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5年生 3学期 3月
戦闘記録:北門
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藤島彩歌?!
いつ帰って来たんだ? たしか、守備隊を辞めさせられて、アガルタに行ってたんじゃなかったっけ……? ほんとに目障りな奴!
……いけない、私としたことが。まずは挨拶してあげなくちゃね。
「あらあら? 〝炎の女帝〟様じゃない。こんな所にいたら危ないわよ?」
「み、美代?! ……コホン。大木隊員。お久しぶりです」
藤島彩歌! いつもいつも、私の手柄を奪いやがって……!
ふん! 子どもにされたにも関わらず、その弱体された状態のままで〝上級悪魔〟を倒したですって?
デタラメに決まってるじゃないか。私は騙されないからな?
「藤島隊員。あなた、そんな姿になっても、まだ防衛に参加しようっていうの? 熱心な事ね。でも、ここは私が居るから大丈夫。早くお逃げなさいな」
……っていうか邪魔だ。弱体化された負け犬は、おとなしくアガルタで隠遁していればいい。
「そういう訳には参りません。私もこの門の守備に当たらせて頂きます」
だから! 役立たずは要らないって言ってるんだよ。なんで分かんないかな?
「あなたね……!」
……いや、待てよ? ここでコイツがミスを犯せば……!
ウフフ……何かの偶然で、散々チヤホヤされて調子に乗ってるみたいだけど、私が正しい評価に戻してあげるわ!
「……いいでしょう。では、守備隊、第5班副隊長の大木が命じます。藤島元隊員は臨時隊員として我が隊に参加。3番櫓にて、迎撃任務に当たりなさい」
「了解しました。櫓に上がります。あと、こちらの二人も一緒に……」
「ちィーっす!」
「きゃはは~! 櫓って初めて!」
……はぁ? 何なのコイツら?
「お待ちなさい! 何ですか、この二人は?」
「弟子ですが……何か?」
こんなチャラチャラしたガキが弟子?
フン! 程度が知れるわね。
「藤島臨時隊員……? こんな時に、実力のない人員を櫓に上げるわけには……」
「この二人は、階級無し魔道士ではありますが〝砦超え帰還者〟です」
……はあああっ?! こんな奴らが?!
「ソコんトコ、シクヨロー!」
「ねー、オバサン! 何してんの? 早く行くし!」
「お、おばさ……?!」
砦超えですって?
私ですら〝死後線〟手前が限界だっていうのに……! 嘘に決まってる!
「コホン。わかりました……ただし、私も三番に上がります。ついて来なさい」
まとめて化けの皮を剥いでやるからな!
「へぇー、意外と狭っ苦しいんだな」
「ねぇねぇ、もう撃っていいの?」
ええい! 無駄に騒がしい!
さて、久しぶりに櫓に上がったが……ん? これは一体?
櫓から見下ろすと、地面がボコボコに抉れている。
「うおー! 上から見るとスゲーな、クレーター!」
「ああ! あの時の! さすがパイセン!」
「あなた達、達也さんの事は……」
「ひぃッ?!」
「な、何も知らないし! 見てもないし!」
まったく。いつまで騒いでいるんだ。遠足じゃないんだぞ。
……しかし、さすがにこの数はマズいんじゃないか? ざっと見た感じ、様々な種類の魔物が合わせて2000匹。門めがけて押し寄せている。
「二人とも。櫓に張られた結界は、内から外へは魔法や物質を通すけど、逆には通り辛くなっているわ。間違っても、体を外に出さないで?」
「了解です、姐さん」
「わかったし!」
やれやれ。そんな事も知らない素人を連れてきて、どうするんだ藤島彩歌。
……まあいい。とにかく門に近い魔物を狙って、と。
「それじゃやってみて。どいつを狙うか分かるわね?」
「もちろん!」
「任せて!」
藤島彩歌の声に、威勢よく返事を返す二人。
……狙うって何だ? あれだけ密集していれば、適当に撃っても当たるだろ!
「翔、手前の右から」
「オッケ!」
バラバラと弱体魔法を放つ女と、それが命中した魔物を器用に撃ち抜いていく男。
……ふん。確かにこの距離からにしては、中々の精度だけど。
「フフ。やるじゃない」
「光栄ッス、姐さん!」
「やったー! 褒められたし!」
いや、全然ダメ。なんで門から離れたヤツを狙うんだよ……所詮は素人か。
「でもよーく見て? もう一種類いるわよ?」
「え? え? 他にも?」
「わかったし! アイツらじゃね?」
女はそう言うと、鉄針の魔法で〝蟻〟を撃ち抜く。
だから、なんでそんな遠くの魔物を狙う?
