学校にまで襲っては来ないんじゃないかな。目立っちゃうよ?」

 栗っちは、そう言いつつも〝千里眼〟で、グルリと周囲を見回す。

「そうだよ。ヒトがいっぱい居るもんね。子どもばかりだけど」

 大ちゃんは、僕と栗っちの言葉を聞いて、腕を組んだ。

「いや? 逆に、人質取り放題とも言えるぜ。俺を襲ったときも〝秘密〟とか言いながら、結局、電車までふっ飛ばしちまったし」

 言われてみると、結構大胆だよな、ダーク・ソサイエティ。やっぱ気をつけなきゃだめだな。

「ところで大ちゃん、ドイツの親戚の方は、どうだったの?」

「あー、なんか、おじいちゃんちで火事があって、使用人の一人が行方不明だって。おじいちゃんは、地下に隠れていて無事だったらしいけどな」

「うわあ……怖いねえ……」

「大ちゃん、もしかしてそれも……」

「そうだな。絶対、ダーク・ソサイエティの仕業だぜ」

 用心しないと、また大ちゃんの周りで事件が起きるぞ。

「まあ、親父が〝何か〟対策してきたって言ってたから、ドイツの方はもう大丈夫だと思うけど、相手が尋常じゃないっぽい奴らだからなー」

「大ちゃんは、僕が守るよ」

「僕も僕も!」

「ありがとな! マジで心強いぜー!」

 とか言っている内に、学校に着いた。〝校舎内〟に入るのは、巻き戻ってからは初めてだ。

「うおおお! 学校の匂いだ!!」

「はは! たっちゃん、変なトコに感動してるなあ!」

「えへへ、たっちゃん、良かったね!」

 入り口で上履うわばきに履き替える……のだが、自分の下駄箱げたばこがどこかわからない。家から持ってきた、洗いたての靴に履き替え、今まで履いていた運動靴を手にとってキョロキョロする。

「ああ、そうか、15年たてば忘れちゃうか。出席番号順だから俺のちょっと手前だな」

「助かった。全然記憶に無いんだもん」

「分からない事があったら聞いてくれよ。でも下駄箱は、クラスが一緒なんだから、どう考えても俺たちの近くだぜ」

「ああ、そっか! 確かにその通りだよな。焦ってパニックになってしまってたよ」

 あったあった。ちゃんと名前シールが貼ってある。
 懐かしいな……! そうそう、そうだった。〝九条〟と〝栗栖〟なので、二人は隣同士だ。僕もその5つ隣に靴を入れた。

「それにしても、下駄げたを入れないのに下駄箱っていうの、おかしいよな」

「ほんとだね! そういえば、筆箱ふでばこも、筆なんか入れないよね」

「古き良き日本文化の名残りだよなー」

 階段を最上階までのぼり、懐かしい5年3組の教室に入る。

「うおおお! 教室の匂いだ!!」

「言うと思ったぜ! 変に思われるぞ、たっちゃん」

「たっちゃん……すごくわかるよ! 良かったね! 良かったね!」

「で、僕の席はどこだ?」

「それも言うと思ったぜ。一番奥の一番後ろだ」

 ナイスポジションじゃん。だけど全然記憶にない。

「ありがとう大ちゃん。やっぱり凄い記憶力だな」

「えっとね、たっちゃんの席なら、僕も覚えてるよー!」

 自慢げな栗っち。ありゃ? 何で?

「いや、俺たちは〝ブランク〟が無いんだから、それぐらいは普通に覚えてるだろー」

 あ、そりゃそうだ。
 ……教室には、既に半数以上の生徒が居て、冬休みの話や宿題の話題で騒がしくなっている。
 5年生は全部で3クラス。1組と2組が42人、ウチの3組だけ41人だ。

