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春休み
特殊武装戦隊マンデガン VS 救星戦隊プラネットアース (結)
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「キキッ! 長いよ!」
いろいろ長すぎる!
この僕、パンタル・ワン様は、それでなくても忙しいんだからね?
「キャキャキャ! お前のスピードと、メカニックとしての技術は良く分かったよ。スゴいスゴい!」
目の前にいる銀色の子どもに拍手だ。
この僕に見えないほどのスピードで動き回れるヤツが居るとは。
「まるで曲芸だね。キャキャッ!」
まあ、コイツはそっち方向に特化したヤツなんだろう。
高速で移動する、修理の専門家。確かに厄介だ。
「けど僕はまだ、ほとんど本気を出していない。チカラを使えば使うほど、後のメンテナンスに時間が掛かっちゃうからね」
そんな事で、ここの建設スケジュールが遅れたら、ボスに怒られちゃうじゃないか。
だから、僕が本気を出すわけにはいかない。それなのに、アイツらと来たら!
「ガルルルッ! 本当にパワーアップしてやがる!」
「キシャシャアアァッ! どウいう事?! なンでこんなニ強イの?!」
部下の〝イヌ〟と〝ゲジゲジ〟は、復活したヒーロー気取りの三人組を相手に苦戦している。
僕の特殊能力で、かなりパワーアップしてるはずなんだけど。役立たずだなあ!
……仕方がない。やっぱり〝制御弁〟を開けてしまおう。
「もういいよ、お前ら」
という僕の声に〝イヌゲジコンビ〟は、慌てふためく。
「わふぁあぁぁ! わ、ワン様ぁ?!」
「イぁああ!! ヤめテッ! ヤめテぇぇぇぇえ!」
いくら強くなっても〝人間部分〟を残さないと思考を巡らせて忠実に命令をこなす事が難しくなる。それが〝怪物〟ではなく〝怪人〟を作る理由。
……ウチの組織は動物園じゃないんだ。当然だよねえ。
「わふぁぁぁ! お願いです、やめてください! 助けてください!」
「シャギギギィッ! ヒトでナし! おニ! 悪魔ぁァぁア!!」
……ああっ! たまらないよ!
部下が、絶望のどん底に突き落とされる時の悲鳴は、何度聞いても心地いいね!
「だから〝開放〟って何なんだよ!」
青いヒーローが、なかなかに頭の悪い質問をしてきたよ。
「うるさいなあ、もう! すぐに分かるよ!」
みんなは気付いた? 分かるよね? ね?
怪人の〝人間部分〟を守っている〝制御弁〟を開放すると、彼らの血肉は、それ以外の部分に食い尽くされて、すさまじい強さの〝怪物〟になるんだ。
あはは! うんうん。もちろん元には戻れないよ。可哀想だよねえ。
「キャキャッ! それじゃ、いっちゃおうか! ……開放!」
ちなみに〝制御弁〟を開けられるのは、僕たち幹部を含む〝上級構成員〟の特権なんだ。
どう? うらやましいでしょ?
「はっ! がふっ! ぐっはあああ! いやああああ! 痛い! いたあああい!!」
「キョギョギョギョギャアアアアアアアッ! イギャアアアアアアッ!!」
痛いよねぇ! 苦しいよねえ! だって、イヌやゲジゲジに、体を食べられるのと同じだもん。
いいんだ! いいんだよ! 痛いときは痛いって泣き叫んでも良いんだよ?
頑張って。もうちょっとだから!
ああ! なんて素敵な時間なんだ!
もっと苦しんで!
もっと叫んで!
もっと泣きわめいてよ!
「どうしたんじゃ、コイツら?!」
「何よ? なんなのよ、これ!」
よしよし。かわいいヤツらだ。
悲鳴をあげ、メリメリと音を立てながら、イヌとゲジゲジは、見た目もどんどん獣に近付いていく。
あはは、ヒーローども、驚いているなあ……妙なガキどもは、顔色ひとつ変えないけど。
まあいいや。さあ、ショーの始まりだ!
「暴れろ! 化け物!」
完全に〝制御弁〟を開けたよ。スピード、パワーともに、ざっと見積もっても、さっきまでの10倍にはアップしているはずだ。
「グウォオオオオオン!」
「ゲジャジャシャシャ!」
ヒーローどもに襲い掛かるイヌとゲジ。ああなったら、さすがの僕も〝待て〟と〝殺せ〟ぐらいしか命令できないけど。
まあいいや。さっさと全員始末しちゃってー!