「正解! よくできました」
何が〝よくできました〟だ。バカなのか?
……やれやれ。放っといて自分の仕事をするか。
しかし一向に数が減らないな。まるで魔界中の魔物が集まって来ているみたいだ。
「いよーし! 〝牛〟は全滅だ!」
「よく見るし! まだまだ全然いるかんね?」
コイツら、真面目にやれよ! さっきからずっと同じ魔物ばかり狙い撃ちして、どういうつもりなんだ……?
〝蟻〟、〝猪〟、〝鎚猿〟、それに〝牛〟……
ん? 待てよ、コイツらが倒している魔物って……まさか!
「……門に直接ダメージを与えそうな魔物を狙って?!」
〝猪〟は体当たりが得意で威力も凄まじい。〝牛〟の持つ棍棒や、〝鎚猿〟のハンマーによる打撃は驚異だ。〝蟻〟は……強酸の液を吐く。
……どの魔物も、門を破壊しうる。
「あとの奴らは、多少ゆっくりでも大丈夫。落ち着いて削っていきましょう」
「分かったッス、姐さん!」
「目の前に敵が来ないのって、超ラクチン!」
どうなってる? この無礼者どもは、本当に〝砦超え〟するほどの実力だっていうのか?
…………ははーん? なるほどね。
「藤島さん。あなたさっきから、ほとんど何もしてないわね?」
私の目は誤魔化せないからな? 無名の腕利きを〝弟子だ〟と偽って、ポイント稼ぎするつもりだな、藤島彩歌!
「なに言ってるんだ? さっきから攻撃してるだろ?」
「オバサン、バカじゃね?」
「ば……?! バカですって?! ……たしかに、明後日の方角に向けて何かを唱えてたみたいだけど、意味が分からないわ」
「あなた達、気付いてたの? すごいわね」
「姐さんの早撃ちは、何度も見てきましたからね。ヤバい奴っすか?」
「うん。3匹ほどね」
「うえ~! そんなに? こっち来るなし!」
「大丈夫。視界にも入らない所で黒コゲになってるから」
……はぁ? いよいよワケ分かんないぞコイツら!
「あなたたち! 分かるように説明して……」
そう言いかけた瞬間、ドン! という轟音と共に、凄まじい揺れが襲ってきた。立っていられず、その場に座り込む。
「うおおっ?! 何だ?」
「ビビったし! なんかの攻撃?」
聞いたことのないような大きな音と、城壁を揺らす程の衝撃。これは一体?
「ほ、報告します! ただいま、外門、内門が、同時に大破した模様です!」
……大破って?
「ちょ、どういう事?! 門が大破って!」
「謎の閃光と同時に、内外の門は破壊されました! 魔物が都市内部に侵入していきます!」
な……何てことだ!
「総員、怯まずに攻撃! 一匹でも多く倒しなさい!」
「ハッ!」
ヤバいヤバいヤバい! このままだと、城塞都市は終わる……!
「うーん……あなた達、せっかく門を壊されないように狙い撃ちしてたのに、無駄になっちゃったわね」
「しゃーねーッス! お役に立てず残念ッス!」
「もー! 誰が壊したか知らないけど、超ムカツクー!」
……どういうつもり?! なんでコイツら、こんなにユルユルなの?!
「あなたたち! こんなどうしようもない状況なのに、ふざけないで!」
「……また何か、分かんないこと言ってんなぁ?」
「どうしようもない状況って? なにそれ、おいしーの?」
キイイイイイイッ! 何だコイツら! 何だコイツら!!
「城塞都市が滅びるかもしれないのよ?! なんで分からないの!」
「姐さんが居るんだ。滅びるハズねーじゃん」
ヤレヤレと首を振るチャラ男。
「そーそー! ……彩歌パイセン! お願いしますっ!」
ニッコニコで、藤島彩歌に向けて手をヒラヒラさせるイカレ女。
「ふふ。ちょっと待っててね」
藤島彩歌は、数歩後ずさると、ヒラリと外套を翻す。
ニヤリと笑みを浮かべたあと、走り始めた……!
「な、何をするの?!」
藤島彩歌が跳んだ。
櫓から飛び降りやがった! この高さなのに!
