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5年生 3学期 2月
7年越しの約束
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ユーリは、トロンとした眼差しで大ちゃんを見つめる。
「おいおい、ちょっと待ってくれユーリ!」
「なんで? 大ちゃんは私の事キライ?」
ユーリがズイッと詰め寄ると、寄られた分、大ちゃんが身を引く。
「いやいや、そうじゃなくってなー? 俺たちさー……」
「大ちゃんは私の事、命がけで守ってくれた! 私、一生大ちゃんと一緒に居たい!」
「だー! だから落ち着けって! 話を聞いてくれ」
「やー! 好き好き、大好き! 大ちゃん結婚して!」
「……7年だな」
ユーリが、ピタッと動きを止めて、キョトンとする。
「……あと7年は無理だぜー? 日本人は男性が18歳、女性は16歳以上だ。法律だから仕方がないなー」
「……大ちゃん?」
「あと数年で、女性も18歳以上に変わるらしいけどな。まあ、何にせよ、俺たちが18になったら、だなー」
大ちゃんは立ち上がって、ユーリの方を向いた。
「絶対に幸せにするぜー!」
ユーリは、涙ぐんで頷く。
……つまり。
大ちゃんとユーリは、しれっと婚約した。
「おめでとう! 良かったね! 良かったね!」
「二人とも、おめでとう!」
栗っちが号泣している。
ブルー越しに、彩歌も祝辞を述べる。
もちろん僕も、拍手をせずにはいられなかった。やったな! 大ちゃん!
「あー、それじゃ、各自、自己紹介続けるかー」
ちょっと照れた感じで、自分の事を話し始める大ちゃん。よく見ると耳が赤い。
ユーリにはこの後、栗っちと彩歌が、各々の能力や近況を自己紹介と共に説明し、僕からは、ブルーの事と、地球が破壊の危機に直面している事を詳しく話した。
「やー! 地球、大ピンチじゃん……私の使命とか、どうでも良くなっちゃうなー」
どうでも良くはないだろう。
「ユーリの一族が守ってくれていなければ、地球はとっくに侵略されていたかもしれないんだろ。本当に助かったぜー」
勾玉を分解しながら大ちゃんが言った。
「そうだよ、ユーリちゃんたちのおかげだよ!」
栗っちもそれに続く。
「ありがとー。そう言ってもらえて、姉ちゃんも、おばあちゃんも、ご先祖様達も、きっと天国で喜んでると思うよ」
いや、ユーリ、ご健在だから、お姉さんはそこに並べちゃダメだ。
「ユーリ、これからは可能な限り、僕達も一緒に戦うよ。今、時神の休日…… 戦場に立てるのは大ちゃんと僕だけだけど、彩歌さんと栗っちも、絶対に参戦できるようになるからさ」
「うん。僕も覚醒すれば、止まらずに動けるんだって!」
『私も、魔界で方法を探すから、一緒に頑張ろ!』
「ありがとう、みんな! 俄然やる気が出てきちゃったなー! 私もさ、地球の破壊を防ぐの、手伝いたい! だって、侵略よりそっちの方が問題だかんね!」
そうか……? 異星人に征服されるのもイヤだぞ……しかし、なんか色々とヤバいな、地球。
『さて。タツヤ、アヤカ、そろそろ仕事に戻ろうか』
あ、そうか。そろそろ直接、現場で張り込まなきゃだな。
「やー! たっちゃんとアヤちゃんはオランダかー! 大ちゃん、私も行きたい!」
「おー、庭みたいなもんだぜー。じいちゃんがドイツに居るからなー」
ずいぶん広い庭だな大ちゃん。
「えへへー。そういえば、るりちゃんも新婚旅行はヨーロッパがいいって言ってるんだよね」
「やー! そっかー。じゃあ栗っちも一緒に行こっかー!」
はて? なぜ妹の新婚旅行に栗っちも行くのだろう。まあ、何かしらの気のせいだな。
『ユーリ、この場所はいつでも入れるようにしておく』
「え? ホントに?! ありがとう、ブルー!」