「……チッ。いまの、ちょっとアイツに似てたな。キキッ……ムカつく」
イヌのスピードに、青いヒーローはついて行けない。
「何なんだ、コイツ、強……ぐあっ!」
ゲジゲジのパワーに、赤と黄色は、押しつぶされようとしている。
「ぬおおっ! 信じられんパワーじゃあぁ!」
「姿が変化したせいなの? 動けないっ!」
よしよし、いいぞ! そのまま一気に殺しちゃおうか!
「……やはり、即席のパワーアップでは、無理があったようだな」
急に、目の前の〝修理専門ヒーロー〟が、ポツリと言った。
「仕方ないよ。あとは僕たちがやろう」
「えへへ。了解!」
「やー! ガマン終了―!」
「それじゃ、いくわよ?」
今まで、静かに戦いを見守っていたガキどもが、急に動き始めた。
一斉にこちらを向いて叫ぶ。
「変身!」
「武装!」
まばゆい光が辺りを照らす。
……何だよ? いったい何が起きたんだ?!
「キキッ?! お前らは……!」
光が収まると、そこには〝修理専門ヒーロー〟とは色違いのラインが入った装備のガキ共が居た。
「にゃー! サルはレッドの獲物だからさー、イヌはもらっていいかにゃ?」
「ああ、構わねぇぜ! よく我慢したな、イエロー!」
「じゃあ、私とグリーンは、戦闘員ねぇん?」
「わかりました。お任せ下さい」
勝手に分担を決め始めるガキども。
笑わせてくれるじゃん。勝てるわけないのにさ!
「あ、そっか……それじゃ俺はゲジゲジかよ! しゃーねーなあ!」
面倒くさそうに、マンデガンレッドとイエローを押しつぶそうとしているゲジゲジに、青いラインのガキが近づいていく。
「虫、キライなんだよなぁ……」
そう言って、手のひらをゲジゲジに向けた次の瞬間、ズガン! という音が鳴り響いた。
「ゲシャアアァァッ!」
突然地面から生えた、鋭いトゲに、ゲジゲジが串刺しにされ、断末魔が室内にこだまする。
「なに?!」
何なんだ、今の?!
「アースぅん? 触りたくないからって、それは可哀想じゃないのぉン?」
ピンクのラインが入ったスーツのガキは、そう言うと、手に持った杖を、頭上に高々と振り上げた。
「HuLex UmThel eLEc iL」
突然の雷光。宙に浮かんでいた戦闘員は、手足をジタバタと動かしながら、黒焦げにされていく。
「にゃー! ピンクも似たような物にゃ。このままじゃ、そういう〝不思議〟で〝フワッとした〟戦隊だと思われるにゃあ!」
黄色いラインのガキが、困ったような口調で叫ぶ。
「……お、お前ら一体?!」
ふざけるなよ! 何なんだ、コイツらの力は? これじゃまるで、超能力者か、魔法使いじゃないか!
「ふふ。おサルさん凄いですね。ほぼ正解ですよ。〝超能力〟と〝魔法〟です。あと〝大いなる自然の力〟を忘れてはいけません」
緑のラインのガキ! いま僕の心を読んだ?!
「ほらぁ! やっぱり〝フワッと戦隊〟だと思われたにゃ! 私が汚名を晴らすにゃあ!」
「なんだよイエロー〝フワッと戦隊〟って……」
「アースは黙ってるにゃ。近接戦闘もイケてるところ、見せてやるんにゃあ。魔神の爪!」
黄色いガキの拳から、長い爪が飛び出す。そして次の瞬間!
「ギャインッ!」
マンデガン・ブルーに伸し掛かっていたイヌが、一瞬で切り刻まれて、無数の肉片に変わった。
「な……?!」
「ざっとこんなモンにゃ!」
黄色いラインのガキは、いつの間にかイヌが居た場所まで移動して、得意げにしている。
「今の、お前がやったのか……?!」
「何よぉ! 見えてなかったのん?! 出来るだけノロノロゆっくり、やってあげたのににゃあ!」
今の動きがノロノロ?! 何を言って……ん?
