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5年生 3学期 3月
急募! 宇宙の戦士
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大波神社では〝記念すべき今日の日〟を祝う〝大宴会〟が催されていた。
主賓(しゅひん)は、僕たち5人だ。
「皆の者! 見よ! 彼らが、地球を守る新しい戦士達じゃ!」
「うぉおおお!!」
湧き上がる歓声。
「地球を、戦士ユーリを頼んだぞ!」
「聞いたか? 全員、戦士ユーリなみに強いらしいぜ!」
「マジかよ! 俺、レプリカ着てても、非武装の戦士ユーリに勝てないんだぞ?!」
「すごいな! 地球人なんだろ? ……小学生ぐらいじゃないか?」
「いや、あの達也っていうリーダーだけは、ただの若作りらしい」
色々な会話が聞こえてくる。
……なんか、とんでもないデマも紛れてる気がするんだけど。
「ウォルナミスの人たちって、宴会好きだよなー!」
大ちゃんが笑う。
そういえば、魔界から話しかけた時も、宴会中だとか言っていたな。
「まあまあ、一献どうぞ!」
「いえいえいえ! 未成年ですので!」
中身は大人だし、久し振りにお酒も頂きたいところだけど、体は11歳だ。さすがにマズいだろう。
「たっちゃんはお硬いなー!」
ケラケラと笑うユーリ。真っ赤な顔をしているけど……まさか?!
「ちょ! ユーリ! それもしかして酒か?!」
「んー? なんれすかー? へへー、これはオイシイ、しょーちゅーなのれす!」
ユーリは、明らかに呂律が回らなくなっている。
「いやいや! いくらなんでもダメだろ?! お酒は二十歳になってからって……」
「やー! たっちゃん、どしたのん?」
背後から、ユーリに声を掛けられた。
手にはオレンジジュース。お前ほんとにミカン好きだな。
いや、そんな事より、聞いてくれよユーリ。お前が焼酎を飲んで……って、あれ?!
「ふふ。達也さん、そっちは愛里さんよ?」
「ヒック! ……たっちゃんも飲むのらぁ!」
うわぁ……騙された!
『タツヤ。アイリは、別にキミを騙そうとしたのではないと思うが?』
いや、そうなんだけどさ。
……しかし、何度見ても本当にそっくりだな!
愛里さん、いつもは知的な感じだけど、酔うとそれが薄まるから、余計に似るんだろう。
「やー? たっちゃん、今ちょっと失礼なこと考えてないかい?」
「ゴフッ?! んー? 全然?」
ギクッとして、コーラを吹き出しそうになった。変な所で鋭いなユーリ!
「やー! ねーちゃん、飲み過ぎだよー!」
「ユーリぃ……アンタものみなぁい!」
さすがのユーリも苦笑いだ。いつもと立場が逆転していて面白いな。
「私はオレンジジュースの方がイイよ。お酒は苦いからさー!」
「なんらー? あたしのお酒るぁ、飲めねいってーのお?」
うーん。見た目が小学生の愛里が飲んでるなら……
「僕や彩歌さんも、ちょっとぐらいなら良いかな、お酒……」
僕も彩歌も、本当は26歳だし。
「達也さんと私は、11歳よ?」
彩歌が、すこし低いトーンで言う。
「あ、え……っと……」
彩歌、表向きは、あくまで11歳で通すつもりなのか。
「……11歳よ。ね?」
彩歌が僕の耳元に、そっと口を近づけて、さらに低くドスの利いた声色で囁いたあと、にっこり微笑む。
目が! 目が笑ってない! ひぃぃ?! はいっ! おっしゃる通りですっ!
「す、すみません! 僕、コーラおかわり!」
「ふふ。私も、いただこうかしら?」
って、口調がもう11歳じゃないんだけど……ひぃぃ?! 睨まないで! ごめんなさいぃぃ!
>>>
「……という事で〝宇宙船〟と〝ガジェット〟……そして〝戦士〟が必要なんです」
宴会場の中央に並べてあった料理を押しのけて、説明が始まった。
……飲み食いの後なんだ、これ。
「惑星ウォルナミスに、行ってきた、じゃと?」
猫耳のおじいさん……長老は、驚いた様子だ。
「うん! でね〝ウォルナミスの意思〟に会って〝助けに来る〟って、約束してきたんだよー!」
会場内がザワつく。
はるか遠くの星〝惑星ウォルナミス〟は、種族の故郷ではあるが〝おとぎ話〟や〝神話〟のように語り継がれているだけで、もちろん実際には、誰も行った事もなければ、記録もほとんど残されていない。
「信じられん事じゃが、ユーリたちが嘘をついているとも思えんのう。そうか、惑星ウォルナミスの人々がのう……」
困り顔の長老。耳がせわしなく動いていて超カワイイ。
「えへへー。かわいいね」
僕の思考を読んだのか、栗っちもニコニコしている。
「……しかし弱ったの。〝宇宙船〟は勿論じゃが〝ガジェット〟と〝戦士〟は難儀な事じゃ」
長老は考え込んでしまった。その姿もまた、かわいいのだが。
「やっぱそうだよなー。ガジェットを作るのは、まず無理だろうし」
大ちゃんの頭脳を持ってしても、ガジェットの〝時間操作〟部分を作るのは不可能らしい。
「せめて、今までに使われたガジェットが、残っていれば良かったんだけどなー」
「……いま、なんと申されましたかな?」
長老の耳が、ピンと立った。マジかわいいな!
