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5年生 3学期 3月
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やっと、塔の外に出ることが出来た。
……と、ここだけ聞くと、塔から降りてきたのかと思われるかもしれないが、1ミリも登ってはいない。
ここ数日間、地下を這いずり回っただけだ。塔なのに。
『タツヤ……ナントカと煙は高い所に登ると言うね』
『いやいやいや、失礼だなブルー! 別に僕は、どうしても登りたいってわけじゃないぞ』
例えば、ゲームで〝塔〟の表示なのに、下へ下へと階段があったら、どう考えてもバグだと思うだろ。
「内海さん、どうしました?」
「あ、織田さん。いえ、塔なのに登らなかったなって……」
「はは、そうですね。まあ、私も塔の部分に関しては詳しくないですが、今回は内海さんも私も、地下に用があったのですから良いじゃないですか」
まあ、そう言われてみればそうだな。
……塔の部分は詳しくない、か。
「さて、地上に出るのにも2日掛かった。ここから大砦まで約1日……」
「モース・ギョネの死体、無事だと良いんだけど」
彩歌が言った。
……うっかりにも程がある。
大ちゃんの言う通り、モース・ギョネは、時間を操作する能力を持った、とても貴重な存在だった。何としてもサンプルを持ち帰りたいところだ。
そしてもう一つ、とても気掛かりな事がある。
「このままだと、卒業式に間に合わない……!」
広すぎだぞ魔界! あと、深すぎだダンジョン!
「達也さん、大丈夫?」
よっぽど神妙な顔つきだったんだろう。彩歌が心配そうに僕の顔を覗き込む。
「いやいや。全然大丈夫だよ。それより、あっちは大丈夫かな?」
遠藤と辻村に視線を移すが、フッとそっぽを向かれた。地上に戻って来るまでの間も妙によそよそしかったし……
「どうしたんですかね、お二人とも」
織田さんが苦笑いで言う。
たぶん、僕の〝使役:土〟の威力を見たせいだ。
……やっぱある程度、説明するべきか?
『ブルー、このまま旅を続けるのは気まずいし、織田さんの正体もなんとなく分かってきたし、そろそろ良いんじゃないか?』
『そうだねタツヤ。ここまで見られてしまっては、説明しない方が逆に問題があるかもしれない』
やっぱそうだよな。
それじゃ、いま目の前に突然現れた、魔物の一団を片付けてから説明しよう。
>>>
……やっぱ説明しなきゃ良かった。
「マジで〝アガルタ〟ってあるんスか! え? じゃ何? 達也さんは〝アガルタ〟そのものって事?! パネぇ! もっと早く言ってくれれば良いじゃないスか! 水臭いっスよ!」
なんで急に舎弟みたいになってるんだよ、遠藤。
「世界を守るってカッケー! 本当は26歳って! マジおとなじゃん! 達也パイセンって呼んでいい?」
やめてくれ辻村。周りから変に思われるだろう。
「……想像以上でした。私はてっきり、魔王と何か関わりがあるのかと思っていましたが。内海さんの強さの理由が分かりましたよ」
ごめんよ織田さん。魔王とはガッツリと関わってるんだよね、僕。
でもパズズの件は、念のため伏せておいた。なるべくなら、僕がパズズを従えている事は言わないほうが良いだろう。魔界人が魔王の存在を極端に恐れるというのも理由のひとつだけど、それより織田さんは……
「達也パイセン! 魔物だし!」
だからパイセンって呼ぶなし!
……えっと、あの大きいカニみたいな魔物は、何て名前?
>>>
〝味噌〟の大群を倒した後、僕たちは大砦を目指して進む。
「時間があれば、あの魔物は美味しく料理できたんですが」
と、残念そうな織田さん。
やっぱりそうか。ここが一番うまいんだぜっていう部分が呼び名になっちゃってるパターンだ。という事は、相当美味しいんだろうな。
「すみません織田さん……なるべく早く、西の大砦に行かなければならないんです」
「いえいえ、急ぎなのは私も同じですので」
にっこり微笑む織田さん。
「暗くなってからも、少し歩くかもしれませんが、よろしくお願いします」
とは言っても、秘密をほぼ全部バラしちゃったんだった。全力を出せるなら危険は無いな。
「達也さん、大丈夫っス! 一生ついていくっス!」
「パイセン強ぇし! マジカッケーし!」
……お前ら、そのスタンスは絶対変えないつもりなのか?
