プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
149 / 264
5年生 3学期 2月

犬鑑札

しおりを挟む
「でっかい門だな!!」

 城塞都市、北門。
 木をベースに、大部分を鉄で補強された、巨大な門だ。

「高さは20メートル。幅は50メートルもあるわ」

 ドイツで見た〝ブランデンブルク門〟の方が大きいのか。
 ……まあ、あっちは扉がついていないけど。

「昨日の講習で言ってたけど、あの赤いラインの1メートル先に、結界があるから、絶対に近づかないでね?」

「なるほど、あれが……触ったら大変な事になるな」

 門の前には、2重の結界が張られているらしい。開門の時以外に近づけば、普通の人間なら即死だ。

「骨も残らないわ……普通の人間ならね?」

 クスリと笑う彩歌あやか
 ……そう。だから大変な事になるんだ。
 僕や彩歌が触ったら〝こいつ、結界に触っても何ともないぜ!〟って大騒ぎになるからな。

「それにしても、スゴい人数だな! こんなに外へ出るんだ」

 魔界の太陽〝触れ得ぬ光〟が完全に点灯するのは5時。
 ブルーの光があるとはいえ、周囲はまだ薄暗い。
 はっきりと確認は出来ないけど、ざっと数えて30人ぐらいが、門の前に居るようだ。

「〝遠征〟じゃない人も多いのよ。城壁の近くに屋台を置いて、商売をする人も居るんだから」

「商魂たくましいな! それって、命がけだよね」

「そうだ! 達也さんと私なら、城塞都市の外でお店が開けるわ。きっと繁盛するわよ?」

 なるほど! ゲームなんかでよくある〝何でこんな辺境に?〟って感じの店だ。
 しかも僕は眠らないから24時間営業だ。便利さと話題性は最高だなあ。

「彩歌さんとお店を開く……か。楽しそうだな」

『タツヤ、アヤカ。キミ達の使命は地球を破壊から遠ざける事だ。ショップ店員ではないよ?』

「ふふ。冗談よ、ブルー」

 クスクスと笑う彩歌。
 まあ僕たちの人生、超長いし、暇つぶしにそういうのもアリなんじゃないか?

「……ん? 達也さん。今日、声がおかしくない? なんだか喋り辛そう……」

「いや、ちょっと練習をね……ふーっ! なかなか難しいな」

「……? 何の練習?」

 首を傾げる彩歌。いや、実はね……

「……ええっ! そんな事が出来るの?!」

「はは。練習すれば意外と出来るんだよ、これが」

「でも達也さん、なんでそんな練習を?」

「いや、実はね、昨日の……」

 と言いかけた所で、書類の束を持った、ローブ姿のお姉さんに声を掛けられた。

「キミ達、探検に行くの? お父さんかお母さんは……」

 と言い掛けた所で、彩歌の顔を見てビクッとなるお姉さん。

「た、大変失礼致しましたっ! 探検申請書と、身分証をお預かり致します!」

 彩歌の知名度には本当に驚かされるな。
 僕と彩歌は〝探検申請書〟と、それにくっついていた〝遺書〟、そして自分の〝身分証〟をお姉さんに渡し、かわりに、銀色の金属で出来た、身分証の半分ぐらいのサイズの〝探検者票〟を受け取った。長めの鎖が付いている。

「達也さん、それに名前を書いて、首に掛けて」

「ああ。昨日の講習で言ってたヤツか。確か帰ってきた時、身分証と引き換えって」

 探検者票を首に掛けるのは、死体を見て名前が分かるようにするため。
 兵士がつける〝ドッグ・タグ〟みたいなものだ。
 身分証を預けるのは、悪魔や野盗に奪われるのを防ぐためだそうだ。

「身分証を欲しがる人や悪魔は、いっぱい居るわ。持っていると狙われやすくなるのよ」

「人間は分かるけど、悪魔が身分証を欲しがるの?」

「あいつら、どこから入ってくるのか、たまに城塞都市内に現れるわ。魔法で姿を変えている事もあるから……」

 魔法で姿を変えて、堂々と城塞都市を闊歩する悪魔。
 そいつらがもし身分証を持っていたら……確かにゾッとしないな。

「名前を書くんだな?」

 僕はバックパックから、大ちゃんが入れてくれたであろう〝サインペン〟を取り出した。
 ……いっしょに〝サイン色紙〟が入っているのは、魔王のサインでも貰って来いって事かな?
 探検者票に名前を書いて、首に下げる。
 まあ僕の場合〝死体から名前を知るため〟という本来の使い方は、絶対にしないんだけどね。死なないから。

