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5年生 3学期 3月
快癒
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いま、5人のオトナが、地下の練習場にいる。普通なら考えられない事だよね。
だって、ここに入って来れるのは〝ブルーさんが見える〟人だけなんだから。
「本当に、なんとお礼を申し上げたら良いか……」
立派なヒゲの男の人が、僕と大ちゃんとユーリちゃんに、頭を下げている。
お名前は、手越さん。たぶん、一番偉い人だと思うんだ。
「あの姿にされた後も、我々には意識も、不思議な事に視覚までも残っておりました。あなた方が私を助けて下さった経緯は、ほぼ全て知っております」
〝マサライの箱〟っていう爆弾にされていた、魔界の人たちだよ。
大ちゃんが人間の姿に〝直し〟て、僕が魂を体に戻したんだけど、それからまるまる2日間、5人は目を覚まさなかった。
「私、本当に怖かった……! ありがとう! ありがとう!」
彼女は、最年少の岩木さん。
涙を流しながら、ユーリちゃんの手を握っている。
「助けて下さってありがとう! それにしても、あなた方は一体……?」
この人は、小桧葉さん。さわやかな笑顔のお兄さんだよ。
あ、そうだよね。自己紹介が遅れてごめんなさい。
「僕は栗栖和也だよ」
「俺は九条大作。大ちゃんって呼んでくれよなー!」
「やー! ユーリちゃんだよ。無事で良かったー! どこも痛くない?」
「うん。ちょっとまだ、体に力が入らないしフラつくけど、もう大丈夫よ」
心配そうなユーリちゃんに、優しく微笑み返すこのお姉さんは、前野さん。
「ごめんなさい、少し待ってね?」
僕と大ちゃんは、頷き合うと、テーブルの上に置かれた大ちゃんのベルトに向けて話しかけた。
『たっちゃん、ブルー、ちょっと良いかなー?』
『えへへ。ちょっと聞いて欲しいんだけど、いま大丈夫?』
『ダイサク、呼んだかな?』
『栗っち? 何かあった?』
良かった! 大丈夫みたい。
たっちゃんもブルーさんも、寝る事がないから、よっぽどの事がなければ、お返事してくれるんだけど、その〝よっぽどの事〟がちょくちょく起こってるんだもん。大変だよね。
『ごめん、栗っち、大ちゃん、いまちょっと大変なんだ。悪いけど手短に頼む!』
あわわ! 〝よっぽどの事〟起こってたみたい!
『あー! 了解! いま、城塞都市の魔道士を保護している。ある程度の情報を開示しても良いかどうか、確認しようと思ったんだぜー』
『えっと、どうだ、ブルー? ……あ、こら、待て! ……えっと、僕は良いと思うよ!』
『ダイサク、キミが必要で且つ、安全だと判断したなら問題ない』
うん。大ちゃんの頭脳がそう判断したなら、問題ないよね。
『おー! ありがとうな、たっちゃん、ブルー!』
『いやいや、また後で連絡するよ! ……ああ、もう! これじゃキリがないな! ……じゃあね!』
通信が切れた……たっちゃんは何をしていたんだろうね?
