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春休み
特殊武装戦隊マンデガン VS 救星戦隊プラネットアース (結)
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「キキッ! 長いよ!」
いろいろ長すぎる!
この僕、パンタル・ワン様は、それでなくても忙しいんだからね?
「キャキャキャ! お前のスピードと、メカニックとしての技術は良く分かったよ。スゴいスゴい!」
目の前にいる銀色の子どもに拍手だ。
この僕に見えないほどのスピードで動き回れるヤツが居るとは。
「まるで曲芸だね。キャキャッ!」
まあ、コイツはそっち方向に特化したヤツなんだろう。
高速で移動する、修理の専門家。確かに厄介だ。
「けど僕はまだ、ほとんど本気を出していない。チカラを使えば使うほど、後のメンテナンスに時間が掛かっちゃうからね」
そんな事で、ここの建設スケジュールが遅れたら、ボスに怒られちゃうじゃないか。
だから、僕が本気を出すわけにはいかない。それなのに、アイツらと来たら!
「ガルルルッ! 本当にパワーアップしてやがる!」
「キシャシャアアァッ! どウいう事?! なンでこんなニ強イの?!」
部下の〝イヌ〟と〝ゲジゲジ〟は、復活したヒーロー気取りの三人組を相手に苦戦している。
僕の特殊能力で、かなりパワーアップしてるはずなんだけど。役立たずだなあ!
……仕方がない。やっぱり〝制御弁〟を開けてしまおう。
「もういいよ、お前ら」
という僕の声に〝イヌゲジコンビ〟は、慌てふためく。
「わふぁあぁぁ! わ、ワン様ぁ?!」
「イぁああ!! ヤめテッ! ヤめテぇぇぇぇえ!」
いくら強くなっても〝人間部分〟を残さないと思考を巡らせて忠実に命令をこなす事が難しくなる。それが〝怪物〟ではなく〝怪人〟を作る理由。
……ウチの組織は動物園じゃないんだ。当然だよねえ。
「わふぁぁぁ! お願いです、やめてください! 助けてください!」
「シャギギギィッ! ヒトでナし! おニ! 悪魔ぁァぁア!!」
……ああっ! たまらないよ!
部下が、絶望のどん底に突き落とされる時の悲鳴は、何度聞いても心地いいね!
「だから〝開放〟って何なんだよ!」
青いヒーローが、なかなかに頭の悪い質問をしてきたよ。
「うるさいなあ、もう! すぐに分かるよ!」
みんなは気付いた? 分かるよね? ね?
怪人の〝人間部分〟を守っている〝制御弁〟を開放すると、彼らの血肉は、それ以外の部分に食い尽くされて、すさまじい強さの〝怪物〟になるんだ。
あはは! うんうん。もちろん元には戻れないよ。可哀想だよねえ。
「キャキャッ! それじゃ、いっちゃおうか! ……開放!」
ちなみに〝制御弁〟を開けられるのは、僕たち幹部を含む〝上級構成員〟の特権なんだ。
どう? うらやましいでしょ?
「はっ! がふっ! ぐっはあああ! いやああああ! 痛い! いたあああい!!」
「キョギョギョギョギャアアアアアアアッ! イギャアアアアアアッ!!」
痛いよねぇ! 苦しいよねえ! だって、イヌやゲジゲジに、体を食べられるのと同じだもん。
いいんだ! いいんだよ! 痛いときは痛いって泣き叫んでも良いんだよ?
頑張って。もうちょっとだから!
ああ! なんて素敵な時間なんだ!
もっと苦しんで!
もっと叫んで!
もっと泣きわめいてよ!
「どうしたんじゃ、コイツら?!」
「何よ? なんなのよ、これ!」
よしよし。かわいいヤツらだ。
悲鳴をあげ、メリメリと音を立てながら、イヌとゲジゲジは、見た目もどんどん獣に近付いていく。
あはは、ヒーローども、驚いているなあ……妙なガキどもは、顔色ひとつ変えないけど。
まあいいや。さあ、ショーの始まりだ!
「暴れろ! 化け物!」
完全に〝制御弁〟を開けたよ。スピード、パワーともに、ざっと見積もっても、さっきまでの10倍にはアップしているはずだ。
「グウォオオオオオン!」
「ゲジャジャシャシャ!」
ヒーローどもに襲い掛かるイヌとゲジ。ああなったら、さすがの僕も〝待て〟と〝殺せ〟ぐらいしか命令できないけど。
まあいいや。さっさと全員始末しちゃってー!
