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5年生 3学期 2月
適性検査
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魔法を買う。
ゲームとかでよくあるパターンだけど、まさか現実に魔法屋さんを訪れる事になるとはね。
「達也さん。魔法には適性があって、人によっては使えない物もあるわ」
あるある。そのパターンも想定済みだ。
攻撃魔法とかは〝使役:土〟があるからいいや。
呪いを解く魔法とか、回復魔法とか、あと、眠らせる魔法は欲しいな。
『タツヤ、着替えの魔法も便利そうだ』
「そうだな。他にも便利な魔法があれば、片っ端から買っちゃうぞ!」
彩歌に連れられ、おすすめの魔法店を目指す……うわ! なんだこれ?!
「そうそう! ここはね、城塞都市有数の〝テント・スポット〟よ。前に言ったけど、魔界ではテントで生活してる人たちの方が多いぐらいなの」
テントが広場一面に張られている。フジツボの群生地みたいで気持ち悪い。
「すごいな、テントの話、本当だったんだ……」
確かに、これが日常なら、公園にテントを張るのも異常な事では無いな。
「えー! 嘘だと思ってたの?! ヒドイわ達也さん」
ホッペを膨らませる彩歌。
「でもさ、お風呂とかは、どうするの?」
「お風呂屋さんもあるけど、川での沐浴とかが多いわね」
魔法を使う人も居るらしいが〝清浄魔法〟を買うなら、風呂付きの一戸建てを買った方が安いらしい。
「……! ちょっと待った。魔法ってそんなに高いの?」
いくら僕がお金持ちでも、家を建てられる程の値段の物を、そうポンポン買うわけにはいかない。
「この前、私が買った〝分身魔法〟は、プールのあるお屋敷が買える金額だったわ」
召使い付きでね。と笑う彩歌。
いやいや、それはちょっと笑い事じゃないぞ。
「そんな大金を叩いてまで、買ってくれたんだ、分身魔法……」
彩歌は〝分身魔法〟を、僕と一緒に地球を守るために必要だと判断して用意してくれた。
僕のせいで大変な事に巻き込んでしまったのに、そこまでしてくれるなんて。
「ありがとう、彩歌さん」
「いえいえ、どういたしまして!」
にっこり微笑む彩歌。この恩は、一生掛けて返す……僕たちの一生って超長いけど、絶対返す。
「あ、このお店よ。品揃えがスゴイの。あと、交渉次第で結構安くしてくれるわ」
看板には〝クスギシ魔法店〟とある。
「……でも何より、マスターが凄い人なのよね」
趣きのある、古びた木造の店舗だ。
扉を開けると、カランコロンという音が響く。
「いらっしゃいませ……お、彩歌ちゃん、よく来たね! ん? そっちの子は見掛けない顔だな」
店長は清潔そうな白いローブ姿。
細面に髭を蓄えた、見るからに〝こだわり派〟といった佇まいだ。
「ふふ。マスター、この人が達也さんよ」
「おお! 君か、彩歌ちゃんのハートを射止めたって言うヤツは!」
僕の事知ってるの?!
っていうか、心臓を挿げ替えたのなら確かに僕だけど。
「もー! マスター!!」
「ははは。いやいや、彩歌ちゃんが〝分身魔法〟なんていう珍しい買い物をするもんだからね。気になって聞いてみたら〝男の子と一緒に居るために必要だ〟なんて言うもんだからさ」
なんだろう……嬉しさが止め処なくこみ上げて来てクラクラする。
「まあ、詳しい事は知らないし、私の信条に反するので聞かないけど……」
マスターは、僕の目をまっすぐ見て、ニヤッと笑う。
「キミ、すごいね。魔力もだけど、もっと深い所に、魔力ではない〝測りしれない力〟がある」
うわ、この人やるなあ!
僕を〝ただの子ども〟じゃないと見抜いたぞ。
「あと、その背中の袋に、キミほどじゃ無いけど、かなりの物が入ってるね?」
え?
……そうかノームだ!
この人、もしかして魔力を感知できるのか?