『違うぞタツヤ。一人増えて、3組とも42人だ』

「え、ウソだろ? たしか大ちゃんが転校してきてから卒業するまでは、42-42-41のパターンだったはずじゃ……」

 と言いかけた所へ、妹が現れた。

「ちょっとお兄ちゃん! なんで私を置いて行くのよ!!」

 そうだった。〝不思議現象〟で、妹が同級生になってたんだった。

「るりちゃん、ごめん。ちょっと理由があって、先に来ちゃったんだ」

「そ……そんな……和也さんは悪くないのよ! お兄ちゃんがここから消えればいいのよ!」

 言い草は相変わらすだな。

「俺は、るりが一緒じゃないから風邪でも引いて休みなのかと思ったんだ、ゴメンなー」

「大ちゃんも悪くないよ、お兄ちゃんがこの世から消え去ればいいのよ!」

 言い草が悪化していく。かなりご立腹りっぷくだな。

『ごめん、たっちゃん。登校のパターン、僕もわかんなくて』

『いやいや、やっぱ、栗っちも妹の急成長についていけない派なんだな。安心したよ』

 登校時は、家の配置的に、大ちゃん、僕、栗っちの順番で、誘い合わせて学校に行く。

『たっちゃんが、るりちゃんを連れずにウチまで来たから、それが普通なのかなと思っちゃったんだ』

『学年が違う時は、同級生の友達と登校してんだよ、るりは。色々変化してて、ややこしいなあ!』

『ホントにごめんね。僕のせいなのに』

 ん? 栗っちは何も悪くないだろう。全部、不思議現象のせいなのだから。

『いや、とにかく明日からは一緒に登校しよう。面倒掛けるけど、よろしく!』

『ううん。僕としてはすごく嬉しいんだよ?』

 今、妹と登校するのがすごく嬉しいという発言があった気がするが以下略。
 とにかく、今回は平謝ひらあやまりするか。

「スマンスマン、ちょっと男同士の相談事があってな」

「言い訳は良いから早くこの世から消えてくれれば良いのよ?」

「チーズかまぼこ6本でどうだ?」

「分かれば良いのよ。例の場所に入れといてね」

 今ので何が〝分かった〟のか自分でもサッパリ分からないのだが、このパターンは変わってなくて助かった。〝平謝り〟成功だ。

『タツヤ、今のは違わないか?』

 違わない。誠意ぶっぴんが全てだ。

「はーい、みんな席につけー!」

 いつの間にか、担任の谷口先生が黒板の前に居た。全員、ガタガタと席に座る。

「よーし! みんな、明けましておめでとう!」

「明けましておめでとうございます!」

 元気な声で、クラスの全員が挨拶をする。
 ……っていうか、声たかっ! そっか。まだ声変わりしてないのか。

「それじゃ、これから体育館で始業式だ。静かに移動するぞ。終わったら、教室に戻ってくるように!」

 廊下に出ると、他の教室からも、ゾロゾロと生徒が出てくる。
 そして全員、体育館を目指して歩くので、当然大渋滞になる。

「そう言えば、双子とかイトコって同じクラスになれないって聞いた事があるけど、そこら辺はどうなのかな」

『詳しくは分からないが、〝存在〟の強いタツヤをクラスから押し出すことも〝随行者同士〟の二人が離れることも出来ず、こういう形に収まったのだろう。』

 ふーん。〝二人〟が、誰と誰を指すのかは知らないけど、問題は無さそうだな。
 それより、アレ言っときますか。せーの!

「うおおお! 体育館の匂いだ!!」

 大ちゃんは苦笑い、栗っちは相変わらずニコニコしていた。
 そういえば、ユーリ、今日は朝から普通にしてるな。やっぱり、あの時の事は覚えていないんだろう。
 




 >>>





 壇上では、校長先生のお話が続いている。

「……であるからして、知らない人にはついて行かないように」

 それは休みの前に終業式で言うヤツじゃん。

『やっぱり、歴史は頑丈だな、ブルー』

『そうだね、ねじ曲げても、ある程度は元に戻ってしまう』

 校長先生の長い話が終わった。

「では、一年生から順番に教室に戻りましょう」

 始業式が終わり、僕達は教室に戻って来た。

「それでは宿題を集めるぞー」

 谷口先生の言葉に〝えー?!〟という声がチラホラ聞こえた。何人か、宿題を忘れて来たようだ。

「忘れたやつー! 後で残るように!」

 ああ、何だろう、この優越感。〝自業自得〟だよ。なんでやって来ないかな~?

「あと、達也たつや大作だいさく和也かずや、三人とも、後で職員室に来い!」

 あれ? 何だろう、この不安感。〝自業自得〟なの?! なんかバレちゃいましたか?! 

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

処理中です...