「……チッ。いまの、ちょっとアイツに似てたな。キキッ……ムカつく」
イヌのスピードに、青いヒーローはついて行けない。
「何なんだ、コイツ、強……ぐあっ!」
ゲジゲジのパワーに、赤と黄色は、押しつぶされようとしている。
「ぬおおっ! 信じられんパワーじゃあぁ!」
「姿が変化したせいなの? 動けないっ!」
よしよし、いいぞ! そのまま一気に殺しちゃおうか!
「……やはり、即席のパワーアップでは、無理があったようだな」
急に、目の前の〝修理専門ヒーロー〟が、ポツリと言った。
「仕方ないよ。あとは僕たちがやろう」
「えへへ。了解!」
「やー! ガマン終了―!」
「それじゃ、いくわよ?」
今まで、静かに戦いを見守っていたガキどもが、急に動き始めた。
一斉にこちらを向いて叫ぶ。
「変身!」
「武装!」
まばゆい光が辺りを照らす。
……何だよ? いったい何が起きたんだ?!
「キキッ?! お前らは……!」
光が収まると、そこには〝修理専門ヒーロー〟とは色違いのラインが入った装備のガキ共が居た。
「にゃー! サルはレッドの獲物だからさー、イヌはもらっていいかにゃ?」
「ああ、構わねぇぜ! よく我慢したな、イエロー!」
「じゃあ、私とグリーンは、戦闘員ねぇん?」
「わかりました。お任せ下さい」
勝手に分担を決め始めるガキども。
笑わせてくれるじゃん。勝てるわけないのにさ!
「あ、そっか……それじゃ俺はゲジゲジかよ! しゃーねーなあ!」
面倒くさそうに、マンデガンレッドとイエローを押しつぶそうとしているゲジゲジに、青いラインのガキが近づいていく。
「虫、キライなんだよなぁ……」
そう言って、手のひらをゲジゲジに向けた次の瞬間、ズガン! という音が鳴り響いた。
「ゲシャアアァァッ!」
突然地面から生えた、鋭いトゲに、ゲジゲジが串刺しにされ、断末魔が室内にこだまする。
「なに?!」
何なんだ、今の?!
「アースぅん? 触りたくないからって、それは可哀想じゃないのぉン?」
ピンクのラインが入ったスーツのガキは、そう言うと、手に持った杖を、頭上に高々と振り上げた。
「HuLex UmThel eLEc iL」
突然の雷光。宙に浮かんでいた戦闘員は、手足をジタバタと動かしながら、黒焦げにされていく。
「にゃー! ピンクも似たような物にゃ。このままじゃ、そういう〝不思議〟で〝フワッとした〟戦隊だと思われるにゃあ!」
黄色いラインのガキが、困ったような口調で叫ぶ。
「……お、お前ら一体?!」
ふざけるなよ! 何なんだ、コイツらの力は? これじゃまるで、超能力者か、魔法使いじゃないか!
「ふふ。おサルさん凄いですね。ほぼ正解ですよ。〝超能力〟と〝魔法〟です。あと〝大いなる自然の力〟を忘れてはいけません」
緑のラインのガキ! いま僕の心を読んだ?!
「ほらぁ! やっぱり〝フワッと戦隊〟だと思われたにゃ! 私が汚名を晴らすにゃあ!」
「なんだよイエロー〝フワッと戦隊〟って……」
「アースは黙ってるにゃ。近接戦闘もイケてるところ、見せてやるんにゃあ。魔神の爪!」
黄色いガキの拳から、長い爪が飛び出す。そして次の瞬間!
「ギャインッ!」
マンデガン・ブルーに伸し掛かっていたイヌが、一瞬で切り刻まれて、無数の肉片に変わった。
「な……?!」
「ざっとこんなモンにゃ!」
黄色いラインのガキは、いつの間にかイヌが居た場所まで移動して、得意げにしている。
「今の、お前がやったのか……?!」
「何よぉ! 見えてなかったのん?! 出来るだけノロノロゆっくり、やってあげたのににゃあ!」
今の動きがノロノロ?! 何を言って……ん?
