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5年生 3学期 3月
戦闘記録:南門
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城塞都市の南門が、閃光を伴う〝謎の攻撃〟により大破。
同時に魔物が大挙してなだれ込む。
「何だ? 何が起こった?!」
門前の〝結界〟も消えてしまったようだ。
魔導球からの魔力供給が切れたのか? だとしたら、明らかに何者かによる攻撃だ。
しかも……内部からの?
「隊長! 魔物が押し寄せてきます!」
「総員、迎撃を開始せよ! バリケードの薄い箇所には〝障壁魔法〟を展開! 櫓の魔道士にも、攻撃を続行するように伝えろ」
……保つわけがない。
倒せど倒せど、無尽蔵に侵入して来る魔物。
それでなくとも、ここは今朝の〝出発門〟だったのだ。
魔力が残り少ない櫓の魔道士と、新兵に等しい少数の増援。そして攻撃魔法の使える一般市民で、いったいどうしろと言うんだ?
「魔力の切れた者には、投石器と弓矢、ボウガンの配布を急がせるんだ」
これを好機と、悪魔までやって来るかもしれない。
更に……最悪のパターンも有り得る。
「大型の魔物や凶獣は、居らんのだな?」
「はい、今のところ、確認されておりません!」
通常、縄張りから移動する事がない〝凶獣〟や伝説級の魔物が、やって来ないとも限らない。
いや、そんな大物が来なくても、このままではここが突破されるのは時間の問題か。
他の3門に、人員を回してもらう以外に方法はないな。
……そう思った私の所に、慌てた様子の部下が、更なる凶報を持ってきた。
「伝令! ここを含む4つの門、全てが大破! 繰り返します。4つの門、全て大破しました!」
「な……何だと?!」
バカな! そんな事が……?!
そうか。やはり何らかの悪意ある攻撃だったか!
「城塞都市〝南門〟守備隊長、丹生瀬真の名で、市中や避難所にいる市民に支援を要請しろ。老若男女は問わない」
……最終手段だ。訓練もしていない一般市民を巻き込むのは不本意だが、放っておけば城塞都市は終わる。
それに、城塞都市内には、フリーの探検者や引退組……戦える者はまだまだ居るはずだ。
「隊長、バリケードの損耗が激しく、このままでは……」
「しっかりしろ! 私も行く!」
老いたとはいえ、私だってそこそこ名の通った〝第5階級魔道士〟だ。命に変えても、この場を死守してみせる。
「丹生瀬隊長!」
「どけ! 景気付けに一発デカイのをお見舞いしてやる!」
呪文を唱えると、火の玉が頭上に発現した。〝炎の女帝〟のように、とまでは行かんが……食らえ!
火球は、轟音と共に放たれた。
門の前に居る多くの魔物たちは黒焦げになり、あるいは弾け飛ぶ。
「押し返すぞ! 踏ん張れ!」
「はい! 隊長!」
……とは言うものの、どうする? 他の門も破壊されたのなら、増援は無いだろう。市民の助けを借りたとて、現状は変わらない。
……城塞都市は今日、滅びるのか。
「お手伝いします! ノン子、いくぞ!」
「ええ! こっちに来るやつだけ狙えばいいのね……あ、ちょっとマー君! そんな雑な詠唱じゃ駄目じゃない!」
「だいじょうぶ。ちゃんと効いてるよ」
まだ魔法を習い始めて間もないような子どもまでが参戦し始めた……情けない事だ。
「諸君、あまり前に出過ぎるな! 魔力が尽きそうになったら無理をせず引くんだ」
「はいっ!」
市民からの加勢もあり、なんとか門の前の広場で魔物を食い止めることが出来ている。このまま、なんとか門の外まで押し返せば……
「た、隊長……あれは!」
「ぬ、ぐぅうう……! 来てしまったか!」
普段、城塞都市の周辺では見ないような魔物までがチラホラ混ざり始めたとは思っていたが……あんな奴まで出てきたのか!
「でっかい! あんなの見たことない」
「へん、図体だけだろ! 俺の魔法でやっつけてやる!」
威勢の良い少年が、呪文の詠唱を始める。いかん!