「今日はキミの買い物だよね。まずは、適性を調べてみようか」
目の前のカウンターに、4つの水晶玉が置かれた。それぞれ、薄く色がついている。
「達也さん、この水晶玉は、触れた人の適性と潜在能力を、色合いで表してくれるわ」
彩歌が薄い赤色をした水晶玉に触れると、手が触れた部分から、水に血を垂らしたように、ジワジワと真っ赤に染まっていく。
「ふふ。私は火属性の魔法が一番得意なの。だから、水晶は綺麗な赤になるわ。でも……」
今度は、うっすら青い水晶玉に手を置く。しかし、何も起きない。
「水属性の魔法は適性が無いの。ほとんど使えないわ」
そういえば、彩歌が水系の魔法を使っているのは見た事が無いな。
「そうだな。回復系の魔法は水属性だから、彩歌ちゃんは回復魔法を使えないんだ」
へぇ、そうなんだ。あれ? じゃあ……
「雷とか、眠らせたりとか、着替えとかは、何属性なの?」
「それらは、無属性だったり、特別な属性だったりするよ。例えば、雷属性。これは使える魔道士がほとんど居ない、レアな属性だ。こういった火・水・風・土以外の魔法は、使ってみるまで、適性がわからないんだ」
「それを見極めちゃうのが、マスターのスゴイ所よね。私の雷属性を見抜いたのも、マスターなのよ」
「雷撃魔法が入荷した時に、ピンと来たね! 〝これは彩歌ちゃん用だな〟ってさ!」
そりゃすごい!
「まあ、外れることもあるんだけどね。さ、キミの適性を見てみようか。私の見立てでは、キミが得意なのは土属性だと思うんだが」
水晶玉、要らないんじゃないか? 本当に分かっちゃうんだな。
僕は手始めに、赤い玉に触れた。彩歌ほどではないが、ゆっくりと赤く染まっていく。
「ほう! 私の見立てはハズレかな? ここまで赤くなるとは、大したものだよ」
あらら? そうなの?
「すごいわ、達也さん! ここまで火属性に適性があるなんて!」
「いやいや、彩歌さんの方が赤かったじゃんか」
まさに、血の色だったからな。
しかも、ちょっと固まりかけた、どす黒い感じの血だ。
「ははは! 彩歌ちゃんは比較対象にしちゃダメだよ?」
「私はね、この城塞都市では結構有名な火属性魔道士なのよ? 雷撃魔法を覚えてからは、そっちが有名になっちゃったけど」
へー。じゃあ僕ってやっぱ、炎の魔道士って感じなのか? カッコイイな!
「よし、次は水いってみよう!」
水属性の水晶玉は、透明に近い水色だ。そっと触れてみる。
「んん??? 何だって?!」
水晶玉は、綺麗な青色に染まる。
「達也さん、さすがね……!」
「参ったな! 2属性持ちなんて、そうそう居ないんだぞ?」
うわうわ! なんか褒められてる?
「という事は、キミは回復魔法も使えるな。おめでとう!」
拍手でお祝いされた。回復魔法か!
「達也さん。回復魔法は便利よ! 羨ましいわ!」
僕は怪我をしないけど、彩歌さんを回復できるから、ぜひ買っていこう。
「私の予想は外れちゃったな……ここまで高い適性が2つも続いたら、キミは残りの属性、あまり期待できないかもしれないけど、一応、調べてみようか」
「はい。じゃあ、風属性の適性を……」
薄緑の水晶玉に手を置く。ジワジワと色がついていくが、やはり火や水の様な濃さにはならない。
「ほー! 意外と色が付いたな。そこそこの風魔法も使えそうだぞ?」
「そうね、ここまで良い色が付けば、〝飛翔〟ぐらいは、いけるんじゃないかしら?」
「〝飛翔〟って、もしかして空を飛ぶやつ?! やった!」
『タツヤ、キミはそのうち、〝飛行〟を習得するので、魔法で飛ぶ必要は無いよ?』
あらそう? じゃあ、それまで我慢するかな。でも、魔法で空を飛ぶって、ちょっとカッコイイよな……
「マスターさん。ちなみに〝飛翔〟の魔法って、おいくら位でしょう」
「んー、ウチの店では通常、135万円だ。慣れない内は危ないから、練習用にパラシュートもつけるよ」
高っ!!! 僕、地面に突き刺さっても死なないから、パラシュート分、安くしてくれないかな……
『タツヤ、無駄遣いはよくない』
ちぇ。仕方ない。〝飛行〟を覚えるまで我慢するか。
「よし、ラストは土属性だな。さすがにここまで適性が良いと、土は適性無しかもしれないね」
むふふ。ところがどっこい。僕って、土属性に適性が無いはずナッシングなのだ!
きっと凄まじい茶色。まさに真っ茶っ茶の、どす黒い茶色になるであろう!
……なんか汚らしいな。
まあいい。驚け! これが僕の土属性の威力だ。
『タツヤ、いけない! その水晶玉の許容を超え……』
僕が触れると、薄茶色の水晶玉は一瞬で真っ黒に染まった。
「……ェえ?」
マスターの裏返ったセリフと同時に、水晶玉がチリチリと振動を始める。
『タツヤ、危険だ! あと12秒で破裂する。この建物ごと粉々になるぞ』
あわわわ?! ウソだろ?! なんでそんな事になるんだよ!!