「な、何だ?」
黄色いガキのセリフが終わると同時に、空中に無数の〝岩〟が現れた。
ゴウッ! という音が轟き、散らばったイヌの残骸めがけて、雨のように降り注いだ。
「あにゃあ! お前も遅いよノーム! そいつ、とっくに死んじゃってるからにゃあ?!」
『そうは申されましても、この〝効果〟は自動で付随する物でして……』
誰と話しているのか知らないけど、何なんだよ、この岩!
ズガガガガガガ! 無数の岩は、爆音とともに、イヌの肉片をチリに変えてゆく。
「どういう事なんだ? なんの魔法だよコレ!」
「にゃー?! あーもー! やっぱ〝ふわっと戦隊〟だと思われちゃったじゃにゃいかー!」
思うか! これのどこがフワッとしてるんだよ!
マジでヤバイぞ、コイツら……信じられない強さだ。
「す……凄い」
「信じられないわ! あなた達は一体?」
「何者なんじゃ?!」
あの〝マンデガン〟とかいうヒーロー3人組が、驚きの声を上げている。
お前ら、知り合いじゃなかったのかよ!
……まあ確かに、背格好も装備も、そして何より、強さも段違いだけど。
銀のスーツに5色のライン。全員、見た目が小学生くらいの、謎のヒーローたち。
「何だよ! お前らいったい、何なんだ?!」
僕の声に、五人のヒーローは、待ってましたとばかりに、目にも止まらぬ速さで整列する。
っていうか……あれ? もしかして、待ってたの?
「俺たちは、地球を救うために選ばれた」
青が、右手の拳を握りしめ、胸を叩く。
「科学と!」
赤が叫ぶ。
「超常と!」
緑が叫ぶ。
「魔法と!」
ピンクが叫ぶ。
「銀河と!」
黄色が叫ぶ。
「大いなる自然の戦士! その名も!」
青が再び叫ぶと、全員が高々と腕を突き上げ、真上を指差す。
「救星戦隊プラネット・アース!」
ドーン! という音とともに、五人の背後に爆発が起きた。どういう仕組なのか知らないけど、危ないから外でやってよ!
「き、救星戦隊……」
「プラネット・アース!」
呆然としている〝マンデガン〟ども。
本当に知らなかったんだな……
「残念だったな、ダーク・ソサイエティ! お前らの悪事もここまでだ!」
くそぉ……マズいぞ……!
ガキだと思って油断したよ。正直、本気を出した僕でも、あの五人には敵わないだろう。
「さて、それでは始めようか。お前の相手は私だ」
赤いヤツが、歩み出て言った。
……なんだよ、超ラッキー! コイツ、一人で戦うつもりか!
たぶんこの赤いヤツ、修理に特化した〝メカニック担当〟だ。あの五人の中では最弱だろう。うまく捕まえて人質にすれば、逃げ切れる!
「パープル・ブレード」
紫色に光る剣を片手に、近づいて来る最弱メカニック。よしよし、一瞬で動けなくしてやる。
「ウキィィィッ! フルパワーだ、食らえ!」
全力を出した僕の強さに、せいぜい驚くがいい!
「まずは腕の一本でも切り落として……」
ザンッ! と、心地よい音が響く。
よし! このまま、もがくガキをひっ捕まえて……え?!
「ひぃッ? イギャアアアアアッ?! 腕が! 僕の腕がああぁぁぁあ?!」
痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 僕の腕が切り落とされて?!
何が起きたの?! あり得ない! あり得ない! 僕の体は、普通の攻撃なんかで傷付けられるはずが無いんだ。何でこんな!
「何でお前みたいなヤツに、このパンタル・ワン様が?! 何で? 何が起きたの?!」
〝メカニック担当〟は、切り取られた僕の腕を持ったまま、光の剣を僕に向けて構えている。
その姿が、二度、三度と揺らぐたび、僕の体は切り刻まれていく。
「痛いいぃぃ! やめっ! 助けっ! ひぎいいぃぃ!」
コイツのどこが〝メカニック担当〟だって?!
こんなヤツに敵うわけないじゃんか!
「終わりだ。大人げ無いが、さすがの私も少々怒っている。覚悟するがいい」
「大人げないって、お前、子どもだろ?!」
の〝だろ?!〟を、僕は言うことが出来なかった。
首をハネられちゃったからね。
いろいろ長すぎる!