「おい、やめるんだ! あいつは!」
遅かった。私の声が届く前に、少年の魔法は放たれてしまった。
中々筋の良い、綺麗な鉄針だ。だが、相手が悪すぎる。
「逃げるんだ! あれは誰にも止められない!」
体は〝犬〟だが顔は〝猫〟そしてあの巨体となれば間違いない。
……あれは、凶獣〝グーロ〟だ。
当たり前のように鉄針をレジストした〝グーロ〟は少年に向き直り、姿勢を低くする。マズい! このままでは子どもたちが危ない!
ギョロリと目を剥く巨大な凶獣。私は子どもたちを庇うため、咄嗟に、効くはずもない火球を連射する。
「諸君! 逃げろ! 逃げるんだ!」
私の魔法など気にも止めず〝グーロ〟は子どもたちに狙いを定めた。
「逃げません!」
なに?!
「俺たちが逃げたら、こいつは街を襲います!」
「私たちがやらなきゃ、みんな殺されちゃう」
「見てろよ! 絶対に倒してやるぞ!」
そして私の声が聞こえているにも関わらず、引こうとしない子どもたち。
「やめろ! そいつは伝説級の凶獣だ! みんな死んでしまうぞ!」
ああ、神よ! もし居るなら、この勇敢な子どもたちをお守り下さい……!
……神頼みしか出来ないのか、私は!
「みんな! チョットだけ下がって!」
街の方からもう一人、真新しい、鮮やかな緑色のローブを着た子どもが走ってきた。
いけない! これ以上、幼い命を無駄に散らせてはならない!
「頼むから逃げてくれ! 逃げろおお!!」
逃げてもどうにもならないかもしれない。
魔物は今もなお、破壊された門から続々と侵入し続けているし〝凶獣〟を倒せる戦力が残っているかどうかすら、疑問だ。
……すまない子どもたちよ。私では、キミたちの未来を守れない。
「うーんと、隊長……さん? 大丈夫。みんなの未来は僕たちが守るよ」
「えっ?」
緑ローブの少年が、両手を正面に差し出した途端、辺りの空気がピンと張り詰めた感覚があった。
……次の瞬間、凶獣は飛び掛かった。巨大な前足は、ひと振りでこの場にいる全員を殺せるだろう。
「危ない子だよね。大人しくしないと、僕、怒っちゃうよ?」
訂正せねばなるまい。
この不思議な少年を、殺す事は出来なかった。
「な……に?」
少年に〝グーロ〟の攻撃は届いていない。
少し手前でピタリと動きを止めて、唸り声を上げている。
「えっと、他の子たちも、そこまで!」
少年が両手を振り上げて周囲を見回すと、全ての魔物の動きが止まった。
暴れようと必死でもがく声だけが、広場に響き続ける。
「何だこれは……こんな魔法、聞いたこともないぞ?」
「ううん。これは魔法じゃなくって……あ、こらこら。入って来ないで」
今度は門の方に手をかざす。すると、今まさに侵入しようとしていた魔物が門の外に押し出されていく。
一体何が起こってるんだ?
「ここは塞いだ方がいいよね。えっと……あれ、使っていいかな?」
少年が指さした先には、城壁の補修用に積まれた岩の山。私は声も出せずに頷く。
「やったー! ありがとう! じゃあ……えいえいっと!」
無数の岩が宙を舞い、破壊された門の代わりに城壁を塞いでゆく。私は夢でも見ているのか?
「さて、そろそろこの子たちと〝お話し〟ができるかな?」
……何を言っているんだ? お話し?
誰とだって?
「うん。うん……そう。悲しいね。できれば殺したくなかったんだけど、僕は人間を守らなきゃいけないんだ。痛くしないから……ごめんね」
少年がそう言ったあと。
「ジャクッ!」
まるで、ハサミで厚めの布を切ったような音が響く。
「お疲れ様。みんな、ゆっくり休んでね」
広場で動きを止めていた魔物の首が、胴から離れ、一斉に落ちた。
……凶獣〝グーロ〟の分も含めて。
同時に魔物が大挙してなだれ込む。
「何だ? 何が起こった?!」
門前の〝結界〟も消えてしまったようだ。
魔導球からの魔力供給が切れたのか? だとしたら、明らかに何者かによる攻撃だ。
しかも……内部からの?
