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5年生 3学期 2月
売れない魔法
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魔法の適性検査のはずだったんだけど……
僕が触れた途端、土属性の適性を計る水晶玉は、真っ黒になり小刻みに振動を始めた。
『タツヤ、危険だ! あと12秒で破裂する。この建物ごと塵になるぞ』
水晶玉の振動は勢いを増し、チリチリという音は、ギリギリと、歯ぎしりの様な音に変わっていく。
「おいおいおい! な、何だこれは! こんな反応見たこと無いぞ!?」
とうとう、水晶玉に亀裂が入った。もうダメだ!!
「HuLex UmThel wAl iL」
彩歌が呪文を唱える。
真っ黒な水晶玉を、魔法の障壁が包んだ。よし、これで大丈夫!
……なわけないか。この前の爆弾も、完全には防ぎ切れていなかったし。
僕は両手を差し出して〝使役:土〟を発動する。
「……! 詠唱破棄?! キミは一体!」
空中に現れた数個の大きな岩。それを見て驚くマスター。
これを圧縮して、強度を上げる。
「障壁の分、少し大きめに……っと」
押し固めては呼び出し、押し固めては呼び出しを超高速で繰り返し、一瞬にして、水晶玉が入る程の箱を作り出した。我ながら器用だな。
障壁に包まれた水晶玉を、箱に収める。よし、ピッタリだ。そしてこれを……
『タツヤ、3秒前だ。急いで!』
蓋を作るつもりはない。そんな暇ないし。
「な?! キミ! あぶな……」
僕は開口部を腹に当て、箱を抱え込んで蹲る。
どうだ、こんな頑丈な蓋、他にないぞ!
「二人とも、耳を塞いで!」
次の瞬間、パァン! という音が響いた。箱には亀裂が入り、隙間から黒い煙が溢れる。
「ふう。危ない危ない。彩歌さんナイス障壁!」
「達也さんこそ、すごいスピードだったわ」
呆然としているマスター。
良かった。怪我はないようだな。
「すみません。水晶玉、壊してしまいました」
いやはや。まさか爆発するなんてな。某漫画の〝強さを測定する機械〟じゃあるまいし。
……あれ? マスターが小刻みに震えてるぞ?
「……おいおいおいおい! キミ!!」
声を荒げ、近付いて来るマスター。
あっちゃー! これはかなり怒ってるな……
「えっと! あ、あのすみません。水晶玉は弁償しますから……」
やっぱこういうのって、お高いのかな……魔法を買うお金が無くなっちゃうぞ。
「いやいや! 水晶玉なんかどうでも良いんだ! ……すごい! すごいぞ! まさかここまでとは!!」
……へ? 何?
「えっと、どうでも良いって……どういう事……?」
「キミ! あ、えっと……達也君! なんとなく感じてはいたが、何なんだ、キミのその力!」
「あ、いえ、これはその……」
「いや、待った! 答えなくていい。私の信条に反する」
マスターはアゴに手を当てて、ジロジロと僕を見ている。
「……水晶玉があんな濃い色になるほどの適性持ちなんか、見た事がない。いや、魔力の適性だけであんな色になるはずがないんだ。ましてや、爆発するなんて考えられない」
ブツブツと呟きながら、ニヤッとしたり、真面目な顔をしたり忙しそうだ。
「達也さん。マスターはね〝お客さんに質問しない〟が信条なのよ」
「……ああ、ははは。ついつい、色々と聞いちゃうんだけどね」
笑顔だが、目が笑っていないマスター。真剣に考え込んでいる。
そういえば、彩歌が〝分身魔法〟を買った理由とかは、気になって聞いたと言っていたな。
「……そうか! さっき岩を出して箱を作ったのは、詠唱破棄じゃないな?
キミ、魔力じゃなくて、自力で土の力を操ったのか?!」
見破っちゃった?! やっぱすごいなこの人!
僕が頷くと、マスターは満足そうな顔で笑った。
「さすが、彩歌ちゃんが連れてくるだけの事はあって、只者じゃないな!」
彩歌がちょっと自慢げな顔をしている。
しかし、危うく大変な事故になる所だったぞ……! 魔界にいる間は、下手に色んな所を触らないようにしなきゃ。
「ごめんなさい。まさかこんな事になるとは思わなくて……えっと、弁償します。水晶玉はいくらぐらいする物ですか?」
頼むから、一軒家クラスとかやめてくれよ。 軽自動車ぐらいの値段までで頼むぞ……
「いや、いいんだ弁償なんて。どちらかと言うと、お客さんを危険な目に合わせてしまったのだから、こちらの方が謝らなければならない。すまなかったね」
プロだな、マスター! 彩歌がこの店を推す理由が良く分かったよ。逆に申し訳なさでいっぱいだ。
「いえ! もうお気付きかと思いますが、僕はすごく頑丈で、危険とかは全然……! 弁償させて下さい!」
せめて軽自動車……あ、出来れば原付きとか電動自転車ぐらいなら嬉しいなあ。
『タツヤ、なぜさっきから乗り物で例えるんだ?』
それはもちろん……あれ? なんでだっけ?