「な、何だ?」
黄色いガキのセリフが終わると同時に、空中に無数の〝岩〟が現れた。
ゴウッ! という音が轟き、散らばったイヌの残骸めがけて、雨のように降り注いだ。
「あにゃあ! お前も遅いよノーム! そいつ、とっくに死んじゃってるからにゃあ?!」
『そうは申されましても、この〝効果〟は自動で付随する物でして……』
誰と話しているのか知らないけど、何なんだよ、この岩!
ズガガガガガガ! 無数の岩は、爆音とともに、イヌの肉片をチリに変えてゆく。
「どういう事なんだ? なんの魔法だよコレ!」
「にゃー?! あーもー! やっぱ〝ふわっと戦隊〟だと思われちゃったじゃにゃいかー!」
思うか! これのどこがフワッとしてるんだよ!
マジでヤバイぞ、コイツら……信じられない強さだ。
「す……凄い」
「信じられないわ! あなた達は一体?」
「何者なんじゃ?!」
あの〝マンデガン〟とかいうヒーロー3人組が、驚きの声を上げている。
お前ら、知り合いじゃなかったのかよ!
……まあ確かに、背格好も装備も、そして何より、強さも段違いだけど。
銀のスーツに5色のライン。全員、見た目が小学生くらいの、謎のヒーローたち。
「何だよ! お前らいったい、何なんだ?!」
僕の声に、五人のヒーローは、待ってましたとばかりに、目にも止まらぬ速さで整列する。
っていうか……あれ? もしかして、待ってたの?
「俺たちは、地球を救うために選ばれた」
青が、右手の拳を握りしめ、胸を叩く。
「科学と!」
赤が叫ぶ。
「超常と!」
緑が叫ぶ。
「魔法と!」
ピンクが叫ぶ。
「銀河と!」
黄色が叫ぶ。
「大いなる自然の戦士! その名も!」
青が再び叫ぶと、全員が高々と腕を突き上げ、真上を指差す。
「救星戦隊プラネット・アース!」
ドーン! という音とともに、五人の背後に爆発が起きた。どういう仕組なのか知らないけど、危ないから外でやってよ!
「き、救星戦隊……」
「プラネット・アース!」
呆然としている〝マンデガン〟ども。
本当に知らなかったんだな……
「残念だったな、ダーク・ソサイエティ! お前らの悪事もここまでだ!」
くそぉ……マズいぞ……!
ガキだと思って油断したよ。正直、本気を出した僕でも、あの五人には敵わないだろう。
「さて、それでは始めようか。お前の相手は私だ」
赤いヤツが、歩み出て言った。
……なんだよ、超ラッキー! コイツ、一人で戦うつもりか!
たぶんこの赤いヤツ、修理に特化した〝メカニック担当〟だ。あの五人の中では最弱だろう。うまく捕まえて人質にすれば、逃げ切れる!
「パープル・ブレード」
紫色に光る剣を片手に、近づいて来る最弱メカニック。よしよし、一瞬で動けなくしてやる。
「ウキィィィッ! フルパワーだ、食らえ!」
全力を出した僕の強さに、せいぜい驚くがいい!
「まずは腕の一本でも切り落として……」
ザンッ! と、心地よい音が響く。
よし! このまま、もがくガキをひっ捕まえて……え?!
「ひぃッ? イギャアアアアアッ?! 腕が! 僕の腕がああぁぁぁあ?!」
痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 僕の腕が切り落とされて?!
何が起きたの?! あり得ない! あり得ない! 僕の体は、普通の攻撃なんかで傷付けられるはずが無いんだ。何でこんな!
「何でお前みたいなヤツに、このパンタル・ワン様が?! 何で? 何が起きたの?!」
〝メカニック担当〟は、切り取られた僕の腕を持ったまま、光の剣を僕に向けて構えている。
その姿が、二度、三度と揺らぐたび、僕の体は切り刻まれていく。
「痛いいぃぃ! やめっ! 助けっ! ひぎいいぃぃ!」
コイツのどこが〝メカニック担当〟だって?!
こんなヤツに敵うわけないじゃんか!
「終わりだ。大人げ無いが、さすがの私も少々怒っている。覚悟するがいい」
「大人げないって、お前、子どもだろ?!」
の〝だろ?!〟を、僕は言うことが出来なかった。
首をハネられちゃったからね。
いろいろ長すぎる!