この僕、パンタル・ワン様は、それでなくても忙しいんだからね?
「キャキャキャ! お前のスピードと、メカニックとしての技術は良く分かったよ。スゴいスゴい!」
目の前にいる銀色の子どもに拍手だ。
この僕に見えないほどのスピードで動き回れるヤツが居るとは。
「まるで曲芸だね。キャキャッ!」
まあ、コイツはそっち方向に特化したヤツなんだろう。
高速で移動する、修理の専門家。確かに厄介だ。
「けど僕はまだ、ほとんど本気を出していない。チカラを使えば使うほど、後のメンテナンスに時間が掛かっちゃうからね」
そんな事で、ここの建設スケジュールが遅れたら、ボスに怒られちゃうじゃないか。
だから、僕が本気を出すわけにはいかない。それなのに、アイツらと来たら!
「ガルルルッ! 本当にパワーアップしてやがる!」
「キシャシャアアァッ! どウいう事?! なンでこんなニ強イの?!」
部下の〝イヌ〟と〝ゲジゲジ〟は、復活したヒーロー気取りの三人組を相手に苦戦している。
僕の特殊能力で、かなりパワーアップしてるはずなんだけど。役立たずだなあ!
……仕方がない。やっぱり〝制御弁〟を開けてしまおう。
「もういいよ、お前ら」
という僕の声に〝イヌゲジコンビ〟は、慌てふためく。
「わふぁあぁぁ! わ、ワン様ぁ?!」
「イぁああ!! ヤめテッ! ヤめテぇぇぇぇえ!」
いくら強くなっても〝人間部分〟を残さないと思考を巡らせて忠実に命令をこなす事が難しくなる。それが〝怪物〟ではなく〝怪人〟を作る理由。
……ウチの組織は動物園じゃないんだ。当然だよねえ。
「わふぁぁぁ! お願いです、やめてください! 助けてください!」
「シャギギギィッ! ヒトでナし! おニ! 悪魔ぁァぁア!!」
……ああっ! たまらないよ!
部下が、絶望のどん底に突き落とされる時の悲鳴は、何度聞いても心地いいね!
「だから〝開放〟って何なんだよ!」
青いヒーローが、なかなかに頭の悪い質問をしてきたよ。
「うるさいなあ、もう! すぐに分かるよ!」
みんなは気付いた? 分かるよね? ね?
怪人の〝人間部分〟を守っている〝制御弁〟を開放すると、彼らの血肉は、それ以外の部分に食い尽くされて、すさまじい強さの〝怪物〟になるんだ。
あはは! うんうん。もちろん元には戻れないよ。可哀想だよねえ。
「キャキャッ! それじゃ、いっちゃおうか! ……開放!」
ちなみに〝制御弁〟を開けられるのは、僕たち幹部を含む〝上級構成員〟の特権なんだ。
どう? うらやましいでしょ?
「はっ! がふっ! ぐっはあああ! いやああああ! 痛い! いたあああい!!」
「キョギョギョギョギャアアアアアアアッ! イギャアアアアアアッ!!」
痛いよねぇ! 苦しいよねえ! だって、イヌやゲジゲジに、体を食べられるのと同じだもん。
いいんだ! いいんだよ! 痛いときは痛いって泣き叫んでも良いんだよ?
頑張って。もうちょっとだから!
ああ! なんて素敵な時間なんだ!
もっと苦しんで!
もっと叫んで!
もっと泣きわめいてよ!
「どうしたんじゃ、コイツら?!」
「何よ? なんなのよ、これ!」
よしよし。かわいいヤツらだ。
悲鳴をあげ、メリメリと音を立てながら、イヌとゲジゲジは、見た目もどんどん獣に近付いていく。
あはは、ヒーローども、驚いているなあ……妙なガキどもは、顔色ひとつ変えないけど。
まあいいや。さあ、ショーの始まりだ!
「暴れろ! 化け物!」
完全に〝制御弁〟を開けたよ。スピード、パワーともに、ざっと見積もっても、さっきまでの10倍にはアップしているはずだ。
「グウォオオオオオン!」
「ゲジャジャシャシャ!」
ヒーローどもに襲い掛かるイヌとゲジ。ああなったら、さすがの僕も〝待て〟と〝殺せ〟ぐらいしか命令できないけど。
まあいいや。さっさと全員始末しちゃってー!
