プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
199 / 264
5年生 3学期 3月

2万4千光年

しおりを挟む
 呪われたアイテムは、栗っちに全部まかせることになった。
 小物類と不気味な液体の入った小瓶、解読不能な文字で書かれた本などは、とりあえず大ちゃんに渡しておけば大丈夫だろう。
 要は、丸投げだ。頼りになる仲間がいてくれて、うれしい限りだなあ。
 ……と、思った矢先の出来事だった。
 ああ、そうか、フラグ立てちゃったのか?

「こんな所かな。えーっと……なんか忘れているような……?」

 そう、僕はすっかり忘れていた。
 テーブルの上の巻物スクロールの事を。

「やー。これなぁに?」

 それは、魔界の〝クスギシ魔法店〟に代々伝わる超絶レア魔法〝夢幻回廊〟だ。

『〝夢幻回廊〟は、術者の知識、潜在意識、前世、遺伝子情報、想像力、その他諸々の、本人すら想像もつかないような、途方もない量の情報を使って、広大な迷宮を作り出すんだ』

 ……以上、クスギシのマスター談。
 この魔法を使った者は、途方もない量の魔力を奪われた上に、足りない分は体力も奪われて、完成した広大な迷宮に放り込まれる。
 迷宮を踏破できれば〝大地の王〟に〝神をも超える力〟をもらえると言われているんだけど……

『タツヤ〝大地の王〟ですが何か?』

「〝ですが何か?〟って言いたかっただけだろブルー?」

 そうなのだ。なんと〝大地の王〟とは、ブルーの事だった。
 つまり、迷宮に挑まなくても、もうみんな会ってるんだよな。しかもブルーいわく、おいそれと〝神をも超える力〟は、与えられないらしい。
 それをもらえたのは唯一、僕だけだ。

『で、どうする? タツヤ』

「……うーん。とにかく落ち着いて、現状を把握しよう」

 気付いた時には、もう巻物スクロールは開封されてしまっていた。
 もちろん、開封したのはユーリだ。なんで学習しないんだろう……

「……彩歌さん、あの巻物スクロールは呪文を唱えなくても発動するの?」

「そんな魔法、聞いたことないわ? 普通、体内に格納された巻物スクロールは、サポート役になるだけで、術者の詠唱がなければ機能しないはずよ」

 巻物スクロールは、開封した者の体内に取り込まれ、魔法を発動するための儀式や祭壇、魔法陣等の代わりをするだけでなく、詠唱の手助けまでしてくれる。
 ユーリは、テーブルの上の巻物スクロールを勝手に開封してしまった。
 全員〝ああ、またやったか〟ぐらいの気持ちでそれを見ていたのだが……

「いやいや! あいつ、知らないはずの呪文をスラスラと唱えてだぞ?! どういうことなんだ?!」

 スクロールがフッと消えた直後、ユーリは何かに取り憑かれたかのように、虚ろな眼差しで、いきなり呪文を唱え始めた。
 ……完全な不意打ちだ。詠唱は決して短くはなかったが、誰もユーリを止められなかった。

巻物スクロールには、自動詠唱機能があるんだけど〝頭の中で操作する〟方法を知らなければ、詠唱はしないはず……だよね、彩歌さん?」

 いやむしろ、そうでなきゃ、火の玉や鉄の針が街中を飛び交うぞ?

「……もしかして」

 ハッとした表情で、彩歌が、何かに気付いたように呟く。

「異星人であるユーリさんの体は、私たちとは違うのかもしれない。そのせいで、巻物スクロールが誤作動したのかも……?」

「おいおいー! 絶対にそれだなー!」

 大ちゃんが叫んだ。
 うん。僕もそう思う。

『タツヤ、ユーリが消えた空間の痕跡を探ってみたのだが、驚くべき事が分かった』

 ブルーが、珍しく低いトーンで告げる。

「おいおい、どうしたんだよ、怖いぞブルー? 」

『彼女は〝私に会うための迷宮〟には、送られていない』

 ……はい?

「どういう事だブルー? 〝夢幻回廊〟は〝大地の王〟に会いに行く魔法だろ? それなら最終的には、お前の前に現れるんじゃないのか?」

 魔力は少ないが、ユーリの体力は底なしだ。迷宮にどんな怪物が居ても、どれだけ長い道のりでも、平気で突破して、ひょっこり帰って来たりするんじゃないか?

『タツヤ、思い出して欲しい。あの魔法は〝術者〟の知識、潜在意識、前世、〝遺伝子情報〟、想像力、その他諸々の情報を使って、迷宮を作るんだよ』

 それは知ってるよ。僕もさっき引用したし。マスター談だ。

「……な、なあブルー。〝術者〟の〝遺伝子情報〟……か?」

 大ちゃんは、そう言って震えている……顔面蒼白になって。
 ……そういえば、さっきブルーは、そこを強調していたな。〝術者〟の〝遺伝子情報〟?