この僕、パンタル・ワン様は、それでなくても忙しいんだからね?
「キャキャキャ! お前のスピードと、メカニックとしての技術は良く分かったよ。スゴいスゴい!」
目の前にいる銀色の子どもに拍手だ。
この僕に見えないほどのスピードで動き回れるヤツが居るとは。
「まるで曲芸だね。キャキャッ!」
まあ、コイツはそっち方向に特化したヤツなんだろう。
高速で移動する、修理の専門家。確かに厄介だ。
「けど僕はまだ、ほとんど本気を出していない。チカラを使えば使うほど、後のメンテナンスに時間が掛かっちゃうからね」
そんな事で、ここの建設スケジュールが遅れたら、ボスに怒られちゃうじゃないか。
だから、僕が本気を出すわけにはいかない。それなのに、アイツらと来たら!
「ガルルルッ! 本当にパワーアップしてやがる!」
「キシャシャアアァッ! どウいう事?! なンでこんなニ強イの?!」
部下の〝イヌ〟と〝ゲジゲジ〟は、復活したヒーロー気取りの三人組を相手に苦戦している。
僕の特殊能力で、かなりパワーアップしてるはずなんだけど。役立たずだなあ!
……仕方がない。やっぱり〝制御弁〟を開けてしまおう。
「もういいよ、お前ら」
という僕の声に〝イヌゲジコンビ〟は、慌てふためく。
「わふぁあぁぁ! わ、ワン様ぁ?!」
「イぁああ!! ヤめテッ! ヤめテぇぇぇぇえ!」
いくら強くなっても〝人間部分〟を残さないと思考を巡らせて忠実に命令をこなす事が難しくなる。それが〝怪物〟ではなく〝怪人〟を作る理由。
……ウチの組織は動物園じゃないんだ。当然だよねえ。
「わふぁぁぁ! お願いです、やめてください! 助けてください!」
「シャギギギィッ! ヒトでナし! おニ! 悪魔ぁァぁア!!」
……ああっ! たまらないよ!
部下が、絶望のどん底に突き落とされる時の悲鳴は、何度聞いても心地いいね!
「だから〝開放〟って何なんだよ!」
青いヒーローが、なかなかに頭の悪い質問をしてきたよ。
「うるさいなあ、もう! すぐに分かるよ!」
みんなは気付いた? 分かるよね? ね?
怪人の〝人間部分〟を守っている〝制御弁〟を開放すると、彼らの血肉は、それ以外の部分に食い尽くされて、すさまじい強さの〝怪物〟になるんだ。
あはは! うんうん。もちろん元には戻れないよ。可哀想だよねえ。
「キャキャッ! それじゃ、いっちゃおうか! ……開放!」
ちなみに〝制御弁〟を開けられるのは、僕たち幹部を含む〝上級構成員〟の特権なんだ。
どう? うらやましいでしょ?
「はっ! がふっ! ぐっはあああ! いやああああ! 痛い! いたあああい!!」
「キョギョギョギョギャアアアアアアアッ! イギャアアアアアアッ!!」
痛いよねぇ! 苦しいよねえ! だって、イヌやゲジゲジに、体を食べられるのと同じだもん。
いいんだ! いいんだよ! 痛いときは痛いって泣き叫んでも良いんだよ?
頑張って。もうちょっとだから!
ああ! なんて素敵な時間なんだ!
もっと苦しんで!
もっと叫んで!
もっと泣きわめいてよ!
「どうしたんじゃ、コイツら?!」
「何よ? なんなのよ、これ!」
よしよし。かわいいヤツらだ。
悲鳴をあげ、メリメリと音を立てながら、イヌとゲジゲジは、見た目もどんどん獣に近付いていく。
あはは、ヒーローども、驚いているなあ……妙なガキどもは、顔色ひとつ変えないけど。
まあいいや。さあ、ショーの始まりだ!
「暴れろ! 化け物!」
完全に〝制御弁〟を開けたよ。スピード、パワーともに、ざっと見積もっても、さっきまでの10倍にはアップしているはずだ。
「グウォオオオオオン!」
「ゲジャジャシャシャ!」
ヒーローどもに襲い掛かるイヌとゲジ。ああなったら、さすがの僕も〝待て〟と〝殺せ〟ぐらいしか命令できないけど。
まあいいや。さっさと全員始末しちゃってー!