ゲームとかでよくあるパターンだけど、まさか現実に魔法屋さんを訪れる事になるとはね。
「達也さん。魔法には適性があって、人によっては使えない物もあるわ」
あるある。そのパターンも想定済みだ。
攻撃魔法とかは〝使役:土〟があるからいいや。
呪いを解く魔法とか、回復魔法とか、あと、眠らせる魔法は欲しいな。
『タツヤ、着替えの魔法も便利そうだ』
「そうだな。他にも便利な魔法があれば、片っ端から買っちゃうぞ!」
彩歌に連れられ、おすすめの魔法店を目指す……うわ! なんだこれ?!
「そうそう! ここはね、城塞都市有数の〝テント・スポット〟よ。前に言ったけど、魔界ではテントで生活してる人たちの方が多いぐらいなの」
テントが広場一面に張られている。フジツボの群生地みたいで気持ち悪い。
「すごいな、テントの話、本当だったんだ……」
確かに、これが日常なら、公園にテントを張るのも異常な事では無いな。
「えー! 嘘だと思ってたの?! ヒドイわ達也さん」
ホッペを膨らませる彩歌。
「でもさ、お風呂とかは、どうするの?」
「お風呂屋さんもあるけど、川での沐浴とかが多いわね」
魔法を使う人も居るらしいが〝清浄魔法〟を買うなら、風呂付きの一戸建てを買った方が安いらしい。
「……! ちょっと待った。魔法ってそんなに高いの?」
いくら僕がお金持ちでも、家を建てられる程の値段の物を、そうポンポン買うわけにはいかない。
「この前、私が買った〝分身魔法〟は、プールのあるお屋敷が買える金額だったわ」
召使い付きでね。と笑う彩歌。
いやいや、それはちょっと笑い事じゃないぞ。
「そんな大金を叩いてまで、買ってくれたんだ、分身魔法……」
彩歌は〝分身魔法〟を、僕と一緒に地球を守るために必要だと判断して用意してくれた。
僕のせいで大変な事に巻き込んでしまったのに、そこまでしてくれるなんて。
「ありがとう、彩歌さん」
「いえいえ、どういたしまして!」
にっこり微笑む彩歌。この恩は、一生掛けて返す……僕たちの一生って超長いけど、絶対返す。
「あ、このお店よ。品揃えがスゴイの。あと、交渉次第で結構安くしてくれるわ」
看板には〝クスギシ魔法店〟とある。
「……でも何より、マスターが凄い人なのよね」
趣きのある、古びた木造の店舗だ。
扉を開けると、カランコロンという音が響く。
「いらっしゃいませ……お、彩歌ちゃん、よく来たね! ん? そっちの子は見掛けない顔だな」
店長は清潔そうな白いローブ姿。
細面に髭を蓄えた、見るからに〝こだわり派〟といった佇まいだ。
「ふふ。マスター、この人が達也さんよ」
「おお! 君か、彩歌ちゃんのハートを射止めたって言うヤツは!」
僕の事知ってるの?!
っていうか、心臓を挿げ替えたのなら確かに僕だけど。
「もー! マスター!!」
「ははは。いやいや、彩歌ちゃんが〝分身魔法〟なんていう珍しい買い物をするもんだからね。気になって聞いてみたら〝男の子と一緒に居るために必要だ〟なんて言うもんだからさ」
なんだろう……嬉しさが止め処なくこみ上げて来てクラクラする。
「まあ、詳しい事は知らないし、私の信条に反するので聞かないけど……」
マスターは、僕の目をまっすぐ見て、ニヤッと笑う。
「キミ、すごいね。魔力もだけど、もっと深い所に、魔力ではない〝測りしれない力〟がある」
うわ、この人やるなあ!
僕を〝ただの子ども〟じゃないと見抜いたぞ。
「あと、その背中の袋に、キミほどじゃ無いけど、かなりの物が入ってるね?」
え?
……そうかノームだ!
この人、もしかして魔力を感知できるのか?