「ああ。ガジェットが残ってないかな、って言ったんだ。壊れててもいいんだぜ?」
地球に来た時、宇宙船に用意されていたガジェットは12個。墜落時に無くなったひとつを除けば11個だ。長い間、ウォルナミス人と共に、地球を守ってくれていた。
「それは、暴走して動かなくなった物でも良いのですかな?」
暴走……か。
ガジェットは、装着した戦士がピンチの時、戦士と共に力を失う代わりに〝暴走モード〟が発動して、すごい力を発揮するんだっけ。
「……って、おいおい! もしかして?!」
「ありますぞ! この大波神社にひとつ。そして、武装していた戦士達、それぞれの墓に、一緒に埋葬されているはずですじゃ」
ガジェットを着たまま亡くなったり、暴走で力を失った戦士は〝英雄〟として日本各地の墓に埋葬されているらしい。彼らの使っていたガジェットと共に。
「そうか……! 古墳から勾玉が出土するのは、ウォルナミス人のそれを真似たんだなー?」
大ちゃんが、納得したように呟く。
そういえば、ガジェットは勾玉の形をしている。いや、正確には、ガジェットの形に似せて、古代の日本人は勾玉を作ったのだろう。
「やー! そいじゃ、ガジェットの事は置いといて……宇宙船はどうするのん?」
……けっこう重要で未解決な案件だけど、置いとくでいいのか?
「そうじゃのう……」
……いいんかい! なんかウォルナミスの人たちって、肝心な所で雑な気がするぞ。
長老は長い顎ひげに手を当てて考えていたが、ふと思い出したように顔を上げた。
「では、ガロウズに、船を要求すればよい。此度の戦いは評価が高かった。そこそこの物が貰えるじゃろうて」
ガロウズに? ……船を?
……あ、そうだった。確か宇宙戦争に防衛側が勝ったら、賠償をしてもらえるとか言ってたな。
「っていうか、宇宙船を貰えるの?!」
「ふむ。ガジェット等の兵器は禁止されておるが、移動手段としての船なら問題ないじゃろう」
え? え? だって、それじゃあ……
「なんで最初の3人……生き残りの戦士達は、惑星ウォルナミスに帰らなかったんだ?」
「んー。ガジェットが11個あってもさ、3人しか戦士がいないんじゃ、惑星ウォルナミスにいる〝オプラ・オブナ〟の戦士には勝てないだろー?」
なるほど。惑星ウォルナミスは、強敵〝惑星オプラ・オブナ〟に侵略された。取り返そうにも、3対5では分が悪い。
「いや、それよりも……3人でウォルナミスを取り返すということは、地球を見捨てるという事だったのですじゃ」
長老は、ペタンとその場に座り込んで、俯きがちに語り始めた。
「彼ら3人は、地球人に命を救われました。明らかに侵略者だと知っている異邦の者に、地球の人々は、手厚い治療を施したのです」
宣戦布告は、すでに行われていた。地球人は、敵だと分かっていたはずのウォルナミス人を助けたのだ。
「地球は、ウォルナミスのターゲットとなった時点で、あらゆる星々の注目を集めてしまっておりました。何の価値もない未開の星は、その時点で〝何かしらメリットがあるかもしれない〟〝楽に手に入る星〟と認識されてしまったのですじゃ」
ああ、なんか分かる。気にしていなかったテレビ番組とかでも、人気だって聞くと、見てみたくなるもん。
「……3人の戦士は、この星を〝死ぬまで守る〟と誓いました。そして、その子どもたちも、そのまた子どもたちも」
長老は、顔を上げて言う。
「それは一族の誇りですじゃ! 儂らは、大恩ある郷里への心を忘れぬよう、名前に必ず〝里〟の字を刻んでおるのです」
そうか。ウォルナミス人の名前に〝里〟が付いているのは、そういう理由だったんだ。
「じゃからのう、問題は戦士の方なんじゃよ……」
そうだよなぁ……
地球を守ることが〝誇り〟なら、誰も惑星ウォルナミスに行ってくれないんじゃないかな?
