プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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春休み

特殊武装戦隊マンデガン VS 救星戦隊プラネットアース (転)

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「タイトルが長いね!」

 おっと、すまない。思わず叫んでしまったよ。
 ボクは〝喫茶ガブロ〟のマスター。
 ……というのは、世を忍ぶ仮の姿でね。
 ここだけの話だけど〝特殊武装戦隊マンデガン〟の総司令および〝マンデガン・ジャケット〟の開発者なんだ。

「とは言っても、指示だけ与えて、偉そうにふんぞり返ってればいいって訳でもなくてね。今日もこうして、現場仕事だよ」

 だからまあ、何だかんだで、司令とは名ばかりの便利な雑用係みたいなものだね。
 いや、そんな事より。

「何なんだい、この状況は?」

 囚われていた町の人たちを、安全な場所まで送り届けたボクは〝半透明マント〟で身を隠しながら、悪の組織が建設を進めている、基地の内部に戻って来たんだけど。

「これはまた……随分と状況が変わってしまったようだね」

 不思議な光景だよ。誰かこの状況、説明してくれないかなぁ。
 まず、怪人らしき個体が増えた。
 〝イヌ〟と〝サル〟と〝ゲジゲジ〟か。これは、まあ、想定内といえば想定内だね。
 でも、だからこそ。目の前の光景は違和感でいっぱいだ。

「いや、ここまで来るともう〝不気味〟だよ。ああ、頼むから誰か説明してくれ……!」

 子どもがいる。
 は……? なぜだ?! 捉えられていた子が、他にもいたのか?

「とか、そんな感じじゃないんだよ。それなら全然問題ない……事もないんだけど」

 少し距離があるので詳しくは分からないけど、4人の子どもたちは、平然と怪人の近くに立っている。

「そして……アレは何だ?」

 何人もの戦闘員が、宙に浮かんでいるぞ。

「オブジェか何かだろうか?」

 その上、ウチのマンデガンブルー、レッド、イエローも、戦うでもなく、子どもを助けるでもなく、そのそばに立っている。
 もちろん、戦闘不能になってはいない。パッと見た感じ、ジャケットにも異常はなさそうだし。

「彼らは一体何をしているんだ?」

 そして極めつけは、部屋の中央にいる〝得体の知れない姿〟の何者かだ。
 銀色に赤いラインの、見た事もない装備を身に着けたそいつが、サルの姿をした怪人と何やら会話をしていて、なぜか他の2体の怪人たちは、まったく動かないんだ。
 ……もしかして、和解した?

「はは! そんなバカな」

 戦闘員で出来たオブジェのそばに立っている男の子にいたっては、どう見てもニコニコ顔なんだよなあ。一体どういう状況なんだろうね?

「ええい! 嘘をつくなよ、お前!」

 うん? やっと何か動きがあったぞ。
 部屋の中央にいる、ちょっと……いや、かなり大きめの〝サル〟が〝得体の知れない姿〟をした少年に向けて怒鳴りはじめた。

「普通の人間にそんな芸当ができてたまるか! 苦し紛れのハッタリと、何かしらのトリックだろ? 僕は騙されないからな! ウキキキッ!」

「普通の人間には無理だろう。だが私には造作もない事だ。トリックも何も、単純にお前の動体視力が、私のスピードについて来られなかっただけだからな」

 驚いたな。〝サル型怪人〟と対峙しているのは……背格好せかっこうと声から察するに、アレは大ちゃんだ。間違いない。

「ウキャアッ! このガキ!」

 しかし変だな。口調と装備が違う。彼には、ボクが護身用に持っていた〝マンデガン・ジャケット(ベージュ)〟を手渡したはずなんだけどね。
 ……え? なんでボクがそれを装備して戦わないかだって?
 いやいや、まことに情け無い話だけど、最近は持病のヘルニアが悪化するばかりでね。戦っても、足手まといになっちゃうんだ。こうやってコソコソと姿を隠して、サポート役に徹するのが、ボクの役割。
 もし万が一、敵に見つかってしまったら、変身して必死で逃げるのが、ボクにできる唯一の自衛さ。大ちゃんにブレスレットを渡したのは、一見、無責任に映ったかもしれないけど、ボクにとっては〝大冒険〟で〝大サービス〟だったんだよ? ああホント、情け無いなあ。

「……さて。情け無がってばかりいても仕方ないね。どういう状況か、見極めなければ」

 サルは、耳を真っ赤にして怒っている。

「僕に見えないスピードだって?! ムッキャアアァァ! そんな事あるはずないだろ!」

「どうやら、私の動きだけではなく、現実も見えていないようだ」

 どうやら舌戦は、大ちゃんに分があるようだね。
 だが果たして、そのよく分からない装備で、怪人を相手に戦えるのか?

「……イヌ、ゲジ! お前らもう、そいつらまとめて殺してよ」

 やはり、あのサルがボスか。一度に三体は、さすがのマンデガンでも、厳しいかもしれないな。

「ワン様……お言葉ですが……」

「身動きがトれまセん!」

「……は?」

 困りはてた様子のイヌとゲジゲジ。そして、あからさまに不機嫌そうなサル。
 よく見ると、イヌは少年に、ゲジゲジは女の子に、どちらも片手で掴まれている。
 ……けどねえ?

