プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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5年生 3学期 3月

退魔師の憂鬱

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 また悪魔だ。今度は1、2、3……7匹か。

「オイ! オマエラ! マレ!」

 一匹の悪魔が、甲高い声で警告を発した。

「イヤだね。死にたくない奴は、両手を上げてジッとしてろ」

 僕がそう告げた途端、怒り狂って、または奇妙な笑いを浮かべて、悪魔どもは襲い掛かってきた。

『タツヤ。やはり、最初に少し脅さなければ、降参はしないんじゃないか?』

『そうか。生意気な子どもにしか見えないだろうな』

 〝使役:土〟で地面から生やした鋭いトゲが、7匹を同時に串刺しにする。

『いや。一応、ああやって警告しておけば、自分の中で正当化しやすいってだけなんだよ、ブルー』

 有無を言わさず襲って来る敵。
 その上、こいつらは今までも、大勢の人を殺した。許さなくていいだろ。

『もちろん、キミの好きにして構わない。結局この世は弱肉強食なんだから』

 南ブロックを出発して、北へと進む。
 どうやら中央ブロックは敵の巣になっているようだ。近づけば近づくほど、悪魔に出くわす。
 で、いま倒したのが、記念すべき100匹目だ。

「いや、101だっけか?」

 ……さすがに気が滅入めいるな。
 別に僕だって、殺したくて殺しまくっている訳じゃないんだぞ。

「ボウズ、大丈夫か?」

 遠藤翔えんどうかけるが、心配そうに言う。

「疲れたなら休もうよ! 無理したらあぶねぇし!」

 と、辻村富美つじむらふみも僕のローブの裾を引っ張る。

「ありがとう。でも、全然平気だよ?」

 身体的には……ね。
 さっき栗っち、大ちゃん、ユーリから連絡が入るまでは、あまり気にして無かったんだ。
 どうやら、あの3人は悪魔を〝生け捕り〟にしたらしい。
 それは良いんだけど、問題は……

『彩歌さん、どう思う? ……悪魔が改心したのかな?』

『ちょっと信じられないわ。悪魔が大人しくしているなんて』

 なんと、捕らえた悪魔は暴れることもなく、とても穏やかに過ごしているらしい。
 しかも、檻に閉じ込める事なく。

『タツヤ。悪魔を殺さなくても良いかもしれないと思っているなら、望みは薄い。カズヤも言っていただろう?』

 栗っちの話では、捕らえた悪魔自ら〝自分達は極めてまれなケースだ〟と言っているそうだ。
 話し合いとか和平とか、そういう概念は、悪魔には無いという。

『……達也さん。今は鈴木さんのお父さんを救出する事だけ考えましょう』

 彩歌の言う通りだ。色々と余計な事に気を取られていたら、救える人まで死なせてしまいかねない。

『タツヤ、左右から3体ずつだ。あと、少し先に、さらに5体いるね』

 またかよ! すごいエンカウント率だな。

「みんな、気をつけて! 左右から来るぞ!」

「達也くん。そいつらを倒したら、一度呪いを解いたほうがいい。妙な効果が発動すると面倒だからな」

 おっと。エーコの言う通りだ……忘れがちだな。気をつけなくては。

「あと、私にも獲物を残しておいてくれよ? キミがその調子では〝試し斬り〟にならないからな!」

 ニッと笑うエーコ。
 そうだな。僕一人で背負い込む必要なんて無いんだ。もう少し気楽に行こう。





 >>>





 ……あの建物が中央本部か?

「うん、達也さん。さっき見せてもらった地図通りなら、ここがそうよ」

 建物の入口には、悪魔が数匹立っている。歩哨ほしょうなのかもしれない。

『タツヤ、内部には、結構な数の悪魔が居るぞ?』

 よし、間違いないな。

「あの中、悪魔だらけのようです。僕が注意を引くので、援護を頼みます」

 出来れば攻撃は僕に集中させたい。
 本気を出せば1人で飛び込んでも大丈夫だろうけど……

「ふふ。達也さん、本気はダメよ。あの建物だけじゃなく、地下ブロックまで壊してしまうでしょ?」

 地下に生存者がいれば……
 ……いや、きっと地下には生存者がいる。鈴木さんのお父さんも。
 僕の力を、あんな狭い建物内で使いまくれば、あっという間に、生き埋めにしてしまうだろう。
 石コロ飛ばしただけで、クレーターとか出来ちゃうんだもん。

「内海さん。気をつけて下さい」

「はい、織田さん。風魔法、期待してますよ」

 僕は杖を構え、建物の前に静かに歩み出た。
 ……あ、そうだ。一応、言っとくかな。

「悪魔ども! 死にたくなかったら、両手を上げて、何もしゃべるな。命が要らないやつだけ、掛かって来い!」





 >>>





 建物に入り、出会う悪魔を倒しつつ、地下ブロックへの入り口を探す。
 ……ちなみに、両手を上げて無言の悪魔は、今のところ居ない。
 南ブロックの隊長さんは、西の奥だと言っていたけど、意外と広い上に、迷路のように入り組んでいて厄介だなあ。

「じゃあ悪魔は〝いやがらせ〟が目的で人間を襲うのか?」

「何、その理由! マジやめろし!」 

 栗っちと大ちゃんいわく、悪魔は〝負の感情〟が目的で人間に危害を加えるらしい。
 怒り、悲しみ、怯え、絶望すれば、悪魔は生まれ、増え、力の源となる。
 そして驚いた事にターゲットは、魔界の人間だけでなく〝アガルタ〟の人間も含まれるのだ。

「その部屋が最後だ。開けるぞ!」

 中には悪魔の姿はない。
 雑然とした倉庫のように見えるが、床には、かつての惨劇を思わせる、黒い血の跡がべっとり残されていた。

「見つけたぞ! 地下への階段だ」

 薄暗い部屋に、人が一人通れるぐらいの穴が空いており、生暖かい風が拭き上げてくる。
 真っ暗で、数段先が見えない。

「グアレティン、明かりをともせ」

 エーコが剣を抜くと、刀身が光って辺りを照らした。

「お父さん……無事で居て……!」

 僕を先頭に、エーコ、鈴木さん、織田さん、遠藤、辻村。
 背後からの襲撃に備えて、最後尾には彩歌が居る。

「深いな! 地獄の底まで続いてるようだぜ」

「遠藤さん、罠が仕掛けられているかもしれません。気をつけて!」

 階段は右に折れて、更に下へ続いている。散々降りて行き着いた先には……

「扉だ」

 ノブがあったであろう部分に、穴が空いている。
 無理やり開けて中に入ったんだな。

『ブルー、どうだ?』

『悪魔らしき反応と……これは……』

 何かに驚いたようなブルー。

『どうした?』

『27体の悪魔に紛れて、人間がいる』

 人間?! どういう事だ?

「入っておいで。そこに居るのは分かってるんだ」

 不意に、扉の向こうから声が聞こえた。
 ……その〝人間〟の声なのか? 気付かれていた?!
 そっと押すと、扉はギィという音を立てて開いた。

「ようこそ、地下ブロックへ」

 そこには、白いローブを着た長身の男性が立っていた。

「お……お父さん?!」

 鈴木さんが叫ぶ。この人がお父さん?!
 ……なんか嫌な予感がするぞ。

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