『キミの部屋は明日までに完成するが、自宅は遠距離なので繋がるまで数日掛かるよ』
「ここからウチに繋がるのん?! ちょー便利ッ! すっごいね!」
「じゃあ、僕達は任務に戻るよ。土人形はここに居るから、何かあったら言って」
「おー! 頑張ってなー!」
「たっちゃん、アヤちゃん、頼んだよー!」
「2人とも、気をつけてね!」
それぞれが、応援の言葉をくれた。
「おう! 任せとけー!」
『みんな、またね!』
>>>
今、オランダは朝の9時だ。
彩歌が若干眠そうなのは、ただ夜更かしをしていたわけではない。
彩歌は昨日の夕方から数時間置きに、魔法で呼び出した〝使い魔〟を飛ばして、ターゲットの少女を見張っているのだ。
やはり今日、マリルーの学校は、お休みのようだ。
……理由はインフルエンザの大流行。マリルー本人はピンピンしているみたいだが。
「やっぱり、学校閉鎖ってどの国にもあるんだな」
「魔界の学校も閉鎖になるわよ。病気の種類は違うと思うけど」
魔界の病気ってイヤだな。なんかヤバそうだ。
『キミとアヤカは病気にかからない。安心して欲しい』
そうだった。僕達は〝病毒無効〟だったな。
さて、彩歌によると、マリルーは朝から机に向かって、ずっと手紙を書いているようだ。
手紙の宛先は、南ホラント州、キンデルダイク。確か風車で有名な所だっけ。ガイドブックに載っていた。
しかし、使い魔ってすごいな。手紙の文字まで読めるんだ。
「使い魔の目に写ったものがそのまま頭に浮かぶの。いま彼女が書いてる手紙の内容まで読めるわよ?」
「いや彩歌さん、それはさすがにプライバシーの侵害じゃ……」
「大丈夫。私、オランダ語わからないもん」
クスクスと笑う彩歌。なるほどね。しかし、やっぱ超便利だな魔法。僕も早く使えるようになりたい。
『タツヤ、アヤカ、もう少しで分岐が始まる。この星の未来は君達の行動によって決められる。よろしくお願いするよ?』
「えっとブルー、もう一度確認していい?」
『何だい、アヤカ』
「正しい分岐の条件は、マリルーの手紙が相手のポストに届く、だったわよね?」
『その通りだ。どんな経路でも、たとえ手紙が相手に渡らなくても手紙がポストに入れば大丈夫だ』
何度聞いても不思議だ。なぜそれで地球が破壊から遠ざかるのだろう。
「あと、何か問題が起きたら、達也さんと私、個々の判断で行動……で、いいのね?」
『好きにしてくれて構わない。私は君たちを信じているよ』
「了解です……達也さん、行きましょう!」
「ああ。地球を救うぞ!」
「おいおい、ちょっと待ってくれユーリ!」
「なんで? 大ちゃんは私の事キライ?」
ユーリがズイッと詰め寄ると、寄られた分、大ちゃんが身を引く。
「いやいや、そうじゃなくってなー? 俺たちさー……」
「大ちゃんは私の事、命がけで守ってくれた! 私、一生大ちゃんと一緒に居たい!」
「だー! だから落ち着けって! 話を聞いてくれ」
「やー! 好き好き、大好き! 大ちゃん結婚して!」
「……7年だな」
ユーリが、ピタッと動きを止めて、キョトンとする。
「……あと7年は無理だぜー? 日本人は男性が18歳、女性は16歳以上だ。法律だから仕方がないなー」
「……大ちゃん?」
「あと数年で、女性も18歳以上に変わるらしいけどな。まあ、何にせよ、俺たちが18になったら、だなー」
大ちゃんは立ち上がって、ユーリの方を向いた。
「絶対に幸せにするぜー!」
ユーリは、涙ぐんで頷く。
……つまり。
大ちゃんとユーリは、しれっと婚約した。
「おめでとう! 良かったね! 良かったね!」
「二人とも、おめでとう!」
栗っちが号泣している。
ブルー越しに、彩歌も祝辞を述べる。
もちろん僕も、拍手をせずにはいられなかった。やったな! 大ちゃん!
