プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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5年生 3学期 2月

おとうさん

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「いらっしゃい! あれ? お嬢さん、どこかで見た顔だね……いや、そんな事よりその杖! 相当な名工の作品じゃないか?」

 フラリと入った武器と防具の店。僕の武器を買うのが目的だ。
 ……と言っても、僕には剣や杖は必要ない。
 素手の方が強いもんね。

「でも達也さん、手ぶらで探検に出たら、さすがに怪しむ人が居ると思う」

「んー。〝使役:土〟で、適当に作っても良かったのに」

 質感とかも自由自在だし、 無料タダで作れちゃうんだけどなあ。

『タツヤ、魔界の事をよく知っているアヤカが言うのだから、きっと必要なのだろう』

 という事で、適当な店で適当に安い物を買うつもりだったのだが、店主が 彩歌あやかの装備に食いついた。

「そのマントもすごいね! ちょっとデザインが派手ハデだけど、相当な作り込み方だ!」

 職人さんは、見ただけで分かるんだな。
 どちらも〝名工神ヘパイストス〟である大ちゃんが作った装備だから、間違いなく良い物だ。
 彩歌の持っているロッドは、大ちゃん に代々伝わる宝石が埋め込まれたもので、魔法の威力がかなり増幅される。
 マントは、練習場の壁や床に使われている材質をヒントに設計したらしい。恐ろしい程の防御力だし、自己修復機能も付いている。
 どちらも、変身した時にスーツと一緒に転送されて来るものだが、魔界へは、転送されるかどうか分からなかったため、単体で持たせてくれたのだ。さすが気が利くよな、大ちゃんは。

「で? 今日は何がご入用だね?」

 杖……かな?

「へえ! 初めて魔法を覚えたのか。初心者向けの杖は大体こんな感じかな」

 カウンターに、3本の杖が出される。どれも、魔法の出力アップより、安定性重視のモデルらしい。
 ドラムスティックのように、短く黒い色の物、ボコボコとしたコブがいっぱいある木製の物、そして……

「お! これ、良さそうじゃないか?」

 僕が選んだのは、物干し竿の様な、かなり長い杖だった。

「お! 兄ちゃん、なかなか見る目があるな! それはオレの自信作だ。狭い所でも扱いやすいように、伸縮するように出来ているんだぞ。まあ、長いままのほうが効果は高いんだがな」

 手にとってみると、なかなかしっくりと馴染んで良い感じだ。
 おっと、こうすると縮むのか。2メートル以上あった杖は、3分の1くらいの長さになった。面白いな!

「達也さん、なぜそれなの?」

「いやー、実は僕、カンフー映画でよく見る〝棒術〟って、好きなんだよね!」

 僕には〝 接触弱体せっしょくじゃくたい〟があるから、こんな初心者向けの杖でも凄い強度の武器になるぞ。
 しかも、縮めた状態で魔法を使えば、接触面積が広くなるから、長時間、星の強度を付与できそうだ。

「おじさん、これにするよ!」

「まいどあり! いや、それにしてもそっちのお嬢さんの杖とマントは良いな! 惚れ惚れするぜ!」

 ……まだ言ってる。
 大ちゃんに、魔界の武器職人が褒めてたって言ったら喜ぶだろうな。
 おじさんにお礼を言って、店を出た。えっと、あとは食料だな。

「それにしても、織田さんって、一体何者なんだろう?」

 織田おだ啓太郎けいたろうさんは、初心者講習に続き、ついさっきも魔法屋で会った。
 僕と彩歌を見て少し驚いた様子だったが、魔法屋のマスターから畜魔石を受け取ると、ニコニコと笑いながら店を出て行った。

「〝探検者〟としては初心者なのかもしれないけど、どう考えても〝戦えない一般人〟に見えないわね」

 織田さんの風貌ふうぼうは、かなり熟練の魔道士といった感じだった。
 身につけている装備は、戦いによる物であろう、大小さまざまな傷がいたる所に入っていたし、気配や身のこなしには、驚くほど隙が無かった。

「でも、変よね。熟練の探検者が、わざわざそれを隠して、初心者講習を受ける必要なんか無いし、もし自分がベテランである事を隠す気があるなら、装備は新しい物を用意するわ」