「今日はキミの買い物だよね。まずは、適性を調べてみようか」
目の前のカウンターに、4つの水晶玉が置かれた。それぞれ、薄く色がついている。
「達也さん、この水晶玉は、触れた人の適性と潜在能力を、色合いで表してくれるわ」
彩歌が薄い赤色をした水晶玉に触れると、手が触れた部分から、水に血を垂らしたように、ジワジワと真っ赤に染まっていく。
「ふふ。私は火属性の魔法が一番得意なの。だから、水晶は綺麗な赤になるわ。でも……」
今度は、うっすら青い水晶玉に手を置く。しかし、何も起きない。
「水属性の魔法は適性が無いの。ほとんど使えないわ」
そういえば、彩歌が水系の魔法を使っているのは見た事が無いな。
「そうだな。回復系の魔法は水属性だから、彩歌ちゃんは回復魔法を使えないんだ」
へぇ、そうなんだ。あれ? じゃあ……
「雷とか、眠らせたりとか、着替えとかは、何属性なの?」
「それらは、無属性だったり、特別な属性だったりするよ。例えば、雷属性。これは使える魔道士がほとんど居ない、レアな属性だ。こういった火・水・風・土以外の魔法は、使ってみるまで、適性がわからないんだ」
「それを見極めちゃうのが、マスターのスゴイ所よね。私の雷属性を見抜いたのも、マスターなのよ」
「雷撃魔法が入荷した時に、ピンと来たね! 〝これは彩歌ちゃん用だな〟ってさ!」
そりゃすごい!
「まあ、外れることもあるんだけどね。さ、キミの適性を見てみようか。私の見立てでは、キミが得意なのは土属性だと思うんだが」
水晶玉、要らないんじゃないか? 本当に分かっちゃうんだな。
僕は手始めに、赤い玉に触れた。彩歌ほどではないが、ゆっくりと赤く染まっていく。
「ほう! 私の見立てはハズレかな? ここまで赤くなるとは、大したものだよ」
あらら? そうなの?
「すごいわ、達也さん! ここまで火属性に適性があるなんて!」
「いやいや、彩歌さんの方が赤かったじゃんか」
まさに、血の色だったからな。
しかも、ちょっと固まりかけた、どす黒い感じの血だ。
「ははは! 彩歌ちゃんは比較対象にしちゃダメだよ?」
「私はね、この城塞都市では結構有名な火属性魔道士なのよ? 雷撃魔法を覚えてからは、そっちが有名になっちゃったけど」
へー。じゃあ僕ってやっぱ、炎の魔道士って感じなのか? カッコイイな!
「よし、次は水いってみよう!」
水属性の水晶玉は、透明に近い水色だ。そっと触れてみる。
「んん??? 何だって?!」
水晶玉は、綺麗な青色に染まる。
「達也さん、さすがね……!」
「参ったな! 2属性持ちなんて、そうそう居ないんだぞ?」
うわうわ! なんか褒められてる?
「という事は、キミは回復魔法も使えるな。おめでとう!」
拍手でお祝いされた。回復魔法か!
「達也さん。回復魔法は便利よ! 羨ましいわ!」
僕は怪我をしないけど、彩歌さんを回復できるから、ぜひ買っていこう。
「私の予想は外れちゃったな……ここまで高い適性が2つも続いたら、キミは残りの属性、あまり期待できないかもしれないけど、一応、調べてみようか」
「はい。じゃあ、風属性の適性を……」
薄緑の水晶玉に手を置く。ジワジワと色がついていくが、やはり火や水の様な濃さにはならない。
「ほー! 意外と色が付いたな。そこそこの風魔法も使えそうだぞ?」
「そうね、ここまで良い色が付けば、〝飛翔〟ぐらいは、いけるんじゃないかしら?」
「〝飛翔〟って、もしかして空を飛ぶやつ?! やった!」
『タツヤ、キミはそのうち、〝飛行〟を習得するので、魔法で飛ぶ必要は無いよ?』
あらそう? じゃあ、それまで我慢するかな。でも、魔法で空を飛ぶって、ちょっとカッコイイよな……
「マスターさん。ちなみに〝飛翔〟の魔法って、おいくら位でしょう」
「んー、ウチの店では通常、135万円だ。慣れない内は危ないから、練習用にパラシュートもつけるよ」
高っ!!! 僕、地面に突き刺さっても死なないから、パラシュート分、安くしてくれないかな……
『タツヤ、無駄遣いはよくない』
ちぇ。仕方ない。〝飛行〟を覚えるまで我慢するか。
「よし、ラストは土属性だな。さすがにここまで適性が良いと、土は適性無しかもしれないね」
むふふ。ところがどっこい。僕って、土属性に適性が無いはずナッシングなのだ!
きっと凄まじい茶色。まさに真っ茶っ茶の、どす黒い茶色になるであろう!
……なんか汚らしいな。
まあいい。驚け! これが僕の土属性の威力だ。
『タツヤ、いけない! その水晶玉の許容を超え……』
僕が触れると、薄茶色の水晶玉は一瞬で真っ黒に染まった。
「……ェえ?」
マスターの裏返ったセリフと同時に、水晶玉がチリチリと振動を始める。
『タツヤ、危険だ! あと12秒で破裂する。この建物ごと粉々になるぞ』
あわわわ?! ウソだろ?! なんでそんな事になるんだよ!!
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