プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
50 / 264
5年生 冬休み明け

ダブルブッキング

しおりを挟む
 突然、何かに引っ張られるような感覚に襲われ、時間の流れは何事もなかったように再開した。

『タツヤ、休日は終わったよ』

 結局〝敵〟らしい者が現れるわけでもなく、30分ほどで時間は動き始めた。
 ちなみに、大ちゃんは〝万が一〟に備えて、時間が止まった状態でベルトを使ったのだが、転送システムが作動せず、スーツやヘルメット無しでの変身になった。
 自分の周囲にある物以外は、停止した状態だから仕方ないのだとブルー。

『今回の時神クロノス休日きゅうじつは、タツヤとは無関係だったようだね』

 職員室を出てから聞いてみたが、やはり栗っちは全く気付いていなかったそうだ。

「え~! 時間が止まったの?! ズルい! 次は僕も混ぜてね!」

 栗っちに、よく分からないお願いをされた。
 ……ズルいって言われても。

『カズヤも〝救世主〟として覚醒すれば、止まった時の中を自由に動けるようになるはずだよ」

「本当? よーし! 僕、頑張るよ!」

 栗っちは妙な闘志を燃やしている。
 ……いや、有り難いんだけど、頑張るってどうやるんだろう。

「よーし! 俺はブルーを認識しなきゃだなー!」

 時が流れ始めると、大ちゃんはブルーの存在に気付けなくなった。
 今回の事は〝きっかけ〟にはならなかったようだ。

土砂降どしゃぶりの中の一滴か。さすがにムズいぜー!」

 ただ、ブルーと会話した事で、今まで気付かなかった何かをひらめいたらしい。
 あと、時間が停止している状態で転送システムを動かす方法も考えてみるそうだ。

「あれ? ユーリちゃん?」

 栗っちの声に、僕と大ちゃんも足を止めた。
 校門を出た所に、ユーリが居た。一人、携帯電話で話している。

「ユーリ、小学生なのに携帯なんか持ってるんだな」

「ああ、なんか、両親もお姉さんも、忙しくて連絡が付かなくなるような事があるんで、特別に持ってるらしいぜ」

「うーん。何かあったのかな、ユーリちゃん。泣きそうな顔してるね」

 栗っちの言う通り、深刻な顔つきで話し込んでいる。
 少し気になったので、通り過ぎる時に、若干、聞き耳を立ててみた。

「うん、わかってる。もう私しか残ってない。今日からは私がマーカーを持ってお……」

 うーん、何の話だろう。
 気にはなるけど、あまり家庭の事情に立ち入るのも良くないかな。

「たっちゃん、大ちゃん、いま聞こえちゃったんだけど、ユーリちゃんのお姉ちゃん、大ケガしたみたい」

「え? そんな話してた? ……あ〝精神感応〟か」

 栗っちは〝心の声〟を聞く事ができる。
 もちろん、故意に盗み聞きをした訳ではない。〝小耳に挟んた〟ぐらいの手軽さで、自然と聞こえてしまうのだ。

「えーっと、むずかしい言葉だったからよく分からないんだけど、自分が最後の希望だとか、絶対にあきらめないとか、そんな事を考えてたよ」

「妙に深刻な感じなのが気になるなー。この間の猫耳の事とかもあるし、もし何か困ってるなら、助けてやらないとな」

 やっぱり、ユーリの事となると放っては置けないようだ。
 大ちゃんだって、変な組織に狙われてて大変なのに、優しいな。

「よし、明日にでも、それとなくユーリに聞いてみようか」

「そうだね! ユーリちゃんも友情パワーで守ってあげよう!」





 >>>





 次の日は、妹も一緒に登校した。栗っちと妹が妙にイチャイチャしていたが、気のせいだろう。
 大ちゃんは、徹夜で何かを作って来たそうだ。後で実験に付き合って欲しいと頼まれた。
 教室に着くと、ユーリが友人たちと楽しそうに会話していた。すごく自然に振る舞っているが、それが逆に不自然だ。

「きっと、周囲に人が居ない状態じゃないと話しにくい内容だろうな」

 大ちゃんの提案で、ユーリが一人になるのを待ってから話を聴く事にした。しかし、町田鏡華まちだきょうかと、橋月日奈美はしづきひなみが常に一緒に居て、なかなか声を掛けられない。

「仕方がない。チャンスが来るまで待とう」

 昼の休憩も、ユーリは一人になる気配がない。
 先に、大ちゃんの〝発明品〟を実験するため、体育館裏の備品小屋に忍び込む。
 ユーリの見張りは栗っちに頼んだ。
 もしユーリが一人になったら、ここに連れてきてもらう事になっている。

「色々と考えてみたんだけど、まだ完成には遠いと思うんだよな」

 そう言って大ちゃんが取り出したのは、メガネだった。
 よく見ると、ツルの端っこから細い線が出てブラブラしている。イヤホンか?

「これは、ブルーの存在を認識するためのメガネだ」

 スゴい! 一日で作ってきたんだ!