「いやいや、本当に構わないんだよ……あ、そうか! もしかしたらキミなら」
ハッとした表情のマスター。
「はい? えっと、僕なら……?」
「すまない、ちょっと待っていてくれないか。アレは確か倉庫の奥に……」
マスターは、ブツブツ言いながら、小走りで店の奥に消えていった。
「彩歌さん、何だろう?」
「さあ? でも、急に何かを思い出したみたいだったわね」
……あ、帰ってきた。手に何か持っている。
「弁償はしてもらわなくて良い。ただ、その代りと言っては何だけど……」
マスターは、手に持った巻物を差し出す……これは?
「達也さん。それは魔法の巻物よ」
「この巻物は、ウチの店に代々受け継がれてきた物なんだけどね。良く言えば〝家宝〟……悪く言えば〝死に在庫〟だ。買ってくれる人がいないんだよ」
「〝家宝〟で〝死に在庫〟? どういう事ですか?」
「買ってくれる人がいないというか、ぶっちゃけ、使える人がいないんだ」
「マスター、まさかそれって!」
あれ? 彩歌は知っているのか?
「一つは、使用する魔力の量。この魔法はね、莫大な魔力を吸い尽くす上に、足りない分は体力から無理やり魔力に変換して、むしり取っちゃうんだよ」
「体力を……? でも、そんな事されたら……」
「そう。死んじゃうんだ。古い記録では、今まで何人も試したけど、発動したのは一度だけ。しかも、使った本人は瀕死の状態にされた上に、発動した魔法に巻き込まれて行方不明になったらしい」
怖っ! 何だよそれ! もういっそ捨てちゃえばいいのに……
「なんでそんな怖い魔法を、代々受け継いでいるんですか?」
よくぞ聞いてくれました、という表情のマスター。
「見返りが大きいのさ!」
「その魔法は〝夢幻回廊〟。究極の土魔法よ。けど、もしかしたら達也さんは……」
彩歌の言葉に、かぶせ気味で話を続けるマスター。話したくて仕方ないといった感じだ。
「〝夢幻回廊〟は、術者の知識、潜在意識、前世、遺伝子情報、想像力、その他諸々の、本人すら想像もつかないような、途方もない量の情報を使って〝広大な迷宮〟を作り出すんだ」
迷宮を作る……?! スゴいけど、想像していたのと違うな。
「言い伝えでは、この魔法を使って作られた迷宮を踏破すると〝大地の王〟に会えるらしい。そこで大地の王に認められれば、その者は大地と一つになり、神をも超える力を手にする事が出来るといわれている」
へぇ! それはスゴ……
……ん?
「この魔法を使える人が居ないもう一つの理由は、発動できる場所が限られていることだ。〝夢幻回廊〟は〝アガルタ〟で使わないとダメなんだ。魔界では、発動しない」
アガルタ……〝地球でのみ〟発動し〝大地の王〟に会いに行く魔法……?
「ほら、やっぱりね。〝アガルタ〟と聞いてもその反応だ。僕の思ったとおりのようだね」
嬉しそうに笑うマスター。
「キミは〝アガルタ〟から来たんだろう? いや、答えなくていいよ。僕の信条に反するから」
城塞都市に住む一般人は、地球の事を〝アガルタ〟と呼ぶ。
……しかし、それが実在する事を知らない。
たぶんマスターは、この〝夢幻回廊〟にまつわる記録から、〝アガルタ〟が本当にあるって事を知ったのだろう。
いや、そんな事よりも〝夢幻回廊〟で作られた迷宮の行き着く先には……
「キミに、この魔法をあげよう。いや、むしろ使ってもらえないだろうか! 私は言い伝えが本当なのかを知りたいんだ!」
「ちょっと、マスター。達也さんはね……?」
「彩歌ちゃん! 頼む! 危険な魔法だっていうのは承知している。けど、彼なら……達也君なら、無事に迷宮を抜け、大地の王に会って、素晴らしい力を手に入れてくれると思うんだ!」
いやたぶん、その大地の王って……
『タツヤ、それは私のことだね』
僕が触れた途端、土属性の適性を計る水晶玉は、真っ黒になり小刻みに振動を始めた。
『タツヤ、危険だ! あと12秒で破裂する。この建物ごと塵になるぞ』
水晶玉の振動は勢いを増し、チリチリという音は、ギリギリと、歯ぎしりの様な音に変わっていく。
「おいおいおい! な、何だこれは! こんな反応見たこと無いぞ!?」
とうとう、水晶玉に亀裂が入った。もうダメだ!!