……次の瞬間、爆炎が眼下を包む。
「ヒュー! 派手だなぁ!」
「カッコイイし! シビレルし!」
丸く焼け焦げた大地の中心に降り立つ藤島彩歌。
しかし、消し炭となった同輩を踏みしだき、魔物は臆すること無く押し寄せる。
「い、いくら何でもあの数を相手に、たったひとりでは……」
「姐さんは、ひとりの方がやりやすいんじゃねーかな」
「それな!」
「え? それってどういう……」
突然、目の前が赤く染まった。視界を巨大な炎の壁が遮る。
「な、何……これ?」
「火壁じゃね?」
「火壁だし」
馬鹿な事を言うな! 火壁なものか!
火壁の魔法は、せいぜい身長の倍ぐらいの高さが限界だろ!
「櫓の高さまで届く火壁なんて……」
どれだけの魔力を注げば、こんな出力になるっていうんだ?!
「ば、バケモノか!」
「まあ実際そうッスよね……姐さんさっき、凶獣も3匹ほど倒してたみたいだし」
「あー、さっきの早撃ちで黒焦げってヤツ! 彩歌パイセン、マジパネェ!」
……凶獣? なに言ってるの?
「えっと……凶獣って?」
「さっき言ってたじゃんか。明後日の方角に魔法撃ってたって。あれ、凶獣だろ、きっと」
「〝ヤバい奴〟つってたもんね。パイセンからすれば、ヤバくもなんとも無いんだろうけど」
信じられない……けど、この巨大な火壁。こんな物を作れるなら、凶獣だって倒せる。
……本当なんだ。アイツは目視できないような距離にいる凶獣を、3体も倒した!
「でも、火壁を突破してくる魔物もいるでしょう。援護が要るんじゃ……」
「ああ。それ、たぶん要らないわ。パタンするから」
「パタンするっしょ! ヘーキヘーキ!」
パタン?
「あの……あなたたち、パタンって何?」
ふたりは、燃え盛る炎の壁を指さす。
……巨大なそれは、ゆっくりと傾き、パタンと倒れた。
「魔法効果を〝後付け〟で操作?! そんな事ができるの?!」
地獄のような光景だ。押しつぶされた魔物たちの断末魔と共に、木々と大地と肉を焼く臭いが辺りを包む。
「さすがに、これを超えて来れる魔物はいないだろ?」
「キャハハ! パイセン、やり過ぎ!」
ただ、呆然と見ているしかなかった。
私なんかが敵うわけない……これが、炎の女帝!
いつ帰って来たんだ? たしか、守備隊を辞めさせられて、アガルタに行ってたんじゃなかったっけ……? ほんとに目障りな奴!
……いけない、私としたことが。まずは挨拶してあげなくちゃね。
「あらあら? 〝炎の女帝〟様じゃない。こんな所にいたら危ないわよ?」
「み、美代?! ……コホン。大木隊員。お久しぶりです」
藤島彩歌! いつもいつも、私の手柄を奪いやがって……!
ふん! 子どもにされたにも関わらず、その弱体された状態のままで〝上級悪魔〟を倒したですって?
デタラメに決まってるじゃないか。私は騙されないからな?
「藤島隊員。あなた、そんな姿になっても、まだ防衛に参加しようっていうの? 熱心な事ね。でも、ここは私が居るから大丈夫。早くお逃げなさいな」
……っていうか邪魔だ。弱体化された負け犬は、おとなしくアガルタで隠遁していればいい。
「そういう訳には参りません。私もこの門の守備に当たらせて頂きます」
だから! 役立たずは要らないって言ってるんだよ。なんで分かんないかな?
「あなたね……!」
……いや、待てよ? ここでコイツがミスを犯せば……!
ウフフ……何かの偶然で、散々チヤホヤされて調子に乗ってるみたいだけど、私が正しい評価に戻してあげるわ!
「……いいでしょう。では、守備隊、第5班副隊長の大木が命じます。藤島元隊員は臨時隊員として我が隊に参加。3番櫓にて、迎撃任務に当たりなさい」
「了解しました。櫓に上がります。あと、こちらの二人も一緒に……」
「ちィーっす!」
「きゃはは~! 櫓って初めて!」
……はぁ? 何なのコイツら?
「お待ちなさい! 何ですか、この二人は?」
「弟子ですが……何か?」
こんなチャラチャラしたガキが弟子?
フン! 程度が知れるわね。
「藤島臨時隊員……? こんな時に、実力のない人員を櫓に上げるわけには……」
「この二人は、階級無し魔道士ではありますが〝砦超え帰還者〟です」
……はあああっ?! こんな奴らが?!