「……チッ。いまの、ちょっとアイツに似てたな。キキッ……ムカつく」
イヌのスピードに、青いヒーローはついて行けない。
「何なんだ、コイツ、強……ぐあっ!」
ゲジゲジのパワーに、赤と黄色は、押しつぶされようとしている。
「ぬおおっ! 信じられんパワーじゃあぁ!」
「姿が変化したせいなの? 動けないっ!」
よしよし、いいぞ! そのまま一気に殺しちゃおうか!
「……やはり、即席のパワーアップでは、無理があったようだな」
急に、目の前の〝修理専門ヒーロー〟が、ポツリと言った。
「仕方ないよ。あとは僕たちがやろう」
「えへへ。了解!」
「やー! ガマン終了―!」
「それじゃ、いくわよ?」
今まで、静かに戦いを見守っていたガキどもが、急に動き始めた。
一斉にこちらを向いて叫ぶ。
「変身!」
「武装!」
まばゆい光が辺りを照らす。
……何だよ? いったい何が起きたんだ?!
「キキッ?! お前らは……!」
光が収まると、そこには〝修理専門ヒーロー〟とは色違いのラインが入った装備のガキ共が居た。
「にゃー! サルはレッドの獲物だからさー、イヌはもらっていいかにゃ?」
「ああ、構わねぇぜ! よく我慢したな、イエロー!」
「じゃあ、私とグリーンは、戦闘員ねぇん?」
「わかりました。お任せ下さい」
勝手に分担を決め始めるガキども。
笑わせてくれるじゃん。勝てるわけないのにさ!
「あ、そっか……それじゃ俺はゲジゲジかよ! しゃーねーなあ!」
面倒くさそうに、マンデガンレッドとイエローを押しつぶそうとしているゲジゲジに、青いラインのガキが近づいていく。
「虫、キライなんだよなぁ……」
そう言って、手のひらをゲジゲジに向けた次の瞬間、ズガン! という音が鳴り響いた。
「ゲシャアアァァッ!」
突然地面から生えた、鋭いトゲに、ゲジゲジが串刺しにされ、断末魔が室内にこだまする。
「なに?!」
何なんだ、今の?!
「アースぅん? 触りたくないからって、それは可哀想じゃないのぉン?」
ピンクのラインが入ったスーツのガキは、そう言うと、手に持った杖を、頭上に高々と振り上げた。
「HuLex UmThel eLEc iL」
突然の雷光。宙に浮かんでいた戦闘員は、手足をジタバタと動かしながら、黒焦げにされていく。
「にゃー! ピンクも似たような物にゃ。このままじゃ、そういう〝不思議〟で〝フワッとした〟戦隊だと思われるにゃあ!」
黄色いラインのガキが、困ったような口調で叫ぶ。
「……お、お前ら一体?!」
ふざけるなよ! 何なんだ、コイツらの力は? これじゃまるで、超能力者か、魔法使いじゃないか!
「ふふ。おサルさん凄いですね。ほぼ正解ですよ。〝超能力〟と〝魔法〟です。あと〝大いなる自然の力〟を忘れてはいけません」
緑のラインのガキ! いま僕の心を読んだ?!
「ほらぁ! やっぱり〝フワッと戦隊〟だと思われたにゃ! 私が汚名を晴らすにゃあ!」
「なんだよイエロー〝フワッと戦隊〟って……」
「アースは黙ってるにゃ。近接戦闘もイケてるところ、見せてやるんにゃあ。魔神の爪!」
黄色いガキの拳から、長い爪が飛び出す。そして次の瞬間!
「ギャインッ!」
マンデガン・ブルーに伸し掛かっていたイヌが、一瞬で切り刻まれて、無数の肉片に変わった。
「な……?!」
「ざっとこんなモンにゃ!」
黄色いラインのガキは、いつの間にかイヌが居た場所まで移動して、得意げにしている。
「今の、お前がやったのか……?!」
「何よぉ! 見えてなかったのん?! 出来るだけノロノロゆっくり、やってあげたのににゃあ!」
今の動きがノロノロ?! 何を言って……ん?