「遠藤さん、辻村さん。さっきも言いましたけど〝アガルタ〟の事は絶対に誰にも言っちゃダメですからね?」
「地下牢行きになるわよ?」
ウソじゃない。魔界の一般人には〝アガルタ〟の存在は秘密なのだ。知っているのは、城塞都市の運営関係者と守備隊員のみ。
「分かってますよ、姐さん!」
「言わねぇし! パイセンと姐さんには迷惑かけられねーし!」
〝アガルタ〟の存在は誰にも喋ってはならない……たとえ家族であっても。つまり、遠藤と辻村が〝秘密〟を知ったと分かれば、真っ先に疑われ、投獄されるのは彩歌だ。
……っていうか、姐さんって何だよ?
「まあ〝アガルタ〟は本当にあるぞ、なんて誰かに言っても、バカにされるだけよね」
「ははは! そうですね。内海さんと藤島さんの、桁外れの強さを見ていなければ、私も疑っていた所ですよ」
なるほど。確かに地球で、死後の世界を見た! とか、極楽浄土から来た! とか言われても、誰も信じないな。
『タツヤ、生命反応だ。前方に12、左に6、右に2』
また出たか。
「織田さん、彩歌さん、左方向から6体来ます。遠藤さん、辻村さん、右から来た2体お願いします」
「了解しました!」
「任せて下さいッス! ちょろいッス!」
「翔! ちょっと待つし! 強化魔法かけるし!」
「達也さん、前方に本気で攻撃すると、大砦まで壊しちゃうわ」
「あ、そっか。ありがとう彩歌さん」
危ない危ない。気をつけないと。
>>>
ひと晩歩き続けて明け方、西の大砦の西門前に到着。ここは出発専用の門なので、通常なら砦内に入るにはぐるっと半周して、東門まで行かなくてはならない。
「達也さん、もう無理ッス。疲れて声も出ねぇッス」
うん。出てるね。
「……パイセ……ン」
あ、こっちは本当に出ないアレだ。
「大丈夫。なんとかするから」
だいたい、半周しても、東門は僕の〝使役:土〟で、ガチガチに固められていて機能していない。
もちろん開けることは出来るけど、それならここを開けても同じ事だ。
「達也さん、どうするの?」
「今は、内門も外門も正常に機能していない。逆に言えば、安全さえ確認できれば、開門してもらえるかもしれない」
僕は、門の方を向いて叫んだ。
「すみませーん! 誰かいませんか?」
いるはずだ。ここに番兵を置かないなら、どこを守るんだって事になるからな。
「やや? あなた方は!」
はるか上の方の櫓から、声が聞こえた。よし、人が居たぞ!
「ここを開けて頂けませんか?」
「申し訳ございません、今現在、門は海神王様がお側に居られなければ、開けてはならない事になっておりまして……今はお休みになられておりますゆえ!」
爆睡中か。
「なんとか、起こしてきて貰えませんか?」
「あの方は寝起きが大変お悪く、無理に起きて頂いた場合、何が起きるか想像もつきません」
ああ、そうか。蛙をモース・ギョネだと勘違いするぐらいだったな。冗談抜きで、この砦ごと粉砕するかもしれない。
「あなた方の強さは存じ上げております。恐らく、門周辺には、多くの悪魔や魔物が潜んでおりますが、せめてそいつらが居なくなれば、私の一存で外門を開けさせて頂けるのですが……」
うーん。どうするかな……〝使役:土〟で一掃?
いや、そんな事したら、大きな音が出て余計に魔物が集まってきてしまう。
……あ、そうだ!