「隊長! 魔物が押し寄せてきます!」
「総員、迎撃を開始せよ! バリケードの薄い箇所には〝障壁魔法〟を展開! 櫓の魔道士にも、攻撃を続行するように伝えろ」
……保つわけがない。
倒せど倒せど、無尽蔵に侵入して来る魔物。
それでなくとも、ここは今朝の〝出発門〟だったのだ。
魔力が残り少ない櫓の魔道士と、新兵に等しい少数の増援。そして攻撃魔法の使える一般市民で、いったいどうしろと言うんだ?
「魔力の切れた者には、投石器と弓矢、ボウガンの配布を急がせるんだ」
これを好機と、悪魔までやって来るかもしれない。
更に……最悪のパターンも有り得る。
「大型の魔物や凶獣は、居らんのだな?」
「はい、今のところ、確認されておりません!」
通常、縄張りから移動する事がない〝凶獣〟や伝説級の魔物が、やって来ないとも限らない。
いや、そんな大物が来なくても、このままではここが突破されるのは時間の問題か。
他の3門に、人員を回してもらう以外に方法はないな。
……そう思った私の所に、慌てた様子の部下が、更なる凶報を持ってきた。
「伝令! ここを含む4つの門、全てが大破! 繰り返します。4つの門、全て大破しました!」
「な……何だと?!」
バカな! そんな事が……?!
そうか。やはり何らかの悪意ある攻撃だったか!
「城塞都市〝南門〟守備隊長、丹生瀬真の名で、市中や避難所にいる市民に支援を要請しろ。老若男女は問わない」
……最終手段だ。訓練もしていない一般市民を巻き込むのは不本意だが、放っておけば城塞都市は終わる。
それに、城塞都市内には、フリーの探検者や引退組……戦える者はまだまだ居るはずだ。
「隊長、バリケードの損耗が激しく、このままでは……」
「しっかりしろ! 私も行く!」
老いたとはいえ、私だってそこそこ名の通った〝第5階級魔道士〟だ。命に変えても、この場を死守してみせる。
「丹生瀬隊長!」
「どけ! 景気付けに一発デカイのをお見舞いしてやる!」
呪文を唱えると、火の玉が頭上に発現した。〝炎の女帝〟のように、とまでは行かんが……食らえ!
火球は、轟音と共に放たれた。
門の前に居る多くの魔物たちは黒焦げになり、あるいは弾け飛ぶ。
「押し返すぞ! 踏ん張れ!」
「はい! 隊長!」
……とは言うものの、どうする? 他の門も破壊されたのなら、増援は無いだろう。市民の助けを借りたとて、現状は変わらない。
……城塞都市は今日、滅びるのか。
「お手伝いします! ノン子、いくぞ!」
「ええ! こっちに来るやつだけ狙えばいいのね……あ、ちょっとマー君! そんな雑な詠唱じゃ駄目じゃない!」
「だいじょうぶ。ちゃんと効いてるよ」
まだ魔法を習い始めて間もないような子どもまでが参戦し始めた……情けない事だ。
「諸君、あまり前に出過ぎるな! 魔力が尽きそうになったら無理をせず引くんだ」
「はいっ!」
市民からの加勢もあり、なんとか門の前の広場で魔物を食い止めることが出来ている。このまま、なんとか門の外まで押し返せば……
「た、隊長……あれは!」
「ぬ、ぐぅうう……! 来てしまったか!」
普段、城塞都市の周辺では見ないような魔物までがチラホラ混ざり始めたとは思っていたが……あんな奴まで出てきたのか!
「でっかい! あんなの見たことない」
「へん、図体だけだろ! 俺の魔法でやっつけてやる!」
威勢の良い少年が、呪文の詠唱を始める。いかん!