主賓(しゅひん)は、僕たち5人だ。
「皆の者! 見よ! 彼らが、地球を守る新しい戦士達じゃ!」
「うぉおおお!!」
湧き上がる歓声。
「地球を、戦士ユーリを頼んだぞ!」
「聞いたか? 全員、戦士ユーリなみに強いらしいぜ!」
「マジかよ! 俺、レプリカ着てても、非武装の戦士ユーリに勝てないんだぞ?!」
「すごいな! 地球人なんだろ? ……小学生ぐらいじゃないか?」
「いや、あの達也っていうリーダーだけは、ただの若作りらしい」
色々な会話が聞こえてくる。
……なんか、とんでもないデマも紛れてる気がするんだけど。
「ウォルナミスの人たちって、宴会好きだよなー!」
大ちゃんが笑う。
そういえば、魔界から話しかけた時も、宴会中だとか言っていたな。
「まあまあ、一献どうぞ!」
「いえいえいえ! 未成年ですので!」
中身は大人だし、久し振りにお酒も頂きたいところだけど、体は11歳だ。さすがにマズいだろう。
「たっちゃんはお硬いなー!」
ケラケラと笑うユーリ。真っ赤な顔をしているけど……まさか?!
「ちょ! ユーリ! それもしかして酒か?!」
「んー? なんれすかー? へへー、これはオイシイ、しょーちゅーなのれす!」
ユーリは、明らかに呂律が回らなくなっている。
「いやいや! いくらなんでもダメだろ?! お酒は二十歳になってからって……」
「やー! たっちゃん、どしたのん?」
背後から、ユーリに声を掛けられた。
手にはオレンジジュース。お前ほんとにミカン好きだな。
いや、そんな事より、聞いてくれよユーリ。お前が焼酎を飲んで……って、あれ?!
「ふふ。達也さん、そっちは愛里さんよ?」
「ヒック! ……たっちゃんも飲むのらぁ!」
うわぁ……騙された!
『タツヤ。アイリは、別にキミを騙そうとしたのではないと思うが?』
いや、そうなんだけどさ。
……しかし、何度見ても本当にそっくりだな!
愛里さん、いつもは知的な感じだけど、酔うとそれが薄まるから、余計に似るんだろう。
「やー? たっちゃん、今ちょっと失礼なこと考えてないかい?」
「ゴフッ?! んー? 全然?」
ギクッとして、コーラを吹き出しそうになった。変な所で鋭いなユーリ!
「やー! ねーちゃん、飲み過ぎだよー!」
「ユーリぃ……アンタものみなぁい!」
さすがのユーリも苦笑いだ。いつもと立場が逆転していて面白いな。
「私はオレンジジュースの方がイイよ。お酒は苦いからさー!」
「なんらー? あたしのお酒るぁ、飲めねいってーのお?」
うーん。見た目が小学生の愛里が飲んでるなら……
「僕や彩歌さんも、ちょっとぐらいなら良いかな、お酒……」
僕も彩歌も、本当は26歳だし。
「達也さんと私は、11歳よ?」
彩歌が、すこし低いトーンで言う。
「あ、え……っと……」
彩歌、表向きは、あくまで11歳で通すつもりなのか。
「……11歳よ。ね?」
彩歌が僕の耳元に、そっと口を近づけて、さらに低くドスの利いた声色で囁いたあと、にっこり微笑む。
目が! 目が笑ってない! ひぃぃ?! はいっ! おっしゃる通りですっ!
「す、すみません! 僕、コーラおかわり!」
「ふふ。私も、いただこうかしら?」
って、口調がもう11歳じゃないんだけど……ひぃぃ?! 睨まないで! ごめんなさいぃぃ!
>>>
「……という事で〝宇宙船〟と〝ガジェット〟……そして〝戦士〟が必要なんです」
宴会場の中央に並べてあった料理を押しのけて、説明が始まった。
……飲み食いの後なんだ、これ。
「惑星ウォルナミスに、行ってきた、じゃと?」
猫耳のおじいさん……長老は、驚いた様子だ。
「うん! でね〝ウォルナミスの意思〟に会って〝助けに来る〟って、約束してきたんだよー!」
会場内がザワつく。
はるか遠くの星〝惑星ウォルナミス〟は、種族の故郷ではあるが〝おとぎ話〟や〝神話〟のように語り継がれているだけで、もちろん実際には、誰も行った事もなければ、記録もほとんど残されていない。
「信じられん事じゃが、ユーリたちが嘘をついているとも思えんのう。そうか、惑星ウォルナミスの人々がのう……」
困り顔の長老。耳がせわしなく動いていて超カワイイ。
「えへへー。かわいいね」
僕の思考を読んだのか、栗っちもニコニコしている。
「……しかし弱ったの。〝宇宙船〟は勿論じゃが〝ガジェット〟と〝戦士〟は難儀な事じゃ」
長老は考え込んでしまった。その姿もまた、かわいいのだが。
「やっぱそうだよなー。ガジェットを作るのは、まず無理だろうし」
大ちゃんの頭脳を持ってしても、ガジェットの〝時間操作〟部分を作るのは不可能らしい。
「せめて、今までに使われたガジェットが、残っていれば良かったんだけどなー」
「……いま、なんと申されましたかな?」
長老の耳が、ピンと立った。マジかわいいな!