「HuLex UmThel wAl iL」
彩歌が呪文を唱える。
真っ黒な水晶玉を、魔法の障壁が包んだ。よし、これで大丈夫!
……なわけないか。この前の爆弾も、完全には防ぎ切れていなかったし。
僕は両手を差し出して〝使役:土〟を発動する。
「……! 詠唱破棄?! キミは一体!」
空中に現れた数個の大きな岩。それを見て驚くマスター。
これを圧縮して、強度を上げる。
「障壁の分、少し大きめに……っと」
押し固めては呼び出し、押し固めては呼び出しを超高速で繰り返し、一瞬にして、水晶玉が入る程の箱を作り出した。我ながら器用だな。
障壁に包まれた水晶玉を、箱に収める。よし、ピッタリだ。そしてこれを……
『タツヤ、3秒前だ。急いで!』
蓋を作るつもりはない。そんな暇ないし。
「な?! キミ! あぶな……」
僕は開口部を腹に当て、箱を抱え込んで蹲る。
どうだ、こんな頑丈な蓋、他にないぞ!
「二人とも、耳を塞いで!」
次の瞬間、パァン! という音が響いた。箱には亀裂が入り、隙間から黒い煙が溢れる。
「ふう。危ない危ない。彩歌さんナイス障壁!」
「達也さんこそ、すごいスピードだったわ」
呆然としているマスター。
良かった。怪我はないようだな。
「すみません。水晶玉、壊してしまいました」
いやはや。まさか爆発するなんてな。某漫画の〝強さを測定する機械〟じゃあるまいし。
……あれ? マスターが小刻みに震えてるぞ?
「……おいおいおいおい! キミ!!」
声を荒げ、近付いて来るマスター。
あっちゃー! これはかなり怒ってるな……
「えっと! あ、あのすみません。水晶玉は弁償しますから……」
やっぱこういうのって、お高いのかな……魔法を買うお金が無くなっちゃうぞ。
「いやいや! 水晶玉なんかどうでも良いんだ! ……すごい! すごいぞ! まさかここまでとは!!」
……へ? 何?
「えっと、どうでも良いって……どういう事……?」
「キミ! あ、えっと……達也君! なんとなく感じてはいたが、何なんだ、キミのその力!」
「あ、いえ、これはその……」
「いや、待った! 答えなくていい。私の信条に反する」
マスターはアゴに手を当てて、ジロジロと僕を見ている。
「……水晶玉があんな濃い色になるほどの適性持ちなんか、見た事がない。いや、魔力の適性だけであんな色になるはずがないんだ。ましてや、爆発するなんて考えられない」
ブツブツと呟きながら、ニヤッとしたり、真面目な顔をしたり忙しそうだ。
「達也さん。マスターはね〝お客さんに質問しない〟が信条なのよ」
「……ああ、ははは。ついつい、色々と聞いちゃうんだけどね」
笑顔だが、目が笑っていないマスター。真剣に考え込んでいる。
そういえば、彩歌が〝分身魔法〟を買った理由とかは、気になって聞いたと言っていたな。
「……そうか! さっき岩を出して箱を作ったのは、詠唱破棄じゃないな?
キミ、魔力じゃなくて、自力で土の力を操ったのか?!」
見破っちゃった?! やっぱすごいなこの人!
僕が頷くと、マスターは満足そうな顔で笑った。
「さすが、彩歌ちゃんが連れてくるだけの事はあって、只者じゃないな!」
彩歌がちょっと自慢げな顔をしている。
しかし、危うく大変な事故になる所だったぞ……! 魔界にいる間は、下手に色んな所を触らないようにしなきゃ。
「ごめんなさい。まさかこんな事になるとは思わなくて……えっと、弁償します。水晶玉はいくらぐらいする物ですか?」
頼むから、一軒家クラスとかやめてくれよ。 軽自動車ぐらいの値段までで頼むぞ……
「いや、いいんだ弁償なんて。どちらかと言うと、お客さんを危険な目に合わせてしまったのだから、こちらの方が謝らなければならない。すまなかったね」
プロだな、マスター! 彩歌がこの店を推す理由が良く分かったよ。逆に申し訳なさでいっぱいだ。
「いえ! もうお気付きかと思いますが、僕はすごく頑丈で、危険とかは全然……! 弁償させて下さい!」
せめて軽自動車……あ、出来れば原付きとか電動自転車ぐらいなら嬉しいなあ。
『タツヤ、なぜさっきから乗り物で例えるんだ?』
それはもちろん……あれ? なんでだっけ?