「キャキャ! お前らさー! ふざけるのも大概にしてよ? そんな子どもサッサと片付けて、ヒーローを殺せって! 早くさ!」

 子どもに掴まれて動けなくなる怪人など、いないだろう。
 しかし、二体とも動けない。もちろん、演技をしているわけでもなさそうだ。

「ワン様……! 恐れながら、ピクリとも動けません!」

「キシャアアァァ! うごけナい! うごけナい!」

 屈強な怪人が、子どもに抑え込まれてる……?
 そんなバカなことが……!

「ウキィ! そうなんだ……じゃあさ、もうお前ら〝開け〟ちゃっていい?」

 サルが、つぶやく。
 ん? 開ける……?

「あ、あひぃ?! わ、わ、ワン様?!」

「イヤだ! イヤあぁああ! やメて! やメてェェェェエ!!」

 急におびえだす二体の怪人。
 子どもたちの手を振りほどこうと必死だ。

「な、何だコイツら? 〝開ける〟って一体?」

「二人とも尋常な怖がり方じゃないわ。あの〝ワン〟ってヤツ、何をしようというの?」

「お前ら、落ち着かんかい! うっとうしいのう!」

 マンデガンの三人も、怪人たちの異常な取り乱し方に狼狽うろたえている。

「おっと……!」

 死に物狂いで暴れた結果、イヌは男の子の手を、大量の体毛を犠牲にしつつ振りほどき、ゲジゲジは掴まれていた体皮の一部をバリバリと引きちぎって、女の子から離れた。

「逃げられちゃった。そこまで必死になるなんて、すごいわね」

「フゥ……フゥ……やってやる! 〝開け〟られるのは絶対イヤだ!」

「殺ス! 殺さなキゃ! 〝開ケ〟られタら終ワり! 終わっチャう!」

 二体とも、必死の形相だ。よっぽど〝開く〟ってのが恐ろしいんだね。
 ……少し興味もあるが、今はそれどころじゃない。死ぬ気で襲って来る敵は、少々厄介だぞ?

「ガアッ! その首、噛み砕いてやる!」

「キシャアアアアアァ! お前シね! 死んデ! 死んデ!」

 怪人たちが、奇声を発しながら子どもたちに襲い掛かる。ああっ! 危ない!

「おっと、ストップだ! ハリマス・ソード!」

「アンタの相手は私でしょ? ジョンナラン・ウィップ!」

 ブルーとレッドが立ちはだかる。
 ……何だ? 二人とも、異常に動きが良くないかい?

「ええい! 邪魔するな!」

「ワンさマに、イイとコ見せナいと、まずイんだよォォ!」

 二人に構わず突進する怪人たち。おいおい! 真正面から怪人の攻撃を受けたら、さすがのマンデガン・ジャケットも……

「キャイン!」

 ひと声、甲高く鳴いてゴロゴロと、のたうち回るイヌ。

「ギエェエェェ?!」

 多くの足を床にバラまきながら、ヨロヨロと後ずさるゲジゲジ。
 ブルーとレッド、二人とも目にも止まらぬ速さの攻撃だ。

「そんなバカな! お前らさっきまで、手も足も出なかったのに!」

 サルが、驚きの声をあげる。

「言っただろう。改良したのだ」

 大ちゃんが、そう言ったあと、軽く鼻で笑う。
 ええ?! 改良って! ボクの作ったジャケットを、小学生が?
 ……ボクは悪い夢でも見ているのか?

「ウキィィィ! 信じられないけど、どうやらお前は本当に、僕の攻撃を避けながら、僕に見えないほどのスピードでアイツらの装備を改良したみたいだな!」

 ……? なんだって?
 攻撃を避けながら? いったいそれはどういう……

「言葉の通り、ジャケットをボロボロにされたので、戦闘中に改良したのだ」

 ボクの隣に、いつの間にか大ちゃんが立っていた。

「な……何て速さだ!」

 全く気付かなかったぞ?!
 驚いて絶句しているボクに、彼はブレスレットを手渡して囁く。

「これを返しておこう。彼らの装備と同じように、パワーアップしておいた」

 ボクのマンデガン・ジャケットだ。
 嘘だろう? 彼はずっと、サル怪人と戦っていて、ジャケットをイジる暇なんて、無かったはずだ!

「あと、マントはオマケだ。しばらくここで、じっとしていて欲しい」

 そういうと、大ちゃんは一瞬にして、サルの前に戻った。姿を見失ってキョロキョロしていたサルが、ビクッとしている。

「……え? マント? オマケ? まさか!」

 ボクは、半透明マント越しに、自分の右手を確認した。

「驚いた! なるほど……このスピードなら、確かに可能かもしれないなあ!」

 ボクの〝半透明マント〟は、完全な〝透明マント〟に改良されていたんだ。
 ……いやはや、脱帽だね。

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