「たっちゃん。〝術者〟である〝ユーリの遺伝子〟に刻まれている〝大地の王〟の情報は、ブルーだけじゃないぜー?」

 ……? 遺伝子…………宇宙人の遺伝子?! 
 まさか! ユーリが作り出した〝夢幻回廊〟の行き着く先は?!

「惑星ウォルナミス!」

『そうだタツヤ。まず間違いない』

 冗談じゃない! 確か〝惑星ウォルナミス〟までは、光の速さでも2万4千年ほどかかるって言っていたぞ?

「ダメだ……さすがに今回ばかりはお手上げだ!」

「ああ。ユーリは徒歩だぜ? 生きて辿り着けるわけないだろー!」

 肩を落とす大ちゃん。まさかこんな事になるなんて……

『タツヤ、ダイサク。聞いて欲しい。私が調べた空間の裂け目は、とてつもなく遠い場所に、ダイレクトに接続されていた』

「おいおいー! 本当かよブルー? それじゃユーリは……!」

 大ちゃんが僕の右手をつかんで、ブルーに顔を近づける。

『迷宮は、たぶん惑星ウォルナミスに直接つながっている。だから、ユーリが迷宮を踏破できれば、生きて惑星ウォルナミスに出ることが可能のはずだ』

「良かったぜー! ユーリ……ああ、ユーリ!」

 喜びと悲しみが同居したような、複雑な表情の大ちゃん。
 当然だ。ユーリが無事だとしても、もう2度と逢えないかもしれないんだから。

「大ちゃん……」

「九条くん……」

 栗っちと彩歌も、もちろん僕も、どう声を掛けていいのか分からない。
 重苦しい空気が地下室を支配する。

『そこで、キミたちに提案があるんだ。私の立場上、あまり方法なんだけど』

 沈黙を破ったのはブルーだ。

「何だ! 何か方法があるのか?!」

 必死にブルーを……というか、僕の手を揺さぶる大ちゃん。攻撃判定じゃないので、大いに揺さぶられる僕。

『……先程、ユーリが飛ばされ、空間の裂け目が閉じる前に、私は咄嗟に〝聖剣〟を差し込んでおいた……この剣は、異世界との境目を貫いても折れないからね』

 よく見ると、ユーリが座っていた椅子のとなりに、聖剣が突き刺さっている。
 すごい判断と行動力だなブルー! グッジョブだ!

『たぶんキミたちのうち、2人ぐらいなら、ユーリの迷宮に送ることができる』

 ひとりは、必然的に僕だ。なぜなら〝阿吽帰還あうんきかん〟が必要だから。あの魔法があれば、どこからでも帰ってこられる。
 ……ブルーが〝あまりお勧めしてはいけない理由〟は、僕を異星に送る事になるからだろう。守護者が不在になるのは、星としてはマズイよな。

『そしてもう一つ。次元の裂け目を通るなら、聖剣に触れなければならない』

 もうひとりは、栗っちに決まった。聖剣に触れて〝裁き〟を受けないのは、剣に選ばれた僕か、神様候補の栗っちだけだから。

「えへへー! それじゃ、急いで行こうよ!」

 栗っちもそれが分かっているようだ。
 僕は聖剣を掴んだ。これでいいのかな?

「達也さん、行ってらっしゃい。気をつけて」

 彩歌が微笑む。

「うん。ユーリを連れて、すぐに帰ってくるから」

 それじゃ、ユーリ救出作成開始……え? 大ちゃん、いったい何を……?

「変身!」

 まばゆい光に包まれて、大ちゃんはレッドの姿になった。そして無言で聖剣に近付く。
 ……そうか、機械仕掛けの神デウスエクスマキナなら〝神〟扱いだから聖剣に触っても平気なのか?

「ダメだよレッド! 聖剣が怒ってる!」

 あわてて叫ぶ栗っち。ええっ?! それってマズいんじゃない?
 ……栗っちの声が聞こえていないのか、神剣に手を伸ばすレッド。

「待ってレッド、危ないよ! レッドの神性しんせいは、聖剣には理解できないみたいだよ!」

「……知っている。私は機械仕掛けの神デウスエクスマキナだからな。全ての〝物〟の声が聞こえるのだ……先程から、聖剣は私に対して、強い警告を発している。〝死を覚悟しろ〟と」

 レッドは、落ち着いた口調でそう言うと、聖剣のつかを握った。火花が飛び、バチバチという音が鳴り響いて、コゲた金属の匂いが立ちこめる……いや、この匂いは金属だけじゃない。

「ダメだレッド! 手が!」

 以前、ユーリが神剣に触れた時のような、肉の焼ける匂いも混じっている。

「これぐらい、どうという事はない。さあ、早く送ってくれ……私はユーリを、救いに行かねばならないのだ」

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...