「……チッ。いまの、ちょっとアイツに似てたな。キキッ……ムカつく」
イヌのスピードに、青いヒーローはついて行けない。
「何なんだ、コイツ、強……ぐあっ!」
ゲジゲジのパワーに、赤と黄色は、押しつぶされようとしている。
「ぬおおっ! 信じられんパワーじゃあぁ!」
「姿が変化したせいなの? 動けないっ!」
よしよし、いいぞ! そのまま一気に殺しちゃおうか!
「……やはり、即席のパワーアップでは、無理があったようだな」
急に、目の前の〝修理専門ヒーロー〟が、ポツリと言った。
「仕方ないよ。あとは僕たちがやろう」
「えへへ。了解!」
「やー! ガマン終了―!」
「それじゃ、いくわよ?」
今まで、静かに戦いを見守っていたガキどもが、急に動き始めた。
一斉にこちらを向いて叫ぶ。
「変身!」
「武装!」
まばゆい光が辺りを照らす。
……何だよ? いったい何が起きたんだ?!
「キキッ?! お前らは……!」
光が収まると、そこには〝修理専門ヒーロー〟とは色違いのラインが入った装備のガキ共が居た。
「にゃー! サルはレッドの獲物だからさー、イヌはもらっていいかにゃ?」
「ああ、構わねぇぜ! よく我慢したな、イエロー!」
「じゃあ、私とグリーンは、戦闘員ねぇん?」
「わかりました。お任せ下さい」
勝手に分担を決め始めるガキども。
笑わせてくれるじゃん。勝てるわけないのにさ!
「あ、そっか……それじゃ俺はゲジゲジかよ! しゃーねーなあ!」
面倒くさそうに、マンデガンレッドとイエローを押しつぶそうとしているゲジゲジに、青いラインのガキが近づいていく。
「虫、キライなんだよなぁ……」
そう言って、手のひらをゲジゲジに向けた次の瞬間、ズガン! という音が鳴り響いた。
「ゲシャアアァァッ!」
突然地面から生えた、鋭いトゲに、ゲジゲジが串刺しにされ、断末魔が室内にこだまする。
「なに?!」
何なんだ、今の?!
「アースぅん? 触りたくないからって、それは可哀想じゃないのぉン?」
ピンクのラインが入ったスーツのガキは、そう言うと、手に持った杖を、頭上に高々と振り上げた。
「HuLex UmThel eLEc iL」
突然の雷光。宙に浮かんでいた戦闘員は、手足をジタバタと動かしながら、黒焦げにされていく。
「にゃー! ピンクも似たような物にゃ。このままじゃ、そういう〝不思議〟で〝フワッとした〟戦隊だと思われるにゃあ!」
黄色いラインのガキが、困ったような口調で叫ぶ。
「……お、お前ら一体?!」
ふざけるなよ! 何なんだ、コイツらの力は? これじゃまるで、超能力者か、魔法使いじゃないか!
「ふふ。おサルさん凄いですね。ほぼ正解ですよ。〝超能力〟と〝魔法〟です。あと〝大いなる自然の力〟を忘れてはいけません」
緑のラインのガキ! いま僕の心を読んだ?!
「ほらぁ! やっぱり〝フワッと戦隊〟だと思われたにゃ! 私が汚名を晴らすにゃあ!」
「なんだよイエロー〝フワッと戦隊〟って……」
「アースは黙ってるにゃ。近接戦闘もイケてるところ、見せてやるんにゃあ。魔神の爪!」
黄色いガキの拳から、長い爪が飛び出す。そして次の瞬間!
「ギャインッ!」
マンデガン・ブルーに伸し掛かっていたイヌが、一瞬で切り刻まれて、無数の肉片に変わった。
「な……?!」
「ざっとこんなモンにゃ!」
黄色いラインのガキは、いつの間にかイヌが居た場所まで移動して、得意げにしている。
「今の、お前がやったのか……?!」
「何よぉ! 見えてなかったのん?! 出来るだけノロノロゆっくり、やってあげたのににゃあ!」
今の動きがノロノロ?! 何を言って……ん?