「彩歌さん、それ、貸して?」
「え? ああ、そっか!」
これと、僕の持ってるこれを使えば、なんとかなるんじゃないかな。
……と、ここだけ聞くと、塔から降りてきたのかと思われるかもしれないが、1ミリも登ってはいない。
ここ数日間、地下を這いずり回っただけだ。塔なのに。
『タツヤ……ナントカと煙は高い所に登ると言うね』
『いやいやいや、失礼だなブルー! 別に僕は、どうしても登りたいってわけじゃないぞ』
例えば、ゲームで〝塔〟の表示なのに、下へ下へと階段があったら、どう考えてもバグだと思うだろ。
「内海さん、どうしました?」
「あ、織田さん。いえ、塔なのに登らなかったなって……」
「はは、そうですね。まあ、私も塔の部分に関しては詳しくないですが、今回は内海さんも私も、地下に用があったのですから良いじゃないですか」
まあ、そう言われてみればそうだな。
……塔の部分は詳しくない、か。
「さて、地上に出るのにも2日掛かった。ここから大砦まで約1日……」
「モース・ギョネの死体、無事だと良いんだけど」
彩歌が言った。
……うっかりにも程がある。
大ちゃんの言う通り、モース・ギョネは、時間を操作する能力を持った、とても貴重な存在だった。何としてもサンプルを持ち帰りたいところだ。
そしてもう一つ、とても気掛かりな事がある。
「このままだと、卒業式に間に合わない……!」
広すぎだぞ魔界! あと、深すぎだダンジョン!
「達也さん、大丈夫?」
よっぽど神妙な顔つきだったんだろう。彩歌が心配そうに僕の顔を覗き込む。
「いやいや。全然大丈夫だよ。それより、あっちは大丈夫かな?」
遠藤と辻村に視線を移すが、フッとそっぽを向かれた。地上に戻って来るまでの間も妙によそよそしかったし……
「どうしたんですかね、お二人とも」
織田さんが苦笑いで言う。
たぶん、僕の〝使役:土〟の威力を見たせいだ。
……やっぱある程度、説明するべきか?
『ブルー、このまま旅を続けるのは気まずいし、織田さんの正体もなんとなく分かってきたし、そろそろ良いんじゃないか?』
『そうだねタツヤ。ここまで見られてしまっては、説明しない方が逆に問題があるかもしれない』
やっぱそうだよな。
それじゃ、いま目の前に突然現れた、魔物の一団を片付けてから説明しよう。
>>>
……やっぱ説明しなきゃ良かった。
「マジで〝アガルタ〟ってあるんスか! え? じゃ何? 達也さんは〝アガルタ〟そのものって事?! パネぇ! もっと早く言ってくれれば良いじゃないスか! 水臭いっスよ!」
なんで急に舎弟みたいになってるんだよ、遠藤。
「世界を守るってカッケー! 本当は26歳って! マジおとなじゃん! 達也パイセンって呼んでいい?」
やめてくれ辻村。周りから変に思われるだろう。
「……想像以上でした。私はてっきり、魔王と何か関わりがあるのかと思っていましたが。内海さんの強さの理由が分かりましたよ」
ごめんよ織田さん。魔王とはガッツリと関わってるんだよね、僕。
でもパズズの件は、念のため伏せておいた。なるべくなら、僕がパズズを従えている事は言わないほうが良いだろう。魔界人が魔王の存在を極端に恐れるというのも理由のひとつだけど、それより織田さんは……
「達也パイセン! 魔物だし!」
だからパイセンって呼ぶなし!
……えっと、あの大きいカニみたいな魔物は、何て名前?
>>>
〝味噌〟の大群を倒した後、僕たちは大砦を目指して進む。
「時間があれば、あの魔物は美味しく料理できたんですが」
と、残念そうな織田さん。
やっぱりそうか。ここが一番うまいんだぜっていう部分が呼び名になっちゃってるパターンだ。という事は、相当美味しいんだろうな。
「すみません織田さん……なるべく早く、西の大砦に行かなければならないんです」
「いえいえ、急ぎなのは私も同じですので」
にっこり微笑む織田さん。
「暗くなってからも、少し歩くかもしれませんが、よろしくお願いします」
とは言っても、秘密をほぼ全部バラしちゃったんだった。全力を出せるなら危険は無いな。
「達也さん、大丈夫っス! 一生ついていくっス!」
「パイセン強ぇし! マジカッケーし!」
……お前ら、そのスタンスは絶対変えないつもりなのか?