「ソコんトコ、シクヨロー!」
「ねー、オバサン! 何してんの? 早く行くし!」
「お、おばさ……?!」
砦超えですって?
私ですら〝死後線〟手前が限界だっていうのに……! 嘘に決まってる!
「コホン。わかりました……ただし、私も三番に上がります。ついて来なさい」
まとめて化けの皮を剥いでやるからな!
「へぇー、意外と狭っ苦しいんだな」
「ねぇねぇ、もう撃っていいの?」
ええい! 無駄に騒がしい!
さて、久しぶりに櫓に上がったが……ん? これは一体?
櫓から見下ろすと、地面がボコボコに抉れている。
「うおー! 上から見るとスゲーな、クレーター!」
「ああ! あの時の! さすがパイセン!」
「あなた達、達也さんの事は……」
「ひぃッ?!」
「な、何も知らないし! 見てもないし!」
まったく。いつまで騒いでいるんだ。遠足じゃないんだぞ。
……しかし、さすがにこの数はマズいんじゃないか? ざっと見た感じ、様々な種類の魔物が合わせて2000匹。門めがけて押し寄せている。
「二人とも。櫓に張られた結界は、内から外へは魔法や物質を通すけど、逆には通り辛くなっているわ。間違っても、体を外に出さないで?」
「了解です、姐さん」
「わかったし!」
やれやれ。そんな事も知らない素人を連れてきて、どうするんだ藤島彩歌。
……まあいい。とにかく門に近い魔物を狙って、と。
「それじゃやってみて。どいつを狙うか分かるわね?」
「もちろん!」
「任せて!」
藤島彩歌の声に、威勢よく返事を返す二人。
……狙うって何だ? あれだけ密集していれば、適当に撃っても当たるだろ!
「翔、手前の右から」
「オッケ!」
バラバラと弱体魔法を放つ女と、それが命中した魔物を器用に撃ち抜いていく男。
……ふん。確かにこの距離からにしては、中々の精度だけど。
「フフ。やるじゃない」
「光栄ッス、姐さん!」
「やったー! 褒められたし!」
いや、全然ダメ。なんで門から離れたヤツを狙うんだよ……所詮は素人か。
「でもよーく見て? もう一種類いるわよ?」
「え? え? 他にも?」
「わかったし! アイツらじゃね?」
女はそう言うと、鉄針の魔法で〝蟻〟を撃ち抜く。
だから、なんでそんな遠くの魔物を狙う?
「正解! よくできました」
何が〝よくできました〟だ。バカなのか?
……やれやれ。放っといて自分の仕事をするか。
しかし一向に数が減らないな。まるで魔界中の魔物が集まって来ているみたいだ。
「いよーし! 〝牛〟は全滅だ!」
「よく見るし! まだまだ全然いるかんね?」
コイツら、真面目にやれよ! さっきからずっと同じ魔物ばかり狙い撃ちして、どういうつもりなんだ……?
〝蟻〟、〝猪〟、〝鎚猿〟、それに〝牛〟……
ん? 待てよ、コイツらが倒している魔物って……まさか!
「……門に直接ダメージを与えそうな魔物を狙って?!」
〝猪〟は体当たりが得意で威力も凄まじい。〝牛〟の持つ棍棒や、〝鎚猿〟のハンマーによる打撃は驚異だ。〝蟻〟は……強酸の液を吐く。
……どの魔物も、門を破壊しうる。
「あとの奴らは、多少ゆっくりでも大丈夫。落ち着いて削っていきましょう」
「分かったッス、姐さん!」
「目の前に敵が来ないのって、超ラクチン!」
どうなってる? この無礼者どもは、本当に〝砦超え〟するほどの実力だっていうのか?
…………ははーん? なるほどね。
「藤島さん。あなたさっきから、ほとんど何もしてないわね?」
私の目は誤魔化せないからな? 無名の腕利きを〝弟子だ〟と偽って、ポイント稼ぎするつもりだな、藤島彩歌!
「なに言ってるんだ? さっきから攻撃してるだろ?」
「オバサン、バカじゃね?」
「ば……?! バカですって?! ……たしかに、明後日の方角に向けて何かを唱えてたみたいだけど、意味が分からないわ」
「あなた達、気付いてたの? すごいわね」
「姐さんの早撃ちは、何度も見てきましたからね。ヤバい奴っすか?」
「うん。3匹ほどね」
「うえ~! そんなに? こっち来るなし!」
「大丈夫。視界にも入らない所で黒コゲになってるから」
……はぁ? いよいよワケ分かんないぞコイツら!