「な、何だ?」
黄色いガキのセリフが終わると同時に、空中に無数の〝岩〟が現れた。
ゴウッ! という音が轟き、散らばったイヌの残骸めがけて、雨のように降り注いだ。
「あにゃあ! お前も遅いよノーム! そいつ、とっくに死んじゃってるからにゃあ?!」
『そうは申されましても、この〝効果〟は自動で付随する物でして……』
誰と話しているのか知らないけど、何なんだよ、この岩!
ズガガガガガガ! 無数の岩は、爆音とともに、イヌの肉片をチリに変えてゆく。
「どういう事なんだ? なんの魔法だよコレ!」
「にゃー?! あーもー! やっぱ〝ふわっと戦隊〟だと思われちゃったじゃにゃいかー!」
思うか! これのどこがフワッとしてるんだよ!
マジでヤバイぞ、コイツら……信じられない強さだ。
「す……凄い」
「信じられないわ! あなた達は一体?」
「何者なんじゃ?!」
あの〝マンデガン〟とかいうヒーロー3人組が、驚きの声を上げている。
お前ら、知り合いじゃなかったのかよ!
……まあ確かに、背格好も装備も、そして何より、強さも段違いだけど。
銀のスーツに5色のライン。全員、見た目が小学生くらいの、謎のヒーローたち。
「何だよ! お前らいったい、何なんだ?!」
僕の声に、五人のヒーローは、待ってましたとばかりに、目にも止まらぬ速さで整列する。
っていうか……あれ? もしかして、待ってたの?
「俺たちは、地球を救うために選ばれた」
青が、右手の拳を握りしめ、胸を叩く。
「科学と!」
赤が叫ぶ。
「超常と!」
緑が叫ぶ。
「魔法と!」
ピンクが叫ぶ。
「銀河と!」
黄色が叫ぶ。
「大いなる自然の戦士! その名も!」
青が再び叫ぶと、全員が高々と腕を突き上げ、真上を指差す。
「救星戦隊プラネット・アース!」
ドーン! という音とともに、五人の背後に爆発が起きた。どういう仕組なのか知らないけど、危ないから外でやってよ!
「き、救星戦隊……」
「プラネット・アース!」
呆然としている〝マンデガン〟ども。
本当に知らなかったんだな……
「残念だったな、ダーク・ソサイエティ! お前らの悪事もここまでだ!」
くそぉ……マズいぞ……!
ガキだと思って油断したよ。正直、本気を出した僕でも、あの五人には敵わないだろう。
「さて、それでは始めようか。お前の相手は私だ」
赤いヤツが、歩み出て言った。
……なんだよ、超ラッキー! コイツ、一人で戦うつもりか!
たぶんこの赤いヤツ、修理に特化した〝メカニック担当〟だ。あの五人の中では最弱だろう。うまく捕まえて人質にすれば、逃げ切れる!
「パープル・ブレード」
紫色に光る剣を片手に、近づいて来る最弱メカニック。よしよし、一瞬で動けなくしてやる。
「ウキィィィッ! フルパワーだ、食らえ!」
全力を出した僕の強さに、せいぜい驚くがいい!
「まずは腕の一本でも切り落として……」
ザンッ! と、心地よい音が響く。
よし! このまま、もがくガキをひっ捕まえて……え?!
「ひぃッ? イギャアアアアアッ?! 腕が! 僕の腕がああぁぁぁあ?!」
痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 僕の腕が切り落とされて?!
何が起きたの?! あり得ない! あり得ない! 僕の体は、普通の攻撃なんかで傷付けられるはずが無いんだ。何でこんな!
「何でお前みたいなヤツに、このパンタル・ワン様が?! 何で? 何が起きたの?!」
〝メカニック担当〟は、切り取られた僕の腕を持ったまま、光の剣を僕に向けて構えている。
その姿が、二度、三度と揺らぐたび、僕の体は切り刻まれていく。
「痛いいぃぃ! やめっ! 助けっ! ひぎいいぃぃ!」
コイツのどこが〝メカニック担当〟だって?!
こんなヤツに敵うわけないじゃんか!
「終わりだ。大人げ無いが、さすがの私も少々怒っている。覚悟するがいい」
「大人げないって、お前、子どもだろ?!」
の〝だろ?!〟を、僕は言うことが出来なかった。
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勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
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※表紙のイラストはAIによるイメージです
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