「あー、それじゃ、各自、自己紹介続けるかー」
ちょっと照れた感じで、自分の事を話し始める大ちゃん。よく見ると耳が赤い。
ユーリにはこの後、栗っちと彩歌が、各々の能力や近況を自己紹介と共に説明し、僕からは、ブルーの事と、地球が破壊の危機に直面している事を詳しく話した。
「やー! 地球、大ピンチじゃん……私の使命とか、どうでも良くなっちゃうなー」
どうでも良くはないだろう。
「ユーリの一族が守ってくれていなければ、地球はとっくに侵略されていたかもしれないんだろ。本当に助かったぜー」
勾玉を分解しながら大ちゃんが言った。
「そうだよ、ユーリちゃんたちのおかげだよ!」
栗っちもそれに続く。
「ありがとー。そう言ってもらえて、姉ちゃんも、おばあちゃんも、ご先祖様達も、きっと天国で喜んでると思うよ」
いや、ユーリ、ご健在だから、お姉さんはそこに並べちゃダメだ。
「ユーリ、これからは可能な限り、僕達も一緒に戦うよ。今、時神の休日…… 戦場に立てるのは大ちゃんと僕だけだけど、彩歌さんと栗っちも、絶対に参戦できるようになるからさ」
「うん。僕も覚醒すれば、止まらずに動けるんだって!」
『私も、魔界で方法を探すから、一緒に頑張ろ!』
「ありがとう、みんな! 俄然やる気が出てきちゃったなー! 私もさ、地球の破壊を防ぐの、手伝いたい! だって、侵略よりそっちの方が問題だかんね!」
そうか……? 異星人に征服されるのもイヤだぞ……しかし、なんか色々とヤバいな、地球。
『さて。タツヤ、アヤカ、そろそろ仕事に戻ろうか』
あ、そうか。そろそろ直接、現場で張り込まなきゃだな。
「やー! たっちゃんとアヤちゃんはオランダかー! 大ちゃん、私も行きたい!」
「おー、庭みたいなもんだぜー。じいちゃんがドイツに居るからなー」
ずいぶん広い庭だな大ちゃん。
「えへへー。そういえば、るりちゃんも新婚旅行はヨーロッパがいいって言ってるんだよね」
「やー! そっかー。じゃあ栗っちも一緒に行こっかー!」
はて? なぜ妹の新婚旅行に栗っちも行くのだろう。まあ、何かしらの気のせいだな。
『ユーリ、この場所はいつでも入れるようにしておく』
「え? ホントに?! ありがとう、ブルー!」
『キミの部屋は明日までに完成するが、自宅は遠距離なので繋がるまで数日掛かるよ』
「ここからウチに繋がるのん?! ちょー便利ッ! すっごいね!」
「じゃあ、僕達は任務に戻るよ。土人形はここに居るから、何かあったら言って」
「おー! 頑張ってなー!」
「たっちゃん、アヤちゃん、頼んだよー!」
「2人とも、気をつけてね!」
それぞれが、応援の言葉をくれた。
「おう! 任せとけー!」
『みんな、またね!』
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今、オランダは朝の9時だ。
彩歌が若干眠そうなのは、ただ夜更かしをしていたわけではない。
彩歌は昨日の夕方から数時間置きに、魔法で呼び出した〝使い魔〟を飛ばして、ターゲットの少女を見張っているのだ。
やはり今日、マリルーの学校は、お休みのようだ。
……理由はインフルエンザの大流行。マリルー本人はピンピンしているみたいだが。
「やっぱり、学校閉鎖ってどの国にもあるんだな」
「魔界の学校も閉鎖になるわよ。病気の種類は違うと思うけど」
魔界の病気ってイヤだな。なんかヤバそうだ。
『キミとアヤカは病気にかからない。安心して欲しい』
そうだった。僕達は〝病毒無効〟だったな。
さて、彩歌によると、マリルーは朝から机に向かって、ずっと手紙を書いているようだ。
手紙の宛先は、南ホラント州、キンデルダイク。確か風車で有名な所だっけ。ガイドブックに載っていた。
しかし、使い魔ってすごいな。手紙の文字まで読めるんだ。
「使い魔の目に写ったものがそのまま頭に浮かぶの。いま彼女が書いてる手紙の内容まで読めるわよ?」
「いや彩歌さん、それはさすがにプライバシーの侵害じゃ……」
「大丈夫。私、オランダ語わからないもん」
クスクスと笑う彩歌。なるほどね。しかし、やっぱ超便利だな魔法。僕も早く使えるようになりたい。
『タツヤ、アヤカ、もう少しで分岐が始まる。この星の未来は君達の行動によって決められる。よろしくお願いするよ?』
「えっとブルー、もう一度確認していい?」
『何だい、アヤカ』
「正しい分岐の条件は、マリルーの手紙が相手のポストに届く、だったわよね?」
『その通りだ。どんな経路でも、たとえ手紙が相手に渡らなくても手紙がポストに入れば大丈夫だ』
何度聞いても不思議だ。なぜそれで地球が破壊から遠ざかるのだろう。
「あと、何か問題が起きたら、達也さんと私、個々の判断で行動……で、いいのね?」
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