「いやいや、本当に構わないんだよ……あ、そうか! もしかしたらキミなら」
ハッとした表情のマスター。
「はい? えっと、僕なら……?」
「すまない、ちょっと待っていてくれないか。アレは確か倉庫の奥に……」
マスターは、ブツブツ言いながら、小走りで店の奥に消えていった。
「彩歌さん、何だろう?」
「さあ? でも、急に何かを思い出したみたいだったわね」
……あ、帰ってきた。手に何か持っている。
「弁償はしてもらわなくて良い。ただ、その代りと言っては何だけど……」
マスターは、手に持った巻物を差し出す……これは?
「達也さん。それは魔法の巻物よ」
「この巻物は、ウチの店に代々受け継がれてきた物なんだけどね。良く言えば〝家宝〟……悪く言えば〝死に在庫〟だ。買ってくれる人がいないんだよ」
「〝家宝〟で〝死に在庫〟? どういう事ですか?」
「買ってくれる人がいないというか、ぶっちゃけ、使える人がいないんだ」
「マスター、まさかそれって!」
あれ? 彩歌は知っているのか?
「一つは、使用する魔力の量。この魔法はね、莫大な魔力を吸い尽くす上に、足りない分は体力から無理やり魔力に変換して、むしり取っちゃうんだよ」
「体力を……? でも、そんな事されたら……」
「そう。死んじゃうんだ。古い記録では、今まで何人も試したけど、発動したのは一度だけ。しかも、使った本人は瀕死の状態にされた上に、発動した魔法に巻き込まれて行方不明になったらしい」
怖っ! 何だよそれ! もういっそ捨てちゃえばいいのに……
「なんでそんな怖い魔法を、代々受け継いでいるんですか?」
よくぞ聞いてくれました、という表情のマスター。
「見返りが大きいのさ!」
「その魔法は〝夢幻回廊〟。究極の土魔法よ。けど、もしかしたら達也さんは……」
彩歌の言葉に、かぶせ気味で話を続けるマスター。話したくて仕方ないといった感じだ。
「〝夢幻回廊〟は、術者の知識、潜在意識、前世、遺伝子情報、想像力、その他諸々の、本人すら想像もつかないような、途方もない量の情報を使って〝広大な迷宮〟を作り出すんだ」
迷宮を作る……?! スゴいけど、想像していたのと違うな。
「言い伝えでは、この魔法を使って作られた迷宮を踏破すると〝大地の王〟に会えるらしい。そこで大地の王に認められれば、その者は大地と一つになり、神をも超える力を手にする事が出来るといわれている」
へぇ! それはスゴ……
……ん?
「この魔法を使える人が居ないもう一つの理由は、発動できる場所が限られていることだ。〝夢幻回廊〟は〝アガルタ〟で使わないとダメなんだ。魔界では、発動しない」
アガルタ……〝地球でのみ〟発動し〝大地の王〟に会いに行く魔法……?
「ほら、やっぱりね。〝アガルタ〟と聞いてもその反応だ。僕の思ったとおりのようだね」
嬉しそうに笑うマスター。
「キミは〝アガルタ〟から来たんだろう? いや、答えなくていいよ。僕の信条に反するから」
城塞都市に住む一般人は、地球の事を〝アガルタ〟と呼ぶ。
……しかし、それが実在する事を知らない。
たぶんマスターは、この〝夢幻回廊〟にまつわる記録から、〝アガルタ〟が本当にあるって事を知ったのだろう。
いや、そんな事よりも〝夢幻回廊〟で作られた迷宮の行き着く先には……
「キミに、この魔法をあげよう。いや、むしろ使ってもらえないだろうか! 私は言い伝えが本当なのかを知りたいんだ!」
「ちょっと、マスター。達也さんはね……?」
「彩歌ちゃん! 頼む! 危険な魔法だっていうのは承知している。けど、彼なら……達也君なら、無事に迷宮を抜け、大地の王に会って、素晴らしい力を手に入れてくれると思うんだ!」
いやたぶん、その大地の王って……
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