「おい、やめるんだ! あいつは!」
遅かった。私の声が届く前に、少年の魔法は放たれてしまった。
中々筋の良い、綺麗な鉄針だ。だが、相手が悪すぎる。
「逃げるんだ! あれは誰にも止められない!」
体は〝犬〟だが顔は〝猫〟そしてあの巨体となれば間違いない。
……あれは、凶獣〝グーロ〟だ。
当たり前のように鉄針をレジストした〝グーロ〟は少年に向き直り、姿勢を低くする。マズい! このままでは子どもたちが危ない!
ギョロリと目を剥く巨大な凶獣。私は子どもたちを庇うため、咄嗟に、効くはずもない火球を連射する。
「諸君! 逃げろ! 逃げるんだ!」
私の魔法など気にも止めず〝グーロ〟は子どもたちに狙いを定めた。
「逃げません!」
なに?!
「俺たちが逃げたら、こいつは街を襲います!」
「私たちがやらなきゃ、みんな殺されちゃう」
「見てろよ! 絶対に倒してやるぞ!」
そして私の声が聞こえているにも関わらず、引こうとしない子どもたち。
「やめろ! そいつは伝説級の凶獣だ! みんな死んでしまうぞ!」
ああ、神よ! もし居るなら、この勇敢な子どもたちをお守り下さい……!
……神頼みしか出来ないのか、私は!
「みんな! チョットだけ下がって!」
街の方からもう一人、真新しい、鮮やかな緑色のローブを着た子どもが走ってきた。
いけない! これ以上、幼い命を無駄に散らせてはならない!
「頼むから逃げてくれ! 逃げろおお!!」
逃げてもどうにもならないかもしれない。
魔物は今もなお、破壊された門から続々と侵入し続けているし〝凶獣〟を倒せる戦力が残っているかどうかすら、疑問だ。
……すまない子どもたちよ。私では、キミたちの未来を守れない。
「うーんと、隊長……さん? 大丈夫。みんなの未来は僕たちが守るよ」
「えっ?」
緑ローブの少年が、両手を正面に差し出した途端、辺りの空気がピンと張り詰めた感覚があった。
……次の瞬間、凶獣は飛び掛かった。巨大な前足は、ひと振りでこの場にいる全員を殺せるだろう。
「危ない子だよね。大人しくしないと、僕、怒っちゃうよ?」
訂正せねばなるまい。
この不思議な少年を、殺す事は出来なかった。
「な……に?」
少年に〝グーロ〟の攻撃は届いていない。
少し手前でピタリと動きを止めて、唸り声を上げている。
「えっと、他の子たちも、そこまで!」
少年が両手を振り上げて周囲を見回すと、全ての魔物の動きが止まった。
暴れようと必死でもがく声だけが、広場に響き続ける。
「何だこれは……こんな魔法、聞いたこともないぞ?」
「ううん。これは魔法じゃなくって……あ、こらこら。入って来ないで」
今度は門の方に手をかざす。すると、今まさに侵入しようとしていた魔物が門の外に押し出されていく。
一体何が起こってるんだ?
「ここは塞いだ方がいいよね。えっと……あれ、使っていいかな?」
少年が指さした先には、城壁の補修用に積まれた岩の山。私は声も出せずに頷く。
「やったー! ありがとう! じゃあ……えいえいっと!」
無数の岩が宙を舞い、破壊された門の代わりに城壁を塞いでゆく。私は夢でも見ているのか?
「さて、そろそろこの子たちと〝お話し〟ができるかな?」
……何を言っているんだ? お話し?
誰とだって?
「うん。うん……そう。悲しいね。できれば殺したくなかったんだけど、僕は人間を守らなきゃいけないんだ。痛くしないから……ごめんね」
少年がそう言ったあと。
「ジャクッ!」
まるで、ハサミで厚めの布を切ったような音が響く。
「お疲れ様。みんな、ゆっくり休んでね」
広場で動きを止めていた魔物の首が、胴から離れ、一斉に落ちた。
……凶獣〝グーロ〟の分も含めて。
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