「あなたたち! 分かるように説明して……」
そう言いかけた瞬間、ドン! という轟音と共に、凄まじい揺れが襲ってきた。立っていられず、その場に座り込む。
「うおおっ?! 何だ?」
「ビビったし! なんかの攻撃?」
聞いたことのないような大きな音と、城壁を揺らす程の衝撃。これは一体?
「ほ、報告します! ただいま、外門、内門が、同時に大破した模様です!」
……大破って?
「ちょ、どういう事?! 門が大破って!」
「謎の閃光と同時に、内外の門は破壊されました! 魔物が都市内部に侵入していきます!」
な……何てことだ!
「総員、怯まずに攻撃! 一匹でも多く倒しなさい!」
「ハッ!」
ヤバいヤバいヤバい! このままだと、城塞都市は終わる……!
「うーん……あなた達、せっかく門を壊されないように狙い撃ちしてたのに、無駄になっちゃったわね」
「しゃーねーッス! お役に立てず残念ッス!」
「もー! 誰が壊したか知らないけど、超ムカツクー!」
……どういうつもり?! なんでコイツら、こんなにユルユルなの?!
「あなたたち! こんなどうしようもない状況なのに、ふざけないで!」
「……また何か、分かんないこと言ってんなぁ?」
「どうしようもない状況って? なにそれ、おいしーの?」
キイイイイイイッ! 何だコイツら! 何だコイツら!!
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「姐さんが居るんだ。滅びるハズねーじゃん」
ヤレヤレと首を振るチャラ男。
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ニッコニコで、藤島彩歌に向けて手をヒラヒラさせるイカレ女。
「ふふ。ちょっと待っててね」
藤島彩歌は、数歩後ずさると、ヒラリと外套を翻す。
ニヤリと笑みを浮かべたあと、走り始めた……!
「な、何をするの?!」
藤島彩歌が跳んだ。
櫓から飛び降りやがった! この高さなのに!
……次の瞬間、爆炎が眼下を包む。
「ヒュー! 派手だなぁ!」
「カッコイイし! シビレルし!」
丸く焼け焦げた大地の中心に降り立つ藤島彩歌。
しかし、消し炭となった同輩を踏みしだき、魔物は臆すること無く押し寄せる。
「い、いくら何でもあの数を相手に、たったひとりでは……」
「姐さんは、ひとりの方がやりやすいんじゃねーかな」
「それな!」
「え? それってどういう……」
突然、目の前が赤く染まった。視界を巨大な炎の壁が遮る。
「な、何……これ?」
「火壁じゃね?」
「火壁だし」
馬鹿な事を言うな! 火壁なものか!
火壁の魔法は、せいぜい身長の倍ぐらいの高さが限界だろ!
「櫓の高さまで届く火壁なんて……」
どれだけの魔力を注げば、こんな出力になるっていうんだ?!
「ば、バケモノか!」
「まあ実際そうッスよね……姐さんさっき、凶獣も3匹ほど倒してたみたいだし」
「あー、さっきの早撃ちで黒焦げってヤツ! 彩歌パイセン、マジパネェ!」
……凶獣? なに言ってるの?
「えっと……凶獣って?」
「さっき言ってたじゃんか。明後日の方角に魔法撃ってたって。あれ、凶獣だろ、きっと」
「〝ヤバい奴〟つってたもんね。パイセンからすれば、ヤバくもなんとも無いんだろうけど」
信じられない……けど、この巨大な火壁。こんな物を作れるなら、凶獣だって倒せる。
……本当なんだ。アイツは目視できないような距離にいる凶獣を、3体も倒した!
「でも、火壁を突破してくる魔物もいるでしょう。援護が要るんじゃ……」
「ああ。それ、たぶん要らないわ。パタンするから」
「パタンするっしょ! ヘーキヘーキ!」
パタン?
「あの……あなたたち、パタンって何?」
ふたりは、燃え盛る炎の壁を指さす。
……巨大なそれは、ゆっくりと傾き、パタンと倒れた。
「魔法効果を〝後付け〟で操作?! そんな事ができるの?!」
地獄のような光景だ。押しつぶされた魔物たちの断末魔と共に、木々と大地と肉を焼く臭いが辺りを包む。
「さすがに、これを超えて来れる魔物はいないだろ?」
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