「それにね? 死体が無事な場合なんてほとんど無いから、飾りみたいな物なのよ」

 やはり、城塞都市の外は〝魔界〟が存分に味わえる仕様のようだな。ドキドキしてきた。

「彩歌さんも、これ使う?」

 サインペンを差し出すと、彩歌がクスクスと笑う。

「達也さん、そんなので書いちゃったの? ごめんなさい、説明が遅れて。手に魔力を込めて……こうすれば書けるのよ」

 彩歌が小指で探検者票の表面をなぞると、その通りに文字が浮かび上がる。

「ええ? 参ったなあ。もう書いちゃったよ……」

「大丈夫よ。本当にそれ、飾りみたいなものだから」

 笑いながら自分の首にも探検者票を掛ける彩歌。
 周囲は随分明るくなり、少し離れた人の顔も、判別出来る位になってきた。知った顔がチラホラ。
 ……いや、バカップルはいいんだ。近づかないでおこう。
 それより、あのビキニアーマーは……

「エーコ! あなたも外に?」

 やっぱりね。そうじゃないかなと思っていたんだ。

「アヤ! 達也くん! そうか、もう出発するのか。忙しいな、あんた等は!」

 魔法剣士のエーコさんだ。町の外に何の用だろう。

「とりあえず、試し斬りだよ。グアレティンも暴れたいみたいだし、半周コースだ」

「そっか! 私たちはね、〝落日らくじつ轟雷ごうらいの塔〟まで行くのよ」

砦超とりでごえか! ……おっと、声がデカかったな。まあ、あんた等にしてみれば、お散歩みたいな物だろう。手続きのほうが面倒だったんじゃないか?」

 本当にその通り。遺書なんか書けって言われても、全くイメージわかなかったし。一応書いたけどさ。

「ふふ。初心者講習なんて、久し振りに受けたわ」

「うわあ、懐かしいな! 達也くん、アヤはね、講習の時に寝入っちまって、講師に怒られたんだぞ?」

「ちょ、ちょっとやめてよエーコ! もー!」

 ニシシと笑うエーコ。彩歌の昔話を、いずれゆっくり聞きたいものだ。

「おっと、今日は護衛のアルバイトも兼ねてるんだ。依頼主がどこかに居ると思うから探して来る。2人とも、実りある探検と命ある帰還を!」

「エーコも頑張ってね。実りある探検と命ある帰還を」

 探検前の挨拶かな? 初心者講習では教えてくれなかったな。

「気をつけて、エーコさん! ……あ、そうだ、これ」

 僕はバックパックから、催眠カプセルをひとつ取り出した。

「〝アガルタ〟の科学が生んだアイテムだよ。投げつければ煙が出て、10分間、相手を眠らせることが出来る。お守りに持って行って」

「おお! それは凄いな! 有り難く貰っていくよ」

 エーコは、手を振りながら去っていった。
 さて、と。バカップルに見つからないようにちょっと離れておこうかな。
 彩歌も同じ事を考えていたらしい。ブルーを介して話せばいいのに、2人ともアイ・コンタクトで、その場を離れようとした……

「ああ! お早うございます! 昨日はどうも!!」

 聞いたことのある、元気な体育会系の挨拶。
 ……織田おだ啓太郎けいたろうさんがこちらを見てニコニコしている。
 やっぱこの人、絶対初心者じゃないな。
 〝これから探検に出掛けるぞ〟っていう、熟練の雰囲気がそこはかとなく漂っている。

「織田さん、おはようございます」

「いやあ、初めて外に出るとなると、ドキドキしますね! なかなか寝付けませんでしたよ! ハハハ!」

 彩歌の挨拶に、爽やかな白い歯を見せて笑う織田さん。僕だって、一睡もしてないぞ?

『達也氏は、それがデフォルトじゃないか!』

 ルナの声だ。昨日は随分と静かだったな、お前。

『だって、彩歌のお父さんとお母さんは、僕を見つけて彩歌の中に隠した人達だよ? 万が一、気付かれたら、また何かされちゃうかもしれないからね!』

 いやいや。それは無いと思うけど。お前ってもう、彩歌の力の一部になったんだろ?
 ……って、あれ? 織田さん、なんかキョロキョロしてるな。あ、まさか?!

「……お! 居た居た! お2人とも!」

 ちょいちょいちょい! やめてくれ! 気付かれずに済むように避けてたのに!

「あ、織田っちじゃーん!」

 だから織田っち言うなって! マブダチかって!

「おーおー! ガキンチョ達も一緒か! 待ってたぞ?」

 待っててとか全然言ってないし!

「達也さん。やっぱり彼らも、一緒に行く運命みたいね?」

 ちょっと苦笑いの彩歌。
 どうやらしばらくは、遠藤翔えんどうかける辻村富美つじむらふみのペアも、同行することになりそうだ。

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...