「遠藤さん、辻村さん。さっきも言いましたけど〝アガルタ〟の事は絶対に誰にも言っちゃダメですからね?」
「地下牢行きになるわよ?」
ウソじゃない。魔界の一般人には〝アガルタ〟の存在は秘密なのだ。知っているのは、城塞都市の運営関係者と守備隊員のみ。
「分かってますよ、姐さん!」
「言わねぇし! パイセンと姐さんには迷惑かけられねーし!」
〝アガルタ〟の存在は誰にも喋ってはならない……たとえ家族であっても。つまり、遠藤と辻村が〝秘密〟を知ったと分かれば、真っ先に疑われ、投獄されるのは彩歌だ。
……っていうか、姐さんって何だよ?
「まあ〝アガルタ〟は本当にあるぞ、なんて誰かに言っても、バカにされるだけよね」
「ははは! そうですね。内海さんと藤島さんの、桁外れの強さを見ていなければ、私も疑っていた所ですよ」
なるほど。確かに地球で、死後の世界を見た! とか、極楽浄土から来た! とか言われても、誰も信じないな。
『タツヤ、生命反応だ。前方に12、左に6、右に2』
また出たか。
「織田さん、彩歌さん、左方向から6体来ます。遠藤さん、辻村さん、右から来た2体お願いします」
「了解しました!」
「任せて下さいッス! ちょろいッス!」
「翔! ちょっと待つし! 強化魔法かけるし!」
「達也さん、前方に本気で攻撃すると、大砦まで壊しちゃうわ」
「あ、そっか。ありがとう彩歌さん」
危ない危ない。気をつけないと。
>>>
ひと晩歩き続けて明け方、西の大砦の西門前に到着。ここは出発専用の門なので、通常なら砦内に入るにはぐるっと半周して、東門まで行かなくてはならない。
「達也さん、もう無理ッス。疲れて声も出ねぇッス」
うん。出てるね。
「……パイセ……ン」
あ、こっちは本当に出ないアレだ。
「大丈夫。なんとかするから」
だいたい、半周しても、東門は僕の〝使役:土〟で、ガチガチに固められていて機能していない。
もちろん開けることは出来るけど、それならここを開けても同じ事だ。
「達也さん、どうするの?」
「今は、内門も外門も正常に機能していない。逆に言えば、安全さえ確認できれば、開門してもらえるかもしれない」
僕は、門の方を向いて叫んだ。
「すみませーん! 誰かいませんか?」
いるはずだ。ここに番兵を置かないなら、どこを守るんだって事になるからな。
「やや? あなた方は!」
はるか上の方の櫓から、声が聞こえた。よし、人が居たぞ!
「ここを開けて頂けませんか?」
「申し訳ございません、今現在、門は海神王様がお側に居られなければ、開けてはならない事になっておりまして……今はお休みになられておりますゆえ!」
爆睡中か。
「なんとか、起こしてきて貰えませんか?」
「あの方は寝起きが大変お悪く、無理に起きて頂いた場合、何が起きるか想像もつきません」
ああ、そうか。蛙をモース・ギョネだと勘違いするぐらいだったな。冗談抜きで、この砦ごと粉砕するかもしれない。
「あなた方の強さは存じ上げております。恐らく、門周辺には、多くの悪魔や魔物が潜んでおりますが、せめてそいつらが居なくなれば、私の一存で外門を開けさせて頂けるのですが……」
うーん。どうするかな……〝使役:土〟で一掃?
いや、そんな事したら、大きな音が出て余計に魔物が集まってきてしまう。
……あ、そうだ!
「彩歌さん、それ、貸して?」
「え? ああ、そっか!」
これと、僕の持ってるこれを使えば、なんとかなるんじゃないかな。
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