すごく大変そうだったけど。
「あー、待たせてゴメンなー! 俺たちの事は、絶対に誰にも話さないと約束して欲しいんだけど、いいかな? これが守れないなら、悪いけど何も話せない」
「分かりました。あなたたちは命の恩人です。絶対に秘密を守ると誓いましょう。いいな、みんな」
残り4人の魔道士達が一斉に頷く。
僕の〝精神感応〟で、本心だとわかったから、僕は大ちゃんに、OKの意味の目配せをした。
「では、説明を始める前に……。おーい! もう入って来ていいぜー!」
大ちゃんの合図で、練習場の重い扉が開く。
「ふ、藤島隊員?!」
「先輩! なんで先輩が!」
「え? どういうこと?!」
入ってきたのは彩歌さんの分身。5人が一斉に驚きの声を上げる。
「みんな、無事で良かった。先に言っておきますが、私は分身体です。本体は訳あって、魔界にいるわ。アガルタの少年と共に」
今度は一斉にざわつく5人。そして手越さんが口を開く。
「藤島隊員。ああ、分身体だったな……キミは自分が何を言ったか分かっているのか? 魔界にこちらの人間を連れて行くとは……明らかに規則違反だぞ?」
少し困った口調だよ。でもね、そう言った手越さん本人も他の4人も、なんとなく分かっているみたい。
「はい。ですがアガルタは……いえ、同時に魔界も〝規則〟などと言ってはいられないほど、大変な事態に直面しています」
やっぱり、といった風に顔をしかめる5人。ボソボソと、何かを話している。
「……詳しく、話してくれないか」
「じゃあ、順番に説明するぜー? ちょっと長くなるから、そっちの椅子に座ってくれ。ちなみに俺たちは、嘘は言わない。信じられなくても仕方ないけど最後まで聞いてくれよなー」
大ちゃんは、練習場中央のテーブルを指差した。5人は椅子に座り、僕たちの話に、ただ耳を傾けていたよ。
>>>
「……という事で、私の本体は、時間停止を克服する手段を探すために、魔界を探検しているの」
5人とも、驚きを隠しきれないといった感じだよ。
でも、先日のダムでの戦いを、爆弾にされたままでも、ちゃんと見ていたみたいだから、僕たちが嘘をついていない事は分かってくれているよ。
「にゃー! 何か質問はある? にゃーんてね。先生みたいにゃ。一度言ってみたかったんにゃ!」
ユーリちゃんは、説明の途中の、ウォルナミスのくだりで、猫耳姿を見せてから、そのまんまだよ。猫耳ってかわいいよね!
「あの、それでは一つ質問を……」
岩木さんが手をあげた。
「はい! そこのねーちゃん!」
ビシッと指を差して、ドヤ顔のユーリちゃん。
「おいおい、ねーちゃんって! 雑だなー。それじゃ、先生なのかオッサンなのか分かんないぞ?」
「にゃー。やだなあ大ちゃん! オッサンに決まってるにゃ?」
「そっちを目指すのかよ! いや、それより、岩木さんの質問だろー?」
危うく、ユーリちゃんのペースにハマっちゃう所を、大ちゃんがフォローする。さすがだよね!
「えっと、私たちを、あのおぞましい箱に変えた悪魔は、どうなったのですか?」
「良い質問にゃ! 一匹は、魔界のゲートのすぐ近くで倒したにゃー! 私は食べてみたかったんだけど、大ちゃんがどうしても食べちゃダメって言うから諦めたんにゃ。ああ見えて意外とイケルと思ったのに、大ちゃんは本当に融通が効かにゃいんだから……」
そうそう。ユーリちゃん、あの悪魔を本気で食べようとしてたよね。せめて一口とか言って。
「おいおい、話が逸れて行ってるぞー? お前のグルメトークを聞かせてどうするんだよ?」
「にゃー! まだ食べてないにゃ! 一口食べないとグルメトークは出来ないにゃあ! あっちにいる2匹でいいから、ちょっとカジッてみるにゃ!」
と、ユーリちゃんが言った途端、5人の魔界人全員が勢い良く立ち上がり、周囲を警戒する。
同時に、練習場の隅の方にある、布を被せた四角い箱が、ガタガタと揺れはじめた。
「さすがだぜ。普段から〝命のやり取り〟をしているだけあって、研ぎ澄まされてるなー!」
すごい反応だよ! ちょっとカッコイイ!
「あの悪魔どもを、まだ生かしているのですか!」
「危険だ! 早く始末せねば!」
「アガルタには教会も〝刺抜地蔵〟もない! 解呪の魔法、持ってるやつ居るか?」
「駄目だ、寄りによって、誰も持ってないぞ! 藤島隊員も、分身体では魔法が使えない!」
「大丈夫だ。私が殺そう。城塞都市に帰り着くまでに私が呪いで死んだら、せめて死体だけは連れて帰ってくれよ!」
そう言って、手越さんは呪文を唱え始めた。
「HuLex UmThel NedlE iL」
手越さんの頭上に、いくつかの大きな銀色の氷柱が現れて……そのまま悪魔のケージに向けて発射された!