「ただ、こういうのってトライ&エラーで完成させていく系じゃん」

 そういう系なのか。

「じゃ、一日一回しかトライ出来ないってキツイね」

「そうなんだよなー! 手こずるようなら、ウチに泊まりに来てくれないかなー、たっちゃん」

「行く行く! いつでも言って!」

 眠らない僕は、夜中のお楽しみを常に探しているのだ!
 ……いや、なんか言い方がイヤラシイな。

「じゃあ、早速やってみるぜー」

 大ちゃんはメガネを掛けて、イヤホンを右耳につけた。

「やっぱ親父のメガネだと、ちょっとデカイな」

 どうやら材料が足りなかったので、親父さんのメガネを使ったらしい。しかも、普段使っているヤツを。
 大丈夫なのかな。

「たっちゃん、手、見せて欲しいぜ」

「ほいさ」

 てのひらを大ちゃんに差し出すと、いつものように、ジロジロと見つめられながら、触りまくられる。

「んー…… たっちゃん、ブルーに何かしゃべってもらってくれるか?」

「ブルー、頼む」

『了解した』

 ブルーは例のごとく、必要のない咳払いをひとつした後、流暢りゅうちょうに喋り始めた。

『拙者親方と申すは、お立ち会いの中に御存知のお方も御座りましょうが、御江戸を発って二十里上方、相州小田原一色町をお過ぎなされて、青物町を……』

 なんで外郎売ういろううりなんだよ! と、僕が心の中でツッコんだ直後。

「うーん。外郎売っぽい事だけはわかるんだけどなー」

「えええ?! マジか! すごいな大ちゃん!!」

『ダイサクは、やはり面白いな!』

「いやいや、飛び飛びで3~4文字、聞き取れただけだからなー」

「3~4文字聞いただけで外郎売だとわかっちゃうのも凄いんですけど!」

 今回の実験では、視覚的には全く認識できず、聴覚的には大きなノイズと共に、ほんの少しだけ聞き取れるという結果に終わった。
 でも、それって凄くないか?

「悪いけど、あと数日して完成しなければ、お泊まり会で頼むぜー!」

「了解! 一晩中でも付き合うよ」

 というか、寝ないで実験するのは〝お泊り〟とは言わないんじゃなかろうか。





 >>>





 結局、放課後になってしまった。
 昨日は別々に帰ったようだが、ユーリは通常、鏡華と日奈美と3人で登下校しているので、このままでは話を聞けない。
 僕たちは一旦家に帰り、そのあと直接、ユーリの家を訪ねる事にした。

「やー、心配してくれてありがとう! 本当に何でも無いんだよ!」

 3人がかりで色々と質問しまくって、随分食い下がったのだが、結局、知らぬ存ぜぬで丁重に追い返された。
 だが、これも想定の範囲内だ。

「栗っち、何かわかった?」

 そう。ユーリに色々と質問して〝精神感応〟で、心の声を聞き、情報を引き出す作戦だ。

「うん、えっとね、僕たち3人に、すごく感謝してた。でも、普通の人間ではユーリちゃんを助けられないと思ってるみたい。でね、僕たちのためにも〝次〟が来たら絶対に戦いに勝たなきゃ。だって」

「やっぱり隠してる事があるな。ユーリは何かと戦うつもりだ」

 大ちゃんが腕を組んで考え込んでいる。
 ……次に来る〝何か〟から、僕たちを守る?
 いっそ僕たちが普通じゃないという事を話すべきだろうか。

「栗っち、他には何か考えてなかった?」

『えっと、えっと、たっちゃん大好きだって!』

 栗っちが突然、ブルー経由の会話に切り替えた。

『マジかよ! やっぱり本当に僕のことが?!』

「んんん? 栗っち、どうした? たっちゃんも急に顔が赤くなったぞ?」

 大ちゃん、いつもスゴい速さで気付くな!
 さすが賢さ5882だ。

「ううん、えっとね、ユーリちゃんのお姉さんは、ケガをして戦えなくなったみたい。あと、お父さん、お母さんには、元々、戦う力が無いとか」

 ナイス栗っち!

「お姉さんがケガをしたから、ユーリが戦いを引き継ぐ事になったっぽいなー」

「あ、あとね〝マーカー〟と〝ガジェット〟を受け取ったとか、最後の〝ガジェット〟だから大事に使わないと、とか?」

「お姉さんから何かを受け継いだという事かな」

 大ちゃんは腕組みしたまま目をつむり、頭を前後左右に動かしている。

「それから、次の〝予約〟が2月5日だから、準備をしなきゃっだって」

「予約? それが戦いの予定日なのかもしれないな。どう思う? 大ちゃん」

「そうだな。でも、予定日がある戦いって、なんかスポーツっぽいよなー」

「なるほど。そう思うと、なんか平和的な予定な気もするけど」

「でもさー、お姉さんが大ケガしちゃって、替わりに妹が戦うスポーツって、一体何なんだ?」

 そうだよな。どう考えても、物騒な戦いのような気がする。

「あとさ、2月5日ってアレだよな、前に言ってたアレ」

「え、何だっけ?」

「分岐点」

「あ!」

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...