「な、何だ?」
黄色いガキのセリフが終わると同時に、空中に無数の〝岩〟が現れた。
ゴウッ! という音が轟き、散らばったイヌの残骸めがけて、雨のように降り注いだ。
「あにゃあ! お前も遅いよノーム! そいつ、とっくに死んじゃってるからにゃあ?!」
『そうは申されましても、この〝効果〟は自動で付随する物でして……』
誰と話しているのか知らないけど、何なんだよ、この岩!
ズガガガガガガ! 無数の岩は、爆音とともに、イヌの肉片をチリに変えてゆく。
「どういう事なんだ? なんの魔法だよコレ!」
「にゃー?! あーもー! やっぱ〝ふわっと戦隊〟だと思われちゃったじゃにゃいかー!」
思うか! これのどこがフワッとしてるんだよ!
マジでヤバイぞ、コイツら……信じられない強さだ。
「す……凄い」
「信じられないわ! あなた達は一体?」
「何者なんじゃ?!」
あの〝マンデガン〟とかいうヒーロー3人組が、驚きの声を上げている。
お前ら、知り合いじゃなかったのかよ!
……まあ確かに、背格好も装備も、そして何より、強さも段違いだけど。
銀のスーツに5色のライン。全員、見た目が小学生くらいの、謎のヒーローたち。
「何だよ! お前らいったい、何なんだ?!」
僕の声に、五人のヒーローは、待ってましたとばかりに、目にも止まらぬ速さで整列する。
っていうか……あれ? もしかして、待ってたの?
「俺たちは、地球を救うために選ばれた」
青が、右手の拳を握りしめ、胸を叩く。
「科学と!」
赤が叫ぶ。
「超常と!」
緑が叫ぶ。
「魔法と!」
ピンクが叫ぶ。
「銀河と!」
黄色が叫ぶ。
「大いなる自然の戦士! その名も!」
青が再び叫ぶと、全員が高々と腕を突き上げ、真上を指差す。
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ドーン! という音とともに、五人の背後に爆発が起きた。どういう仕組なのか知らないけど、危ないから外でやってよ!
「き、救星戦隊……」
「プラネット・アース!」
呆然としている〝マンデガン〟ども。
本当に知らなかったんだな……
「残念だったな、ダーク・ソサイエティ! お前らの悪事もここまでだ!」
くそぉ……マズいぞ……!
ガキだと思って油断したよ。正直、本気を出した僕でも、あの五人には敵わないだろう。
「さて、それでは始めようか。お前の相手は私だ」
赤いヤツが、歩み出て言った。
……なんだよ、超ラッキー! コイツ、一人で戦うつもりか!
たぶんこの赤いヤツ、修理に特化した〝メカニック担当〟だ。あの五人の中では最弱だろう。うまく捕まえて人質にすれば、逃げ切れる!
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紫色に光る剣を片手に、近づいて来る最弱メカニック。よしよし、一瞬で動けなくしてやる。
「ウキィィィッ! フルパワーだ、食らえ!」
全力を出した僕の強さに、せいぜい驚くがいい!
「まずは腕の一本でも切り落として……」
ザンッ! と、心地よい音が響く。
よし! このまま、もがくガキをひっ捕まえて……え?!
「ひぃッ? イギャアアアアアッ?! 腕が! 僕の腕がああぁぁぁあ?!」
痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 僕の腕が切り落とされて?!
何が起きたの?! あり得ない! あり得ない! 僕の体は、普通の攻撃なんかで傷付けられるはずが無いんだ。何でこんな!
「何でお前みたいなヤツに、このパンタル・ワン様が?! 何で? 何が起きたの?!」
〝メカニック担当〟は、切り取られた僕の腕を持ったまま、光の剣を僕に向けて構えている。
その姿が、二度、三度と揺らぐたび、僕の体は切り刻まれていく。
「痛いいぃぃ! やめっ! 助けっ! ひぎいいぃぃ!」
コイツのどこが〝メカニック担当〟だって?!
こんなヤツに敵うわけないじゃんか!
「終わりだ。大人げ無いが、さすがの私も少々怒っている。覚悟するがいい」
「大人げないって、お前、子どもだろ?!」
の〝だろ?!〟を、僕は言うことが出来なかった。
首をハネられちゃったからね。
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順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
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ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
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