ドドドドン! という大きな音。でもね、鉄の氷柱は、ケージまでは届かなかったんだ。
「にゃー。冗談なのに、なんですぐ料理しようとするかにゃー?」
「色々と間違っているぞ、イエロー。あとでじっくりとお説教だ」
「フフ。レッドもイエローも、あまり魔界の方々と悪魔を脅かさないであげて下さいね?」
えへへ。赤・緑・黄色のヒーローが立ちはだかって、氷柱を全て弾き飛ばしたんだよ。
だって、ここに入って来れるのは〝ブルーさんが見える〟人だけなんだから。
「本当に、なんとお礼を申し上げたら良いか……」
立派なヒゲの男の人が、僕と大ちゃんとユーリちゃんに、頭を下げている。
お名前は、手越さん。たぶん、一番偉い人だと思うんだ。
「あの姿にされた後も、我々には意識も、不思議な事に視覚までも残っておりました。あなた方が私を助けて下さった経緯は、ほぼ全て知っております」
〝マサライの箱〟っていう爆弾にされていた、魔界の人たちだよ。
大ちゃんが人間の姿に〝直し〟て、僕が魂を体に戻したんだけど、それからまるまる2日間、5人は目を覚まさなかった。
「私、本当に怖かった……! ありがとう! ありがとう!」
彼女は、最年少の岩木さん。
涙を流しながら、ユーリちゃんの手を握っている。
「助けて下さってありがとう! それにしても、あなた方は一体……?」
この人は、小桧葉さん。さわやかな笑顔のお兄さんだよ。
あ、そうだよね。自己紹介が遅れてごめんなさい。
「僕は栗栖和也だよ」
「俺は九条大作。大ちゃんって呼んでくれよなー!」
「やー! ユーリちゃんだよ。無事で良かったー! どこも痛くない?」
「うん。ちょっとまだ、体に力が入らないしフラつくけど、もう大丈夫よ」
心配そうなユーリちゃんに、優しく微笑み返すこのお姉さんは、前野さん。
「ごめんなさい、少し待ってね?」
僕と大ちゃんは、頷き合うと、テーブルの上に置かれた大ちゃんのベルトに向けて話しかけた。
『たっちゃん、ブルー、ちょっと良いかなー?』
『えへへ。ちょっと聞いて欲しいんだけど、いま大丈夫?』
『ダイサク、呼んだかな?』
『栗っち? 何かあった?』
良かった! 大丈夫みたい。
たっちゃんもブルーさんも、寝る事がないから、よっぽどの事がなければ、お返事してくれるんだけど、その〝よっぽどの事〟がちょくちょく起こってるんだもん。大変だよね。
『ごめん、栗っち、大ちゃん、いまちょっと大変なんだ。悪いけど手短に頼む!』
あわわ! 〝よっぽどの事〟起こってたみたい!
『あー! 了解! いま、城塞都市の魔道士を保護している。ある程度の情報を開示しても良いかどうか、確認しようと思ったんだぜー』
『えっと、どうだ、ブルー? ……あ、こら、待て! ……えっと、僕は良いと思うよ!』
『ダイサク、キミが必要で且つ、安全だと判断したなら問題ない』
うん。大ちゃんの頭脳がそう判断したなら、問題ないよね。
『おー! ありがとうな、たっちゃん、ブルー!』
『いやいや、また後で連絡するよ! ……ああ、もう! これじゃキリがないな! ……じゃあね!』
通信が切れた……たっちゃんは何をしていたんだろうね?