「ああ。ガジェットが残ってないかな、って言ったんだ。壊れててもいいんだぜ?」
地球に来た時、宇宙船に用意されていたガジェットは12個。墜落時に無くなったひとつを除けば11個だ。長い間、ウォルナミス人と共に、地球を守ってくれていた。
「それは、暴走して動かなくなった物でも良いのですかな?」
暴走……か。
ガジェットは、装着した戦士がピンチの時、戦士と共に力を失う代わりに〝暴走モード〟が発動して、すごい力を発揮するんだっけ。
「……って、おいおい! もしかして?!」
「ありますぞ! この大波神社にひとつ。そして、武装していた戦士達、それぞれの墓に、一緒に埋葬されているはずですじゃ」
ガジェットを着たまま亡くなったり、暴走で力を失った戦士は〝英雄〟として日本各地の墓に埋葬されているらしい。彼らの使っていたガジェットと共に。
「そうか……! 古墳から勾玉が出土するのは、ウォルナミス人のそれを真似たんだなー?」
大ちゃんが、納得したように呟く。
そういえば、ガジェットは勾玉の形をしている。いや、正確には、ガジェットの形に似せて、古代の日本人は勾玉を作ったのだろう。
「やー! そいじゃ、ガジェットの事は置いといて……宇宙船はどうするのん?」
……けっこう重要で未解決な案件だけど、置いとくでいいのか?
「そうじゃのう……」
……いいんかい! なんかウォルナミスの人たちって、肝心な所で雑な気がするぞ。
長老は長い顎ひげに手を当てて考えていたが、ふと思い出したように顔を上げた。
「では、ガロウズに、船を要求すればよい。此度の戦いは評価が高かった。そこそこの物が貰えるじゃろうて」
ガロウズに? ……船を?
……あ、そうだった。確か宇宙戦争に防衛側が勝ったら、賠償をしてもらえるとか言ってたな。
「っていうか、宇宙船を貰えるの?!」
「ふむ。ガジェット等の兵器は禁止されておるが、移動手段としての船なら問題ないじゃろう」
え? え? だって、それじゃあ……
「なんで最初の3人……生き残りの戦士達は、惑星ウォルナミスに帰らなかったんだ?」
「んー。ガジェットが11個あってもさ、3人しか戦士がいないんじゃ、惑星ウォルナミスにいる〝オプラ・オブナ〟の戦士には勝てないだろー?」
なるほど。惑星ウォルナミスは、強敵〝惑星オプラ・オブナ〟に侵略された。取り返そうにも、3対5では分が悪い。
「いや、それよりも……3人でウォルナミスを取り返すということは、地球を見捨てるという事だったのですじゃ」
長老は、ペタンとその場に座り込んで、俯きがちに語り始めた。
「彼ら3人は、地球人に命を救われました。明らかに侵略者だと知っている異邦の者に、地球の人々は、手厚い治療を施したのです」
宣戦布告は、すでに行われていた。地球人は、敵だと分かっていたはずのウォルナミス人を助けたのだ。
「地球は、ウォルナミスのターゲットとなった時点で、あらゆる星々の注目を集めてしまっておりました。何の価値もない未開の星は、その時点で〝何かしらメリットがあるかもしれない〟〝楽に手に入る星〟と認識されてしまったのですじゃ」
ああ、なんか分かる。気にしていなかったテレビ番組とかでも、人気だって聞くと、見てみたくなるもん。
「……3人の戦士は、この星を〝死ぬまで守る〟と誓いました。そして、その子どもたちも、そのまた子どもたちも」
長老は、顔を上げて言う。
「それは一族の誇りですじゃ! 儂らは、大恩ある郷里への心を忘れぬよう、名前に必ず〝里〟の字を刻んでおるのです」
そうか。ウォルナミス人の名前に〝里〟が付いているのは、そういう理由だったんだ。
「じゃからのう、問題は戦士の方なんじゃよ……」
そうだよなぁ……
地球を守ることが〝誇り〟なら、誰も惑星ウォルナミスに行ってくれないんじゃないかな?
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