プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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5年生 3学期 2月

時の流れは戻り

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 ユーリはグラウンド中央に倒れている。
 その姿は、まるで状態の悪い形で出土しゅつどした埴輪はにわのようだ。
 そして変身を解き、ユーリに歩み寄る大ちゃんが見える。

「邪魔するのは野暮やぼだな」

 僕は土人形を教室へ戻すことにした。

「ブルー、時神クロノス休日きゅうじつが終わったら、倒した敵や装備の残骸はどうなるんだ?」

『普通は、時券チケット所有者自身と、休日が始まった時に触れていた装備や衣服などは、巻き戻ることなく、位置だけ元の場所に移動する』

「つまり、死体とか装備は、全部ここから無くなるわけだな?」

『そうだね。2000年近くも、この私が他の星からやって来たという者たちの存在に気付かなかったという事は、毎回少なくとも大気圏より外で、時を止めてから侵入してきていたはずだ。戻る先は宇宙空間か、宇宙船などだろう』

 それは助かる。ここにある敵の戦士5人分の亡骸なきがらは、小学生たちには少々刺激が強すぎる。

土人形きみも、ダイサクも、ユーリも、全員、時が止まった時の位置に、今の状態で戻ることになる。怪我をしていたり、身に着けているものが損傷していた場合は、そのまま戻る。気を付けた方がいい』

 大ちゃんが転送出来るようにした、プロテクターやレッドキャノンなどは、時券チケットの効果を得た事になるので、時間が止まった時点で身につけていなくても、壊れてしまったら巻き戻らないらしい。そこは土人形も同じだ。

「いつになくヒヤヒヤしたけど、これでひとまず一件落着だな」

 教室に戻ってきた。停止したクラスメートと谷口先生を横目で見ながら、人形を自分の椅子に座らせる。

『タツヤ、お疲れ様。明日の分岐もよろしくお願いするよ』

「わかってるさ、ブルー。そっちがメインだもんな」

『いやタツヤ、誤解しないで欲しい。キミと私は一心同体だ。キミの友人は私の友人だし、キミの優先順位が私の優先順位だよ』

「……! すまん、ブルー。そんなつもりで言ったんじゃないんだ」

『こちらこそすまない。わざわざ言わなくてもキミは分かってくれている』

 そうだ。優先順位とかじゃなく、大切なものは全て守る。その為に僕が居るんだ。

「……つまり自動車や電気製品など、日本の会社は世界中に工場を」

 一瞬、背後に引っ張られるような感覚がして、いきなり谷口先生が喋り始めた。時神クロノス休日きゅうじつが終わったのだ。
 今まで静かだった分、普段なら気付かないはずの周囲の音が、やけにうるさく感じる。
 僕はすぐにユーリに目を移した。ユーリの頭には猫耳が出ていてギョッとしたが、すぐにスゥッと消えたので大丈夫だろう。
 ユーリは大ちゃんの方をじっと見た後、今度はそっとこちらを向き、ウインクして小さく手を振る。

『元気そうで良かったな、タツヤ』

『そうだな。怪我も回復したみたいだし、本当に良かった』

 これ、回復せずに戻ってきてたら、何も知らない人が見ると、目の前でユーリが急に怪我した状態になるのか。
 ……あ、あれ? そういえば、そんな事があったような気がするぞ。
 授業中にユーリが保健室に運ばれた事が。それって、もしかして今日か!

『おーい! たっちゃん、ブルー、聞こえるか?』

『あ、大ちゃん! ナイスファイトだったよ!』

『ダイサク、キミは本当に凄い。賞賛に値する』

『いやー、たっちゃんとブルーが居なかったら、詰んでたぜ。あのままユーリが攻撃を受けてたら、大変なことになる所だったらしいからなー』

 ユーリの〝ウォルナミス・ガジェット〟には、装備した者に生命の危機が訪れた場合にだけ発動する機能があるらしい。

『通常の数十倍の出力を持った〝暴走モード〟になる。そのかわり、ウォルナミスの能力とガジェットの能力を同時に失う事になるらしいぜー』

 そうか。もしかしたら、今回大ちゃんが加勢せずにユーリが死にそうになっても、その暴走モードが働いて、戦いには勝っていたのかもしれない。ユーリの、戦士としての力と引き換えに。

『確か、ユーリが最後の戦士だと言っていたし、ガジェットもユーリのがラストだったよなー』

『じゃあ、暴走モードになっていたとしたら、このあと攻めてくる宇宙人には、誰も対抗できないな。もしかして、僕が26歳になったあの時点で、もう地球は侵略されてしまった状態だったのかもしれない……全く気づかなかったぞ?』

 じゃあ、侵略って一体何なんだろう。





 >>>





「やー、色々なんだよ。星によってさ」

 ……放課後、ここはウチの地下室。
 ユーリはブルーの予想通り、すんなりと地下室に入る事が出来た。

「色々って……? じゃあ、今回のえっと……」

「確かガロウズ星人だったよなー」

 よく覚えてるな……とか言うまい。聞いたら忘れないんだ、大ちゃんは。

「詳しくはわかんないけど、あいつらの口振りだと、伝説になっちゃってる〝ウォルナミス星人が守る地球〟をゲットして、名を上げようって感じかなー」

 迷惑な輩だな。

「やー。あいつら地球人の事を随分と見下みくだしてる感じだったし、原住民げんじゅうみん皆殺みなごろしパターンだったかも。ちょっち危なかったよ!」

 怖いな。ちょっちじゃねえよユーリ。

「他にもさ、資源が目的なヤツとか、ここを外銀河に向けての拠点にしたいヤツとか、植民地にしたいとか、水だけ欲しいとか、色々だよ」

 練習場にはユーリ、大ちゃんと大ちゃん人形、栗っち、栗っち人形、彩歌の分身、僕人形が揃い、ぱっと見た感じはすごく賑やかになっている。

「でも、驚いちゃうなー。まさかこんな事になってるなんて。もっと早く教えてよ、たっちゃん!」

「それはこちらのセリフだよ。ひとりで宇宙戦争やってるなんて……」

「いやはは。ごめんね。〝地球人を巻き込まない〟が、ウチの家訓なんだよー」

 片目をつむり、ペロッと舌を出して招き猫のようなポーズで謝るユーリ。そういえば昔からこの謝り方だったな。
 その時は、まさか本当に猫娘だとは思わなかったよ。

「しっかし、たっちゃんとアヤちゃんが本物じゃないなんてビックリだよー」

「俺の機械人形もよく出来てるだろー?」

「やー! そうだよ! なんで教室で固まってたのに、ヒーローが大ちゃんなんだ? って思ってさー。パニクったよー」

 実際、本当に見分けがつかない。でも栗っちは……

「えへへ、僕はね、分かるんだよー?」

「〝精神感応〟だよな。さすがにそれはちょっと再現できないぜー」

 ロボからは、心の声が聞こえないらしい。まあ、そりゃそうか。

「でもね、彩歌あやかさんからは聞こえるよ? 心の声」

 そうなんだ。分身ってスゴいな。

「私は、魂を分けてもらっているから」

 にっこり微笑む。こちらも本物と見分けがつかないな。

「やー。それじゃあそろそろ、私の事から、詳しく説明すっかなー!」

 さてさて。緊急ミーティングと参りますか。

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