すごく大変そうだったけど。
「あー、待たせてゴメンなー! 俺たちの事は、絶対に誰にも話さないと約束して欲しいんだけど、いいかな? これが守れないなら、悪いけど何も話せない」
「分かりました。あなたたちは命の恩人です。絶対に秘密を守ると誓いましょう。いいな、みんな」
残り4人の魔道士達が一斉に頷く。
僕の〝精神感応〟で、本心だとわかったから、僕は大ちゃんに、OKの意味の目配せをした。
「では、説明を始める前に……。おーい! もう入って来ていいぜー!」
大ちゃんの合図で、練習場の重い扉が開く。
「ふ、藤島隊員?!」
「先輩! なんで先輩が!」
「え? どういうこと?!」
入ってきたのは彩歌さんの分身。5人が一斉に驚きの声を上げる。
「みんな、無事で良かった。先に言っておきますが、私は分身体です。本体は訳あって、魔界にいるわ。アガルタの少年と共に」
今度は一斉にざわつく5人。そして手越さんが口を開く。
「藤島隊員。ああ、分身体だったな……キミは自分が何を言ったか分かっているのか? 魔界にこちらの人間を連れて行くとは……明らかに規則違反だぞ?」
少し困った口調だよ。でもね、そう言った手越さん本人も他の4人も、なんとなく分かっているみたい。
「はい。ですがアガルタは……いえ、同時に魔界も〝規則〟などと言ってはいられないほど、大変な事態に直面しています」
やっぱり、といった風に顔をしかめる5人。ボソボソと、何かを話している。
「……詳しく、話してくれないか」
「じゃあ、順番に説明するぜー? ちょっと長くなるから、そっちの椅子に座ってくれ。ちなみに俺たちは、嘘は言わない。信じられなくても仕方ないけど最後まで聞いてくれよなー」
大ちゃんは、練習場中央のテーブルを指差した。5人は椅子に座り、僕たちの話に、ただ耳を傾けていたよ。
>>>
「……という事で、私の本体は、時間停止を克服する手段を探すために、魔界を探検しているの」
5人とも、驚きを隠しきれないといった感じだよ。
でも、先日のダムでの戦いを、爆弾にされたままでも、ちゃんと見ていたみたいだから、僕たちが嘘をついていない事は分かってくれているよ。
「にゃー! 何か質問はある? にゃーんてね。先生みたいにゃ。一度言ってみたかったんにゃ!」
ユーリちゃんは、説明の途中の、ウォルナミスのくだりで、猫耳姿を見せてから、そのまんまだよ。猫耳ってかわいいよね!
「あの、それでは一つ質問を……」
岩木さんが手をあげた。
「はい! そこのねーちゃん!」
ビシッと指を差して、ドヤ顔のユーリちゃん。
「おいおい、ねーちゃんって! 雑だなー。それじゃ、先生なのかオッサンなのか分かんないぞ?」
「にゃー。やだなあ大ちゃん! オッサンに決まってるにゃ?」
「そっちを目指すのかよ! いや、それより、岩木さんの質問だろー?」
危うく、ユーリちゃんのペースにハマっちゃう所を、大ちゃんがフォローする。さすがだよね!
「えっと、私たちを、あのおぞましい箱に変えた悪魔は、どうなったのですか?」
「良い質問にゃ! 一匹は、魔界のゲートのすぐ近くで倒したにゃー! 私は食べてみたかったんだけど、大ちゃんがどうしても食べちゃダメって言うから諦めたんにゃ。ああ見えて意外とイケルと思ったのに、大ちゃんは本当に融通が効かにゃいんだから……」
そうそう。ユーリちゃん、あの悪魔を本気で食べようとしてたよね。せめて一口とか言って。
「おいおい、話が逸れて行ってるぞー? お前のグルメトークを聞かせてどうするんだよ?」
「にゃー! まだ食べてないにゃ! 一口食べないとグルメトークは出来ないにゃあ! あっちにいる2匹でいいから、ちょっとカジッてみるにゃ!」
と、ユーリちゃんが言った途端、5人の魔界人全員が勢い良く立ち上がり、周囲を警戒する。
同時に、練習場の隅の方にある、布を被せた四角い箱が、ガタガタと揺れはじめた。
「さすがだぜ。普段から〝命のやり取り〟をしているだけあって、研ぎ澄まされてるなー!」
すごい反応だよ! ちょっとカッコイイ!
「あの悪魔どもを、まだ生かしているのですか!」
「危険だ! 早く始末せねば!」
「アガルタには教会も〝刺抜地蔵〟もない! 解呪の魔法、持ってるやつ居るか?」
「駄目だ、寄りによって、誰も持ってないぞ! 藤島隊員も、分身体では魔法が使えない!」
「大丈夫だ。私が殺そう。城塞都市に帰り着くまでに私が呪いで死んだら、せめて死体だけは連れて帰ってくれよ!」
そう言って、手越さんは呪文を唱え始めた。
「HuLex UmThel NedlE iL」
手越さんの頭上に、いくつかの大きな銀色の氷柱が現れて……そのまま悪魔のケージに向けて発射された!
ドドドドン! という大きな音。でもね、鉄の氷柱は、ケージまでは届かなかったんだ。
「にゃー。冗談なのに、なんですぐ料理しようとするかにゃー?」
「色々と間違っているぞ、イエロー。あとでじっくりとお説教だ」
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