「ああ。ホントだな! じゃあ、城塞都市から出たことのないベテラン?」

「ふふ。城塞都市の中で、ベテランになるなんて有り得ないわ」

 城塞都市の中は安全だ。たまに魔物や悪魔が入り込むことはあっても、熟練の魔道士になる程の戦闘は起こり得ない。
 路上に出ず、教習所内だけで練習していても、運転免許はもらえないのだ。

「不思議な人だな。次に会った時、ブルーに詳細情報を見てもらおうか」

『タツヤ、それがね。先程試してみたんだが、彼の情報、見れないんだ』

「なんだって?! まさか生き物じゃないとか!」

『いや、そうではない。彼は間違いなく人間だ。得体の知れない方法で彼の情報が表に漏れないよう、遮断されているみたいだね』

 いよいよ不信感が募る。でも、どう見ても悪い人には思えないんだよなあ。

「悪事を働く様な人には見えないわね。もしあれが演技なら、探検者より、役者になるべきよ」

『あはは。アヤカ、それは面白いね!』

 この後、僕と彩歌は、明日からの探検に必要な物を買い揃えるため、色々な店を見て回った。
 魔界でのショッピングは初めて見るものばかりで楽しいな!
 ……表記が全部〝円〟のせいで、支払いをする度に〝アガルタ〟に引き戻されちゃうんだけど。

「……いけない、もうこんな時間! 達也さん、そろそろ光が消えていくわ」

 魔界の空で、眩しくも暖かくもなく、フワッと光を灯し続けているのは〝ぬ光〟と呼ばれる不思議な光源。午後7時から徐々に暗くなり、やがて、夜がやって来る。

「城塞都市の中なら安全だけど、夜中に出歩く人があまり居ないから、悪目立ちするわ」

 子どもが探検の準備を買い歩いているのも、随分目立っていただろうし、暗くなるまでにどこか泊まる所を見つけないとな。

「あれ? そういえば彩歌さん。前に〝家族が心配する〟って言ってたよね。帰らなくていいの?」

 ギクッとした表情の彩歌。
 すぐに強張こわばった笑顔を無理やり作る。

「えっと……ちょっと今日は、お父さんもお母さんも出掛けちゃっててね、居ないのよ! それに私は〝アガルタ〟に行くと決めた時点で〝遠征に行くから当分戻らない〟と言ってあるし、急に帰ったらビックリされちゃうわ!」

 何かを誤魔化そうとしている気がする。怪しいな……

「もしかして、何か家に帰りたくない理由があるの?」

 さっきより、さらにギクッとしている彩歌。何なんだ?

「な、何でもないのよ? さあ、あっちでテントを張りましょう!」

 そう言って僕の手を引き、歩き出そうとする彩歌。

「あーちゃん?! ちょっと! あーちゃんじゃないか!」

 後ろから声を掛けられて、肩をビクッとさせる彩歌。
 ……〝あーちゃん〟?

「やっぱり! あーちゃんじゃないか~!! ちょっとぉ、も~! 帰って来るなら連絡をくれたら良いのにぃ!!」

 振り返ると、シルクハットを被り、ひげたくわえた、温厚で品の良さそうな男性が立っていた。

「おとう……さん」

 苦虫を口に放り込まれた上で笑顔を強要された様な、複雑な表情を浮かべる彩歌。
 ……お父さん?!

「おっかえりー! あーちゃん! どうしたの? なんで帰って来てるのに連絡くれないの?」

 風貌と口調が合っていない。この人が彩歌のお父さん……?

「違うの! これには訳があって!」

 アタフタと慌て始める彩歌。何だ何だ? いいお父さんみたいじゃないか。何をそんなにパニックになっているんだ?
 ……よし! ここはひとつ、僕もキチンと挨拶をしておかねば!

「こんにちは、お父さん! 僕、 内海達也うつみたつやと申します!」

「たっ! 達也さん、ダメ!」

 ……え?

「あぁあああああん? なんだあぁああテメェは?!」

 シルクハットを被り、髭を蓄えた、血も涙も無い鬼のような形相の男性は、僕を睨み付けると、さっきまでの猫なで声とは全く違うドスの利いた声で言った。

「お・と・う・さ・ん、だああああ? 何言ってんだこのクソガキがぁあああ! なんでテメェに〝お父さん〟なんて呼ばれなきゃなんねぇんだ? あぁああああああああああん?!」

 怖すぎますよ、お父さん! パズズより怖い!
 一体どうなってんの?!

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